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 今年最後の大勝負、有馬記念に阪神競馬場へ行ってきた。<br /> 「有馬記念って、有馬温泉とか有馬皇子とかって関係あるの?」<br /> 同行した競馬オンチの家人が僕に尋ねてきた。<br /> 「有馬(ありま)って名前付いたらなんでもそれに関係付けるなよ。アホやなああんたは」<br /> 僕は家人をいつも馬鹿にしているのである。僕は偉そうに高説を続いて垂れたのである。<br /> 「有馬記念というのは有馬温泉にも有馬皇子にも関係ございません。だいたい明治時代に始まった競馬が、古来からある温泉や万葉集の皇子と関係あるわけないやん。有馬記念というのは競馬会最大の行事の一つや。日本中央競馬会(JRA)の理事長が競馬ファンのために始めたレースなんや。その人の名前を採って有馬記念としてるんや」<br /> 「有馬さんっていう、人なの?」<br /> 「そう。有馬頼寧(ありまよりやす)さん」<br /> 僕は関西弁で得意げに有馬記念の来歴を話した。阪神競馬場へ向かう電車の中である。<br /> 「有馬頼寧さんちゅうんはなあ、日本中央競馬会2代目の理事長なんや。この有馬さん、元は久留米藩の殿様や。明治時代に入って東京帝国大学を卒業後、商農務省に入った。そこから国会議員になって農林大臣にまでなった人や。戦後は、財界の大物安田伊佐衛門(安田財閥)に乞われて日本中央競馬会の理事長に就任したんや。この有馬さんなあ、なかなかの人格者で、農林大臣の頃には夜間学校の開校や女子教育、農民の救済に尽力してな、それを乞われての競馬会入りなんや。日本中央競馬会は農林省の管轄やからな。そこで有馬さんは、ファンサービスの拡充に努めたんやな。競馬サービスセンターの設置やらいま盛んになっている競馬実況中継なども始めたんもこの人や。そして、さらにサービスの一つとして始めた投票による競走馬ナンバーワンを決めるレースがこの有馬記念ちゅうことなんや。もっとも、第一回のレースは中山グランプリという名前で行われたんやがな。その後急逝したため、第二回からは有馬はんの功績を讃えて有馬記念という名前にしたんやな。今年で58回」<br /> 僕は博識をひけらかすように家人に滔々と喋ったのであるが、喋っているうちに自分でも陶酔していくのが分かった。そういう俺もやっぱり馬鹿なのかも知れないが。<br /> 創設以来、有馬記念は千葉の中山競馬場で行われている。ここでは関西からはいささか遠くにすぎる。よって関西での同時期に開催される阪神競馬場へと向かったのである。<br /> 阪神競馬場の所在地は、阪急電車の仁川駅から徒歩10分である。大阪梅田から西宮北口を乗り換えておよそ30分で到着する。<br /> 阪神競馬場へは10年ほど前にも来たことがあるが、仁川駅に着いてみて驚いた。以前は仁川駅から街中を歩いて阪神競馬場へ向かった。ところが現在は改札口の目の前に地下道が出来ている。これなら交通の邪魔にもならないし近隣住民に迷惑もかからない。まさに地下道、様々である。<br /> 地下道を潜り抜けるとアーケード付のプロムナードが阪神競馬場の2階まで続いている。雨の日でも濡れる心配はない。いやはやJRAはかなり儲かっていると推測する次第である。しかし、そうはいっても我々はかなりJRAに資金を搾り取られているともいえるのだが・・・・・。<br /> それはともかく競馬ファンにとっては地下道もアーケード付プロムナードも有難いサービスには違いない。<br /> プロムナードを歩いて行くと入場券売り場に到着する。200円で入場券を買って入るとすぐ下に日本一綺麗なパドックが見えてきた。このパドックは競馬ファンにとってなによりのご褒美ということができる。というのも京都や東京と違ってとにかく周回する競走馬が見やすいのである。絶好のロケーションの配置になっているからである。しかし、馬を見てもその良し悪しが分からない僕にとっては、ただ綺麗な構築物としか映らないのであるが。それはとにかく、このパドックを見ると、嗚呼、競馬場にやってきたという感慨に撃たれてしまうのは間違いないところである。競馬っていいなあ、と思える瞬間である。<br /> 今日は霙混じりの小雨が時々降っている。寒さと雨を避けるためスタンドへ向かった。<br /> このスタンドも改装され白を基調にしたインテリアで実に綺麗に仕上がっている。競馬場の暗さは微塵も感じられない。リゾートの遊技場といった趣(おもむき)である。<br /> スタンドは吹きさらしではなく透明のガラスに蔽われたパノラマビューとなっている。しかも暖房付である。もう云うことはなにもないのである。<br /> 競馬場へ着いたのが11時過ぎであったため自由席は満席である。仕方なくゴール板前の見やすい空きスペースを見つけると新聞紙を座布団替りに座ることにした。もちろんこんな風に座っているのは僕一人ではない。多くの人が座っている。よって混雑しているのはいうまでもないが。<br /> 早速レースの検討に入った。午前中は2レース勝負することにしている。どうしようか考えていると東京の娘から電話が入った。<br /> 「パパ、有馬記念買った?」<br /> 「まだやけど、今、阪神競馬場に来てるんや」<br /> 「そうなんだ。いったいなに買ったらいい?。私は新橋なんだけど」<br /> 娘は新橋の場外馬券売り場に来ているらしい。<br /> 「そりゃあ、損せん馬券やなあ」<br /> 「そのような、損しない有り難い馬券ってあるの?」