2011/05/13 - 2011/05/21
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ねんきん老人さん
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徳島県阿波市に、土柱という奇観が見られる所があります。
何かでそのことを知って行ってみると、聞きしに勝る景観でいたく感激しました。それが忘れられず、8年を経て再訪したのが今回の記事です。
前回は路肩の草むらに車を停め、秘境に分け入るような昂揚感を覚えながら歩いて行ったものですが、今回は立派な駐車場があり、土柱公園という広場までありました。 なんだか観光地で 「いらっしゃいませ」 と迎えられているような俗っぽさを感じてしまったのは、よそ者の身勝手な感想でしょうか。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
【 土柱を見下ろす 】
駐車場からは遊歩道で崖の上まで行けます。
前回は写真の中央奥に見える斜面を腹這うようにしてよじ登ったので、隔世の感があります。
そんな所を登れば、当然足元の土が崩れるので危険でもあり、景観破壊にもつながりますから、遊歩道を作ったのは良いことです。
それは分かるのですが、やはり俗っぽくなったというか、安っぽくなったというか、ちょっと興醒めではあります。 -
【 崖の全貌 】
崖の前に出るには、やはり遊歩道があります。その途中で波濤嶽と名付けられた崖の全貌が望めます。
さて、土柱とは何か、受け売りを書きます。
130万年前の氷河時代に堆積した段丘状の砂礫層が長年の風雨によって浸食され、硬い層だけが縦に残って、あたかも巨大な柱が立ち並んでいるかのような景観を作り出しているもの、だそうです。
写真の崖は高さ10m、幅約90mということですが、かなり迫力があります。ただ、風化が進んでいるのか、柱が並んでいるようには見えず、襞のある崖という感じです。 -
【 土柱とは 】
前の欄に書いた受け売りは、自分で読んでも雑駁でよく判らないので、展望台にあった説明板をそのまま載せます。
余計なことですが、あちこちで自然景観をライトアップしているのを見て、いいと思ったことは一度もありません。
自然は自然のままの方がいいと思いますが、それでは夜は見えないというなら、せめて7色などにはせず、淡い単色にしてほしいものです。 -
【 正面から見た崖 】
いかにも脆そうな土の壁です。 現に前回はこの下に行って触ってみましたが、強くこするとぼろぼろと崩れました。
今はかなり手前にロープが張ってあり、立ち入り禁止になっています。前回にはなかった立派な展望台もできています。
神秘さは失われていますが、私のような不心得者から貴重な形状を守るためには、仕方がないのかも知れません。 -
【 正面から見た崖 】
もう少しズームアップしてみると、部分的に柱に見える場所もあります。まさに土柱です。
このような地形は、世界でもイタリアのチロル地方とアメリカのロッキー山脈、そしてここ阿波にしかないそうで、ここのものは国の天然記念物に指定されているそうです。 -
【 脆い崖 】
ロープが弛んでいる場所があったので、跨いで少しだけ中に入りました。(この部分は内緒です!)
誰かに見られるのではないかとビクビクしながら近づいてみると、崖が軟弱な土でできていることがよく分かります。 私のようによじ登ったりする者がいなくても、そう遠くない将来に消滅するだろうと思われます。
あの山下清さんが描いた「土柱の絵」はこの旅行のあとに見ましたが、その絵を見てまた行きたくなりました。
そのときまで崩れずにいてほしいものです。 でもそのために保護が進んで遊園地のように柵だらけになってしまうのも残念ですし、自然景観の保全のむずかしさを考えてしまいます。 -
【 正面から見た波濤嶽 】
すばらしい景観です。
ただ、これを「日本のグランドキャニオン」として宣伝しているのはいただけません。
規模も形状もグランドキャニオンとは似ても似つかぬものです。 土柱は土柱それ自体で大変すばらしいもので、だからこそ私も再訪したのですが、どうしてそれに他国の観光地の名前をつけるのでしょう?
木曽川にも「日本ライン」などという呼称がつけられていますが、どうして日本の川にドイツの川の名前をつけるのでしょう?
阿波の土柱や木曽川は、世界に誇れる日本の自然だと思います。なにも外国の有名な自然にあやかってヘンテコリンな名前をつけなくたっていいではありませんか。
そういう卑屈なやり方の裏には、ライン川の方が木曽川よりすばらしい、グランドキャニオンの方が土柱よりすばらしい、という思い込みがあります。そうでなければ名前を借りる必要はないわけですから。
なんとも情けない話です。 表題に 「なんじゃらほい?」 とつけたのは、自分たちの貴重な自然を他国の観光地の名を借りて宣伝しようという姑息な発想にいらだってのことです。
グランドキャニオンを「アメリカの阿波」と言うアメリカ人がいますか? ライン川を「ドイツの木曽川」と言うドイツ人がいますか?
