マークー【イラン南から北へ1ヶ月その１２】

2016/05/05 - 2016/06/03

トルコのボーダーまで20キロ余のマークーは、深い渓谷に沿って形成された小さな街だった。ここでも気持ち良いもてなしを受けて、滞在した３日間快適に過ごせた。
人造湖をバックに建つゾルゾル教会、夕暮れのアララト山など、美しい景色も脳裏に刻まれた。
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５月の1ヶ月イランにいた。アメリカの経済制裁が解かれたことや、アライバルビザが30日に延長されたことがイラン行きの背中を押した。
善意溢れるイランの人たちに支えられ、イランを南から北に縦断した。今までそれなりに海外旅行を重ね、現地の人たちの親切に出会ってきたが、今回イランで受けたような明けすけな歓迎や援助は経験がない。
絢爛たるペルシャの至宝、輝くモスク、賑やかなバザールとともに、親交を結んだイランの人たちが深く心に刻まれた。

※イラン通貨Rls（リアル）を日本に直すにはRlsを310で割る。

■旅程
5/5関空発→6.7.8シラーズ→9バンダル・アッバース→10.11バム→12.13ラフサンジャン→14.15.16ヤズド→17.18エスファハーン→19.20カーシャーン→21ゴム→22.23.24サナンダジ→25.26ウルミエ→27.28.29マークー→30.31タブリーズ→6/1.2テヘラン→6/3関空着

エリア マークー(イラン)

□２３日目(5/26)

ウルミエから4時間半バス（100.000Rls）に揺られマークーに到着した。
バスターミナルからホテルが集まる「エマーム広場」までタクシーで向かうことにした。そこまでは２km程度と踏んでいたが、近づいてきたドライバーは120.000Rlsだと言う。今朝ウルミエで利用したタクシーは、ホテルからバスターミナルまで３km程走って50.000Rlsだったから、これは高い。バスターミナル職員も100.000Rlsと言うので、選択肢がなく100.000Rlsにプライスダウンさせて乗り込んだが、ドライバーは不満げだった・・・。
ところが、ドライバーは「エマーム広場」らしき界隈を通り越しどんどん車を走らせた。あわてて「エマームスクェア、マークーイン、ツーリストホテル」と叫ぶと、「なんだそうだったのか」みたいなフリがあって車をUターンさせたのだ。英語がわからなったドライバーは「エマームスクェア」が理解出来ず「マークーイン、ツーリストホテル」に反応したようだ。
・・・・ドライバーもターミナル職員も、私たちがトルコに抜ける旅行者だと思い、ボーダーまで連れて行くつもりで乗せたようだ。それならば120.000Rlsと言うのは理解できる。（ちなみにここを去る際にホテル近くからターミナルまで利用した乗合タクシー料金は20.000Rls。）
タクシーはホテルで私たちを降ろすとさっと走り去ったが、ドライバーの顔はにこやかだった。

エマーム広場で降りてホテルをチョイスする予定にしていたが、マークーインにチェックイン（1340.700Rls）した。Iran Touring & Tourism Investment Company (ITTIC)系列のホテルでなかなか快適だった。

このホテルでランチ（446.900Rls）。Fried Trout FishがGood!!。

散歩に出かけた。
街は深い渓谷に細長く形成されていて、高い岩山が両脇から迫っている。とりわけ東側は、とてつもなく巨大な屏風岩が続き、上部は手前にカールしているのですごい迫力だ。
ホテルの後ろも断崖が迫っているので、地震多発国から来た身故、巨岩が落ちてはこぬかと・・少し気を揉んだ。

※ホテルより西側をのぞむ。

その屏風岩の中ほどにあるバーブ教の遺構を見にいくことにした。バーブ教は19世紀に生まれた小さな教団だが、時の政府の徹底した弾圧を受け現在は非公然の活動を強いられている。

