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ポルトガルで闘牛を見ようと思ったのは、「ポルトガルの闘牛は牛を殺さないんだよ」と教えられたからだ。<br />隣国スペインでは「残酷な闘牛はやめるべき!」と反対デモが行われている真っ最中だった。私もその考えには同意するところ、だからこそ「牛を殺さない」という点に心が動いた。<br />訪れたのは「カンポ・ペケーノ」という闘牛場。その夜は「とても人気のある闘牛士が登場する」日であるらしく、駐車場でスペースを確保するのもひと苦労の混みようだった。<br />7時半もまわり8時に近い頃、やっとショーが始まった。<br /><br />まずは顔見世。見覚えのあるマタドールの衣装や、初めて目にする素朴な衣装の男たちが次々と場内に入ってくる。そして最後に騎馬で登場したのが4人の騎士たち。彼らが本日の主役「レホネアドール(闘牛士)」である。<br /><br />ポルトガルの闘牛は「レホネオス(騎馬闘牛)」と言い、その名の通りレホネアドールは馬から一度も降りることなく牛と戦う。<br />コスチュームはまるで中世の騎士のよう。帽子にはフワフワの羽までついており、凛々しいと言うよりは華麗と表現したいところ。しかし、ショーが始まって驚いた。彼らの騎馬技術、手綱さばきはそのコスチュームをはるかに超える華麗さだった。<br />レホネアドールを背に乗せた馬たちは、まるで歩くことが楽しくて仕方がないかのようにスキップしたり、踊るように跳ねて見せたり、手綱の魔法に酔いしれている。まさに馬の脚がレホネアドールの脚そのものと言えるだろう。そうして600キロもある巨体の牛と対峙するのだ。<br /><br />最初に登場したのは若くて美しいレホネアドール。観客席から黄色い歓声が沸き起こる。なるほど、彼が人気の闘牛士か。確かに甘いマスクに騎士のコスチュームが似合いすぎている。笑顔は甘く清々しい。女性に人気があるのも納得。だって私も夢中になった…<br />彼は今夜いちばんの若手だろうけど、技術に危なっかしさはまったく見られない。それどころか動きのすべてが美しく、どの場面を切り取っても一枚の絵になるようだ。<br />そしてしばらくの挑発や駆け引きののち、彼が手にした槍のすべてを牛に突き立てると、そこでレホネアドールは一旦退場する。槍の刺さり方はあまり深くないらしく牛の動きもまだ正常に見える。<br /><br />次に短いチョッキを着た「フォルカード」と呼ばれる男たちが現れ、興奮真っ只中の牛と正面から対峙する格好で、縦一列に並ぶ。そして一歩ずつゆっくりと牛に近づいていく。一歩前に進むたび「クイッ」と腰をくねらせる独特の動き。牛のほうは何事かと、じっと様子を見ている。<br />やがて近づくフォルカードに耐えかねて(或いは腰の動きが耐え切れず)土煙を上げながら突進する牛の左右の角の間に、先頭のフォルカードが腹ばいに飛び乗り、牛の視界を遮ると、後続のフォルカードたちがその突進を全力で阻止する。中の一人は牛の尻尾を引っ張りながら牛の意識をこちらに向ける、もう牛にとっては前も見えない、進めもしない、尻尾には違和感あるわの3重苦の状況。そして煩わしい尻尾を追いかけるようにクルクルまわりだす。そこまで行けばほぼ成功。牛は間もなく目を回してドスン!と倒れこむ。<br />フォルカードたちの勇敢さに、観客から大きな拍手が送られる。<br /><br />次に登場するのは素朴な衣装を身に着けた牛使いのおじさんだ。おとなしそうな牛を何頭も引き連れている。ここがポルトガル騎馬闘牛の最大の特徴とも言える点だ。<br />フォルカードによって地面に倒れこんだ牛は、軽く目を回してひっくり返っただけなのですぐに立ち上がる。そして牛使い率いる牛の群について行く様に、一緒に歩いて退場するのだ。牛の群れる習性を利用しての方法らしいが、数分前まで命をかけた戦いに挑んでいたのが信じられないほど、あっさりと群に混じって出て行く様子は滑稽でもあり、悲しくもある。<br /><br />こうして一幕目が終了。再び先ほどのイケメンのレホネアドールが登場し、喝采の中会場を一周する。観客席からは花やタオルが投げ込まれる。すべてのタオルは自分の汗を拭って見せた後、投げ返される。このパフォーマンスはすべてのレホネアドールがやっていたことだが、イケメンに投げられるタオルの数は半端なかった。<br /><br />こんな風にして4人の闘牛の後に、二人一組の闘牛が2本、合計で6本のショーを見ることとなる。大満足どころかお腹いっぱいである。そして空腹でもあった。終わったのは夜の11時に近かったのだ。<br /><br />結局、聞いていた通り「牛を殺さない」と言うのは本当だったが、それはあくまでも“観客の目の前では”ということのようだ。<br />一度ショーに出た牛は結局裏で殺され、食肉として流通する。<br />信じられないことに、この闘牛場には闘牛模様が目印のレストランがあった。後でそのレストランではショーの後で殺された牛の肉を出している、と聞いた。あれは本当だろうか?<br />

