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熊本にはよく知られる内陸の活火山阿蘇のほかに、有明海沿岸に近い金峰山という休火山がある。<br /><br />長洲を過ぎるとJR鹿児島本線は海岸沿いのルートを外れ、阿蘇山と金峰山の谷間の内陸部を走るようになる。<br /><br />玉名市の中心を流れる菊池川の辺りから熊本市の南端を流れる緑川の辺りまで有明海沿岸は熊本有数の田園地帯で、この田園地帯は有明海沿岸の干拓に依る処大きいのだが、この干拓を手掛けたのが加藤清正。<br /><br />菊池川の河口側は横島干拓地と云われ、清正の菊池川の大掛かりな工事の結果生まれた。<br /><br />田園にはそぐわない金峰山の山裾の傾斜部分は、やはり清正の意向もありみかんの栽培が始まる。<br /><br />現在も小天や河内は日本有数の蜜柑の産地。<br /><br />その櫁柑山を横断する広域農道は金峰オレンジロードと呼ばれている。<br /><br />玉名市一帯は火山地帯に隣接すため、あちこちで温泉も湧く。<br /><br />元立願寺温泉と呼ばれていた玉名温泉がよく知られているが、蜜柑の産地・小天にも小天温泉がある。<br /><br />熊本から約20kmあり、山道を登り、峠を越さなければならない。<br /><br />明治29年第五高等学校の教授になった夏目漱石が峠を越えて、小天温泉宿に遊び、その宿の次女、前田卓子との出会いが、名作”草枕”生んだ。<br /><br />宿の主人は細川藩の武道師範も務めた豪族前田覚之助で、城下まで他人の土を踏まずに行けると豪語するほどの資産家であったが、明治維新後、自由民権家となり、農民を擁護をするとして名も案山子と改名、第4回衆議院議員選挙で、熊本2区から立憲自由党代議士候補として出馬するも次点であった。<br /><br />”草枕”では卓子がヒロイン”那美”として、案山子が”志保田の隠居”として登場する。<br /><br />その宿にたまたま外人の通訳として逗留した宮崎滔天に心を奪われてしまったのが卓子の妹で、卓子に負けず美貌と、教養を持ち、おまけに素っ裸で白馬を乗り回すという活発な娘槌子。<br /><br />二人は大恋愛の末婚約するのだが、滔天は中国革命に生涯を捧げる決意をし、そのため槌子に婚約破棄を申し出るが、槌子がこれを許さず二人は結婚。<br /><br />お嬢さん育ちの娘とは到底考えられない、槌子の苦難と波乱の生涯が始まる。<br /><br />滔天の著した「三十三年之夢」は「二六出版」に連載されたもので、十版を重ねた後絶版となっていた。<br /><br />大正十五年、文芸春秋社が再出版したのだが、その際滔天の息子宮崎龍介が後付けを書き、その中で母槌子が東京毎夕新聞に口述筆記し連載したという「支那革命の思出」を全文掲載した。<br /><br />「支那革命の思出」を読むと槌子が三人の子供を育てながら、滔天を支えるのだが、それは単に妻、母親としてだけではなく、まさに革命の同志として滔天はもとより、孫文をはじめその応援者たちを支えたかがよく分かる。<br /><br />「支那革命の思出」の冒頭で槌子は次のように述回している。<br /><br />「亡夫滔天が支那革命運動に志したのは明治二十年頃からと記憶します。その頃、滔天の兄弥蔵と共に世界の現状の不合理を改めるには先ず支那の革命を実行し、その力で世界を理想的に改革することが一番自然であり、最も実現可能だと考えたのでした。」<br /><br />後に槌子からの依頼で姉卓子も上京し、槌子を助けることになる。<br /><br />それもあってか、上京した卓子は当時東京にいた漱石とも再会し、交際が続いていたようで、漱石は当然槌子のことも知っていたと思われる。<br /><br />卓子は腹違いの、30歳年下の弟利鎌がおり、後に卓子の養子にするのだが、つい先だって朝日新聞連載の漱石の小説”それからの”脇添えの小欄に、漱石の死の間際の枕もとで、見舞いに来た利鎌が漱石から乞われて謡曲を吟じたことが記載されたいた。<br /><br />しかしこれだけの小説の材料となる槌子を漱石は全く筆にしていない。<br /><br />金峰オレンジロード辺りを2010年秋、小天にお住いのK・Nさんの案内で旅をした。<br /><br />歴史と文学と情熱と愛と蜜柑の香る金峰オレンジロード<br />http://4travel.jp/travelogue/10516828<br /><br /><br />傘寿旅行・「海の細道」周遊旅情8,有明海東沿岸風景(目次)に戻る<br />http://4travel.jp/travelogue/11120313