<br /> 「それがあるんやな。外さない馬券を買ったらええんや。有馬記念を外さないといったらオルフェーブルとゴールドシップしかないやろ」<br /> 「そうなん?」<br /> 娘はやや不安気である。<br /> 「この二頭はぜったいに来る。この二頭の複勝馬券を買ったらええんや。複勝というのは3着までやから、この二頭なら4着以下になることないわ」<br /> 僕は自慢げにそう言ったのである。<br /> 「私も外すの嫌だから、外したら損するだけだから、分かった」<br /> 娘はそういうといきなり電話を切った。やはり蛙の子は蛙ということか。東京でOL生活の娘も有馬記念だけはじっとしていられないらしい。<br /> 僕は午前中のレース結果から有馬記念の馬券をどうするか考えることにした。近ごろは馬券の種類も多くどの馬を買うかということよりも、どの馬券の種類を買うかで結構悩んでしまうのである。馬券は1着を当てる単勝、3着までの複勝、8枠の1,2着を当てる枠連、馬番の1,2着を当てる馬連、1,2,3着の馬を到着順に当てる3連単と順不同の3連複とある。こんなに馬券の種類があれば悩んでしまうのも当然である。勝つ馬だけを当てるのが競馬ではなくなってきている昨今なのである。倍率は当てるのが最も難しい3連単が一番付くのであるが。<br /> 今年の有馬記念はオルフェーブルの引退レースである。<br /> そのオルフェーブルは歴史に残る名馬といっていいい。なぜなら史上7頭目の三冠馬(皐月賞、日本ダービー、菊花賞の勝馬)であり昨年と今年はフランス凱旋門賞に挑戦し、2着となった世界を相手に戦った馬なのである。<br /> オルフェーブルの全成績は、20戦してG?6勝を含む12勝、2着6回と圧倒的な強さであった。オルフェーブルを語るとき、この強さだけで語ることはできない。記録だけでなく記憶にも残る名馬なのである。その代表レースが菊花賞で騎手を振り落としたことや、阪神大賞典での逸走後の巻き返しなのである。ファンにとって強烈な印象を与えた馬なのである。<br /> どんな名馬にも語り継がれるエピソードはある。しかし、このようなとんでもないことを行った競走馬はオルフェーブル以外は見当たらない。この日は、フランス凱旋門賞の帰りで疲労が溜まり、不安視する競馬評論家や予想紙なども多くあった。昨年の有馬記念を勝ったゴールドシップを推す競馬記者も多くいた今回の有馬記念である。<br /> 僕は詳細に検討に検討を重ねた。僕の午前中の成績は勝ったり負けたりのどっちつかずの成績。そこで有馬記念の特色から、このレースはお祭り騒ぎのレースと見たのである。<br /> 稀代の名馬がこのレースを最後に引退する。しかもオルフェーブルは記録にも記憶にも残る名馬である。ならばここで、さらにドラマを作って引退するのではないだろうかと考えたのである。<br /> 僕は投票券のマークシートに、オルフェーブルからの3連単42点の流し馬券を記入した。しかも2着以下を塗り直して合計84点も購入してオルフェーブル絶対1着と踏んだのである。各100円単位で。<br /> 3時25分、有馬記念がスタートした。オルフェーブル、頑張れと、心に念じて。<br /><br /> オルフェーブルは遅れることなく綺麗にスタートした。他の馬も遅れたものはいない。<br /> 前半は平均ペースで進んでいく。1週目の正面スタンドに向かってくると、全体がやや縦長の展開となった。オルフェーブルは後方待機の作戦か、後ろから3頭目に付けている。いつものスタイルといっていいだろう。そのオルフェーブルの目の目に対抗馬のゴールドシップがいる。スパートのタイミングを計るようにゴールドシップの後ろから追走している。<br /> 前半を過ぎると各馬ペースを上げてきた。オルフェーブルも中団へと徐々に上げてくる。差を詰めていく。3コーナーに懸かってくると先頭を行く馬にやや疲れが見えてきた。チャンス到来である。ここぞとばかりにオルフェーブルに鞭が入った。3コーナーから4コーナーへかけてオルフェーブルが襲いかかってきたのである。騎手の池添が鞭を叩きつけると一気に先頭に躍り出てきたのである。4コーナーを回ったところでオルフェーブルが先頭に立った。池添騎手は渾身の力を込めてオルフェーブルの手綱をしごいた。オルフェーブルは風を切り、稲妻のごとくグイグイと伸びて行ったではないか。あっというまに2着以下の馬を大きく引き離した。ここからはオルフェーブルの一人舞台であった。たった一頭でレースをしたかのようにオルフェーブルはゴール板を駆け抜けたのである。2着との差はなんと8馬身(馬8頭分)もあった。2着に入ったのは4番人気のウインヴァリアシオン。対抗馬のゴールドシップは3着に入るのが精一杯であった。オルフェーブルの素晴らしい引退レース。オルフェーブルはこうして伝説を作ったのである。<br /> 僕も馬券を取った。3連単は5240円も付いた。そうはいっても84通りも買っていたので、これで外れるわけはない。ところが各100円の購入であるため8400円の投入。つまり馬券を取ったものの3160円の赤字となったのである。いやはや、これではなんのための競馬か分からない。これも競馬、あれも競馬なのである。まあ、競馬で儲けて蔵を建てたという話しは聞いたことがないからと、自分を慰めるしか仕方なかったのである。<br /> 僕の第58回有馬記念は、オルフェーブルの感動を阪神競馬場のオーロラビジョンに残して過ぎていったのである。<br /> マイナス、3160円という損金も残して・・・・・・。<br /> <br />

