不思議の国イラン（４）カーシャーン　豪商たちが遺した町

2016/11/01 - 2016/11/02

　「歩き方」にはチラッと紹介されているだけのカーシャーンに行こうと思ったきっかけは、ある方の旅行記に描かれたこの町が魅力的だったことだ。
　砂漠に隣接するこの町は水が豊かで､古くから隊商路の宿場であり、その後、陶磁器、絨毯、絹織物の生産で随分栄えたという。その商人たちのかつての豪邸がなかなか見応えがあるらしい。
　エスファハーンからテヘランへ行くちょうど中間にあるし、有名観光地でない小さな町がそこだけの色や香りを保っていてくれるのではないか。そんな期待をして、カーシャーンに１泊することにした。

〈旅行時のレート　１万リアル≒２９円〉

エリア カシャーン(イラン)

• 同行者: カップル・夫婦
• 旅行の手配内容: 個別手配

　現地５日目。
　エスファハーンのテルミナーレでも、入口でテヘラン？と聞かれカーシャーンと答えると、中にいる人たちが次々と指さして窓口まで誘導してくれた。

　買った乗車券でなんとか読めるのは数字だけ。座席番号はわかったけど、日付に1395/08/11って書いてあるのはどうして？　きょうは2016年11月1日なんだけど。
　帰ってきてから調べたら、イランの暦は西暦とは違っていて、この日は1395年の８番目の月の１１日にあたるらしい。そんなことも知らずに旅してきたとは恥ずかしい。

　エスファハーンまでの景色は岩山が多かったけれど、今度は平原を行く。そして、菓子とジュースが配られたのは、バス会社によるのかこの時だけだった。

　カーシャーンの宿のイラニアンハウス。直接予約で９０米ドル。

　古い邸宅を改装したホテルで､各部屋は池のある中庭に面している。我々の部屋は１階正面右側。

　かつての栄華をしのばせる壁画がある。

　部屋の準備ができるまで中庭でくつろぐ。

　部屋はこんなふうないい感じ。

　道路からすれば１階分低い。夏の暑さをしのぐための構造なのだろう。
　ただし１１月だというのに夜には蚊がはいってきて、部屋にあった電子蚊取りは効かず、妻は何カ所も食われてしまった。

　豪商の館は宿のすぐ近くにいくつかある。
　最初にはいったのはボルージェルディ館。貿易商の邸宅で１８５７年の建築。
　ホールは豪奢という言葉がぴったり。これが日本でいえば江戸時代の個人の屋敷というのだからすごい。
　古さは否めないが、それがまたいい味を出している。アガサ・クリスティの作品の舞台になりそう。

　ドーム型の天井も手の込んだつくりだ。

　壁は絵やレリーフで飾られている。

　絵はがきや詩集を売っている。

　そこにも見事なレリーフがあった。

　次に入ったのはスルタン・アミル・アフマド浴場。
　市民の社交場だったと思われる。

　公衆浴場とは思えない豪華な内装。

　内部は広く､いくつもの部屋がある。

　蒸し風呂とあかすりでさっぱりしたあと、水たばこを吸いながらおしゃべりしていたことだろう。

　浴場の屋上に出ると、宇宙船がたくさん！？

　換気と明かり取りの設備と思われる。

　３つ目に訪れたのはタバタベーイ館。
　中庭には噴水が上がり、現役の館のように生き生きしている。観光客も多い。

　ここは１９世紀に建てられた絨毯商人の豪邸。近年改修されたのか、とてもきれいだ。

　天井も豪華だった。

　これは間違って入ってしまった隣のモスク。

　この歴史地区は道が曲がりくねっていてとてもわかりにくいので、人に聞くのが一番だ。

　カーシャーン歴史地区で最後に行ったのはアッバスィアン館。ここは一番古く１８世紀の建築だ。

　さすがに古色蒼然の感がある。

　ステンドグラスの窓。

　吹き抜けの下に池があり鳥が来ていた。

　ここは訪れる人も少なく、時間が止まっているような空間だった。

　夕食は宿に頼んだら、中庭に用意された。
　チキングリル、シチュー、サラダ、ヨーグルト、ライス、ノンアルビール。
　ノンアルビールが日本よりずっとおいしかったのは、やはり禁酒の国だから技術が発達したのかな。ライスや生野菜もおいしい。

　個室は照明が暗く､夜は読み書きできないので、公共スペースを利用した。

　サモワールが置かれチャイが飲めるのも、イランらしくていい。

　現地６日目。
　宿の朝食は､会場は素敵なのだが、肉類一切なし。厚いナンがおいしいのでたくさん食べた。

　市場を見に行く途中で見かけたモスクの塔。
　黒い旗はイスラムの信仰を表すらしくよく見かけたが、私はどうもなじめない。

　さらに行くと、向こうからナンを抱えた人が二人、三人と来る。ナン屋が近いらしい。

　きっと今日一日のナンを買っていくんだな。何にも包まず裸のまま持っていくのが流儀なのか。

　店をのぞき､写真を撮らせてくれと言うと、近くに来いと手招きされた。

　少年が金具を使って筋目をつけていき、店主が後の釜で焼く。

　その間も客は途切れないから人気店のようだ。
　しかし、ナンを買うのは男の仕事と決まっているのかしらん。

　イランの女性と言えばこの黒いチャードル姿だ。

　しかし、近くで見ると黒一色の中にもいろんな模様を楽しんでいることが分かる。

　縦長のポリ袋に茄子や芋を入れて売っているのは初めて見た。

　カーシャーンの市場に入って、これは乾物屋。

　染め物屋かな。

　カーシャーンはバラの産地でもある。妻はバラのつぼみを買った。

　なんの店だったか、どっしりした天秤ばかり。

　かわいいマネキン。

　貴金属店。

　市場の奥の方は縦横に通路が走り迷路のよう。半地下になっている脇道を進むと､その先が池を囲む広場になっていた。
　昨日見た豪商たちの館を思い起こさせる華やかさがある。
　しかも、ここは現役なのだ。

　ドームの天井からは太陽の光が射しこんでいる。

　年老いたことは誰の目にも明らかだけれど、なお美しさを放つ老婦人のようなカーシャーンの市場だった。

参考にさせていただいた旅行記　http://4travel.jp/travelogue/11142845