2000/02/19 - 2000/02/19
41位(同エリア148件中)
北風さん
ツアー3日目の朝がきた。
昨夜までのベッドから転げ落ちそうになる程の揺れがぴたりと止まっている。
どうやらジェットコースター「ドレーク海峡」号が終点を迎えたらしい。
ベッドから飛び降りる!
この2日間、閑散とした食堂で豪華フルコースを食いあさったおかげで、気力充実!お肌ツルツル!外の世界が見たかった!
と、廊下に出ると・・・
ロレックスやシャネルをぶら下げてはいるが、皆一様に一滴の胃酸も残っていないやつれた様相で、腕に点滴の痕が痛々しいゾンビの群れがいた。
マイケルジャクソンのスリラーのエキストラと紹介されてもおかしくない方々だが、このゾンビの群れもまた、ヨタヨタと陽の当たる世界を目指して動いているような・・・
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.5
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 1.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 船
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
甲板の上に出ると、昨夜まで忙しく上下していた水平線は、穏やかに身じろぎもせず朝日を浮かべていた。
雨など一度も遭わなかったはずなのに、甲板のあちこちに出来た水たまりだけが、昨夜までの闘いを物語っている。 -
とうとう南極圏に入ったらしい。
空気は確かに冷たいが、凍てつく程ではなかった。
静かだ。
「音の無い世界」と聞いた事はあったけど、これほどの静けさは寂しさを連れて来る。
・・・これが「静寂」の語源? -
陸地らしき物が見えてきた。
南極大陸なのか?
ん?でも、スケジュールで見る限り、南極大陸に到着するのは明日になっているけど・・・ -
では、この見上げる程の雪を載せた陸地は、・・・
BRABANT ISLAND? -
船の両脇に島影が増えてきた。
水路が少しずつ狭くなってきたような・・・
と、行く手に、もはや島としか見えないぐらいの巨大な氷山があちこちに出現!
船が船速を落とす!
と、同時に船底から低い回転音と振動が!
船首の側面に設置されたハイテク方向転換スクリューが始動したらしい。
近づいて来る氷山を前に、バビロフ号が船体をきしませながら、強引に首を振り出した。
まるで映画みたいな迫力だ。
ゾンビのおばちゃんが、「Oh!」と口をおさえて立ちすくむ。
このタイミングで、BGMはまた、ロシア船員お気に入りの・・・
『タイタニック』!
(ある意味ベストな選曲だが、一番聞きたくない選曲でもある)
野球場が4つ以上は作れそうな巨大な氷の塊が、ゆっくりと船の正面から側面へと流れていく。
誰も声を出そうとしない。
いや、声が出ない。
この音の無い世界の中、バビロフ号だけが次の障害物を発見して、またスクリューを回し出した。 -
双眼鏡をのぞいていたゾンビおばあちゃんは、再び低く「My God!」とつぶやき、水平線を指差した!
その指先を真似ると、・・・
あれは、・・・?
あの微かな水しぶきは・・・? -
不意にアナウンスがくすんだ青と白だけの世界に割り込む!
「10時方向、ザトウクジラ!」 -
午前中のほとんどの時間をこの甲板で過ごし、
ランチのアナウンスとともに、いそいそと豪華レストランで食い散らかし、
再びこの定位置へと腰を落ち着けた。
南極では、ただ体温を保持するだけでかなりのカロリーを消費するらしく、ツアーの豪華山盛りフルコースで摂取する横綱顔負けの高カロリーにはそれなりの理由があるらしかった。
つまり、ドレーク海峡で強制的に逆噴射ダイエットを強いられた挙げ句、点滴以外の栄養を摂取していなかったゾンビの方々は、一人、また一人と寒気にやられ、顔色を青白から土気色に変えてベッドに戻って行く結果となり・・・
現在、鋼鉄の三半規管を持ち、閑散としたレストランで食欲を解放していたチーム 「飽食」のメンバーだけが、この夢の様な時間を楽しんでいる。
南極観光に一番必要な物は、資産力や権力ではなく、体力=食欲を維持できる丈夫な三半規管かもしれない。 -
アナウンスが静寂の海に響き渡る。
「Antarctic Continent(南極大陸)!」
・・・つまり、あの白い大地が、 『南極大陸』?
おおおっ!
あれが、南極大陸!
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