2015/03/29 - 2015/03/30
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ちびのぱぱさん
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白老のポロトコタンで、アイヌの多彩な文化に触れることが出来ました。
アイヌは、もしかしたら新しいのかも知れない……と思います。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 自家用車
-
ポロト湖
目の前に静かに広がる湖の水面を眺めているうちに、アイヌの人々が和人の侵入に悩まされる前、気の置けない仲間と共に穏やかな夕餉のひとときを過ごしていた頃のことが思い遣られました。
苫小牧から室蘭への国道36号線は、太平洋沿いを駆け抜ける爽快なドライブコースになっています。
右に樽前山、ひだりに太平洋の青い波が押し寄せ、日本海とは違う明るさがありました。
別々川というおもしろい名前の川を渡ると、なだらかな牧草地をサラブレッドの親子が駆けているのが目にはいりました。
このあたりは社台といい、牧場としては社台ファームが有名です。
社台を過ぎ、36号線を離れて白老市街へと入ります。
程なく見える「ポロト湖」のサインに従ってハンドルを右に切り室蘭本線を横切ると、鏡のように静かな水を湛えた小さな湖が目にはいります。
この湖の畔につつましく佇んでいるのがポロトコタン。 -
ポロトコタン
コタンというのは、アイヌの人たちが暮らした集落のことを言うらしい。
子供の頃に、「コタンの口笛」という児童文学を読んだけれど、どんな話だったか……。
アイヌの人々は、どうしてこの湖の畔にコタンを編んだのだろうか。
あまりに静かで、魚の気配さえ感じない湖面を眺めながら考えました。
今ではすっかり市街地になっている道内各地の都市部とは、まるで無関係のように、北海道にはいくつかのコタンがあります。
コタンは、6〜7戸の家が集合したアイヌ特有の集落で、エカシ(長老)が治める共同体です。
ほんとうは、無数のコタンが大地を分け合うように存在していたのだと思います。
コタンにおいて生活に困窮する人は、それが何人いようがエカシが面倒を見たそうです。
そうか、強い者が弱い者の面倒を見るから、生活保護も年金も必要なかったんだなあ。 -
アイヌの住まい
アイヌ語で家のことをチセといいます。
屋根も壁も茅葺きです。
ポロトコタン内には全部で五棟のチセが並び、それぞれに呼び名が付いています。
手前の家
次の家
大きな家
奥の家
小さい家
こうして日本語の意味を見ていると、なんだか未開の素朴の人たちというイメージが醸し出されますが、本来言葉というのはそういうものなのだと思い至りました。
ひとたび名付けられた後は、いちいち意味を付したりしない。
サウンチセ
オトゥタヌチセ
ポロチセ
マクンチセ
ポンチセ
幾たびか口の中で唱えてみると、コタンの中にアイヌの生活が踊り出します。
コトダマというのでしょうか -
「チ」という音は、日本語でも韓国語でも家を指す言葉に入っています。
チセ
チベ
ウチ -
「イランカラプテ〜。」
サウンチセの前で、呼び込みをしている。
どうやら、民族舞踊ショーが始まるらしいです。 -
快適な茅葺きの家
むかし北海道開拓に携わっていた古老(和人)から聞いた話では、草葺きの家で暮らしていたと言います。
30年以上前に93才の方から聞いた話なので、ざっと100年程前の話なのですが、ブーフーウーみたいだな、と思ったものです。
でも、こうしてアイヌのチセを見るとかなりりっぱで、自分がかつてイメージしていたのとはかなり違いました。
中にはいると、いろりの火がチロチロとたかれている。
それだけでもかなり寒さをしのげる、十分な断熱効果を発揮しているように見受けました。
開拓農民が住んでいたのは、どんな家だったのだろうと思います。 -
いろりのけむり
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天井の無数の鮭
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鮭は、半年も掛けてとばを作るそうです。
「けっこうつらい作業なんです。」
1250本もの鮭をこのように処理するのも彼らの仕事のようで、このサケトバが施設を支える貴重な収入源でもある。
添加物は一切使用しないそうで、なかなかの評判らしい。
「脂、たれませんか。」
という変な質問にも、
「床を掃除しないといけないんですよ。」
と、気さくに答えてくださる。
「本当は、もっと煙を炊かないと行けないんですが、ここはショーがあるので、控えめにしています。」
そうなのか、少し煙いと思っていましたが、普段はこんなもんじゃないのか。 -
簡単な説明があって、いよいよ民族舞踊ショーが始まります。
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まずは、剣の舞。
四人の女性が歌い手となって、それにあわせて踊り始めます。
歌の響きは、女性たちが歌っていることもあり、至ってのどかです。 -
ささやくような歌に続いて、喉の奥から出す巻き舌の音。
子守歌です。 -
ムックリ
万感胸に迫るような、アイヌの悲劇的な歴史を語るような、そういう残響がチセを満たします。 -
トンコリという不思議に心安らぐ琴の音。
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アイヌの民族舞踊や音楽は、無形文化財に登録されています。
気がつくと、観客の半数以上を占めているのは、韓国からのツアー客。
ガイドによる通訳が随時行われ、この施設を支えているのは、もしかしたら外国人観光客ではないのかと、ふとそう思いました。 -
ショーのスタッフとの会話を終え再び表に出ると、すでに韓国人ツアーの一行の姿はなく、コタンの中はしんと静まりかえっています。
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ショーの行われていたサウンチセのすぐうらにあるオトゥタヌチセにも入ってみる。
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静かで人の気配がしなかったのですが、いろりの煙の向こうにどなたかが何かの作業をしていました。
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窓から日が差し込む場所で、織物(ござ)を織っているところでした。
ガマの葉を使っているのだそうです。
なめすのかなあ。
「ただ採集して乾燥させるだけですよ。」
だそうです。
それにしても、なんと根気の要る作業でしょう。 -
そういえば、白老というのは、イザベラ・バードが訪れた場所でしたね。
そう私が話しかけると、この方は少しだけ織物の手を休めて、
「その方、以前にもだれかがおっしゃっていましたが、何人ですか?」
たしか、イギリス人ではなかったか。
「小説家ですか?」
「いや、小説家でなくただの旅行好きのご婦人で、病気の療養のためといって、世界中旅していたみたいです。」
「ふ〜ん、いつごろ?」
「明治の初め頃ですね。東北や北海道にまで足を運んで、北海道では、アイヌの人にとても興味を持っていたみたいです。」
「なんて本でした?」
「え〜と、日本奥地紀行、じゃなかったかな。」
「へえ〜、こんど読んでみますわ。あっ!」 -
「間違えたかなあ」
といって、途中まで織った織物を見て首をかしげています。
「間違ったらどうされるんですか。」
「やりなおしね。」
そういって、愉快そうに笑われました。
私たちが話しかけたからかなあ。 -
私たちがしゅんとしているので気を遣っておっしゃいました。
「何でも聞いてください。」
そこで、目に入った物についてあれこれ質問させていただきました。
あの、男の人のつける鉢巻きのようなやつは、何で出来ているんですが。
ん?ああ、あれはシナの木の内皮です。 -
じゃあ、いろりの上のくるくるしているやつも?