有馬記念、阪神競馬場へ行ってきた

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2013/12/22 - 2013/12/22

403位(同エリア629件中)

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nakaohideki

nakaohidekiさん

 今年最後の大勝負、有馬記念に阪神競馬場へ行ってきた。
 「有馬記念って、有馬温泉とか有馬皇子とかって関係あるの?」
 同行した競馬オンチの家人が僕に尋ねてきた。
 「有馬(ありま)って名前付いたらなんでもそれに関係付けるなよ。アホやなああんたは」
 僕は家人をいつも馬鹿にしているのである。僕は偉そうに高説を続いて垂れたのである。
 「有馬記念というのは有馬温泉にも有馬皇子にも関係ございません。だいたい明治時代に始まった競馬が、古来からある温泉や万葉集の皇子と関係あるわけないやん。有馬記念というのは競馬会最大の行事の一つや。日本中央競馬会(JRA)の理事長が競馬ファンのために始めたレースなんや。その人の名前を採って有馬記念としてるんや」
 「有馬さんっていう、人なの?」
 「そう。有馬頼寧(ありまよりやす)さん」
 僕は関西弁で得意げに有馬記念の来歴を話した。阪神競馬場へ向かう電車の中である。
 「有馬頼寧さんちゅうんはなあ、日本中央競馬会2代目の理事長なんや。この有馬さん、元は久留米藩の殿様や。明治時代に入って東京帝国大学を卒業後、商農務省に入った。そこから国会議員になって農林大臣にまでなった人や。戦後は、財界の大物安田伊佐衛門(安田財閥)に乞われて日本中央競馬会の理事長に就任したんや。この有馬さんなあ、なかなかの人格者で、農林大臣の頃には夜間学校の開校や女子教育、農民の救済に尽力してな、それを乞われての競馬会入りなんや。日本中央競馬会は農林省の管轄やからな。そこで有馬さんは、ファンサービスの拡充に努めたんやな。競馬サービスセンターの設置やらいま盛んになっている競馬実況中継なども始めたんもこの人や。そして、さらにサービスの一つとして始めた投票による競走馬ナンバーワンを決めるレースがこの有馬記念ちゅうことなんや。もっとも、第一回のレースは中山グランプリという名前で行われたんやがな。その後急逝したため、第二回からは有馬はんの功績を讃えて有馬記念という名前にしたんやな。今年で58回」
 僕は博識をひけらかすように家人に滔々と喋ったのであるが、喋っているうちに自分でも陶酔していくのが分かった。そういう俺もやっぱり馬鹿なのかも知れないが。
 創設以来、有馬記念は千葉の中山競馬場で行われている。ここでは関西からはいささか遠くにすぎる。よって関西での同時期に開催される阪神競馬場へと向かったのである。
 阪神競馬場の所在地は、阪急電車の仁川駅から徒歩10分である。大阪梅田から西宮北口を乗り換えておよそ30分で到着する。
 阪神競馬場へは10年ほど前にも来たことがあるが、仁川駅に着いてみて驚いた。以前は仁川駅から街中を歩いて阪神競馬場へ向かった。ところが現在は改札口の目の前に地下道が出来ている。これなら交通の邪魔にもならないし近隣住民に迷惑もかからない。まさに地下道、様々である。
 地下道を潜り抜けるとアーケード付のプロムナードが阪神競馬場の2階まで続いている。雨の日でも濡れる心配はない。いやはやJRAはかなり儲かっていると推測する次第である。しかし、そうはいっても我々はかなりJRAに資金を搾り取られているともいえるのだが・・・・・。
 それはともかく競馬ファンにとっては地下道もアーケード付プロムナードも有難いサービスには違いない。
 プロムナードを歩いて行くと入場券売り場に到着する。200円で入場券を買って入るとすぐ下に日本一綺麗なパドックが見えてきた。このパドックは競馬ファンにとってなによりのご褒美ということができる。というのも京都や東京と違ってとにかく周回する競走馬が見やすいのである。絶好のロケーションの配置になっているからである。しかし、馬を見てもその良し悪しが分からない僕にとっては、ただ綺麗な構築物としか映らないのであるが。それはとにかく、このパドックを見ると、嗚呼、競馬場にやってきたという感慨に撃たれてしまうのは間違いないところである。競馬っていいなあ、と思える瞬間である。
