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志貴皇子は、私の好きな万葉歌人の一人である。<br /><br />その歌は繊細で、対象となるものを的確な表現で捉えている。<br /><br />天智天皇には、皇子が4人いるが、その末っ子である。生誕年ははっきりしないが、すぐ上の川嶋皇子が657年生まれであるので、658〜660年の間に生まれたと推測できるという。古代最大の争いである壬申の乱が673年であるので、大人の入り口にさしかかろうとした、多感な青春期に、人生を一変させる争いが起こり、結果として負け組みになってしまった。<br /><br />もう一つ、彼が鬱屈した感情を持っているとしたら、母親が女官だった、ということだろう。昔は、女官が皇子を産んだとしても、皇位継承など問題外だ、と軽んじられた。<br /><br />この二つの烙印をおされて彼は生きてゆかねばならなかった。<br /><br />志貴皇子は、控え目な人であった、というのが定説である。ここで考えないといけないのは、”控え目な人”と”控え目にならざるを得ない人”の違いだ。私は、志貴皇子は、後者で、燃えるような情熱を持ちながら、それを抑え、控え目に振舞っていた、と思う。<br /><br />巻8─1422<br /><br /> 石(いは)ばしる<br /> 垂水(たるみ)の上の<br /> さわらびの<br /> 萌え出づる<br /> 春になりに<br /> けるかも<br /><br />前半で、対象を的確に捉え、後半で気持ちを解き放ち、春の到来をのびやかに謳歌している。彼が人に見せまいとした心の高揚感が、思わず出てしまった1首だと思う。<br /><br />昨日、志貴皇子が眠る田原西陵に参拝しようと、近鉄奈良駅から新薬師寺、白毫寺(びゃくごうじ)を経由して、田原の里を目指した。<br /><br />近鉄奈良駅から白毫寺までを前編とし、それ以降を後編としてお伝えしようと思う。ちなみに、白毫寺は、志貴皇子の離宮を寺としたと伝えもあるくらい、志貴皇子と縁の深いお寺である。<br /><br />なお、近鉄奈良駅から白毫寺までは、近鉄の”てくてく まつぷ”北・山の辺の道コースを参考にした。

万葉ロマン 志貴皇子 前編

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2015/03/25 - 2015/03/25

1097位(同エリア5994件中)

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k.s

k.sさん

志貴皇子は、私の好きな万葉歌人の一人である。

その歌は繊細で、対象となるものを的確な表現で捉えている。

天智天皇には、皇子が4人いるが、その末っ子である。生誕年ははっきりしないが、すぐ上の川嶋皇子が657年生まれであるので、658〜660年の間に生まれたと推測できるという。古代最大の争いである壬申の乱が673年であるので、大人の入り口にさしかかろうとした、多感な青春期に、人生を一変させる争いが起こり、結果として負け組みになってしまった。

もう一つ、彼が鬱屈した感情を持っているとしたら、母親が女官だった、ということだろう。昔は、女官が皇子を産んだとしても、皇位継承など問題外だ、と軽んじられた。

この二つの烙印をおされて彼は生きてゆかねばならなかった。

志貴皇子は、控え目な人であった、というのが定説である。ここで考えないといけないのは、”控え目な人”と”控え目にならざるを得ない人”の違いだ。私は、志貴皇子は、後者で、燃えるような情熱を持ちながら、それを抑え、控え目に振舞っていた、と思う。

巻8─1422

 石(いは)ばしる
 垂水(たるみ)の上の
 さわらびの
 萌え出づる
 春になりに
 けるかも

前半で、対象を的確に捉え、後半で気持ちを解き放ち、春の到来をのびやかに謳歌している。彼が人に見せまいとした心の高揚感が、思わず出てしまった1首だと思う。

昨日、志貴皇子が眠る田原西陵に参拝しようと、近鉄奈良駅から新薬師寺、白毫寺(びゃくごうじ)を経由して、田原の里を目指した。

近鉄奈良駅から白毫寺までを前編とし、それ以降を後編としてお伝えしようと思う。ちなみに、白毫寺は、志貴皇子の離宮を寺としたと伝えもあるくらい、志貴皇子と縁の深いお寺である。