そんな人がいないのは、グランドキャニオンはグランドキャニオンと言うだけで十分だし、ライン川はライン川というだけで十分だからです。 -
【 野口雨情歌碑 】
土柱を遠望できる場所に野口雨情の歌碑が建っています。
書家の字というのは、どうも読めません。
「 阿波の名所の波濤嶽は土のはしらのあるところ 雨情 」
と書いてあるのだそうですが、そう言われても、やっぱり読めません。
さてこの土柱から歩いて5分ほどの所に、「土柱ランド新温泉」という宿と銭湯を兼ねたような施設があります。
雰囲気は銭湯そのもので、脱衣所に「放射能泉・ラドン温泉」とあり、効能を書いた紙が貼ってありました。
え? そうですよ、ラドン温泉です。 施設の名前はランド温泉ですよ。
もう一度。 ラドンとランドです。お間違えなく。 -
【 吉野川 】
さて、そんな土柱を再訪して、大きな満足感とちょっぴり残念な気分を味わったのですが、これは同じ所に2度行くとたいてい味わう気分で、しかたがありません。
残念というのは、自分の記憶とのズレからくる勝手な感想で、古い物や自然は観光客が増えれば必然的に手が加えられますから、自分がその観光客の一人であることを考えると、文句を言えた筋合いではありません。
その土柱から車で数分のところを吉野川が流れています。
坂東太郎(利根川)、筑紫次郎(筑後川)と並んで四国三郎と呼ばれる暴れ川ですが、この日は穏やかな川面を白鷺がかすめ、のどかな雰囲気でした。
沈下橋がかかっているところを見ると、増水時には激しい流れが四国三郎らしい顔を見せるのでしょうか。 -
【 釣り人 】
こういう雰囲気はいいですね。船外機のついていない木造の舟というのは久しぶりに見ました。 -
【 脇町 】
その吉野川に接して脇町があります。今は合併して美馬市となっていますが、前回行ったときはまだ脇町でした。 江戸から明治にかけて藍を扱う商人の町として栄えた所で、そのころの町並みをよく残しており、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
脇町というのは脇城の城下町であり、全国的にも少なくなった 「町」 でもありましたので、そのまま残してほしかったというのが、よそ者である私の勝手な言い分です。 -
【 うだつ 】
通りを歩いてまず目につくのは各戸2階の両端に突き出た卯建(うだつ)です。
卯建は各地で見られますが、ここ脇町がとくに「うだつの町並み」として知られているのは、その卯建の重厚さによるものではないでしょうか。
卯建の本来の用途は防火ですが、脇町の卯建は突出の奥行があまりなく、防火という意味では不十分なように見えます。確かな記憶ではありませんが、長野県の海野宿で見られる卯建は奥行も高さも十分で、実用的だったように思いますが。
それでも、ここの卯建にはやはり見とれてしまいます。 -
【 卯建の装飾瓦 】
卯建にはそれぞれ装飾瓦が載っていますが、中にはこんな瓦も。 鬼瓦ならぬ虎瓦です。 -
【 競い合う卯建 】
裕福な商家が自分の財力を誇示するために、立派な卯建を上げるようになると、防火という本来の目的は二の次になって装飾性に重きが置かれるようになったということですが、こうして並んでいるのを見ると、なるほどと合点がいきます。
この写真右手前の家は森家という醸造業者のものだそうで、明治時代には郵便局、大正から昭和にかけては医院だったとか。やはり名家なのですね。 -
【 競い合う卯建 】
こちらも見事な卯建が並んでいます。
私のように 「うだつの上がらない人生」 を歩んでいる者には無縁のものですが、当時の人たちの満足感が伝わってくるようで、見ていて飽きません。 -
【 虫籠窓 】
漆喰で塗り固められた格子窓が虫かごのように見えるところから「虫籠窓(むしこまど)」と呼ばれているもので、採光や通風を考えてのものと思われます。 また火事の際に火が外から屋内に入るのを防ぐという効果もあるそうで、卯建とともに木造家屋が隣接している町屋の工夫だと思います。
とはいえ、関東や山陰、九州では見られないということですから、実用性だけではない流行のようなものもあるのかも知れません。 -
【 卯建のない家 】
手前の2軒には卯建がありません。
それでも虫籠窓のついた漆喰壁の2階はなかなか立派で、それなりの財力はあったのではないでしょうか。
2階と書きましたが、それにしてはあまり高さがないことに気づきます。
実は2階といっても本当の2階ではなく、2階建てが禁止されていた江戸時代に商家が物置として使っていた屋根裏部屋がだんだん立派になっていったものだそうです。 -
【 自動販売機の無い通り 】
自販機が悪いとは思いませんし、私もよく利用していますが、それが無い通りというのはまた気持ちの良いものです。
こういう勝手なことを言うのは、自分が観光客だからで、そこに住んでいる方にしてみれば不便に耐えて町並みの景観を守っているということなのですね。 -
【 こんにゃく屋さんの前で休憩中のお二人 】