※ホテルの壁に掲示されていた写真・・「豪雨の時のものだが、こんなことには滅多にない。」とホテルマン。

エマーム広場界隈・・正面は銀行。小さな街だけど、国境に近いせいか、やたら銀行が多い。

屏風岩の中程をめざす(銀行建物トップの左奥当たり)。

左・・作業員詰め所。右・・モスク建設中。

道すがら、行き交う人たちや店の人たちが気持ちよく挨拶してくれた。ウルミエで耳にした東洋人への侮蔑語はまったく聞こえない。マークーに入りサナンダジと同質の空気が流れ始めたように感じた。
断崖の遺構に向かう途中で、50がらみの男が声をかけてきて「私は毎日登っているから案内しましょう。」と、ついてきた。

傾斜がきつい山道を行きながら、彼は遺構の説明をしつつ「アメリカはイランはデンジャラスだと言うがそれは違うし、イラン人はみんな親切だ。」と。
「その通りだと思うよ。イランの現実を直視すればわかるよね。」・・と返す。

アメリカのその姿勢は私たちにも影響が。
今後アメリカには自由に行けない。イラン渡航歴があるとVISAが必要になる。

急斜面だから、立ち止まって休み休み上に・・・。

レンガが組まれた見張り塔がある辺りまで登る。
これ以上は上には無理のようだ。

断崖は、そこからも50mほどそそり立ち、そのトップは天井のように覆いかぶさっている。
スゴイ迫力だ。

そしてイワツバメがキイキイと鳴き飛び交っていた。

同行してくれた彼は、その場まで案内したからには用がないとばかりに「グッバイ」と。
観光地では勝手に案内をしてガイド料を要求する輩がいるが、彼の引際はとても爽やかだった。
ありがとう。

バーブ教の遺構・・何かしらの文言が刻まれている。

イスラムモスク建築のための義援金箱。

そこでは遺構を修復する作業が進められていて、作業員の詰所風の建物のドアが開き、中から2人の屈強な男が顔を出し、「チャイ」の声がかかった。
ありがたい。

中に招き入れられチャイの接待を受けながら、そのお返しに折り鶴を折って見せた。

が、またその返礼に、当地の観光案内パンフや絵葉書やDVDを、美しい風景が印刷された堅牢な紙袋の中に入れて手渡してくれたのだ。それも2セットも。

隣の部屋にはパソコンもあったから、単なる作業員詰所ではなかったのかも分からない。

又、帰り際には一人が、断崖に穿たれた険しい小道を駆け上がるや、清涼効果のある木の実を取って来てくれたのだ。まるでスーパーマリオのような早業だった(←風貌もどこか似ていた)。

心からのもてなしに感激した。

眼下に広がるマークーの街を眺めながら下に降りる。

ホテルに帰り際立ち寄ったピザ屋では、焼き上がるを待つ間に、ソフトクリームをサービスしてくれたし、
レーズン(50.000Rls)を買えば、レーズンの量ほどのキャンディーをサービスしてくれた。

この街の人たちのホスピタリティも半端じゃない。

とても居心地がいい街だ。

この店でレーズンを買った。

□２４日目(5/27)

今日は、タクシーをチャーター（800.000Rls）して、近隣の見所をまわった。
エマーム広場のタクシー溜まりにいた、人の良さそうな30代のドライバーを捕まえ、ホテルに置いてあったパンフレットを見せて交渉した。

9時にスタート。ドライバーのイブラヒムは期待にたがわず、しっかり私たちに寄り添い気持ち良く案内してくれた。
まわったのは100年前の大邸宅「カーへ・サルダール」、アルメニア教会の「ゾルゾル修道院聖マリア礼拝堂」と「ガラ・ケリーサ」の3カ所。

※カーへ・サルダール入口

「カーへ・サルダール」（150.000Rls）は、100年前に建てられたバヤード家の邸宅だ。
バヤード家はマークーを長年にわたり実効支配し、ガージャール朝の長官になる者もいたと言う。
ヨーロッパの建築様式を取り入れた外観は瀟洒だが、室内に施された装飾はなかなかユニークだった。