 今日は霙混じりの小雨が時々降っている。寒さと雨を避けるためスタンドへ向かった。
 このスタンドも改装され白を基調にしたインテリアで実に綺麗に仕上がっている。競馬場の暗さは微塵も感じられない。リゾートの遊技場といった趣(おもむき)である。
 スタンドは吹きさらしではなく透明のガラスに蔽われたパノラマビューとなっている。しかも暖房付である。もう云うことはなにもないのである。
 競馬場へ着いたのが11時過ぎであったため自由席は満席である。仕方なくゴール板前の見やすい空きスペースを見つけると新聞紙を座布団替りに座ることにした。もちろんこんな風に座っているのは僕一人ではない。多くの人が座っている。よって混雑しているのはいうまでもないが。
 早速レースの検討に入った。午前中は2レース勝負することにしている。どうしようか考えていると東京の娘から電話が入った。
 「パパ、有馬記念買った?」
 「まだやけど、今、阪神競馬場に来てるんや」
 「そうなんだ。いったいなに買ったらいい?。私は新橋なんだけど」
 娘は新橋の場外馬券売り場に来ているらしい。
 「そりゃあ、損せん馬券やなあ」
 「そのような、損しない有り難い馬券ってあるの?」
 「それがあるんやな。外さない馬券を買ったらええんや。有馬記念を外さないといったらオルフェーブルとゴールドシップしかないやろ」
 「そうなん?」
 娘はやや不安気である。
 「この二頭はぜったいに来る。この二頭の複勝馬券を買ったらええんや。複勝というのは3着までやから、この二頭なら4着以下になることないわ」
 僕は自慢げにそう言ったのである。
 「私も外すの嫌だから、外したら損するだけだから、分かった」
 娘はそういうといきなり電話を切った。やはり蛙の子は蛙ということか。東京でOL生活の娘も有馬記念だけはじっとしていられないらしい。
 僕は午前中のレース結果から有馬記念の馬券をどうするか考えることにした。近ごろは馬券の種類も多くどの馬を買うかということよりも、どの馬券の種類を買うかで結構悩んでしまうのである。馬券は1着を当てる単勝、3着までの複勝、8枠の1,2着を当てる枠連、馬番の1,2着を当てる馬連、1,2,3着の馬を到着順に当てる3連単と順不同の3連複とある。こんなに馬券の種類があれば悩んでしまうのも当然である。勝つ馬だけを当てるのが競馬ではなくなってきている昨今なのである。倍率は当てるのが最も難しい3連単が一番付くのであるが。
 今年の有馬記念はオルフェーブルの引退レースである。
 そのオルフェーブルは歴史に残る名馬といっていいい。なぜなら史上7頭目の三冠馬(皐月賞、日本ダービー、菊花賞の勝馬)であり昨年と今年はフランス凱旋門賞に挑戦し、2着となった世界を相手に戦った馬なのである。
 オルフェーブルの全成績は、20戦してG?6勝を含む12勝、2着6回と圧倒的な強さであった。オルフェーブルを語るとき、この強さだけで語ることはできない。記録だけでなく記憶にも残る名馬なのである。その代表レースが菊花賞で騎手を振り落としたことや、阪神大賞典での逸走後の巻き返しなのである。ファンにとって強烈な印象を与えた馬なのである。
 どんな名馬にも語り継がれるエピソードはある。しかし、このようなとんでもないことを行った競走馬はオルフェーブル以外は見当たらない。この日は、フランス凱旋門賞の帰りで疲労が溜まり、不安視する競馬評論家や予想紙なども多くあった。昨年の有馬記念を勝ったゴールドシップを推す競馬記者も多くいた今回の有馬記念である。
 僕は詳細に検討に検討を重ねた。僕の午前中の成績は勝ったり負けたりのどっちつかずの成績。そこで有馬記念の特色から、このレースはお祭り騒ぎのレースと見たのである。
 稀代の名馬がこのレースを最後に引退する。しかもオルフェーブルは記録にも記憶にも残る名馬である。ならばここで、さらにドラマを作って引退するのではないだろうかと考えたのである。
 僕は投票券のマークシートに、オルフェーブルからの3連単42点の流し馬券を記入した。しかも2着以下を塗り直して合計84点も購入してオルフェーブル絶対1着と踏んだのである。各100円単位で。
 3時25分、有馬記念がスタートした。オルフェーブル、頑張れと、心に念じて。

