2012/09/01 - 2012/09/05
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Takashiさん
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アルタミラ、ラスコーで代表されるクロマニョン人の洞窟壁画は主に15000年ほど前、あるものはそれ以上前に描かれたとされている。そんなに古いにもかかわらず、絵のセンスは現代的ですらある。
残念なことにアルタミラもラスコーも多くの観客が押し寄せたため絵が損傷を受け、非公開となった。今ではコピーを見ることになる。しかし、わずかではあるが本物を見ることができる。そこで、フランスのサルラを拠点としてクロマニョンの洞窟巡りを試みた。受けた感激は期待以上で、古代遺跡の中ではエジプトに次ぐ感動を受けた。
クロマニョンの洞窟巡りはあらかじめ予約しなければならない所があるなど、困難な点も多い。それで現地の英語ツアーに参加することにした。ほぼ2年前の経験であるが、投稿時点(2014年)の情報を加えて、興味のある方に参考になる旅行記であるように努めた。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 観光バス
- 航空会社
- KLMオランダ航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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2012年の夏は、ヨーロッパを拠点として、さらにルワンダに足を延ばす旅を計画していた。旅の後半にフランスの西部、大西洋岸にあるボルドーでワイン園を訪ねる予定だ。ガイドブックをパラパラ見ていて、ボルドーとドルドーニュ地方(ペリゴール地方)のヴェゼール渓谷は大きく離れていないことに気が付いた。
ヴェゼール渓谷は写真のような美しい景色で知られている。そしてクロマニョン人の洞窟壁画が多く残されている地帯でもある。ずっと心に残っていたクロマニョンの洞窟巡りをこの際実行しようと決心した。
現在の人類、ホモサピエンスがアフリカに誕生して20万年ほどになる。ホモサピエンスは大移動して世界に散らばった。ヨーロッパに入ったホモサピエンスはクロマニョン人とよばれている。このクロマニョン人は今から15000年あるいはさらに前にヴェゼール渓谷を中心とするフランス南西部とスペインに見事な洞窟壁画を残している。人類文化のごく初期の傑作だ。 -
クロマニョンの洞窟巡りの拠点としたのはサルラ(Sarlat)。古い町並みが美しいことでも知られている。フォアグラとトリュフの産地が近く、グルメの町でもある。
私たちの旅程にはサルラがぴったりだが、レゼジー(Les Eyzies) やモンティニャック(Montignac)を拠点とすることもできる。 -
9月1日。午前中にワインツアーを終えて、午後の列車に飛び乗って、ボルドーから東に位置するサルラに向かった。鉄路168kmであるが、ローカル線でゆっくり進み、2時間以上かかって終点のサルラについた。車窓からの景色は良くドルドーニュ川を何度も横切った。
なお、パリから直接サルラに向かうときは、Toulouse線のSouillacで下車し、時間によってはバス(40分ほど)、あるいはタクシー(予約が必要かどうかは不明)という手もある。
宿は写真に示すマドレーヌ・ホテル (Hotel de la Madeleine)。ロンリープッラネットの情報によった。この地域についてロンプラの情報は詳しい。期待通り、ホテルは清潔、機能的で快適であった。
駅からホテルまでは徒歩20分かかり、トランクを引っ張ってでは大変だ。タクシーがつかまりにくいので、携帯から電話して、ホテルにタクシー手配をお願いしたら10分ほどで来た。本当はあらかじめ連絡しておいた方が良いそうだ。 -
9月2日。歩いて数分のバス停まで行き、ヴェゼール渓谷遺跡巡りの1日ツアーに参加した。Ophorusという会社が運営している。ネットで調べて直接メールで予約してあった。2014年の時点では、日本の会社もこのツアーを仲介するようだ。ラスコーII で検索してツアーを探すとこれが出てくる。
やってきたのは、ベンツのバン。参加者数人の、英語、少人数ツアーである。ガイドは分かりやすい、きれいな英語を話す。
