満洲ヤマトホテル浪漫＝奉天（瀋陽）

2014/08/08 - 2014/08/09

戦前の最高級ホテルであった満鉄経営の「大和旅館」は大連・旅順・奉天（瀋陽）・新京（長春）・哈爾濱の５つ。
今回は旅順を除く４か所に泊まるはずだったが、新京のみ共産党婦人部のイベントが入りキャンセルを食らった。
それ以外の３か所はかつての栄光の残滓をとどめ、快適な泊り心地だった。
外資系のホテルが軒並み２万円以上であるのに対し、ヤマトホテルの宿泊料は数千円。
充分に価値のある滞在だった。

エリア 瀋陽(中国)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.5
• グルメ: 4.0

• 同行者: 友人
• 交通手段: 観光バス
• 旅行の手配内容: ツアー（添乗員同行あり）

満洲の大きな夕日を見たかった。
新幹線の車窓から見られれば良かったのだが、列車の時間はだいたい4時台から5時台。
今の季節日没は8時ごろだから、夕日には早すぎる。
車窓には広大な満洲の大地が広がり、トウモロコシや高粱が植わっている。

瀋陽西駅に到着し、直ちに夕食へ。
今日は小背簍菌類文化健康餐庁。
平たく言えばキノコ鍋の店。

マツタケこそないけれど、いろんな種類のキノコが並ぶ。

肉は牛肉、豚肉、羊肉をしゃぶしゃぶ風に。

出汁はキノコから抽出したイノシン酸たっぷりのシープ。
食べやすくて非常においしかった。

ホテルは遼寧賓館。

リャオニン ホテル ホテル

ここのヤマトホテルは入口の正面は、2階への階段ではなく、レストランや宴会場への通路となっている。

リャオニン ホテル ホテル

入った右手にちょっとしたラウンジがある。
秩父宮がいらした時に増設したスペースとか。

リャオニン ホテル ホテル

2階のエレベータホール。

リャオニン ホテル ホテル

部屋はヤマトホテルらしく、天井が高く落ち着いたスペース。
電源が少ないので、ＩＴ機器はたこ足で充電する必要がある。

リャオニン ホテル ホテル

水回りも一応揃っている。
シャワーの水圧や湯温は哈爾濱の部屋の方がよかったかな。

リャオニン ホテル ホテル

ベッドも特に不満無し。

リャオニン ホテル ホテル

翌朝、中山広場から見た遼寧賓館。
ヤマトホテルはどれも、入り口が回転ドアになっており、近代式のホテルと異なり閉鎖的な印象がある。
また外観は無原則な看板の配置などで、ごみごみした印象。
とても高級ホテルには見えない。
しかし、一歩中に入ると大理石の床や高い天井落ち着いたインテリアで、格式を感じさせる。
もう少し、外観を何とかできないものか。

中国工商銀行は、旧横浜正金銀行奉天支店。

瀋陽市公安局は、旧奉天警務署。

そして中山広場の中央には大きな毛沢東像。
各地の毛沢東像はいずれも北京の方を向いているという。

遼寧賓館のロビーにはここを訪れた著名人の名前が刻まれている。
日本人の欄には秩父宮を筆頭に、本庄繁関東軍司令官、芳澤謙吉外務大臣、武藤信義関東軍司令官などの名前が。

リャオニン ホテル ホテル

今回同行したＦさんは旧奉天の生れ。
１歳で葫蘆島から佐世保に引き上げてきたという。
この度の旅行の目的の一つが、Ｆさんの旧居さがし。
佐世保での上陸証明書によると奉天市大和区青葉町81号だったらしい。

事前に東京で戦前の奉天の地図を入手し、だいたいの目処はつけていた。
現地に行ってみると周辺は、大規模マンションの建築が進んでいる。
遅かったかと心配しながら歩いてみると、幸いにも開発地区から外れ、それらしい場所を発見。

店に事情を話し、中に入れてもらう。
確かにここだ、今は配線器具を商う店になっていた。

旧居の正面はかつての奉天第二中学。安部公房の通った中学だ。
今は人民解放軍の施設なっており、写真を撮ることができない。
付近を回ってみると旧日本人の住宅がいくつも残っている。

懐かしい風情の街並みを歩いていると、まだ新しい幼児の靴が落ちており、近くにいた人に声をかけたことが契機で会話が生まれた。

やがて地元の人が次々に集まってきて、Ｆさんがこの近くの生まれだということで、思わぬ交流が広がっていった。

昔の日本人が立てたアパートの中を見てみるかということで、
そのうちの一軒をのぞかせてもらう。

老朽化した建物は来年には取り壊されるという。

家を見せてくれた地元の人たちと。

Ｆさんは感極まって涙滂沱。

期せずして瀋陽の庶民の親切さに触れることができた。

大目的の一つを果たした。
清王朝の成立にかかわる瀋陽故宮は時間の都合でカット。
郊外にある満州事変勃発の地、柳条溝へ。

九一八事変博物館 博物館・美術館・ギャラリー

江沢民が作った九一八事変博物館がある。
関東軍の悪業の数々が展示されている。
価値ある遺物はほとんど展示されておらず、新聞や写真でストーリーを構成している。
博物館のキューレーターが構成したというより、イベント屋とか広告屋がプロデュースしたプロパガンダ施設の印象。
しかし、見学の団体でいっぱいである。
反日教育の拠点として効果をあげていることが見て取れる。

九一八事変博物館 博物館・美術館・ギャラリー

帰り道に寄ったのが、ヤマダ電機瀋陽店の前にあるラーメン屋。

おつまみでビールを飲んで、

醤油ラーメン。
完全に日本式のラーメンだった。

奉天軍閥の梟雄、張作霖の旧居。

入り口前には張学良の銅像が。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

ひとつ間違えれば中国で新しい王朝を開いてもおかしくなかった張作霖は、日本の謀略で鉄道を爆破され、ここに運ばれて絶命した。

ここも多くの観光客が訪れている。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

なんだろう。
張作霖の部屋にはお賽銭が散らばっている。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

ベッドにもお賽銭。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

張作霖もさることながら、息子の張学良も人気がある。
西安事件で蒋介石暗殺に失敗した張学良は1937年国民党政府に逮捕され、そのまま台湾に連行され50年以上軟禁された後ハワイに移り、2001年に100歳で永眠している。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

張学良将軍晩年遺物展には、電子体温計や髭剃りが展示されていた。
どうも、中国の博物館や展示館は、ろくでもない展示品を並べすぎる。
文化的成熟とか、厳密な資料の検討が求められているのではないだろうか。

張氏帥府博物館 博物館・美術館・ギャラリー

新幹線までまだ間があるということで、その張作霖が襲われたいわゆる満州某重大事件の現場皇姑屯へ。
ふたつの線路が立体交差しており、上の線路を爆破して、下を走っていた張作霖の列車に命中したということである。

16:24の新幹線で瀋陽駅から最後の目的地大連へ。