 オルフェーブルは遅れることなく綺麗にスタートした。他の馬も遅れたものはいない。
 前半は平均ペースで進んでいく。1週目の正面スタンドに向かってくると、全体がやや縦長の展開となった。オルフェーブルは後方待機の作戦か、後ろから3頭目に付けている。いつものスタイルといっていいだろう。そのオルフェーブルの目の目に対抗馬のゴールドシップがいる。スパートのタイミングを計るようにゴールドシップの後ろから追走している。
 前半を過ぎると各馬ペースを上げてきた。オルフェーブルも中団へと徐々に上げてくる。差を詰めていく。3コーナーに懸かってくると先頭を行く馬にやや疲れが見えてきた。チャンス到来である。ここぞとばかりにオルフェーブルに鞭が入った。3コーナーから4コーナーへかけてオルフェーブルが襲いかかってきたのである。騎手の池添が鞭を叩きつけると一気に先頭に躍り出てきたのである。4コーナーを回ったところでオルフェーブルが先頭に立った。池添騎手は渾身の力を込めてオルフェーブルの手綱をしごいた。オルフェーブルは風を切り、稲妻のごとくグイグイと伸びて行ったではないか。あっというまに2着以下の馬を大きく引き離した。ここからはオルフェーブルの一人舞台であった。たった一頭でレースをしたかのようにオルフェーブルはゴール板を駆け抜けたのである。2着との差はなんと8馬身(馬8頭分)もあった。2着に入ったのは4番人気のウインヴァリアシオン。対抗馬のゴールドシップは3着に入るのが精一杯であった。オルフェーブルの素晴らしい引退レース。オルフェーブルはこうして伝説を作ったのである。
 僕も馬券を取った。3連単は5240円も付いた。そうはいっても84通りも買っていたので、これで外れるわけはない。ところが各100円の購入であるため8400円の投入。つまり馬券を取ったものの3160円の赤字となったのである。いやはや、これではなんのための競馬か分からない。これも競馬、あれも競馬なのである。まあ、競馬で儲けて蔵を建てたという話しは聞いたことがないからと、自分を慰めるしか仕方なかったのである。
 僕の第58回有馬記念は、オルフェーブルの感動を阪神競馬場のオーロラビジョンに残して過ぎていったのである。
 マイナス、3160円という損金も残して・・・・・・。
 