おっと! これは失礼いたしました。
ご夫婦とお見受けしましたが、どちらからお出ででしょうか。 いえいえ、お隠しになってもそのお姿、ご旅行中に違いありません。 仲がおよろしくて結構でございますね。 私なんど、一人旅でございまして。 寂しいもんでございますよ、ハイ。
女房ですか? さて今頃は家に友達を呼んで、亭主の悪口で盛り上がっていることでございましょう。 -
【 喫茶店 】
こちらは喫茶店のようです。
店の前に出されたメニュー板には 「自家製ケーキ」 「極深焙煎コーヒーゼリー」 「紅茶ゼリー・アイスクリーム添」 「チーズケーキ・アイスクリーム添」 「ピザ」 の文字が見えます。
格子の隙間から葉蘭が出ているのが、なんとも洒落た雰囲気を作っています。
一人で入っても落ち着かないので、入りませんでしたが、連れがいれば楽しい時間が過ごせそうです。 -
【 共同井戸 】
1823年に作られた共同井戸だそうです。設備のほとんどは作り変えられているようですが、井戸本体はそのまま残っているのだと思います。
滑車を使ったつるべ式で、私も子供のころに見たことがあります。 -
【 酒屋さん 】
蔵造りの酒屋さんです。 たばこも扱っていますし、郵便業務もやっています。切手・はがき・印紙の販売、小包の受け付けです。昔はそういう店がどこにもありましたね。
変わっているのは店先に置かれたポストです。黒くて四角い箱に「書状集箱」と書かれています。説明板があって、明治4年の郵便制度創始時に使われていたものを再現したそうで、現在もちゃんとポストとして機能しています。 -
【 オデオン座 】
おっと! これは見覚えがありますね。
山田洋次監督の映画 『虹をつかむ男』 の舞台になった劇場で、映画でもこのままの外観で使われていました。
前回来たときには既に映画を見ていた筈ですが、私の頭の中で脇町とこの映画館が結びついておらず、見落としました。 今回脇町を再訪した理由の一つに、ここを見たいという気持ちがあります。
期待にはやる足をことさらゆっくりと進め、目の前にこの劇場が現れたときは感激しました。昔ながらの券売窓口、その横に西田敏行さんや田中邦衛さんが立っていたら、まさに映画の1シーンです。
というわけで、太古の昔に自然の力によって作られた土柱、江戸時代の商人によって作られた卯建の町並み、昭和から平成にかけて人々に娯楽を提供したオデオン座と、見応えのある場所を回って充実した一日でした。
最後にもう一度言わせてください。
阿波の土柱は 「日本のグランドキャニオン」 ではありません。「阿波の土柱」という名前だけで世界に誇れる日本の財産です。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- KoKKoさん 2016/11/28 20:24:36
- ご訪問ありがとうございます。
- ニュージーランドも行きたいと思いつつ、チャンスのありません。
拝見したしました。
そして、徳島の土柱!
ここの記録を拝見したのは、初めてのような気がします。
小学校か、中学の遠足で行ったところですが
そのころ、全く、何の感激もせず、岩ばっかりぐらいの感想だったかと思います。
今、行けば、違う感想を持つだろうな・・と
改めて、違う目で拝見しました。
ありがとうございます。
- ねんきん老人さん からの返信 2016/11/29 11:03:51
- 書き込み、ありがとうございました。
- KoKKoさん、お早うございます。
わざわざの書き込み、ありがとうございました。
徳島の土柱については、なかなかの奇観だと思い、二度行きました。ですから、魅力のある場所だとは思うのですが、それを他国の有名観光地であるグランドキャニオンの名を借りて宣伝しているところが気に入りません。
どうして自らの魅力を語るのに他国の人気にあやかろうとするのでしょうか。
「東洋のナイアガラ」とか「日本のライン」とかいうのは、原尻の滝よりナイアガラの滝の方がすごいとか、木曽川よりライン川の方がきれいだとかいうコンプレックスが根底にあってのことですね。
そもそも自然の魅力というのは優劣を競うべきものではなく、原尻の滝には原尻の滝の魅力が、木曽川には木曽川の魅力があるのですから、それでいいと思うのです。
他国の有名地の名を借りるのは、そうでもしないと観光客を惹きつけられないという誇りのなさが元になっているわけで、常々、なんとかならないものかと思っているものですから、つい、旅行記にそういうことを書いてしまいます。
というわけで、私の旅行記は我ながら理屈っぽいものになっているのですが、それでも読んでくださる方がいらっしゃると、とても嬉しいし、励みになります。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
ねんきん老人
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