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例年通り9月に世界中の音楽シーズンが開幕するが、ここサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場では、開幕早々に2008年に続いてゲルギエフの指揮で『ニーベルングの指環』の4部作を取り上げた。小生は08年には序夜「ラインの黄金」、第1夜「ヴァルキューレ」を観た。今年12年に第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」を観ることができたので、4部作が完結することになった。この人類の生み出した最も巨大、と言っても過言でない作品をすべて鑑賞するという稀有の機会についてご紹介する。<br /><br />リヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルンクの指環」4部作は、35歳の1848年から61歳の1874年、26年をかけて作曲された。合計約15時間を要する巨大な作品で、本当に限られた歌劇場と指揮者にのみ演奏が許される。15時間という長さだけみても、ブルックナーとマーラーの巨大な9曲(+2曲?)の交響曲の合計よりも長い。またワーグナーが書いた音符の数は、恐らくは歌手、合唱、全オーケストラ(ワーグナーは108人と指定している)を含めたら数倍の数になることだろう。<br /><br />この4部作を鑑賞するのは、小生はもちろん初めてであり、今後もたびたびあり得ることとは思えない。従ってDVDとCDで聴くレヴァイン、ベーム、カラヤン、セル、テンシュテットの演奏と比較するしかない。まずマリインスキー歌劇場管弦楽団については、前述の巨匠が指揮するメトロポリタン、バイロイト、ベルリンフィル、クリーヴランドと比較して格下の感は否めない。しかしこれがゲルギエフの指揮になると強烈なリズム、重厚な低音、咆哮するブラス、炸裂する打楽器など彼の個性が遺憾なく発揮され不満はない。<br /><br />歌手陣については前述のドイツ系の名歌手に比べ、稀にロシア語訛りとロシア的な土臭さを感ずることがあるが、大きな減点になるほどではない。<br /><br />舞台演出はきわめてシンプルで、巨人族に見立てた4人の巨大なはりぼてが立ったり寝そべったりするだけで、優れているとは言い難い。この劇場のロシア物の舞台演出が素晴らしいだけに、少々がっかりさせられたことは事実である。<br /><br />ともあれ、3幕の「ジークフリート」と「神々の黄昏」を連夜で観た。それぞれ休憩は30分ほど取られ、いずれも6時から始まって、終演は前者が11時半、後者は12時を大きく回っていた。聴く(観る)だけでこれだけの忍耐力を強いられる作品を、演奏する、歌う、そして指揮することがいかなることか、想像するだけでも驚嘆に値する。ことにゲルギエフの超人的なエネルギーの噴出には脱帽するしかない。今後の彼の動向には目が離せない。なおチケットの料金はインターネット購入で、3階席の後列で640ルーブル、約1,500円と信じられない価格である。

新シーズンのゲルギエフとマリインスキー劇場:ワーグナー「ニーベルンクの指環」4部作が完結

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2012/09/29 - 2012/09/30

1261位(同エリア1804件中)

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16

ハンク

ハンクさん

例年通り9月に世界中の音楽シーズンが開幕するが、ここサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場では、開幕早々に2008年に続いてゲルギエフの指揮で『ニーベルングの指環』の4部作を取り上げた。小生は08年には序夜「ラインの黄金」、第1夜「ヴァルキューレ」を観た。今年12年に第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」を観ることができたので、4部作が完結することになった。この人類の生み出した最も巨大、と言っても過言でない作品をすべて鑑賞するという稀有の機会についてご紹介する。

リヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルンクの指環」4部作は、35歳の1848年から61歳の1874年、26年をかけて作曲された。合計約15時間を要する巨大な作品で、本当に限られた歌劇場と指揮者にのみ演奏が許される。15時間という長さだけみても、ブルックナーとマーラーの巨大な9曲(+2曲?)の交響曲の合計よりも長い。またワーグナーが書いた音符の数は、恐らくは歌手、合唱、全オーケストラ(ワーグナーは108人と指定している)を含めたら数倍の数になることだろう。