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
交通
4.0
同行者
カップル・夫婦
一人あたり費用
1万円未満
交通手段
JR特急 私鉄
  • 阪神競馬場のプロムナード。有馬記念の横断幕が懸かっている。

    阪神競馬場のプロムナード。有馬記念の横断幕が懸かっている。

  • 阪神競馬場のパッドック。日本一綺麗で見やすい。

    阪神競馬場のパッドック。日本一綺麗で見やすい。

  • ゲストに来ていた元阪神タイガースの矢野捕手。

    ゲストに来ていた元阪神タイガースの矢野捕手。

  • ゴール板前。駆け抜ける競走馬

    ゴール板前。駆け抜ける競走馬

  • ウイナーズサークルでの表彰。

    ウイナーズサークルでの表彰。

  • スタンドはガラスに蔽われたパノラマビューとなっている。

    スタンドはガラスに蔽われたパノラマビューとなっている。

  • 白馬の誘導馬たち。<br />

    白馬の誘導馬たち。

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この旅行記へのコメント (1)

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  • tamayuraさん 2014/02/01 19:19:45
    知識の小箱ですね。
    はじめまして nakaohideki様

    この度は “松林図屏風”観賞の旅行記に訪問・投票有難うございました。

    どんな方かしら?で、訪問させていただきましたが
    「根来寺の初詣」の旅行記で、私も是非訪れたい所の一つなので
    興味深く拝見させていただきました。

    それにつけても、歴史に造詣がと思っていたら
    いえいえ 近代日本史にも・・で、これから ゆっくり拝見させていただきます。

    やっぱり 関西の方ですね

    クスッて笑わせてもらいました。「有馬記念・阪神競馬」の旅行記での会話のやりとり

    で読みながら、「へぇ〜〜 そうなんや」
    「何で有馬記念が、千葉でやってんねんやろ」て私も、有馬温泉関連で思っていましたから

    nakaohidekiさんの旅行記は、知識の小箱ですね。大箱かな。
    見聞が広がります。

    また おじゃまさせていただきます

    tamayura

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