10数キロ走ってレゼジーについた。崖沿いに国立先史博物館が建っている。屋上にはクロマニョン人らしい像。 -
この博物館は近隣での発掘物を中心に展示している。旧石器時代の展示物は目を見張るものだ。
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美しく磨かれた石器。
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槍を遠く飛ばす道具。
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背中をなめている野牛。ほぼ15000年前に彫られた。
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昼食後、また10数キロ走って、モンティニャックの村近くのラスコーIIへ行った。これが今日の目玉である。ラスコーの洞窟壁画はほぼ17000年前のもので、躍動する多様な動物が多色で描かれている。
ラスコーの壁画は1940年に発見されて、じきに公開されたが、損傷が激しくなり公開中止に追い込まれた。代わりに近くに作られたレプリカがラスコーIIである。とても丁寧な制作で、本物と変わらないとされている。また2016年から、より優れたレプリカであるラスコー4が公開されている。
さて、到着してしばらく外で待った。順番が来て40-50人の人たちが呼び集められた。英語ツアーの始まりである。 -
洞窟の中は撮影禁止。自分の写真だけで説明しようとすると難しい。外の看板を撮ったので、そこの絵でご想像頂きたい。なおネットでラスコーII、あるいはLascaux IIで検索すると様々な絵が出てくる。
洞窟に入る時、小部屋で説明があった。この時、どこから小部屋を出るか、出口の見当をつけ、その近くにいた。予想は当たり、先頭に立って、ゆっくりと見ていくことができた。そうでなければ最後尾で見返るのがよいとされている。
2頭の野牛から始まり、実に多様な絵が現れた。大きな牛は数メートルある。野牛が跳躍し、黄褐色の美しい馬が駆け足だ。あらかじめネットで見ていたモチーフはほぼ全部見たと思う。天井、側面と全空間が絵に覆われている感動は、平面の絵をみるのとは全く違う。複製の違和感は少しもなかった。私は、素晴らしいと心の中で叫びながらゆっくりと歩いて行った。
なお近くにLe Thotという所があり、そこでは一部の複製の絵をじっくり見られるという。車で回る、興味のある人にはお勧めかもしれない。 -
一度レゼジーに戻り、さらに数キロ走ってルフィニャック(Rouffignac)の洞窟に着いた。
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洞窟に入ってトロッコ電車に乗る。また撮影禁止。トロッコで進みながら壁面の黒い線画を見るのである。ここは本物。運転手がフランス語で熱を込めて説明してくれた。同乗した私たちのガイドが小声で英語説明してくれたので様子は分かった。
ここのメインモチーフはマンモスである。最後の大広間の天井は見ものであった。マンモスの毛深い様子も表現されていたし、大きな牙ばかりか、しっぽもちゃんと描いていた。Rouffignacで検索するとマンモスの絵が出てくる。
この後サルラに戻り、解散となった。素晴らしい1日だった。 -
9月3日。今日もOphorusのツアー。但し乗合ではなくプライベイト・ツアーという特別版で、私たち2人だけのものである。今日の主目的地はフォンドゴーム(Font de Gaume)で、予約がとりにくいので、乗合ツアーには適さないのである。
フォンドゴームはクロマニョンの傑作な絵の中で例外的に公開されていて、人気が高い。そして1日に参観できる人数も次第に減っている。また、私たちが訪問した2012年には予約が可能であったが、2013年には予約が不可能になり、行列した人たちのみ入れ、このプライベート・ツアーもなくなったようだ。2014年になるとわずかの数の予約が可能になった。(フォンドゴームのホームページに入るとフランス語のページにはそう書いてある。Eメールで可能なようである。)
このツアーはフォンドゴームの他に、ラスコーII、国立先史博物館に行くのが基本である。たしかにこれで見所を押さえられ、前日のツアーは不要となるので、通常ならこれで十分だろう。私たちの場合、2011年のプログラムは異なっていて、他に興味のあるところにも行くので、どうせならと古いプランで実施してもらった。ガイドは「専門家ですか」と不思議そうだった。
