2015/06/14 - 2015/06/18
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芸術の都パリには近代になって国内外から画家を目指して幾多の才能が集い刺激し合い、多くの美術史に輝く巨匠画家を生んだ歴史がある。その巨匠画家達の何人かが、パリを離れ南フランスの美しい山や海岸の景観、照りつける太陽のもとでの強烈な自然の色彩を求めてこぞって彼の地に移り住んだことはことはよく知られている。今回の旅は彼らが創作に勤しんだアトリエや、地元の教会等に残した壁画、ステンドグラスの作品、後年滞在を記念して建てられた美術館など巨匠達の足跡をたどり、どうして彼等は南フランスに魅せられたのかを肌で感じることがテーマである。一人一人の画家と滞在した街を切り口に旅行記を纏めてみた。
”その1”は近代絵画の父のセザンヌと出身地エクス・アン・プロヴァンスである。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 鉄道
- 航空会社
- ANA
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
芸術の都パリを敢えて離れ、南仏に移り住んだ巨匠達がどのタイミングで、どの街に住んだかを一覧表にして、「巨匠の南仏年表」なるものを自家製作した。
南仏滞在期間と年代的にみて、草分け的存在はポール・セザンヌである。セザンヌは1839年にエクス・アン・プロヴァンスに生まれ21歳の時に画家を志してパリにでて、アカデミーで学び、展覧会に出品するも落選続きでパリでは評価を得ることができなかったという。40歳の時に故郷のエクスに戻り、隠遁生活のなかで独自の芸術を探求し1895年(56歳)パリでの個展で初めて評価を得て花を開いたという晩成の画家である。 -
南仏に移り住んだゆかりの巨匠達の相互の影響関係を図示した「南仏ゆかりの巨匠達の影響相関図」を作成した。
セザンヌは多くの画家達に直接、間接の影響を及ぼしている事はよく知られている。パブロ・ピカソは「セザンヌは我々すべての父である」と評したという。まさに「近代絵画の父」といわれる所以である。
巨匠達の南仏詣では、南仏の豊かな自然と燦々と降り注ぐ陽光の魅力と相俟ってポール・セザンヌの存在も大きな要素だったと考えられる。
ポール・セザンヌが出身地でもあり、生涯こよなく愛したエクス・アン・プロヴァンスを訪ねその魅力を感じることとしよう。以降フランス人がエクス・アン・プロヴァンスをエクスと称するのに倣いエクスと表記する。 -
①セザンヌのアトリエ(Atelier de Cezanne)
エクスの街の中心にあるロータリーの郵便局前のバス停Rotonde Posteで#5のバスに乗車、20分程で、Cezannuというバス停で下車し徒歩5分で到着する。
写真は門と石の塀、門柱にCezanneと刻まれて、フランス語の説明版がある。
バスは次の停留所の案内があるものとないものとあるので、運転手に乗る際に行き先を伝え、着いたら教えてくれと言っておいた方が良い。今回は親切な運転手でバス停からの道順まで降りる時に教えてくれた。 -
オリーブの木に覆われた瀟洒な二階建の建物で、一階は受付兼ショップ2階がセザンヌのアトリエとなっている。
パンフレットによると、1902年に自ら設計してこのアトリエを建設し1906年に死亡するまで毎朝このスタジオで絵筆をとったそうだ。
室内は撮影禁止になっていて写真を紹介できないが、部屋の入口の左側に2箇所の小窓、右側の壁には大窓が設えてあり、採光を充分取ることが出来る構造になっている。右側の壁の端は、天井まで大きく切り上がった細長い扉が設置されていて、「大浴女」の大作品のキャンバスの搬出入されたという。セザンヌが思い入れを込めてこのアトリエを設計したことが汲み取れる。室内にあるのは、イーゼル、大作製作用の脚立、画材、画材入れのための収納家具、静物画のモチーフとして採り入れたテーブル、椅子、タンス、食器類、石膏像、頭蓋骨等の調度品といった品物であり、創作活動に必要なのも以外の余分な装飾品は一切ない。如何に作品創りに集中していた空間なのかが伝わってくる。
静物画の中で見たことがある調度品類画当時のまま存在しているのを目の当たりにし、静謐な空間の中でセザンヌが美を追求していた様子をうかがい知ることが出来る素晴らしい場所である。
