2010/09/24 - 2010/09/25
669位(同エリア728件中)
つうさん
7時半過ぎ、食堂では全ての客は規則正しく食事を終えていた。ガラ〜ンと客がいない片づけ前の食堂、従業員の方々のしら〜っとした冷たい視線の中で私達は食べ始めた。今夜はアジ尽くしのメニュー。新鮮だが、11時・3時半のおやつで魚は見たくない雰囲気だ。体調の悪いN隊員が箸をつけずに部屋に帰った。さすがに拙(まず)いと感じたのか、従業員さんが気を使い始め、やがて話をしていく中で、お互いの冷たい氷の壁は一気に溶解した。オジサンとおばちゃん、幸いにも二対二、共に心も体も一体となり、やがて夜は更けた。訂正、心だけ一体、もう一つ訂正、8時半には部屋に帰ったのだ。なお先に帰ったN隊員には、むすびと果物を運んでいただいた。テレビでは、あの中国人船長を釈放したという驚きのニュースが流れていた。世間も、私達も、どちらもなかなか大変な一日だったようだ。
翌日は今治駅までシャトルバスで送ってもらう。今治は滅多に来ることのない街である。帰るにはもったいないので、ぶらり、散策することとする。ここは四国、自転車に乗って八十八ヶ所を巡るお遍路さんが通り過ぎる。四国霊場55番札所、南光坊を覗いてみる。正門には力強い金剛力士像。ただし工事中の為、横から入り反対横から出る。その出たお隣の敷地がなぜか神社、しかもそれは『神の島』である(昨日、通って来た)大三島に鎮座する大山祇神社の別宮である。後で知ったのだが、南光坊は大山祇神社に付属して置かれた寺なのだそうだ。ここに歴史の中で、かつて神仏が一体だった時代の名残りを僅かながら垣間見る事が出来るのである。
続いて今治港を目指す。途中、商店街を通るのだが、これが実に寂しい風景なのだ。それはまさしくシャッター商店街である。土曜日の朝、10時は過ぎている。もっと活気が出始めて当然の時間なのだが、半分以上、三分の二近い店のシャッターが開かれていないのだ。道幅の広い通りが一層、寂れた雰囲気を助長してしまう。開いている店の多くは、衣料・呉服・かまぼこ屋さん(名産)等である。ここは造船の町として栄えた。1980年代の造船不況後をタオル産業等で乗りきった。だが船から車への流れは本当に深刻な状況である。本州からの観光客はここを素通りして松山や他の観光地へ流れる。果たして今治散策は、港に近い商店街の盛衰の軌跡を辿るものとなってしまった。
港も閑散としている。お土産を物色するのに観光物産館に入るも客はまばら。買わずに出るのが申し訳ない。港に停泊する船を眺めながら今治城へと進む。城のお堀がなかなか立派である。お堀の中を鯉ではなくボラらしき魚が泳ぐ。どうやら海水を入れているようだ。天守閣は昭和33年に観光用で再建された。城の中には神社がある。しかも地主だとか。珍しい権利関係のようだ。
お土産を求めて、一路、デパートの大丸へ。途中、今治国際ホテルという20階を優に超える新しく立派なランドマーク・タワーの前を通り過ぎる。おおっ、これは。一同、その威容に圧倒される。今治君、なかなかやるじゃないか。そう思ったのもつかの間、同じ通りに並ぶはずの今治大丸が現れない。交差点まで来て、そこにある大きな建物に百貨店らしき面影を見る。繁栄の時、その建物の屋上からは、「○○の味覚物産展、開催中」等と大垂れ幕がいくつも下がっていたであろう様子を容易に想像する事かできる。2008年、今治大丸は閉店したそうである。メインロードに面するその建物は、新しい主を求めながら静かに佇んでいた。
うどんでも食うか。商店街に向かい合って二つのうどん店があった。「かめや」は松山の老舗で私もN隊員も学生時代よく食べたものだ。懐かしいので、「こっち、こっち」と入ったもののメニューにビールがなく、急きょ向かいの店にしたのが失敗だった。それは一口食べた瞬間に、「やられたあ〜」とへなへなになる事請け合いの味なのである。店を出てから、会長はそれを「メリケン粉うどん」と名付けた。
今回の旅は何度もくじけながら進んだ。私達はもう一度気を取り直し、駅のコンビニで土産を買い、行きの何十倍も速い高速バスで帰途についた。バスの車窓には、瀬戸内の海と島々の穏やかで文句なく美しい景色がどこまでも広がっているのである。
(写真=自転車で通過する来島海峡大橋)
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 1万円 - 3万円
- 交通手段
- 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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