プライベート・ツアーだから車がホテルまで迎えに来た。ガイドと車は昨日と同じ。
向かった先はレゼジー。早めに着いたので、写真に示すクロマニョンの岩陰を見に行った。クロマニョン人の骨がここで発掘された。クロマニョンとはもともと、ここの地名である。 -
そしてフォンドゴームだ。入場時間の少し前には全員が嬉しそうに集まった。12人の英語ツアーのメンバーである。早めに予約したり(私たちは10月前)朝早くから行列したりしてプラチナチケットを手に入れた人たちだ。当時の1日の入場者数は96名(現在は80名)。
説明の後、洞窟の入り口に案内された。穴が2つ開いているが、入り口は右側。左手の洞窟にカメラをはじめ手荷物は預けてしまう。洞窟内では長い狭い通路を行くからだ。 -
洞窟に入ると、まず2頭の野牛。壁の凹凸を巧みに利用して立体感を出している。トナカイなどの線画を眺めて進んでいくと目的の5頭の野牛が現れる。
上段、左から2番目の野牛がことに素晴らしい。ガイドは絵に光を当てる時間を惜しんでいた。当然だ。いつ公開禁止になっても不思議でない代物だ。私たちは目を見開いて絵を眺めていた。15000年の時を経たはずである。
この写真は看板を写したものである。 -
レゼジーのレストランで昼食。くつろいだ。
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午後、まずコンバレルの洞窟を訪れた。ここの絵は色を失った線画であるがライオンの横顔がリアルであった。
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最後にカップブラン (Cap Blanc)。入り口は貧弱だ。
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中に入ると張り出した岩棚の下に5頭のウマが浮彫されている。ウマの大きさは2メートルほどあるだろう。ウマの体の充実感が巧みに表現されている。足の多くは崩落しているが仕方がない。15000年ほどの時を経たはずだ。私たちは、ウマの脇でゆっくり時を過ごすことができた。
ロンリープラネットのお勧めはラスコー、フォンドゴーム、ペシュメルル、国立先史博物館に加えてカップブランであった。どうせなら全部見てみようと、こだわったのだが、その値打ちのある場所だった。
ここも撮影禁止。付属の博物館に制作当時の想像図があったので載せておく。 -
9月4日。Ophorusによる最後のツアー。今度は乗合であるが、参加者は私たちだけで、プライベイト・ツアーと同じになった。南東へ100kmくらい走って、着いたのはペシュメルル(Pesh Merle)の洞窟。
しばらく待つと英語のツアーが始まった。写真に示す入り口から地下へ降りていく。 -
赤っぽい石灰岩でできた巨大な鍾乳洞が広がっていた。私たちは洞窟の中を進んでいった。英語の説明は分かりやすい。ガイドも同行してくれたし、日本語による説明文まで借りられたので至れり尽くせりだ。しばらくして鍾乳石の向こうにウマの絵が見えてきた。黒を主体としているが赤も使われている。神秘的だ。
歩いてウマの絵に接近した。1つのウマの顔はウマの顔の形をした岩の上に描かれている。この絵は25000年前に描かれたとされている。私たちは絵の前でゆっくりして感慨に浸ることができた。
撮影禁止なので付属の博物館にあった説明用の絵の写真を載せる。
なお2023年に、ホームページを見ると29000年前と、より古くなっていた。オンラインでチケットが買える(https://booking.pechmerle.com/)ので、お勧めの場所だ。 -
続いてサンシルラポピーへ。川沿いの崖の上に美しい村が広がっていた。
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ややアングルを変えて。
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下に見える川もきれいだ。
この村で昼食を摂った。 -
帰り道、CahorsのValentre橋へ立ち寄った。中世に作られた城塞風の橋である。
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それまでもそうだが、帰ってからサルラを散策した。今日は特に時間をかけた。お土産を買うためだ。やはりフォアグラの缶詰に落ち着いた。