訪問当時の6月は、15-6名程度の入場者であったが、ハイシーズン時は、入場制限がありエクスの観光案内所で予約をしてからの訪問が望ましいとのこと。 -
②レ・ローヴの丘、マルグリットの小路
セザンヌが生涯に亘って描き続けた題材の一つに「サント・ビクトワール山」がある。アトリエのある一帯はレ・ローヴの丘と呼ばれているが、その丘の頂からはサント・ビクトワール山を正面に見ることが出来る。晩年セザンヌはアトリエからこの丘の頂まで足しげく登りスケッチをして、数十点のサント・ビクトワール山を画いた。
アトリエの前の坂道を20分ほど徒歩で登ると、左側に狭い石段の小路が現れる。レ・ローヴの丘の頂に通じる「マルグリットの小路」の入り口である。頂までは5分ほどの登り道である。登りつめると振り返った正面にサントビクトワール山の雄姿が目に飛び込んでくる。
周囲は住宅地であるが、この頂まで登ると家の姿は視界から消えて、糸杉の彼方に望むカルスト台地特有の山容を持つサント・ビクトワール山はセザンヌが見ていた当時と変わらないと思うと、非常に感慨深い絶景である。 -
レ・ローヴの丘の頂は公園として整備されている。セザンヌのサントビクトワール山はここで画かれた事を示すパネルが展示されている。この日同時間帯にアトリエを訪問した中でレ・ルーブルの丘の頂まで足を伸ばしたのは我々だけであった。時折近所の人が散歩で訪れる程度で人影はほとんどなく、セザンヌが見た光景を暫し楽しみ想いを馳せて満ち足りた時間を過ごすことが出来た。
エクスの強い日差しの中、汗を絞って坂道を登ってくるのは楽ではないが時間の余裕があれば是非ともお勧めしたいスポットである。因みにエクスの市街地からはサント・ビクトワール山を見ることはできない。 -
③グラネ美術館(Musee Granet)
エクスの中心部にある美術館、コレクションは充実していて以下の理由で必見の価値があると思う。写真は美術館のパティオ風景
-マルタ騎士団の修道院をエクスが買い取り19世紀に入り美術館兼美術学校としたのが、起源とのこと。歴史的価値がある。
-セザンヌはこの学校の無料デッサン教室に5年間在籍し絵画の基礎を学んだという所縁の場所である。セザンヌルームがあり、小品が主で数は多くないが地元の美術館として貴重なコレクションを所蔵している。
-冠名のグラネは、エクス出身のフランス古典主義の画家の名前で、死後彼のコレクションを市に遺贈したことに敬意を表し美術館名に刻んだとのこと。
-グラネが新古典主義の師ダヴィドに師事していた時の、画友がドミニク・アングルで彼の筆による「グラネの肖像」とアングルの名作を所蔵している。
-2013年グラネ美術館別館として現代美術館が設立された。教会チャペルを改造した美しいギャラリーとジーン・プランクの20世紀の絵画コレクションが素晴らしい。 -
グラネ美術館セザンヌルームの「水浴女」
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グラネ美術館セザンヌルーム「静物 砂糖壺、洋梨と青いコップ」
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セザンヌルーム「エミール・ゾラの肖像画」
著名な小説家エミール・ゾラはエクスで幼少期を過ごし、セザンヌとは竹馬の友であったという。パリにでたゾラを頼りにセザンヌもパリに行き、一次同居していた事もあるという。 -
グラネ美術館のmasterpiece「グラネの肖像」ドミニク・アングル作
美術館の名前の由来となったエクス出身の画家グラネの肖像を画友であるドミニク・アングルが描いた作品。 -
グラネ美術館masterpiece 「ジュピターとテティス」ドミニク・アングル作
新古典主義の巨匠アングルの名作。跪いて懇願するテティスと中央のジュピターの身体の大きさをアンバランスな程強調する新古典主義の独特の技法で、全知全能の神 ジュピターのパワーを表現している。圧倒的な迫力の絵である。
思いがけずアングルの名作を鑑賞できて感動である。グラネのアングルコレクションは数作展示されている。 -
グラネ美術館masterpiece ジャコメッティの彫刻
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グラネ美術館
「セザンヌ訪問」モーリス・ドニ作
