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6月20日土曜日、今年の2回目のウィーン訪問には特別な目的があった。それはマリス・ヤンソンス指揮、ウィーンフィルの演奏会を聴くことだ。2ヶ月前から完売しており、当日15:30開演の1時間前に残券のみを売り出す、ということなので、本番当日に早めに並ぶしか入手方法はない。従ってこの日の13:30ころウィーンフィルチケットオフィスに並ぶことにして、午前中にオーストリアの6番目の世界遺産「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」を訪れることにした。<br /><br />ヴァッハウ渓谷というのはドナウ川に沿って36キロに及ぶ広大なエリアを含む。時間があればザンクト・ペルテンまでドナウ川遊覧船に乗る方法がベストであるが、とても時間的余裕はないので、まず早朝にウィーンを発ってメルク駅まで行き、メルク修道院が開場する9時までの数時間にこの渓谷を可能な限り散策することにした。<br /><br />6時過ぎにウィーン中央駅を出発するレールジェットでザンクト・ペルテンまで行き、ローカル列車に乗り換えてメルク駅に7時半過ぎに到着、駅から徒歩で15分ほど丘の上にメルク修道院を眺めながら、旧市街を通り抜けるとドナウ河畔に着く。船着場があって遊覧船に乗ろうとする人々を横目に見ていわゆるヴァッハウ渓谷と呼ばれるほんの一部を撮影して歩いた。当然ライン川の渓谷と比較してしまうが、ライン川が大きくカーブし、両岸の岩壁が切り立ってローレライのような高低差のある絶景を呈しているのに対し、この近くを流れるドナウ川はカーブが少なく、既に川幅が広く大河の様相を示し、両岸も高低差がさほどなく、なだらかで女性的な景観だ。<br /><br />そして何と言ってもヴァッハウ渓谷のハイライトはメルク修道院である。この修道院の設立は1089年、バーベンベルク家のオーストリア辺境伯レオポルト2世により、ランバッハ修道院出身のベネディクト会修道士に城の1つが寄贈されたことに始まる。修道院の図書館はまもなく規模を広げ、幅広い写本収集で知られるようになり、また写本の生産が行われた。そして最も見応えのあるのはバロック建築の修道院、1702年から1736年にかけて、ヤコブ・ブランタウアーの設計により建設、またヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤが修道院の教会に描いたフレスコ画と、中世の手描き原稿が無数に納められた図書室である。圧巻なのは教会内部の精緻な装飾だ。これは何時間見ていても飽きない。これほど見事な教会の内装で比較できるのは、ノイシュヴァンシュタイン城の近くのロココ様式の装飾で名高いヴィース教会と、バロック建築の傑作、スイスのザンクト・ガレンの教会が思い出される。<br /><br />その後のメルク修道院は、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世が1780年から1790年にかけて修道院を接収、解散させた時期をかろうじて凌ぎ、ナポレオン戦争、次いで1938年のナチスによるオーストリア併合「アンシュルス」期には修道院の大部分を国家に接収された。 第二次世界大戦では大きな被害を免れ、戦後学校は修道院に戻され、現在も修道院として機能している。<br /><br />メルク修道院から急ぎ足で駅に戻り、ウィーン中央駅行きの予定の列車よりも1時間ほど早く到着し、1本早いウィーン西駅行きの列車に乗ることにした。途中ザンクト・ペルテンで乗換え時間が多少あるため、旧市街まで足を伸ばした。歩行者天国のクレムサー・ガッセにはユーゲント・シュティールのファサードを持つ美しい街並みが続き、市庁舎、ドーム教会などを撮影して歩いた。<br /><br />懐かしいウィーン西駅に到着、構内は2011年に改装されており、新しい店舗が並んで以前の薄暗いイメージも今は昔である。そしていよいよウィーンフィルのチケットオフィスに向かう。ヤンソンスのチケットははたして手に入るだろうか?

オーストリアの世界遺産No.6: ヴァッハウ渓谷とメルク修道院

45いいね!

2015/06/20 - 2015/06/21

7位(同エリア116件中)

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48

ハンク

ハンクさん

6月20日土曜日、今年の2回目のウィーン訪問には特別な目的があった。それはマリス・ヤンソンス指揮、ウィーンフィルの演奏会を聴くことだ。2ヶ月前から完売しており、当日15:30開演の1時間前に残券のみを売り出す、ということなので、本番当日に早めに並ぶしか入手方法はない。従ってこの日の13:30ころウィーンフィルチケットオフィスに並ぶことにして、午前中にオーストリアの6番目の世界遺産「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」を訪れることにした。

ヴァッハウ渓谷というのはドナウ川に沿って36キロに及ぶ広大なエリアを含む。時間があればザンクト・ペルテンまでドナウ川遊覧船に乗る方法がベストであるが、とても時間的余裕はないので、まず早朝にウィーンを発ってメルク駅まで行き、メルク修道院が開場する9時までの数時間にこの渓谷を可能な限り散策することにした。

6時過ぎにウィーン中央駅を出発するレールジェットでザンクト・ペルテンまで行き、ローカル列車に乗り換えてメルク駅に7時半過ぎに到着、駅から徒歩で15分ほど丘の上にメルク修道院を眺めながら、旧市街を通り抜けるとドナウ河畔に着く。船着場があって遊覧船に乗ろうとする人々を横目に見ていわゆるヴァッハウ渓谷と呼ばれるほんの一部を撮影して歩いた。当然ライン川の渓谷と比較してしまうが、ライン川が大きくカーブし、両岸の岩壁が切り立ってローレライのような高低差のある絶景を呈しているのに対し、この近くを流れるドナウ川はカーブが少なく、既に川幅が広く大河の様相を示し、両岸も高低差がさほどなく、なだらかで女性的な景観だ。

