風の谷経由桃源郷　5　ギルギット母子保健センター　了

2008/04/22 - 2008/04/27

今回のギルギット訪問は、パキスタン在住の督永忠子さんの悲願であったギルギットの母子保健センターの開校式に参加するためだった。
督永さんはもともと保健師で登山家だったが、30数年前にこの地を訪れたときの鮮烈な体験がパキスタン移住を決意させた。少し長いが督永さんの文書を引用する。
「今からは３０数年もの昔になりますが、カラコルムの山村の貧しさは筆舌に尽くせませんでした。ボロ着をまとい水浴みをすることもなく真っ黒で、家畜と変わらぬような暮らしをしていた村人たち。亡くした子どもを埋葬した土饅頭の前で泥まみれになって泣き崩れていた若い母親。彼ら村人にも、私たちと同じ人間としての血が流れ、涙もあるという当たり前のことを認識した時の驚き…。必死で毎日を生きようとしている彼らの領域に、大金を費やし登山にやって来、無神経に踏みこんだ自分の傲慢さ…。
実に恥ずかしい話ですが、それまでの私には山の頂上しか見えていなかったのです。自分がなんて贅沢で自分中心の傲慢な遊びに１５年間を費やして来たかと、反省には大なるものがありました。
当時のカラコルム山中での乳幼児死亡率は、（簡単な聞き取り調査で）５０％近かったのではないでしょうか。カラコルムに限らず、途上国の田舎は皆、似たような状態であったろうと思います。しかしながら、ほんの僅かに気をつけることで、乳幼児の死亡率を下げられる、泣き崩れる母親を減らすことが出来るのに…と思ったのでした。日本では必要とされていない自分の知識（保健）が、この山中では役に立つと。
それがパキスタンへ移住しようと決心した原点でした。」

エリア ギルギット(パキスタン)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• グルメ: 5.0

• 同行者: 社員・団体旅行
• 旅行の手配内容: 団体旅行

開校式前日のセンター。
すでにこの近辺で部屋を借りるなどして縫製教室などをほそぼそと行っていたが、ついに自前で建物を建てることができた。

女性のためのセンターなので、人目を遮るために高い塀を巡らせてある。さらに、男性が入る入り口と女性が入る入り口は別になっている。開校後は女性のガードマンを雇った。厳格なイスラームの地域ではそれぐらい男女の区別が厳しい。

イスラームでは犬を不浄の生き物として嫌うので、番犬として非常に役に立つ。

料理教室のための台所。

日常ではいすに座る習慣がないため、このような机になる。

足を洗う場所もちゃんとある。

とにかく参ったのは、建築が適当なこと。
新築なのに平気でこうやって壊す。

ペンキを塗らせてもこんな感じ。垂れてるからどうにかしろと言うと、壁は俺の仕事じゃないから壁屋に言えという。しょうがないので壁屋に白く塗らせると、今度は床に白く垂れている。それで文句を言うと、床張りにと。
一生仕事をしてられる感じ。

貯水槽だが、見るからに適当なフタ。これを左側に移すのだが、さすがに現地の人たちも危ないんじゃないかと議論していた。ただ、こちらに人たちは議論を始めると手が動かなくなるので困る。

掃除道具もこんな感じで、いくら拭いてもきれいにならない。
ちなみに、一緒に来ていたパキスタンの大物は、生まれて初めて掃除をしたと大喜び。今回、靴下も初めて自分で履いたそうだ。
ホテルではこの人の部屋はドアは開けっ放し、テレビもつけっぱなしだったが、たぶん、自分で消したりすることはないのだろう。外国の金持ちは桁が違う。

開校式の朝。
着々と準備を進める。

女性が集まるので、やはり目隠しの囲いを作る。

メモがなくなってしまって分からなくなっているが、たしか女性担当の政府の偉い人。

州知事。

通訳の方にピントが来てしまったが、挨拶をする督永さん。
時々涙をぬぐっていた。

だるまを寄贈。「七転び八起き」の説明がなかなかできないようだった。

ソーラークッカーの試作。あまりうまくはいかなかったらしい。

生徒たちが作った衣類のバザー。女性達に自分で使えるお金を渡すこともセンターの目的の一つだ。
現在も活動は続いており、卒業生からは女性の医師が誕生するなど、大きな成果が上がっている。

この旅行記へのコメント （2）

• k.sさん 2017/02/15 20:24:56

  いい旅行記を有難う！

  エスペラさんへ
  
  エスペラさんの言いたい熱い思いをしっかりと受け取りました！いい旅行記を書いてくださり、お礼の言葉もありません。
  
  いい旅行記にはいい評価が当然与えられる筈なのですが、今は理解できる人が何名かおればいい、と開き直って下さい。
  
  今後もエスペラさんの旅行記を拝読させていただきますので、よろしくお願いします。
  
  k.sより

  エスペラさん からの返信 2017/02/16 07:35:05

  RE: いい旅行記を有難う！

  k.sさん
  コメントありがとうございます。また、過分なお褒めの言葉もありがとうございます。
  貴重な体験でしたが、写真などハードディスクの肥やしにしておくのももったいなく、
  今頃掘り起こしてきた次第です。
  今後ともよろしくお願いします。