ナビはの画家モーリス・ドニもセザンヌに影響を受けた画家の一人で、エクスにセザンヌを訪ねた際、レ・ローヴの丘でサント・ヴィクトアール山の連作に取り組むセザンヌを描いた作品を製作した。 -
グラネ美術館別館(GranetXXe)
本館から徒歩5分程の所にある20世紀現代美術に特化して2013年開設された美術館である。
写真の通り、古い教会のチャペルを改装し、天井の高い空間を生かした個性的な展示空間となっている。
ジーン・プランクというコレクターの収集した20世紀有名画家、ルノアール、ピカソ、クレー、ブラック、デヴェフェ、ゴッホ、レジェ等の作品から成る充実した展示を楽しむことが出来る。 -
グラネ美術館XXeのmasterpiece
「The Traps of Desire」(欲望の罠)ピカソ作 -
グラネ美術館XXe masterpiece
ジョルジュ・ルオー作 -
グラネ美術館XXe masetrpiese
「バラとコンパス」フェルナン。レジェ作 -
グラネ美術館XXe masterpiece
「Continuum of the City」(都市の連続体)デヴィフェ作 -
グラネ美術館XXe masterpiece
「Grey with Light Band Across」アントニ・タピエス作 -
④エクス・アン・プロヴァンス街の魅力
エクスはプロヴァンス地方の文化、芸術、観光の中心の魅力あふれる街である。歴史的な建物が多く残る旧市街を歩くと、広場と噴水が多いのに気が付く。広場に面するオープンカフェでは市民が朝からお茶し、夕方はワインを片手に語らい人が絶えることがない。彼らが気候もよく、文化的なエクスでの生活をマイペースでエンジョイしている様子がわかる。毎日街の広場の何処かでマルシェが開かれている、食品、衣料といった日常的なものから、蚤の市風の骨董市までバラエティに富んでいて市民だけでなく観光客も楽しめる。
写真はエクスの中心ミラボー大通りである。石畳の車道の両側にプラタナスの並木があり 噴水のあるロータリーを配した美しい通りで、両側にホテル、レストラン、カフェ、ショップが並ぶまさにエクスのメインストりートである。左側が旧市街の迷路のような狭い街並み、右側が比較的新しい碁盤状な街並みとなっている。 -
同じくミラボー通りの蚤の市風景
メインストリートのミラボー通りでは隔日の午前中、車両進入禁止の「ホコテン」にしマルシェが開催される。並木道の両側に露天のテントが並び、食料品、衣料、骨とう品、土産物等ありとあらゆるものが売られ、活気溢れる蚤の市会場に変貌する。 -
リシュルム広場の朝市
旧市街の中にあるリシュルム広場では毎日食料品の朝市が開かれる。観光用ではなく市民の台所といった趣である。 -
街の中の噴水
エクスは豊富な水に恵まれた街で、旧市街を歩いていると街のそこかしこで噴水に出会う。造りはシンプルであるが、相当な歴史を思わせる噴水でそれぞれ個性があって面白い。 -
市庁舎前広場の噴水
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ポール・セザンヌの銅像
ミラボー通りの出発点にあるロータリーに面する広場に立つポール・セザンヌの像である。エクスにとってセザンヌは偉大な郷土出身者であり、街のど真ん中で威風堂々と立っている。 -
セザンヌの足跡を辿る散歩コースの道標の鋲
既に紹介した、セザンヌのアトリエ、レ・ローヴの丘以外にもセザンヌゆかりのものは街に多く残されている。生家、通った学校、移り住んだ家、墓所等32箇所のセザンヌの足跡を巡るウォーキングコースが整備されている。観光協会でマップを入手し、歩道に打ち込まれた写真の「C」をデザインした鋲を目印に巡る事が出来る。
エクスの総括
今回エクスに4泊し、セザンヌのゆかりの場所を巡る充実した時間を過ごすことが出来た。特にレ・ローヴの丘から見たサント・ビクトワール山の雄姿を拝んだ時は、時間を越えてセザンヌと視点を共有したように思えて感慨深いものがあった。パリの曇天で肌寒い気候から、エクスに入ると降り注ぐ陽光で、自然も街も色鮮やかで一種独特の解放感を味わうことが出来る。街も整備されていて快適であるし、食事もワインも美味しいし、セザンヌがこよなく愛したエクスの魅力の一端を知る事が出来たような気がしている。
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