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<4日目><br /><br />■ 6月 6日 ベリカレツコエ村<br /><br /> キーロフ行進のなかで、もっとも重要な「聖水の儀式」が行われる日。天が敬意を表したのか、この日は終日快晴の好天気だった。空が抜けるように青い。<br /><br /> 信心深いジーマ氏一家、カーチャさん、リュドミラさん、ユーリー・セルゲービッチ先生らは、聖水の儀式に参加するために、早朝からヴェリカヤ川畔に出かけて行った。そこまで信心深くないセルゲイ氏とジーマ君、そして私の3人は朝寝をして、ゆっくりと出かけることにした。10時ごろにジーマ氏一行と合流し、川畔で昼食をとり、午後一杯、「ヴェリカヤ川の休日」を楽しんだ。<br /><br />■断食<br /><br /> 宿舎から教会までは5分とかからないが、教会から聖水の儀式が行われている川の畔までは2キロほど離れている。教会からヴェリカヤ川に向かう道の両側には、土産物やお茶、アイスクリーム、パン、シャシリク(串焼き)などの屋台が数多く並んでいる。聖水の儀式が終われば断食も終わり、肉類を口にしても大丈夫なのだとジーマ君が解説してくれる。<br /><br /> ジーマ君によれば、ロシア正教には、いくつかの断食の決まりがあるそうだ。一般的なのは、マースレニッツァ(масленица / 春を迎える祭)の翌日からパスハ(復活祭)までの40日間の断食。そのほかにも正教の祭りや聖人の日にちなんだ断食がある。断食とはいえ、すべての食事を断つのではなく、肉、魚、卵、乳製品を断ち、野菜中心の食事をするのが一般的だ。断食の内容は、人によってまちまちで、肉だけ断つ場合もあれば動物性タンパクすべてを断つ場合もある。チーズなど乳製品や魚介類は含める人もいれば、含めない人もいるということだ。1年のうちで、どの期間に、どのような断食を行うか(あるいは行わないか)は、各人の信仰の度合いによって違っている。<br /><br /> 断食の期間中は、食べ物に制限を加えるだけでなく、毎日お祈りをして、酒や遊びを控える。精神を平穏に保ち、敬虔な信仰心を取り戻す期間でもあるわけだ。<br /><br /> キーロフ行進の期間中も、熱心な信者はそれぞれに断食を行うのだそうだ。そういえば、キーロフに向かう列車の中でリュドミラさんはセルゲイ氏が取り出したサラミソーセージを口にしなかった。彼女が買ってきてくれたピロシキも野菜、魚、果物のピロシキだったことを思い出す。<br /><br /> ヴェリカヤ川の聖水の儀式が終わると晴れて断食が明けるので、その意味でも今日はお祭りなのだ。<br /><br /> キーロフからこの村まで歩くことだけが目的なのではなく、ロシア正教の信者にとっては、参加に向けた準備から行進期間中の生活、心の持ちようなど、すべて含めて信仰活動としてのキーロフ行進なのだということに初めて思い至る。<br /><br />■聖水の儀式<br /><br /> ヴェリカヤ川での聖水の儀式は、朝から何回も繰り返し行われる。聖水の儀式とは、ヨルダン川での洗礼からキリストの布教が始まったことにちなみ、「聖なる水」に体を浸して罪を洗い清め、新しい生命を与えられるあかしとする正教の儀式だ。「聖水」は普通の水ではなく、主教や司祭によって聖化された特別の水とされる。<br /><br /> ヴェリカヤ川の畔には大きな広場があり、その端に教会風の建物が建っていた。空け放たれた扉の中では聖歌が歌われ、神父たちの朗々たる祈り声が響き渡る。建物の前から川にむかって人々が列をなし、一種の参道を作っている。列の周りをさらに人々が埋めつくし、広場の外へとあふれだしている。人々は、ときどき胸の前で十字を切りながら、神父の祈り声に唱和している。長い祈りのあとにクライマックスが訪れる。神父に導かれた人々は建物からベルカヤ川に向かい、岸から川に入って身を清めるのだ。ここではベリカヤ川の水が聖なる水なのだ。<br /><br /> すべての人が沐浴するわけではないので、数人の神父がバケツに聖水を入れ、ハケを浸して沿道の人々に振りかける。人々は手を挙げて水しぶきを受けようと神父の周りに群がる。十字架を先頭に数人の神父たちが聖水を振りかけつつ建物までゆっくりと行進してもどり、一連の儀式が終わる。<br /><br /> 断食を含めた一定の潔斎期間を過ごし、苦行をともなう行進を行い、そして聖水の儀式によって、罪穢れを洗い流し、心身に新しい生命を吹き込むことが、キーロフ十字架行進の目的であり、信仰的意義なのだ。<br /><br />(つづく)