この4部作を鑑賞するのは、小生はもちろん初めてであり、今後もたびたびあり得ることとは思えない。従ってDVDとCDで聴くレヴァイン、ベーム、カラヤン、セル、テンシュテットの演奏と比較するしかない。まずマリインスキー歌劇場管弦楽団については、前述の巨匠が指揮するメトロポリタン、バイロイト、ベルリンフィル、クリーヴランドと比較して格下の感は否めない。しかしこれがゲルギエフの指揮になると強烈なリズム、重厚な低音、咆哮するブラス、炸裂する打楽器など彼の個性が遺憾なく発揮され不満はない。

歌手陣については前述のドイツ系の名歌手に比べ、稀にロシア語訛りとロシア的な土臭さを感ずることがあるが、大きな減点になるほどではない。

舞台演出はきわめてシンプルで、巨人族に見立てた4人の巨大なはりぼてが立ったり寝そべったりするだけで、優れているとは言い難い。この劇場のロシア物の舞台演出が素晴らしいだけに、少々がっかりさせられたことは事実である。

ともあれ、3幕の「ジークフリート」と「神々の黄昏」を連夜で観た。それぞれ休憩は30分ほど取られ、いずれも6時から始まって、終演は前者が11時半、後者は12時を大きく回っていた。聴く(観る)だけでこれだけの忍耐力を強いられる作品を、演奏する、歌う、そして指揮することがいかなることか、想像するだけでも驚嘆に値する。ことにゲルギエフの超人的なエネルギーの噴出には脱帽するしかない。今後の彼の動向には目が離せない。なおチケットの料金はインターネット購入で、3階席の後列で640ルーブル、約1,500円と信じられない価格である。

旅行の満足度
5.0
観光
4.5
ホテル
4.5
グルメ
4.5
ショッピング
4.0
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
30万円 - 50万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配

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  • 変わらぬマリインスキー劇場のファサード

    イチオシ

    変わらぬマリインスキー劇場のファサード

  • マリインスキー劇場ロビーに展示された衣装

    マリインスキー劇場ロビーに展示された衣装

  • マリインスキー劇場のロビー

    マリインスキー劇場のロビー

  • 右側の3階席からの眺め

    右側の3階席からの眺め

  • 王冠を戴く3階席の中央部

    王冠を戴く3階席の中央部

  • 正面から緞帳を見る

    正面から緞帳を見る

  • 「ジークフリート」、コントラバスは7人、左手の奥に位置する

    「ジークフリート」、コントラバスは7人、左手の奥に位置する

  • 「ジークフリート」の舞台装置

    「ジークフリート」の舞台装置

  • 「ジークフリート」のカーテンコール

    「ジークフリート」のカーテンコール

  • 「神々の黄昏」のオーケストラ、右手奥に金管楽器が座る

    「神々の黄昏」のオーケストラ、右手奥に金管楽器が座る

  • 左側の3階席からの眺め

    左側の3階席からの眺め

  • 「神々の黄昏」のカーテンコールの英雄ジークフリート

    「神々の黄昏」のカーテンコールの英雄ジークフリート

  • 「神々の黄昏」のカーテンコール

    「神々の黄昏」のカーテンコール

  • 「神々の黄昏」のカーテンコールの英雄ゲルギエフ

    「神々の黄昏」のカーテンコールの英雄ゲルギエフ

  • 着々と工事が進む新マリインスキー劇場、外壁がほぼ張り終わっている

    着々と工事が進む新マリインスキー劇場、外壁がほぼ張り終わっている

  • 運河をまたいで旧劇場と新劇場を繋ぐ橋

    運河をまたいで旧劇場と新劇場を繋ぐ橋

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この旅行記へのコメント (1)

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  • tadさん 2017/08/12 08:18:38
    もう5年前のことですね。
    旅行記のいいねを押した後がすぐ見えるようになり、読み落としているものが発見しやすくなりました。これも読んでいなかったようです。リングに取り組んだのは5年前でしたね。

    私はラインの黄金とワルキューレをハイティンクの指揮で、コヴェント・ガーデンで見ていますが、後半がまだです。これは、必ず実現しておかないといけません。

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