その他の都市旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 ベリカロツコエ村に着いて、ジーマ氏の知人宅に荷物をおろし、ほっと一息ついたのは夕方7時頃か。ジーマ氏の知人は私たちに家を明け渡して、娘の家で2日間過ごすという。ありがたいが、申し訳なくもある。自分の家を友人とその知り合いに丸々明け渡すという「人間関係」は、ロシアならではだが、日本人の感覚からすると濃密すぎてちょっと戸惑ってしまう。ジーマ氏は「友達とはお互い貸したり、借りたりの関係」とこともなく言う。考えてみれば、このキーロフ行進の初日から私たちはジーマ氏の友人宅で宿泊の世話になっている。ジーマ氏からすれば、リュドミラさんは親しい友人かもしれないが、その友人である私やセルゲイ氏、ユーリー先生は友人でも何でもないはずなのだが、そんな分け隔ては全くない。<br /><br /> 人の世話になったらそれ相応の礼をするというのは、日本人でもロシア人でも変わらぬ礼儀感覚だが、とかくお金や物に置き換えようとする日本人に比べて、自分の行動によって気持ちを表わすロシア人の生活感覚は日本人よりずっと人間臭く感じられる。

キーロフ十字架行進 ベリカロツコエ村での1日(8)

1いいね!

2012/06/03 - 2012/06/08

299位(同エリア341件中)

0

2

JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 ベリカロツコエ村に着いて、ジーマ氏の知人宅に荷物をおろし、ほっと一息ついたのは夕方7時頃か。ジーマ氏の知人は私たちに家を明け渡して、娘の家で2日間過ごすという。ありがたいが、申し訳なくもある。自分の家を友人とその知り合いに丸々明け渡すという「人間関係」は、ロシアならではだが、日本人の感覚からすると濃密すぎてちょっと戸惑ってしまう。ジーマ氏は「友達とはお互い貸したり、借りたりの関係」とこともなく言う。考えてみれば、このキーロフ行進の初日から私たちはジーマ氏の友人宅で宿泊の世話になっている。ジーマ氏からすれば、リュドミラさんは親しい友人かもしれないが、その友人である私やセルゲイ氏、ユーリー先生は友人でも何でもないはずなのだが、そんな分け隔ては全くない。

 人の世話になったらそれ相応の礼をするというのは、日本人でもロシア人でも変わらぬ礼儀感覚だが、とかくお金や物に置き換えようとする日本人に比べて、自分の行動によって気持ちを表わすロシア人の生活感覚は日本人よりずっと人間臭く感じられる。

  • ■出発時は3万5000人、歩いて到着したのは2万5000人<br /><br />「バーニャ(ロシア式サウナ)があるから、火を焚いて交代で入ろう」、ジーマ氏が提案すると歓声が上がった。夜行列車に乗った日からもう丸4日シャワーを浴びていない。ロシアは湿気が少ないので汗をかいてもすぐ乾いてしまうとはいえ、さすがに気持ち悪い。着替えの洗濯もしたい。ジーマ氏は息子のイリヤ君にバーニャ係りを言いつけた。<br /><br /> バーニャの準備ができるまでの間、少し村の中を探検してみようと外に出ると、入口につないである大柄の雌犬がじゃれて飛びついてくる。ちょっといかつい顔つきだが性格はいたって人懐っこい。頭を撫で、首筋、わき腹をさすってやると喜んですぐ横に転がる。子育てがすんだあとなのか、途中で子犬と引き離されたのか、まだふくらみのある乳が垂れてだらしない。密かに「ワン子」と名付けて、入口を通る度に相手してやると、顔を見るなり体当たりするように飛んでくるようになった。犬はロシアも日本も変わらない。<br /><br /> 6月初旬、一年で一番日が長いこの時期、夕方7時といっても太陽はまだ高いところにあり、外は十分に明るい。この日は午後からずっと快晴、気持ちの良い天気が続いている。ベリカロツコエの村は、教会に続く広い道の両側に細い道がいくつも合流し、その細道の両側に家が点在しつつ広がっている。どの家も柱と板壁を組み合わせて建てた小屋といった風情で、それほど立派な造りではないが、それぞれ庭があり、家の周囲には小さな菜園がある。薪の材料にするのだろうか、板切れや細い丸木を山のように庭に積み上げている家もある。本道を外れて5分も歩くと、もうそこにはどこまでも広がるロシアの大地が横たわっている。人間の存在は、このロシアの大地のなかでは圧倒的に小さく見える。<br /><br /> 教会の周囲は十字架行進の参加者たちのテントで埋め尽くされている。今日は天気がいいから野外生活も快適に違いないが夜は冷え込むかもしれない。同行のジーマ君によれば、キーロフ市をスタートした時点で参加者は3万5000人、この日ベリカロツコエ村に歩いて到着したのは約2万5000人。1万人は、初日だけの参加か途中でリタイアしたらしい。<br /><br />しかし、ベリカロツコエ村で行われる聖水の儀式に参加するのが行進の大きな目的なので、歩けない人や時間のない人は、儀式に参加するためだけに遠方から車でこの村にやって来る。したがって、この日のベリカロツコエ村の人口は、やはり3万人以上に膨らんでいるはずだ。道端には、遠くロストフ・ナ・ドウやモスクワから来た車やバスがあちこちに停められている。キーロフ市とベリカロツコエ村を結ぶ臨時シャトルバスも運行されており、「満席になり次第出発」と表示が出ている。

