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サンクトペテルブルクからの帰途、ミュンヘンに立ち寄ってヤンソンス/バイエルン放送響を聴いた。演奏会場は20数年振りに訪れた、懐かしいヘルクレスザールである。前半はベートーヴェンのエグモント序曲とペンデレッツキーのヴァイオリンとヴィオラの二重協奏曲、そしてベートーヴェンの交響曲第7番という重厚なプログラムだ。そして作曲家のペンデレッツキーが会場に招待されており、彼の作品の演奏後には壇上に上り大喝采を浴びていた。なお、非常に評価の高いこのコンビは現在来日中で、先週関西で2回、今週は東京でベートーヴェンの交響曲チクルスを開催中である。<br /><br />ミュンヘンではこの放送響、ミュンヘンフィルと、国立歌劇場オケと3つのAクラスのオケがひしめき合う。オペラのオケの歌劇場オケは別として、最近のミュンヘンではマゼール・ミュンヘンフィルとヤンソンス・バイエルン放送響の二つが最高水準にあり、ミュンヘン子の誇りになっていると聞く。ミュンヘンフィルにはドレスデンに移ったティーレマンに替わり、巨匠ロリン・マゼールがニューヨークから帰ってきた。ティーレマンを惜しむ声も多いようだが、マゼールは以前にこのバイエルン放送響のシェフだったので、この町ではおなじみである。<br /><br />バイエルン放送響は、戦後の1949年にバイエルン州専属として編成された歴史の浅いオケである。歴代指揮者にはヨッフム、クーベリック、コリン・デーヴィス、マゼールと巨匠が並び、ヤンソンスが2003年から、すでに10年の蜜月関係が続いており、多くの評論家が、この組合せを絶賛している。<br /><br />マリス・ヤンソンスが現代最高の指揮者の一人であることは、2006年と今年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートの指揮台に登場したことで証明されている。私はかなり以前からアムステルダム・コンセルトヘボウやピッツバーグのオケとの演奏会で彼の指揮に接していた。オケのメンバーが一生懸命に弾いている、というのがその時の印象である。いや、彼の音楽性がオケのメンバーをそうさせている、と言うべきであろう。痩身でエネルギッシュな指揮ぶりからは、70歳が近い(1943年生まれ)とは信じられないが、今や円熟の時を迎えている。私は2002年ころ、パリでアムステルダム・コンセルトヘボウの演奏会の後、楽屋でお話したことがある。ゲルギエフの強烈な存在感とは対照的に、包み込むような穏やかな話しぶりが印象に残っている。<br /><br />彼はラトヴィアの首都リガの出身で、ソヴィエト時代に当時のレニングラードで活躍したアルヴィド・ヤンソンスの息子であり、現在のサンクトペテルブルクは活躍の原点である。ムラヴィンスキーのアシスタントを務め、テミルカーノフとは師弟関係にあり、ゲルギエフの先輩になる。カラヤンコンクール2位入賞で脚光を浴び、カラヤンにも師事しており、過去の巨匠たちの伝統を引き継いだ古典的な演奏スタイルに、彼の独自のモダンな感性を加えた現代人にアピールする稀有のカリスマ性を持つ。貴重な巨匠として見逃せない存在である。この日のベートーヴェンは、奏者が生き生きとして演奏しているため、とにかく音が生き生きとしている。今週東京では素晴らしいベートーヴェンチクルスを開催していることだろう。<br /><br />なおこのオケはミュンヘンではガスタイクとここヘルクレスザールの両方を使用している。音響効果が全く逆と言ってもいいほど異なる2つのホールを使い分けて、恐らくは世界中のあらゆるホールでも対応できる能力を備えている。近代的なガスタイク(1985年建設、座席数約2400)と、典型的なシューボックスタイプのヘルクレスザール(19世紀初頭建設、座席数約1300)とどちらが音響がいいのか、賛否両論があることだろう。音楽ホールの本質にかかわる議論かもしれない。<br /><br />今回隣に座った年配の女性が話しかけてきて、色々とミュンヘン音楽界のお話を伺った。彼女の意見では、ガスタイクは大きすぎる、ステージが遠い、ヘルクレスザールの方がオケが身近に感じられて好きだ、そして何よりヤンソンスのヴィヴィッドな音作りが聴けるのはここをおいて他にはない、とおっしゃった。私もかなりの部分同感である。ただ、オケ全般、特に管、打楽器の演奏を見るには、客席が階段式に高くなっている近代的なホールの方が優れている。シューボックススタイルの平土間ではオケ全体を見ることは難しい。<br /><br />ところでヘルクレスザールの入り口はわかりにくい。レジデンツの北側、シュターツオーパーとは反対側に入り口があるが、アプローチの道路は大変暗く、初めて行く場合は少々不安になる。空港からはS1またはS8でマリーエンプラッツまで約40分、U3またはU6でひとつ北のオデオンスプラッツを降りて5分の距離にある。ご参考に。