馬が躍る!ポルトガルの優雅な「騎馬闘牛」

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2009/02/01 - 2009/03/01

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kobusakura

kobusakuraさん

ポルトガルで闘牛を見ようと思ったのは、「ポルトガルの闘牛は牛を殺さないんだよ」と教えられたからだ。
隣国スペインでは「残酷な闘牛はやめるべき!」と反対デモが行われている真っ最中だった。私もその考えには同意するところ、だからこそ「牛を殺さない」という点に心が動いた。
訪れたのは「カンポ・ペケーノ」という闘牛場。その夜は「とても人気のある闘牛士が登場する」日であるらしく、駐車場でスペースを確保するのもひと苦労の混みようだった。
7時半もまわり8時に近い頃、やっとショーが始まった。

まずは顔見世。見覚えのあるマタドールの衣装や、初めて目にする素朴な衣装の男たちが次々と場内に入ってくる。そして最後に騎馬で登場したのが4人の騎士たち。彼らが本日の主役「レホネアドール(闘牛士)」である。

ポルトガルの闘牛は「レホネオス(騎馬闘牛)」と言い、その名の通りレホネアドールは馬から一度も降りることなく牛と戦う。
コスチュームはまるで中世の騎士のよう。帽子にはフワフワの羽までついており、凛々しいと言うよりは華麗と表現したいところ。しかし、ショーが始まって驚いた。彼らの騎馬技術、手綱さばきはそのコスチュームをはるかに超える華麗さだった。
レホネアドールを背に乗せた馬たちは、まるで歩くことが楽しくて仕方がないかのようにスキップしたり、踊るように跳ねて見せたり、手綱の魔法に酔いしれている。まさに馬の脚がレホネアドールの脚そのものと言えるだろう。そうして600キロもある巨体の牛と対峙するのだ。

最初に登場したのは若くて美しいレホネアドール。観客席から黄色い歓声が沸き起こる。なるほど、彼が人気の闘牛士か。確かに甘いマスクに騎士のコスチュームが似合いすぎている。笑顔は甘く清々しい。女性に人気があるのも納得。だって私も夢中になった…
彼は今夜いちばんの若手だろうけど、技術に危なっかしさはまったく見られない。それどころか動きのすべてが美しく、どの場面を切り取っても一枚の絵になるようだ。
そしてしばらくの挑発や駆け引きののち、彼が手にした槍のすべてを牛に突き立てると、そこでレホネアドールは一旦退場する。槍の刺さり方はあまり深くないらしく牛の動きもまだ正常に見える。

次に短いチョッキを着た「フォルカード」と呼ばれる男たちが現れ、興奮真っ只中の牛と正面から対峙する格好で、縦一列に並ぶ。そして一歩ずつゆっくりと牛に近づいていく。一歩前に進むたび「クイッ」と腰をくねらせる独特の動き。牛のほうは何事かと、じっと様子を見ている。
やがて近づくフォルカードに耐えかねて(或いは腰の動きが耐え切れず)土煙を上げながら突進する牛の左右の角の間に、先頭のフォルカードが腹ばいに飛び乗り、牛の視界を遮ると、後続のフォルカードたちがその突進を全力で阻止する。中の一人は牛の尻尾を引っ張りながら牛の意識をこちらに向ける、もう牛にとっては前も見えない、進めもしない、尻尾には違和感あるわの3重苦の状況。そして煩わしい尻尾を追いかけるようにクルクルまわりだす。そこまで行けばほぼ成功。牛は間もなく目を回してドスン!と倒れこむ。
フォルカードたちの勇敢さに、観客から大きな拍手が送られる。

次に登場するのは素朴な衣装を身に着けた牛使いのおじさんだ。おとなしそうな牛を何頭も引き連れている。ここがポルトガル騎馬闘牛の最大の特徴とも言える点だ。
フォルカードによって地面に倒れこんだ牛は、軽く目を回してひっくり返っただけなのですぐに立ち上がる。そして牛使い率いる牛の群について行く様に、一緒に歩いて退場するのだ。牛の群れる習性を利用しての方法らしいが、数分前まで命をかけた戦いに挑んでいたのが信じられないほど、あっさりと群に混じって出て行く様子は滑稽でもあり、悲しくもある。

こうして一幕目が終了。再び先ほどのイケメンのレホネアドールが登場し、喝采の中会場を一周する。観客席からは花やタオルが投げ込まれる。すべてのタオルは自分の汗を拭って見せた後、投げ返される。このパフォーマンスはすべてのレホネアドールがやっていたことだが、イケメンに投げられるタオルの数は半端なかった。

こんな風にして4人の闘牛の後に、二人一組の闘牛が2本、合計で6本のショーを見ることとなる。大満足どころかお腹いっぱいである。そして空腹でもあった。終わったのは夜の11時に近かったのだ。

結局、聞いていた通り「牛を殺さない」と言うのは本当だったが、それはあくまでも“観客の目の前では”ということのようだ。
一度ショーに出た牛は結局裏で殺され、食肉として流通する。
信じられないことに、この闘牛場には闘牛模様が目印のレストランがあった。後でそのレストランではショーの後で殺された牛の肉を出している、と聞いた。あれは本当だろうか?