小石が壁面の装飾に一役買っている。

色使いがなかなか秀逸。

ヴィーナスの彫刻には布がかぶせられていた。こういう所がイスラムの国らしい。

しかし天井を見あげると・・・。

他のイスラムの国とイランの違いがこういう所にあるのではないか・・・

厳格なイスラム原理主義の国だとどうなっているだろうか・・。

カーへ・サルダールからゾルゾル教会に向かう山道からはマークーの街が見下ろせた。

そして薄ぼんやりだったがアララト山が遠望できた。

同じ場所から撮られた絵はがき

アルメニア人が建てたゾルゾル教会（ゾルゾル修道院聖マリア礼拝堂）は山一つ越えて降りた所にあった。ダム湖のバルーン湖を背景にして、絵葉書のように美しかった。
この教会はもともと今の位置よりも下にあったが、湖水に沈むことになるで、ここに移築された。

眼下にダムが・・。

放牧されていた馬の親子も風景に溶け込む

ゾルゾル教会からガラ・ケリーサには山あいを抜ける未舗装の道を行った。
長い時間乗車したが、イラン中部の沙漠地帯と異なり、色とりどりの野の花が咲き誇る草原や、清流が流れ家畜が放たれた小さな村などを通過して行くので退屈しなかった。

「ガラ・ケリーサ」（200.000Rls）
ガラ・ケリーサ（黒の教会）の正式名は聖タデウス教会。
現在の建物は１７Cのもの。当地を支配したアルメニア王国の隆盛を物語る教会だ。

レリーフが美しい

午後2時に帰着したから、５時間のツアーだった。
ドライバーのイブラヒムとは、もっぱらボディーランゲージでの意思疎通だったが、彼の人の良さが伝わってきてとても気持ち良いツアーとなった。

下車後、街の博物館にも入ってみた。

展示品はともかくとして、壁の装飾に目がいった。

ホテルに戻ると、イタリアから自転車で来た青年に遭遇。

自転車で世界を駆ける旅行者は割と多いなあ。
若いうちに、私も挑戦したかった。

□２５日目(5/28)

今日はトルコとのボーダーがあるバーザルガーンにでかけた。
は20?ほどあるのだが、乗り合いタクシー運賃は1人20.000Rlsで70円程。今まで利用したタクシーの中では最安値だった(^_^)。

税関検査を待つ大型トラックが街はずれまで続いていた。

ボーダー・・トルコ側は「ギュルブラツク」。
妻が行ったことのある「ドウバヤズット」もすぐ近くだ。

ボーダー界隈は両替商の声があちこちからかかったが、期待していたほど国境の街の賑わいと風情はなく、さっぱりしたものだった。

メインストリートを歩いていると、やたら散髪屋が並んでいたので、利用することにした。
使い古された感じが良い味を醸している店を見つけたが、あいにく店主は不在。

しかしよくしたもので、隣の八百屋の主人(中央奥)が携帯で呼び出してくれて、10軒ほど先の店から店主は走って戻ってきた。


手前の青年・・「散髪が終わったら、寄っていって」と声をかけてきた。

異国の珍客を厭うことはせず、歓迎してくれていることが表情で伝わってくる。
バリカンで長さを整えるやり方でカットしながら、「日本のテクノロジーはすごい。」「イラクやアフガニスタンは危険だがイランは平和だ。」と繰り返す。この2つはどこでも聞かれたキーワードだ。
お代は100.000Rls、300円ちょっとだった。

そして、散髪屋に入る前に、声をかけてきた若者のオフィスに立ち寄った。
保険会社に勤めながら大学に通う彼。
「日本人の勤勉さを見習いたい」と言いながら、こうして営業中にチャイ出すユルサが面白い。
彼の夢は「会社をおこし、日本車を買う」ことだそうだ。

巨大なアララト山を仰ぎ見る。雲が晴れるのを待ったがかなわなかった。

(左)大アララト山5,137m。(右)小アララト山3,896m。アルメニアとの国境から32km、イランとの国境は16kmの地点にある。

3日間滞在したマクーとも明日でお別れ、次の訪問地のタブリーズに向かう。

その後帰国に向けてテヘランに戻る。