ミュンヘン滞在記No.5:名門ヘルクレスザールでヤンソンス/バイエルン放送響を聴く(改訂版)

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2012/11/17 - 2012/11/18

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ハンク

ハンクさん

サンクトペテルブルクからの帰途、ミュンヘンに立ち寄ってヤンソンス/バイエルン放送響を聴いた。演奏会場は20数年振りに訪れた、懐かしいヘルクレスザールである。前半はベートーヴェンのエグモント序曲とペンデレッツキーのヴァイオリンとヴィオラの二重協奏曲、そしてベートーヴェンの交響曲第7番という重厚なプログラムだ。そして作曲家のペンデレッツキーが会場に招待されており、彼の作品の演奏後には壇上に上り大喝采を浴びていた。なお、非常に評価の高いこのコンビは現在来日中で、先週関西で2回、今週は東京でベートーヴェンの交響曲チクルスを開催中である。

ミュンヘンではこの放送響、ミュンヘンフィルと、国立歌劇場オケと3つのAクラスのオケがひしめき合う。オペラのオケの歌劇場オケは別として、最近のミュンヘンではマゼール・ミュンヘンフィルとヤンソンス・バイエルン放送響の二つが最高水準にあり、ミュンヘン子の誇りになっていると聞く。ミュンヘンフィルにはドレスデンに移ったティーレマンに替わり、巨匠ロリン・マゼールがニューヨークから帰ってきた。ティーレマンを惜しむ声も多いようだが、マゼールは以前にこのバイエルン放送響のシェフだったので、この町ではおなじみである。

バイエルン放送響は、戦後の1949年にバイエルン州専属として編成された歴史の浅いオケである。歴代指揮者にはヨッフム、クーベリック、コリン・デーヴィス、マゼールと巨匠が並び、ヤンソンスが2003年から、すでに10年の蜜月関係が続いており、多くの評論家が、この組合せを絶賛している。

マリス・ヤンソンスが現代最高の指揮者の一人であることは、2006年と今年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートの指揮台に登場したことで証明されている。私はかなり以前からアムステルダム・コンセルトヘボウやピッツバーグのオケとの演奏会で彼の指揮に接していた。オケのメンバーが一生懸命に弾いている、というのがその時の印象である。いや、彼の音楽性がオケのメンバーをそうさせている、と言うべきであろう。痩身でエネルギッシュな指揮ぶりからは、70歳が近い(1943年生まれ)とは信じられないが、今や円熟の時を迎えている。私は2002年ころ、パリでアムステルダム・コンセルトヘボウの演奏会の後、楽屋でお話したことがある。ゲルギエフの強烈な存在感とは対照的に、包み込むような穏やかな話しぶりが印象に残っている。

彼はラトヴィアの首都リガの出身で、ソヴィエト時代に当時のレニングラードで活躍したアルヴィド・ヤンソンスの息子であり、現在のサンクトペテルブルクは活躍の原点である。ムラヴィンスキーのアシスタントを務め、テミルカーノフとは師弟関係にあり、ゲルギエフの先輩になる。カラヤンコンクール2位入賞で脚光を浴び、カラヤンにも師事しており、過去の巨匠たちの伝統を引き継いだ古典的な演奏スタイルに、彼の独自のモダンな感性を加えた現代人にアピールする稀有のカリスマ性を持つ。貴重な巨匠として見逃せない存在である。この日のベートーヴェンは、奏者が生き生きとして演奏しているため、とにかく音が生き生きとしている。今週東京では素晴らしいベートーヴェンチクルスを開催していることだろう。