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
グルメ
4.0
ショッピング
2.5
同行者
カップル・夫婦
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
レンタカー
旅行の手配内容
個別手配
  • 開始前の闘牛場

    開始前の闘牛場

  • レホネオスはポルトガル人にとって大きな娯楽。テレビカメラでの中継もしょっちゅうされるようです<br />

    レホネオスはポルトガル人にとって大きな娯楽。テレビカメラでの中継もしょっちゅうされるようです

  • マタドール、フォルカードの登場

    マタドール、フォルカードの登場

  • すべての登場人物がここで顔見世をします

    すべての登場人物がここで顔見世をします

  • そして今日の花形、4人のレホネアドールの登場!

    そして今日の花形、4人のレホネアドールの登場!

  • 馬も騎士も華やかに着飾っています

    馬も騎士も華やかに着飾っています

  • 今夜の一番人気、イケメンレホネアドール!

    今夜の一番人気、イケメンレホネアドール!

  • かれは2番目に登場

    かれは2番目に登場

  • そして3番手はフリオ・イグレシアス似の二枚目風。この日は客席の奥さんを紹介するなど、盛り上がっていたのですが、ショーの最中、牛の追撃に気づかずに、思わず馬から転がり降りると、客席の塀をよじ登って難を逃れるという大失態を演じてしまいました… 

    そして3番手はフリオ・イグレシアス似の二枚目風。この日は客席の奥さんを紹介するなど、盛り上がっていたのですが、ショーの最中、牛の追撃に気づかずに、思わず馬から転がり降りると、客席の塀をよじ登って難を逃れるという大失態を演じてしまいました… 

  • そして最後に登場したのはこの人、素人目にも技術はダントツでした

    そして最後に登場したのはこの人、素人目にも技術はダントツでした

  • 闘牛を間近で見るのは初めて。大きいだけじゃなく美しい姿をしています

    闘牛を間近で見るのは初めて。大きいだけじゃなく美しい姿をしています

  • イケメン騎士との格闘

    イケメン騎士との格闘

  • のるかそるかの戦いは、レホネアドールがいつも優位に牛を振り回します

    のるかそるかの戦いは、レホネアドールがいつも優位に牛を振り回します

  • 牛の動きが止まることがイチバンまずい。騎士が挑発しても乗ってこない時は、最初に登場したマタドールが会場に現れ、牛への挑発を繰り返し、なんとか戦闘意欲を湧かせます

    牛の動きが止まることがイチバンまずい。騎士が挑発しても乗ってこない時は、最初に登場したマタドールが会場に現れ、牛への挑発を繰り返し、なんとか戦闘意欲を湧かせます

  • 牛と対峙するレホネアドール

    牛と対峙するレホネアドール

  • 槍が刺さっているけど、傷はそれほど深くないようです。でも流血が激しく、やっぱり見ていてツライです

    槍が刺さっているけど、傷はそれほど深くないようです。でも流血が激しく、やっぱり見ていてツライです

  • 最後の槍を突き立てる瞬間

    最後の槍を突き立てる瞬間

  • そしてフォルカードたちが牛を押さえ込みます

    そしてフォルカードたちが牛を押さえ込みます

  • フォルカードの一人が尻尾にぶら下がるようにして牛をクルクルとまわし、やがて目を回した牛が倒れこみます

    フォルカードの一人が尻尾にぶら下がるようにして牛をクルクルとまわし、やがて目を回した牛が倒れこみます

  • 牛使いのおじさんに引き連れられて現れたおとなしい牛たちの群れ。この群とともに、闘牛は会場を後にします。。。

    牛使いのおじさんに引き連れられて現れたおとなしい牛たちの群れ。この群とともに、闘牛は会場を後にします。。。

  • 馬の動きも美しいせいで、レホネアドールのパフォーマンスはすべてが絵になります

    馬の動きも美しいせいで、レホネアドールのパフォーマンスはすべてが絵になります

  • いちばん上手だったレホネアドールが客席にご挨拶

    いちばん上手だったレホネアドールが客席にご挨拶

  • 今度は二人一組で牛と戦います

    今度は二人一組で牛と戦います

  • ぜんぶで6つのショーが終わると11時近い時間でした。お疲れ様!

    ぜんぶで6つのショーが終わると11時近い時間でした。お疲れ様!

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