キーロフ十字架行進 ベリカロツコエ村での1日(9)

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2012/06/03 - 2012/06/08

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

<4日目>

■ 6月 6日 ベリカレツコエ村

 キーロフ行進のなかで、もっとも重要な「聖水の儀式」が行われる日。天が敬意を表したのか、この日は終日快晴の好天気だった。空が抜けるように青い。

 信心深いジーマ氏一家、カーチャさん、リュドミラさん、ユーリー・セルゲービッチ先生らは、聖水の儀式に参加するために、早朝からヴェリカヤ川畔に出かけて行った。そこまで信心深くないセルゲイ氏とジーマ君、そして私の3人は朝寝をして、ゆっくりと出かけることにした。10時ごろにジーマ氏一行と合流し、川畔で昼食をとり、午後一杯、「ヴェリカヤ川の休日」を楽しんだ。

■断食

 宿舎から教会までは5分とかからないが、教会から聖水の儀式が行われている川の畔までは2キロほど離れている。教会からヴェリカヤ川に向かう道の両側には、土産物やお茶、アイスクリーム、パン、シャシリク(串焼き)などの屋台が数多く並んでいる。聖水の儀式が終われば断食も終わり、肉類を口にしても大丈夫なのだとジーマ君が解説してくれる。

 ジーマ君によれば、ロシア正教には、いくつかの断食の決まりがあるそうだ。一般的なのは、マースレニッツァ(масленица / 春を迎える祭)の翌日からパスハ(復活祭)までの40日間の断食。そのほかにも正教の祭りや聖人の日にちなんだ断食がある。断食とはいえ、すべての食事を断つのではなく、肉、魚、卵、乳製品を断ち、野菜中心の食事をするのが一般的だ。断食の内容は、人によってまちまちで、肉だけ断つ場合もあれば動物性タンパクすべてを断つ場合もある。チーズなど乳製品や魚介類は含める人もいれば、含めない人もいるということだ。1年のうちで、どの期間に、どのような断食を行うか(あるいは行わないか)は、各人の信仰の度合いによって違っている。

 断食の期間中は、食べ物に制限を加えるだけでなく、毎日お祈りをして、酒や遊びを控える。精神を平穏に保ち、敬虔な信仰心を取り戻す期間でもあるわけだ。

 キーロフ行進の期間中も、熱心な信者はそれぞれに断食を行うのだそうだ。そういえば、キーロフに向かう列車の中でリュドミラさんはセルゲイ氏が取り出したサラミソーセージを口にしなかった。彼女が買ってきてくれたピロシキも野菜、魚、果物のピロシキだったことを思い出す。

 ヴェリカヤ川の聖水の儀式が終わると晴れて断食が明けるので、その意味でも今日はお祭りなのだ。

 キーロフからこの村まで歩くことだけが目的なのではなく、ロシア正教の信者にとっては、参加に向けた準備から行進期間中の生活、心の持ちようなど、すべて含めて信仰活動としてのキーロフ行進なのだということに初めて思い至る。

■聖水の儀式

 ヴェリカヤ川での聖水の儀式は、朝から何回も繰り返し行われる。聖水の儀式とは、ヨルダン川での洗礼からキリストの布教が始まったことにちなみ、「聖なる水」に体を浸して罪を洗い清め、新しい生命を与えられるあかしとする正教の儀式だ。「聖水」は普通の水ではなく、主教や司祭によって聖化された特別の水とされる。

 ヴェリカヤ川の畔には大きな広場があり、その端に教会風の建物が建っていた。空け放たれた扉の中では聖歌が歌われ、神父たちの朗々たる祈り声が響き渡る。建物の前から川にむかって人々が列をなし、一種の参道を作っている。列の周りをさらに人々が埋めつくし、広場の外へとあふれだしている。人々は、ときどき胸の前で十字を切りながら、神父の祈り声に唱和している。長い祈りのあとにクライマックスが訪れる。神父に導かれた人々は建物からベルカヤ川に向かい、岸から川に入って身を清めるのだ。ここではベリカヤ川の水が聖なる水なのだ。

 すべての人が沐浴するわけではないので、数人の神父がバケツに聖水を入れ、ハケを浸して沿道の人々に振りかける。人々は手を挙げて水しぶきを受けようと神父の周りに群がる。十字架を先頭に数人の神父たちが聖水を振りかけつつ建物までゆっくりと行進してもどり、一連の儀式が終わる。

 断食を含めた一定の潔斎期間を過ごし、苦行をともなう行進を行い、そして聖水の儀式によって、罪穢れを洗い流し、心身に新しい生命を吹き込むことが、キーロフ十字架行進の目的であり、信仰的意義なのだ。

(つづく)

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