2012/01/30 - 2012/01/31
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ちびのぱぱさん
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マラッカが世界遺産に指定されたと聞いても、どうもぴんと来ませんでした。
思い出をたどると、溶かした鉛のような泥の上を這い回る巨大なオオミズトカゲを、橋の上から飽かずに見た、炎熱に揺れる運河が浮かんでまいりました。
ポルトガルのリスボンに似た、朽ちた瓦屋根の上に草が繁茂する家並みに、饐えた郷愁を覚えたものでした。
- 旅行の満足度
- 3.5
- 観光
- 3.5
- グルメ
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 徒歩
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-
タイ南部のハジャイの街を歩いていると、木でできた船の模型を大事そうに持っている少年とすれ違いました。
時は旧正月のまっただ中で、街は中国人でごった返しています。
少し先の道ばたに、その木製の帆船模型をたくさん乗せたリヤカーが、様々な商品を扱う屋台の隙間に停めてありました。
そこで足を止めると、リヤカーの主は期待を込めたまなざしを向け
「チェンホー」
と言いました。 -
午後ハジャイから乗って、朝クアラルンプールに着く国際寝台列車ランカウイエクスプレスの中で、チェンホーつまり鄭和のことを考えていました。
今から600年も前に、巨大な船団を率いて大旅行を行った中国の英雄です。
なんとアラビアはアデンにまで到達したと言います。 -
「僕は20歳だった。それが人の一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。」
あまりにも有名な、ポールニザンのアデンアラビアの導入部です。
いつしか夜の帳が降り、ウイスキーの粋な薬効も手伝って、思いは彷徨います。
「そうだ、マラッカに行ってみよっと。」
クアラルンプールから少し足をのばして見る気になりました。マラッカに行けば、鄭和にあえそうな気がします。
ところで、酔狂で終いまで読んだアデンアラビアは、とうとう最後までちんぷんかんぷんでした。 -
見栄っ張りなクアラルンプールの新しいバスターミナルから、5年後の姿を想像させるマラッカのバスターミナルに、お昼ちょうどにバスが到着しました。
さした計画もなく思いつきで来てしまったことに、後悔の念が胃酸のように胸に上りますが、来てしまったものは仕方がありません。
迷路のようなバスターミナルの中を抜けて、教えられた市内行きのバスに乗りました。5年前にも来たことがあるから何とかなるでしょう。
適当に見当をつけてバスを降りると、目の前の運河の向こうにチェンホーレストランという文字が目に入りました。
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半分、資料の展示室のようになっていました。
お金を払って奥の方に進んでゆく白人の紳士を見守っておりましたが、けちの虫が騒いぐので、どうしようかとためらいます。 -
鄭和が乗った120mもの司令艦、宝船(ほうせん)の模型でしょうか。
いわゆる大発見時代の百年も昔に、堂々たる船団が現れたアラビアやインドは、どんな騒ぎになったのでしょう。 -
自己防衛はしても、侵略行為はしなかったとか。
そういえば、キリンのことをキリンと言うようになったのも、この大航海の産物のようです。
皇帝に献上するときに、伝説の動物である麒麟とはこれのことです、って説明したんだとか。
なるほど、日本橋の欄干の麒麟と動物園にいるキリンは、あまり似ていないと思ったんです。キリンビールのラベルのも似ていない。 -
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展示室の隣はカフェになっていて、一休みできるようになっています。白人客に人気で、家族づれやカップルでにぎわっています。
とうに昼の時間を逸して、何か腹に入れたいところですが、何ができるのだろう……。
中年の太った愛想の良い男性が、メニューを手にニコニコしてテーブルのところに来ました。
夕食までのつなぎに、何か小腹に入れておきたい。
メニューにはスパゲッティが何種類か乗せられていて、手頃な料金です。
でも、どうも危険な香りがします。スパゲッティには世界中でひどい目に遭ってきました。
不思議と無性に、今食べたいのはスパゲッティなのです。
「やめた方がいいんじゃない?今までロクなのにあたってないでしょ。」
と、相方のきわめて理性的なアドバイスが、かえって私の判断力を狂わせました。
「ペペロンチーノひとつ!」
出てきたそばのようなパスタはさておき、味付けは悪くありませんでした。
「やっぱり失敗だったんでしょう。」
サンドイッチをほうばりながら、相方が上目遣いに言いました。そのとおりです。 -
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5年前に来たときは入らなかった(けちった)スタダイスに入場してみました。
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こんな風に広場を見下ろせます。
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ここにも船の模型。
先ほどの方が立派です。 -
堂々たる鄭和の石像。
宦官だった鄭和はひげがないということでしょうか。
それがなぜか、現代風に見えます。 -
日が暮れて、ようやく暑さが和らぎます。
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町外れで見つけたインド料理屋で夕食を取ることにしました。
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サラバンナというお店で、たいそう繁盛しておりました。
店の奥には、小学校の手洗い場のように蛇口が並んでいて、ここは一つ手で食べようじゃありませんか。
お隣の、見るからにインド人のご家族がケーキを持ち込んでおじいちゃんの誕生日を祝っています。
この街の方だそうで、全員ナイフとスプーンを使って召し上がっていました。なんだか、手で食べている私たちの方が変な気分。
ふと、先ほどのそばのようなパスタを思い出しました。
この町は、世界遺産になってずいぶん変わったようです。
なんて言うか、街がすっかりきれいになったんです。
喜んでいるのは、どちらかというと地元の人のようにお見受けしました。
世界遺産というブランドを手にしたマラッカは、これからどのように変わってゆくのでしょう。
世界遺産という金髪のウィッグは、果たして東南アジアにとっては、どんな役割を果たすのでしょう。
美味しいカレーを食べながら、そんなことを思いました。
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