そして何と言ってもヴァッハウ渓谷のハイライトはメルク修道院である。この修道院の設立は1089年、バーベンベルク家のオーストリア辺境伯レオポルト2世により、ランバッハ修道院出身のベネディクト会修道士に城の1つが寄贈されたことに始まる。修道院の図書館はまもなく規模を広げ、幅広い写本収集で知られるようになり、また写本の生産が行われた。そして最も見応えのあるのはバロック建築の修道院、1702年から1736年にかけて、ヤコブ・ブランタウアーの設計により建設、またヨハン・ミヒャエル・ロットマイヤが修道院の教会に描いたフレスコ画と、中世の手描き原稿が無数に納められた図書室である。圧巻なのは教会内部の精緻な装飾だ。これは何時間見ていても飽きない。これほど見事な教会の内装で比較できるのは、ノイシュヴァンシュタイン城の近くのロココ様式の装飾で名高いヴィース教会と、バロック建築の傑作、スイスのザンクト・ガレンの教会が思い出される。

その後のメルク修道院は、神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世が1780年から1790年にかけて修道院を接収、解散させた時期をかろうじて凌ぎ、ナポレオン戦争、次いで1938年のナチスによるオーストリア併合「アンシュルス」期には修道院の大部分を国家に接収された。 第二次世界大戦では大きな被害を免れ、戦後学校は修道院に戻され、現在も修道院として機能している。

メルク修道院から急ぎ足で駅に戻り、ウィーン中央駅行きの予定の列車よりも1時間ほど早く到着し、1本早いウィーン西駅行きの列車に乗ることにした。途中ザンクト・ペルテンで乗換え時間が多少あるため、旧市街まで足を伸ばした。歩行者天国のクレムサー・ガッセにはユーゲント・シュティールのファサードを持つ美しい街並みが続き、市庁舎、ドーム教会などを撮影して歩いた。

懐かしいウィーン西駅に到着、構内は2011年に改装されており、新しい店舗が並んで以前の薄暗いイメージも今は昔である。そしていよいよウィーンフィルのチケットオフィスに向かう。ヤンソンスのチケットははたして手に入るだろうか?

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
交通
5.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配
  • メルク駅のファサード

    メルク駅のファサード

  • メルクの旧市街の入り口

    メルクの旧市街の入り口

  • ハウプト広場から見上げるメルク修道院

    ハウプト広場から見上げるメルク修道院

  • メルクのクレムザー通り

    メルクのクレムザー通り

  • メルク川に架かるトラス橋

    メルク川に架かるトラス橋

  • メルク河畔から見上げるメルク修道院

    メルク河畔から見上げるメルク修道院

  • メルク川とドナウ川の合流地点

    メルク川とドナウ川の合流地点

  • ドナウ川ヴァッハウ渓谷の遊覧船の船着場

    ドナウ川ヴァッハウ渓谷の遊覧船の船着場

  • メルク旧市街の教会通り

    メルク旧市街の教会通り

  • メルク旧市街の街並み

    メルク旧市街の街並み

  • メルク旧市街のクレムザー通りからメルク修道院を眺める

    メルク旧市街のクレムザー通りからメルク修道院を眺める

  • メルク修道院へ登る狭い路地

    メルク修道院へ登る狭い路地

  • メルク修道院の入り口

    メルク修道院の入り口

  • メルク修道院のファサード

    メルク修道院のファサード

  • 修道院の天井画

    修道院の天井画

  • 修道院のファサードと噴水

    修道院のファサードと噴水

  • 修道院の階段の踊り場

    修道院の階段の踊り場

  • 修道院の内部

    修道院の内部

  • 修道院の回廊

    修道院の回廊

  • 修道院の内部

    修道院の内部

  • 修道院内部のキリスト像

    修道院内部のキリスト像

  • 修道院内部の展示

    修道院内部の展示

  • 修道院内部の展示

    修道院内部の展示

  • 修道院内部の宗教画

    修道院内部の宗教画

  • メルク修道院の模型

    メルク修道院の模型

  • 修道院内部の天井画

    修道院内部の天井画

  • メルク旧市街を見下ろす

    メルク旧市街を見下ろす

  • ヴァッハウ渓谷の眺め

    ヴァッハウ渓谷の眺め

  • 修道院付属教会内部の天井画

    修道院付属教会内部の天井画

  • 眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

    イチオシ

    眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

  • 眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

    眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

  • 眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会の天井

    眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会の天井

  • 修道院付属教会内部の聖壇

    修道院付属教会内部の聖壇

  • 眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

    眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

  • 修道院付属教会内部の宗教画

    修道院付属教会内部の宗教画

  • 眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

    眩いばかりの装飾が施された修道院付属教会内部

  • 宝飾を身にまとった骸骨

    宝飾を身にまとった骸骨

  • 螺旋階段を見上げる

    螺旋階段を見上げる

  • 修道院付属教会のファサード

    修道院付属教会のファサード

  • メルクの地区教会

    メルクの地区教会

  • メルク地区教会の内部

    メルク地区教会の内部

  • メルク地区教会の内部のステンドグラス

    メルク地区教会の内部のステンドグラス

  • ザンクト・ペルテン駅のファサード

    ザンクト・ペルテン駅のファサード

  • ザンクト・ペルテンのドーム教会

    ザンクト・ペルテンのドーム教会

  • ザンクト・ペルテンのドーム広場と市庁舎

    ザンクト・ペルテンのドーム広場と市庁舎

  • ドーム広場の塔

    ドーム広場の塔

  • ザンクト・ペルテンの街並み

    ザンクト・ペルテンの街並み

  • ウィーン西駅に到着したレールジェット

    ウィーン西駅に到着したレールジェット

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