8,有明海東沿岸風景8,-5金峰オレンジロード

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2016/01/27 - 2016/01/27

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WT信

WT信さん

熊本にはよく知られる内陸の活火山阿蘇のほかに、有明海沿岸に近い金峰山という休火山がある。

長洲を過ぎるとJR鹿児島本線は海岸沿いのルートを外れ、阿蘇山と金峰山の谷間の内陸部を走るようになる。

玉名市の中心を流れる菊池川の辺りから熊本市の南端を流れる緑川の辺りまで有明海沿岸は熊本有数の田園地帯で、この田園地帯は有明海沿岸の干拓に依る処大きいのだが、この干拓を手掛けたのが加藤清正。

菊池川の河口側は横島干拓地と云われ、清正の菊池川の大掛かりな工事の結果生まれた。

田園にはそぐわない金峰山の山裾の傾斜部分は、やはり清正の意向もありみかんの栽培が始まる。

現在も小天や河内は日本有数の蜜柑の産地。

その櫁柑山を横断する広域農道は金峰オレンジロードと呼ばれている。

玉名市一帯は火山地帯に隣接すため、あちこちで温泉も湧く。

元立願寺温泉と呼ばれていた玉名温泉がよく知られているが、蜜柑の産地・小天にも小天温泉がある。

熊本から約20kmあり、山道を登り、峠を越さなければならない。

明治29年第五高等学校の教授になった夏目漱石が峠を越えて、小天温泉宿に遊び、その宿の次女、前田卓子との出会いが、名作”草枕”生んだ。

宿の主人は細川藩の武道師範も務めた豪族前田覚之助で、城下まで他人の土を踏まずに行けると豪語するほどの資産家であったが、明治維新後、自由民権家となり、農民を擁護をするとして名も案山子と改名、第4回衆議院議員選挙で、熊本2区から立憲自由党代議士候補として出馬するも次点であった。

”草枕”では卓子がヒロイン”那美”として、案山子が”志保田の隠居”として登場する。

その宿にたまたま外人の通訳として逗留した宮崎滔天に心を奪われてしまったのが卓子の妹で、卓子に負けず美貌と、教養を持ち、おまけに素っ裸で白馬を乗り回すという活発な娘槌子。

二人は大恋愛の末婚約するのだが、滔天は中国革命に生涯を捧げる決意をし、そのため槌子に婚約破棄を申し出るが、槌子がこれを許さず二人は結婚。

お嬢さん育ちの娘とは到底考えられない、槌子の苦難と波乱の生涯が始まる。

滔天の著した「三十三年之夢」は「二六出版」に連載されたもので、十版を重ねた後絶版となっていた。

大正十五年、文芸春秋社が再出版したのだが、その際滔天の息子宮崎龍介が後付けを書き、その中で母槌子が東京毎夕新聞に口述筆記し連載したという「支那革命の思出」を全文掲載した。

「支那革命の思出」を読むと槌子が三人の子供を育てながら、滔天を支えるのだが、それは単に妻、母親としてだけではなく、まさに革命の同志として滔天はもとより、孫文をはじめその応援者たちを支えたかがよく分かる。

「支那革命の思出」の冒頭で槌子は次のように述回している。

「亡夫滔天が支那革命運動に志したのは明治二十年頃からと記憶します。その頃、滔天の兄弥蔵と共に世界の現状の不合理を改めるには先ず支那の革命を実行し、その力で世界を理想的に改革することが一番自然であり、最も実現可能だと考えたのでした。」

後に槌子からの依頼で姉卓子も上京し、槌子を助けることになる。

それもあってか、上京した卓子は当時東京にいた漱石とも再会し、交際が続いていたようで、漱石は当然槌子のことも知っていたと思われる。

卓子は腹違いの、30歳年下の弟利鎌がおり、後に卓子の養子にするのだが、つい先だって朝日新聞連載の漱石の小説”それからの”脇添えの小欄に、漱石の死の間際の枕もとで、見舞いに来た利鎌が漱石から乞われて謡曲を吟じたことが記載されたいた。

しかしこれだけの小説の材料となる槌子を漱石は全く筆にしていない。

金峰オレンジロード辺りを2010年秋、小天にお住いのK・Nさんの案内で旅をした。

歴史と文学と情熱と愛と蜜柑の香る金峰オレンジロード
http://4travel.jp/travelogue/10516828


傘寿旅行・「海の細道」周遊旅情8,有明海東沿岸風景(目次)に戻る
http://4travel.jp/travelogue/11120313

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