え?あれはミズキです。下手な人がやってもああはなりません。上手な人がやると、くるくるとまかさるんです。
なるほど、綺麗にカールしています。 -
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そういいながらも手は休めない。
-
これ、鮭の皮ですよね。
ええ、堅いから、縫うのがとっても大変で。
しかし、煙いですよね。
煙いですか?私は慣れちゃったから。よく、身体に悪いよって言われるんだけど。
室内に入った瞬間から、たもの木の煙と干した鮭の香りが混ざった、どくとくの懐かしい香りが鼻を突いていました。 -
漆器や刀類は、和人から物々交換で得た物で、コタンの宝物として大切にされていたそうです。
大陸から入ってきた物には、中国の官服である蝦夷ニシキと呼ばれた着物も大切にされていたようです。 -
ユーカラ
ユーカラというのは、文字の無かったアイヌの口頭叙事詩。
人間は、文字がなければ、記憶の中にとどめようとします。
ただそのまま記憶するのは、あまりに無味乾燥ですから、いろいろと脚色されます。
文字とは違い、生きた人間の記憶から記憶へと、少しずつ成長しながら伝わってゆくのでしょう。
ときにそれは、幾晩にも及ぶ壮大なスケールの叙事詩となって語られるといいます。
文字がないことは、「新しい」のかも知れない、と思いました。 -
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カササギ
このあたり、いつの頃からか、カササギが生息するようになりました。
そう古い話ではないと言います。
それでも、カササギの羽の色が、先ほど見たアイヌの着物の色と重なって見え、まるで昔からここに住んでいるようです。 -
ポロトコタンには、博物館が併設されていて、アイヌにまつわる様々な物品やら貴重な映像、ジオラマなどが展示されています。
おりしも、神々の世界を物語にした「カムイユーカラ」のビデオが流されていました。 -
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流されていたビデオでは、俳優の宇梶剛士さんが語りかけていました。
「ぼくは日本人の国籍を持って日本で生活していますが、母親はアイヌ人です。」
そう前置きをして、日本におけるアイヌ民族のあれこれを語っておられました。
若い頃は、民族活動家であったお母さんといろいろ確執があったようにお聞きしていますが、穏やかな顔でアイヌについて語る宇梶さんから、とても深みのあるものを感じました。 -
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「おとうさん」の実の娘がいました。
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よく似ていると思います。
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入園料は800円ですが、JTBチケットで事前購入すると650円になります。
博物館、民族ショー込みの値段です。 -
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さて、今宵の宿はカルルス温泉です。
車で30分程も走るでしょうか。 -
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オロフレ荘に泊まるのは初めてです。
柔らかい音で注がれる湯の音が、アイヌの子守歌に聞こえてきました。
立ち上る湯気をぼうっとながめ、知っているアイヌ語を舌頭に転がしてみます。
シルエトコ、サトポロ、は地名、チャランケ、ウタリ……
カムイは神、カミ、カムイ……
言葉って、不思議だなあ。
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この旅行記へのコメント (2)
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- わんぱく大将さん 2015/05/06 09:30:07
- 同じ人間だのに
- ちびのぱぱさん
アイヌの話しは子供の頃から知っていました。実際北海道に行くと、特に阿寒に泊るとあの、なんとも言えない独特のぼよん〜ぼよ〜ん、が聞こえてきて。 アメリカにおけるインディアンのような存在? でも、同じ人間。
でも、なんかもっと本来人間がもっていた野生の本能をもってて、神様により近くにいる人達のようにも思えてきます。
大将
- ちびのぱぱさん からの返信 2015/05/07 17:32:12
- RE: 同じ人間だのに
- 大将さん
もうず〜っと行ってませんが、阿寒のコタンもけっこう強烈なイメージが残っていますです。
たぶん20年以上前だと思いますが、明らかに和人とは異なる人種であるのを感じました。
もっとも、大将さんがおっしゃっているように、人種上の特徴などは「人間」として見たときほとんど意味を持たないわけですが……。
知り合いには、どうみてもサモア人にしか見えない人がいますし。
ちびぱぱ
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