なおこのオケはミュンヘンではガスタイクとここヘルクレスザールの両方を使用している。音響効果が全く逆と言ってもいいほど異なる2つのホールを使い分けて、恐らくは世界中のあらゆるホールでも対応できる能力を備えている。近代的なガスタイク(1985年建設、座席数約2400)と、典型的なシューボックスタイプのヘルクレスザール(19世紀初頭建設、座席数約1300)とどちらが音響がいいのか、賛否両論があることだろう。音楽ホールの本質にかかわる議論かもしれない。

今回隣に座った年配の女性が話しかけてきて、色々とミュンヘン音楽界のお話を伺った。彼女の意見では、ガスタイクは大きすぎる、ステージが遠い、ヘルクレスザールの方がオケが身近に感じられて好きだ、そして何よりヤンソンスのヴィヴィッドな音作りが聴けるのはここをおいて他にはない、とおっしゃった。私もかなりの部分同感である。ただ、オケ全般、特に管、打楽器の演奏を見るには、客席が階段式に高くなっている近代的なホールの方が優れている。シューボックススタイルの平土間ではオケ全体を見ることは難しい。

ところでヘルクレスザールの入り口はわかりにくい。レジデンツの北側、シュターツオーパーとは反対側に入り口があるが、アプローチの道路は大変暗く、初めて行く場合は少々不安になる。空港からはS1またはS8でマリーエンプラッツまで約40分、U3またはU6でひとつ北のオデオンスプラッツを降りて5分の距離にある。ご参考に。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
ホテル
4.0
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • ヘルクレスザールの入り口はレジデンツの北側にあり、夜は非常に暗い

    ヘルクレスザールの入り口はレジデンツの北側にあり、夜は非常に暗い

  • ヘルクレスザールのホワイエ、伝統を感じさせる

    ヘルクレスザールのホワイエ、伝統を感じさせる

  • ヘルクレスザールのカフェ、当然ながらビールを飲む人が多い

    ヘルクレスザールのカフェ、当然ながらビールを飲む人が多い

  • ヘルクレスザールのステージ

    ヘルクレスザールのステージ

  • ヘルクレスザールのステージの左側のタペストリー

    ヘルクレスザールのステージの左側のタペストリー

  • ヘルクレスザールのステージの右側のタペストリー

    ヘルクレスザールのステージの右側のタペストリー

  • ヘルクレスザールのステージの上から後方を眺める

    ヘルクレスザールのステージの上から後方を眺める

  • ヘルクレスザールのステージの右側のタペストリー

    ヘルクレスザールのステージの右側のタペストリー

  • ヘルクレスザールのステージ

    ヘルクレスザールのステージ

  • 作曲家ペンデレッツキー氏が招待されていた

    作曲家ペンデレッツキー氏が招待されていた

  • ミュンヘン空港駅のSバーン、S1とS8ラインが中央駅を結ぶ

    ミュンヘン空港駅のSバーン、S1とS8ラインが中央駅を結ぶ

  • オデオンスプラッツに行くUバーンには新鋭の電車が走る

    オデオンスプラッツに行くUバーンには新鋭の電車が走る

  • ミュンヘン空港の中庭に登場したクリスマスツリー

    ミュンヘン空港の中庭に登場したクリスマスツリー

  • ミュンヘン空港の中庭のクリスマスマーケット

    ミュンヘン空港の中庭のクリスマスマーケット

  • ミュンヘン空港の中庭のクリスマスマーケットの入り口

    ミュンヘン空港の中庭のクリスマスマーケットの入り口

  • ミュンヘン空港の中庭のスケートリンク

    ミュンヘン空港の中庭のスケートリンク

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