    ■出発時は3万5000人、歩いて到着したのは2万5000人

    「バーニャ(ロシア式サウナ)があるから、火を焚いて交代で入ろう」、ジーマ氏が提案すると歓声が上がった。夜行列車に乗った日からもう丸4日シャワーを浴びていない。ロシアは湿気が少ないので汗をかいてもすぐ乾いてしまうとはいえ、さすがに気持ち悪い。着替えの洗濯もしたい。ジーマ氏は息子のイリヤ君にバーニャ係りを言いつけた。

     バーニャの準備ができるまでの間、少し村の中を探検してみようと外に出ると、入口につないである大柄の雌犬がじゃれて飛びついてくる。ちょっといかつい顔つきだが性格はいたって人懐っこい。頭を撫で、首筋、わき腹をさすってやると喜んですぐ横に転がる。子育てがすんだあとなのか、途中で子犬と引き離されたのか、まだふくらみのある乳が垂れてだらしない。密かに「ワン子」と名付けて、入口を通る度に相手してやると、顔を見るなり体当たりするように飛んでくるようになった。犬はロシアも日本も変わらない。

     6月初旬、一年で一番日が長いこの時期、夕方7時といっても太陽はまだ高いところにあり、外は十分に明るい。この日は午後からずっと快晴、気持ちの良い天気が続いている。ベリカロツコエの村は、教会に続く広い道の両側に細い道がいくつも合流し、その細道の両側に家が点在しつつ広がっている。どの家も柱と板壁を組み合わせて建てた小屋といった風情で、それほど立派な造りではないが、それぞれ庭があり、家の周囲には小さな菜園がある。薪の材料にするのだろうか、板切れや細い丸木を山のように庭に積み上げている家もある。本道を外れて5分も歩くと、もうそこにはどこまでも広がるロシアの大地が横たわっている。人間の存在は、このロシアの大地のなかでは圧倒的に小さく見える。

     教会の周囲は十字架行進の参加者たちのテントで埋め尽くされている。今日は天気がいいから野外生活も快適に違いないが夜は冷え込むかもしれない。同行のジーマ君によれば、キーロフ市をスタートした時点で参加者は3万5000人、この日ベリカロツコエ村に歩いて到着したのは約2万5000人。1万人は、初日だけの参加か途中でリタイアしたらしい。

    しかし、ベリカロツコエ村で行われる聖水の儀式に参加するのが行進の大きな目的なので、歩けない人や時間のない人は、儀式に参加するためだけに遠方から車でこの村にやって来る。したがって、この日のベリカロツコエ村の人口は、やはり3万人以上に膨らんでいるはずだ。道端には、遠くロストフ・ナ・ドウやモスクワから来た車やバスがあちこちに停められている。キーロフ市とベリカロツコエ村を結ぶ臨時シャトルバスも運行されており、「満席になり次第出発」と表示が出ている。

  • ■バーニャ、バーニャ<br /><br /> バーニャは、家の庭を挟んだ小さな小屋の中にしつらえてあった。小屋はほぼ半分に仕切られ、入口近くの端っこに小さな椅子とテーブル代わりの板が置いてある。ここが脱衣コーナーらしい。その奥には薪が山のように積み上げられている。入口の左奥に小さなドアがあり、そのむこうがバーニャになっている。<br /><br /> 身をかがめて小さなドアをくぐると、簀子のような板を敷きつめた土間の中央にドラム缶大の円筒形のストーブで火が燃え盛っている。ストーブの下半分が炉、上半分は水を入れるタンクだ。ストーブに薪を放り込んで盛大に燃やして部屋全体の空気を暖めると同時に上のタンクで熱湯を沸かすようになっている。<br /><br /> 都市部で目にする本格的なバーニャはストーブの焚口が外部にあり、危険防止のためストーブの周りを石や木で厳重に囲い、室内には2段か3段の木の床がしつらえてある。熱く焼けたストーブに柄杓で水を振りかけると瞬間的に蒸発して、蒸気が部屋全体に充満する。ロシアのバーニャは、日本で一般的なフィンランドサウナ(乾燥した高温サウナ=100?120度)と違って、蒸気サウナだ。温度は60-80度程度と低いが湿度は80-90%と高い、文字通りの蒸し風呂だ。バーニャの中ではヴェーニクと呼ばれる葉のついた白樺や樫の木の枝を水に浸して、体を叩きあって刺激する。葉についた水滴が蒸気となり木の葉の香りと相まって体を包む。血行が良くなり健康に良いと言われている。十分に温まったら小さなプールに飛び込んで体を冷やす。冬だと外に出て裸で雪のなかを転げまわることもある。これを何回か繰り返して楽しむのが一般的だ。バーニャの隣にはもちろん体を洗うコーナーがあり、洗濯室やマッサージ室、軽く食事ができるラウンジなどを備えた豪華なバーニャもある。<br /><br /> しかし、ここは人口数百人の小さな村。そんな立派なバーニャがあるはずもない。むき出しのストーブが部屋の真ん中にデンと鎮座し、周囲の壁際にベンチが置いてあるだけの簡素な造りだ。プールも洗濯室もない。ストーブをガンガン焚いて部屋を暖めたら、壁際の水道からバケツに水を汲み、柄杓で熱く焼けたストーブに水を少しかけて蒸気を充満させる。いい加減汗をかいたら、バケツの水に熱湯を足してほどよい湯加減にし、体を洗う。ついでに衣類の洗濯もする。生憎、この日は火力が弱く、部屋が十分に温まらないうちに入浴したので、少し物足りなかったが、それでも体をしっかり洗い、一息つくことができた。<br /><br /> 余談ながら、通常、バーニャの中にはインドのサリーのような長い布を体に巻きつけて入るが、ここでは小さな手拭一枚、日本の銭湯でおなじみの入浴スタイルだった。男同士、女同士の友人でバーニャを楽しむ場合もあれば、家族で混浴することもある。日本を訪れるロシア人は温泉が大好きで、東京・お台場の大江戸温泉物語や箱根のユネッサンは人気の観光スポットなのだが、一般に他人同士が裸で入浴する日本の風習に抵抗感を示す欧米人に比べて、ロシア人がすんなりと温泉風呂を受け入れて、むしろ大はしゃぎで楽しむのは、こんなロシアのバーニャの伝統があるからに違いない。<br /><br />(つづく)