なお、近鉄奈良駅から白毫寺までは、近鉄の”てくてく まつぷ”北・山の辺の道コースを参考にした。

旅行の満足度
4.0
同行者
一人旅
交通手段
私鉄 徒歩
旅行の手配内容
個別手配
  • 東向商店街<br /><br />いつもの奈良散策のスタート地点。

    東向商店街

    いつもの奈良散策のスタート地点。

  • 興福寺 北円堂

    興福寺 北円堂

  • 興福寺 南円堂

    興福寺 南円堂

  • 興福寺 五重塔

    興福寺 五重塔

  • 興福寺 東金堂

    興福寺 東金堂

  • 奈良公園内<br /><br />五重塔と東金堂の間の道を春日大社の方に向かいまっすぐ歩いて行きます。

    奈良公園内

    五重塔と東金堂の間の道を春日大社の方に向かいまっすぐ歩いて行きます。

  • 奈良公園内<br /><br />右手に一の鳥居が見えます。

    奈良公園内

    右手に一の鳥居が見えます。

  • 奈良公園内<br /><br />左手に県庁。せっかくなので鹿も写真の中に入ってもらいました。

    奈良公園内

    左手に県庁。せっかくなので鹿も写真の中に入ってもらいました。

  • 奈良公園内<br /><br />茶店風景。

    奈良公園内

    茶店風景。

  • 奈良公園内<br /><br />奈良国立博物館 仏教美術資料研究センターです。建物と満開の梅に吸い寄せられ、写真を撮りました。

    奈良公園内

    奈良国立博物館 仏教美術資料研究センターです。建物と満開の梅に吸い寄せられ、写真を撮りました。

  • 奈良公園内<br /><br />春日大社の参道。

    奈良公園内

    春日大社の参道。

  • 春日大社神苑 萬葉植物園

    春日大社神苑 萬葉植物園

  • 奈良公園内<br /><br />春日大社の参道。

    奈良公園内

    春日大社の参道。

  • 奈良公園内<br /><br />二の鳥居が見えますが、その手前で、右手に折れ、新薬師寺を目指します。

    奈良公園内

    二の鳥居が見えますが、その手前で、右手に折れ、新薬師寺を目指します。

  • 春日山原始林

    春日山原始林

  • 春日山原始林

    春日山原始林

  • 春日山原始林内の案内板

    春日山原始林内の案内板

  • 春日山原始林<br /><br />今通っている道が、「かみのねぎみち」であるとのこと。

    春日山原始林

    今通っている道が、「かみのねぎみち」であるとのこと。

  • 高畑町<br /><br />原始林を出ると、視界が広がり、風景が一変します。正面の家の前に、道標があり、新薬師寺の方角を示しています。

    高畑町

    原始林を出ると、視界が広がり、風景が一変します。正面の家の前に、道標があり、新薬師寺の方角を示しています。

  • 高畑町<br /><br />この道を下って行きます。

    高畑町

    この道を下って行きます。

  • 高畑町<br /><br />いたる所に案内板や道標があるので、新薬師寺までは、目を瞑って歩いても辿りつけそうです。

    高畑町

    いたる所に案内板や道標があるので、新薬師寺までは、目を瞑って歩いても辿りつけそうです。

  • 新薬師寺<br /><br />十二神将は一見の価値あり。本日は先を急ぎます。

    新薬師寺

    十二神将は一見の価値あり。本日は先を急ぎます。

  • 新薬師寺から白毫寺への道

    新薬師寺から白毫寺への道

  • 白毫寺<br /><br />がっかりしました?壁が剥がれてみすぼらしいですが、侘び・さびの世界だと思ってください。<br /><br />椿や萩などの花の寺としても有名な古刹です。この寺から奈良市街が一望できますが、見事です。<br /><br />都会の喧騒から隔離された、ひっそりとした境内は心を和ませてくれます。

    白毫寺

    がっかりしました?壁が剥がれてみすぼらしいですが、侘び・さびの世界だと思ってください。

    椿や萩などの花の寺としても有名な古刹です。この寺から奈良市街が一望できますが、見事です。

    都会の喧騒から隔離された、ひっそりとした境内は心を和ませてくれます。

  • 白毫寺<br /><br />五色椿と本堂。椿は盛りが過ぎていたようです。

    白毫寺

    五色椿と本堂。椿は盛りが過ぎていたようです。

  • 白毫寺<br /><br />五色椿の説明板。

    白毫寺

    五色椿の説明板。

  • 白毫寺 本堂

    白毫寺 本堂

  • 白毫寺<br /><br />写真の右に見える塔は、興福寺の五重塔です。

    白毫寺

    写真の右に見える塔は、興福寺の五重塔です。

  • 白毫寺<br /><br />正面の山が生駒山。中央左にテレビ塔があり、テレビ塔の左手に唐招提寺が見えるとのことなのですが、分かりますか?

    白毫寺

    正面の山が生駒山。中央左にテレビ塔があり、テレビ塔の左手に唐招提寺が見えるとのことなのですが、分かりますか?

  • 白毫寺<br /><br />右手の山が矢田丘陵で、その奥、中央に見えている山が信貴山です。

    白毫寺

    右手の山が矢田丘陵で、その奥、中央に見えている山が信貴山です。

  • 白毫寺<br /><br />境内で黄色い花を咲かせている木を見つけたので、何だろうと近づくと、サンシュユとのこと。遠目からは、季節は違いますが、ロウバイによく似ているな、と思いました。

    白毫寺

    境内で黄色い花を咲かせている木を見つけたので、何だろうと近づくと、サンシュユとのこと。遠目からは、季節は違いますが、ロウバイによく似ているな、と思いました。

  • 白毫寺<br /><br />御影堂とサンシュユ。

    白毫寺

    御影堂とサンシュユ。

  • 白毫寺<br /><br />萩が株元から切られていますが、秋には見事な花を咲かせます。<br /><br />恐らく志貴皇子が愛でたであろう、眼下に広がった奈良市街の風景を眼に焼きつけ、白毫寺を後にし、彼が眠る田原西陵に向かいます。

    白毫寺

    萩が株元から切られていますが、秋には見事な花を咲かせます。

    恐らく志貴皇子が愛でたであろう、眼下に広がった奈良市街の風景を眼に焼きつけ、白毫寺を後にし、彼が眠る田原西陵に向かいます。

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この旅行記へのコメント (3)

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  • ふわっくまさん 2016/07/12 12:42:33
    万葉ロマン〜ステキですね〜☆
    k.sさん、こんにちは。
    古都・奈良の散策のご様子を、拝見させていただきました。
    わびさびを感じる白亳寺まで歩かれて、奈良市街地の展望が見事でしたね〜!
    奈良を訪れた際には、行ってみたいなぁと思いました。
                     ふわっくま

    k.s

    k.sさん からの返信 2016/07/12 17:19:25
    RE: 万葉ロマン〜ステキですね〜☆
    ふわっくまさんへ

    投票 有難う御座います。

    白亳寺は、奈良市街が一望できる、お勧めスポットです。”萩”の寺としても有名なので、秋に行かれたら、きっと気に入られると思います。

    私の万葉ロマンは、やっと半分程が終わったところです。元来出不精なので、テーマを決めなければ、おうちがいいと家に籠り切りですが、この8月には福岡の都府楼を訪ねる予定です。

    また、遊びに来て下さい。私もふわっくまさんの旅行記を読ませていただきます。

    k.sより



    > k.sさん、こんにちは。
    > 古都・奈良の散策のご様子を、拝見させていただきました。
    > わびさびを感じる白亳寺まで歩かれて、奈良市街地の展望が見事でしたね〜!
    > 奈良を訪れた際には、行ってみたいなぁと思いました。
    >                  ふわっくま

    ふわっくま

    ふわっくまさん からの返信 2016/07/13 07:54:27
    RE: RE: 万葉ロマン〜ステキですね〜☆
    k.sさん、おはようございます。
    秋の白亳寺〜是非、行ってみたいと思いました。
    k.sさんの万葉旅行記の続きと、8月に行かれるご旅行の様子も楽しみに拝見させて頂きます。
                  ふわっくま

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