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そして夕食。3日間、郷土料理のレストランを食べ歩いた。いずれも満足できるレベルであったが、今日のRossignolが最高であった。夫婦で切り盛りしている小さな店で席数が少ない。フランス語しか通じないので、店に出かけて片言でなんとか予約することに成功したのだった。実際、当日は次々に客が飛び込んできては断られていた。
オードブルは厚切りのフォアグラ。メインはカモの足を選択した。皮がこんがり焼け中はジューシーだった。さらにチーズ、デザート、赤ワイン、ペリエ。これで一人36ユーロ。円高だったので目を疑った。チップを多めに置いた。
9月5日。早朝の列車でボルドーへ帰り、乗り換えてパリについた。パリのホテルにはルワンダでのゴリラトレッキングなどのための不要な装備を預けていた。
9月6日パリ発。帰国の途に就いた。 -
さて、ラスコーと並んで有名なアルタミラが残ってしまった。スペインにあるこの洞窟も一般公開されていない。しかし、そのコピーは現地だけでなく、マドリッド、ミュンヘンそして三重県の志摩スペイン村にもある。国内のものも立派な作品だというので、お伊勢参りの時に立ち寄った。2013年12月だ。
何頭かの野牛が天井に描かれていた。全く混み合っていない。ソファーがあって、ゆったりと座って眺めることもできた。遠くから関係ない音楽が聞こえてきたり、照明がいまいちだとか文句をつけることはできるが、このゆとりの贅沢さで十分である。
たまに親子連れがやってくる。「ウマ!」と子供。「いや、あれはウシだよ」とお父さん。たしかに1頭ウマらしいのもいるが。少し眺めていた親子連れも去って、また私たちだけになった。 -
見事な絵だ。そしてコピーも上質だ。私は立ち上がってゆっくりと歩き回って、1つ1つ絵を眺めていった。フランスでの経験がよみがえり、再び、太古の時代へ思いを馳せることができたのである。
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この旅行記へのコメント (2)
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- Tedさん 2015/09/05 10:12:05
- 行ってみたいですね
- Takashiさん、
アルタミラ、クロマニョン洞窟行かれたのですね。
時間ができたので大学で人類学を学び始め、ますます行きたくなっています。
現代人のDNAの5%はクロマニョン人起源だそうです。
またクロマニョン人が絶滅したのは、言葉が話せなかったからだという説が有力だそうです。
この旅行記参考に訪問してみます(^_^)
Ted
- Takashiさん からの返信 2015/09/05 21:25:01
- RE: 行ってみたいですね
- Ted さん
ご訪問くださり、ご投票いただき、大変ありがとうございます。4Tの大先輩なのでことにうれしいです。
フランス南部のクロマニョン人の洞窟壁画は本当にお勧めです。私にとっては、ギリシャローマの遺跡より感動的でした(パルテノンにクレーンが見える今では)。
ネアンデルタール人の寄与が確かにホットな話題ですね。なぜヨーロッパの洞窟壁画が卓越しているのか、ひょっとしたらネアンデルタールの寄与があるのではないかと漠然と思っていましたが、ネアンデルタール人の遺伝子がヨーロッパ人には入っていることが確実になると、にわかに現実的になります。
フォンドゴームで案内を待っているときも、他の参加者が話題にしていました。もっと進んで、ネアンデルタールの影響が強いから、絵が素晴らしいのだ、時代が後になるとだめになるじゃないかと言っていました。真偽のほどは分かりませんが空想を掻き立てます。
ひょっとすると、ネアンデルタールと混血したのがクロマニョン、そしてその子孫の白人なのかもしれません。モンゴロイドは北京原人と混血し、純血種はアフリカ人かもしれません。もう少し解析が進むとはっきりするでしょうが、人種差別と直結するといけないのであまり大きくは取り上げられないでしょう。
またよろしくお願いいたします。
Takashi
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