    ■バーニャ、バーニャ

     バーニャは、家の庭を挟んだ小さな小屋の中にしつらえてあった。小屋はほぼ半分に仕切られ、入口近くの端っこに小さな椅子とテーブル代わりの板が置いてある。ここが脱衣コーナーらしい。その奥には薪が山のように積み上げられている。入口の左奥に小さなドアがあり、そのむこうがバーニャになっている。

     身をかがめて小さなドアをくぐると、簀子のような板を敷きつめた土間の中央にドラム缶大の円筒形のストーブで火が燃え盛っている。ストーブの下半分が炉、上半分は水を入れるタンクだ。ストーブに薪を放り込んで盛大に燃やして部屋全体の空気を暖めると同時に上のタンクで熱湯を沸かすようになっている。

     都市部で目にする本格的なバーニャはストーブの焚口が外部にあり、危険防止のためストーブの周りを石や木で厳重に囲い、室内には2段か3段の木の床がしつらえてある。熱く焼けたストーブに柄杓で水を振りかけると瞬間的に蒸発して、蒸気が部屋全体に充満する。ロシアのバーニャは、日本で一般的なフィンランドサウナ(乾燥した高温サウナ=100?120度)と違って、蒸気サウナだ。温度は60-80度程度と低いが湿度は80-90%と高い、文字通りの蒸し風呂だ。バーニャの中ではヴェーニクと呼ばれる葉のついた白樺や樫の木の枝を水に浸して、体を叩きあって刺激する。葉についた水滴が蒸気となり木の葉の香りと相まって体を包む。血行が良くなり健康に良いと言われている。十分に温まったら小さなプールに飛び込んで体を冷やす。冬だと外に出て裸で雪のなかを転げまわることもある。これを何回か繰り返して楽しむのが一般的だ。バーニャの隣にはもちろん体を洗うコーナーがあり、洗濯室やマッサージ室、軽く食事ができるラウンジなどを備えた豪華なバーニャもある。

     しかし、ここは人口数百人の小さな村。そんな立派なバーニャがあるはずもない。むき出しのストーブが部屋の真ん中にデンと鎮座し、周囲の壁際にベンチが置いてあるだけの簡素な造りだ。プールも洗濯室もない。ストーブをガンガン焚いて部屋を暖めたら、壁際の水道からバケツに水を汲み、柄杓で熱く焼けたストーブに水を少しかけて蒸気を充満させる。いい加減汗をかいたら、バケツの水に熱湯を足してほどよい湯加減にし、体を洗う。ついでに衣類の洗濯もする。生憎、この日は火力が弱く、部屋が十分に温まらないうちに入浴したので、少し物足りなかったが、それでも体をしっかり洗い、一息つくことができた。

     余談ながら、通常、バーニャの中にはインドのサリーのような長い布を体に巻きつけて入るが、ここでは小さな手拭一枚、日本の銭湯でおなじみの入浴スタイルだった。男同士、女同士の友人でバーニャを楽しむ場合もあれば、家族で混浴することもある。日本を訪れるロシア人は温泉が大好きで、東京・お台場の大江戸温泉物語や箱根のユネッサンは人気の観光スポットなのだが、一般に他人同士が裸で入浴する日本の風習に抵抗感を示す欧米人に比べて、ロシア人がすんなりと温泉風呂を受け入れて、むしろ大はしゃぎで楽しむのは、こんなロシアのバーニャの伝統があるからに違いない。

    (つづく)

この旅行記のタグ

1いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

ロシアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
ロシア最安 422円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

ロシアの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP