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昨日の抜けるような青空とはうって変わって、たれ込める曇天の肌寒い日となった。屋外では鮮やかな写真を撮ることができないが、今日は久々にフィルハーモニーホールの演奏会に出掛ける、しかもリハーサルを見学できる楽しみな日だ。サンクトペテルブルクフィルハーモニーはもちろんロシア最高、世界的にも指折りの楽団で、私にとってもムラヴィンスキー(1903-1988)の指揮で忘れ得ない演奏会を経験しており、特別な存在である。<br /><br />サンクトフィルのシーズンは例年9月末に開幕する。今年も常任指揮者は巨匠テミルカーノフ氏、首席指揮者はアレクセーエフ氏である。サンクトフィルのコントラバス首席奏者のアルテム・チルコフ氏にご招待をいただき、かねてから希望していたリハーサルを見学することができた。チルコフ氏とは2008年に飛行機で乗り合わせて知り合って以来、しばしばコンサートに招待をいただく仲である。また10月28日から11月にかけて日本と韓国の演奏旅行に来る予定で、名古屋での演奏会にもご招待をいただいた。<br /><br />チルコフ氏はミュンヘンで6年修行して、帰国早々このオケの首席に就任、今年アメリカで行われたコントラバスコンクールで優勝した俊才である。しかし彼から本音を聞くと、このオケは演奏会が少なく経済的には不満があり、収入の多いドイツやアメリカのオケに移ることを考えているという。彼の腕前であれば、超メジャーオケでも十分首席をこなすことだろう。<br /><br />この日の曲はロッシーニのセミラーミデ序曲、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第5番、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、指揮はアレクセーエフ氏である。ゲネプロは11時から2時ころまで、すでに4回のリハーサルを重ねており、本番当日のゲネプロはほとんど通すだけ、ところどころアンサンブルを確認する程度であった。<br /><br />ゲネプロ終了後、チルコフ氏と義理の弟(奥さんの弟)であるニコライ氏とともにカフェで会話した。ニコライ氏はサンクトフィルのソロチェリストであり、同時に4年前から二クラウス・アーノンクール氏の主宰するウィーンのコンツェントゥス・ムジクスの首席チェロ奏者も兼務しており、明日はウィーンに移動、サンクトとウィーンを半々で往復する日々だという。話し好きの陽気な方で、メールアドレスを交換したところ、当日の内にもうメールが来た。アーノンクールのカラヤンに対する対抗意識に話が及び、「カラヤンについてどう思うか」という質問に「He is a good pilot!(指揮者ではない)」と話したという。<br /><br />また「シンフォニーとオペラとどちらがお好きですか?」と尋ねてみたところ、顔を見合わせながらいずれも「シンフォニー」とお答えになった。オペラは長い、重い、歌が中心、緻密な練習が少ない、などの理由が出てきたが、話はサンクトフィルとマリインスキーオペラの、更にはテミルカーノフとゲルギエフの比較に発展した。二人の共通意見として、シンフォニーの方が十分な練習をつんで質の高い音楽を提供する、オペラは練習回数が少なく、緻密な演奏ができない、特にゲルギエフはほとんど練習をしないで本番に臨んでいる、という批判的な意見がでた。テミルカーノフの入念な音楽作りでサンクトフィルは質の高い演奏を提供している、など音楽ファンにとって大変興味深い会話となった。<br /><br />演奏会本番は夜7時から、アレクセーエフ氏の解釈は正統的、今夜はオケの威力を発揮するプログラムではなかったが、弦のアンサンブルは超一流、木管も正確で音色が美しく、金管もパワー十分で出るべきところは出る、満足できる演奏会であった。演奏会終了後、楽屋にチルコフ氏とニコライ氏にお礼のご挨拶に伺ったところ、なんとテミルカーノフ氏が楽しげに団員と談笑していた。チルコフ氏は彼に私を紹介してくれ、記念写真まで撮ってくれた。恥ずかしながらここに掲載しておく。彼は73歳、現役最高の指揮者の一人で、カリスマ性を持った残り少ない巨匠である。<br /><br />ついでにこの日に訪れたシェレメチェフ宮殿の楽器博物館、マリインスキー新劇場の建設工事の写真を掲載しておく。壁の工事が進んできていた。モスクワのボリショイ劇場の改修工事には5年を要したそうであるが、このゲルギエフ肝いりのプロジェクトが何年で完成するか、しばらく注視しておく。<br />

秋色に染まるサンクトペテルブルク②:開幕したサンクトフィルのリハーサルを聴く

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2011/10/15 - 2011/10/16

1264位(同エリア1811件中)

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28

ハンク

ハンクさん

昨日の抜けるような青空とはうって変わって、たれ込める曇天の肌寒い日となった。屋外では鮮やかな写真を撮ることができないが、今日は久々にフィルハーモニーホールの演奏会に出掛ける、しかもリハーサルを見学できる楽しみな日だ。サンクトペテルブルクフィルハーモニーはもちろんロシア最高、世界的にも指折りの楽団で、私にとってもムラヴィンスキー(1903-1988)の指揮で忘れ得ない演奏会を経験しており、特別な存在である。

サンクトフィルのシーズンは例年9月末に開幕する。今年も常任指揮者は巨匠テミルカーノフ氏、首席指揮者はアレクセーエフ氏である。サンクトフィルのコントラバス首席奏者のアルテム・チルコフ氏にご招待をいただき、かねてから希望していたリハーサルを見学することができた。チルコフ氏とは2008年に飛行機で乗り合わせて知り合って以来、しばしばコンサートに招待をいただく仲である。また10月28日から11月にかけて日本と韓国の演奏旅行に来る予定で、名古屋での演奏会にもご招待をいただいた。

チルコフ氏はミュンヘンで6年修行して、帰国早々このオケの首席に就任、今年アメリカで行われたコントラバスコンクールで優勝した俊才である。しかし彼から本音を聞くと、このオケは演奏会が少なく経済的には不満があり、収入の多いドイツやアメリカのオケに移ることを考えているという。彼の腕前であれば、超メジャーオケでも十分首席をこなすことだろう。

この日の曲はロッシーニのセミラーミデ序曲、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第5番、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、指揮はアレクセーエフ氏である。ゲネプロは11時から2時ころまで、すでに4回のリハーサルを重ねており、本番当日のゲネプロはほとんど通すだけ、ところどころアンサンブルを確認する程度であった。

ゲネプロ終了後、チルコフ氏と義理の弟(奥さんの弟)であるニコライ氏とともにカフェで会話した。ニコライ氏はサンクトフィルのソロチェリストであり、同時に4年前から二クラウス・アーノンクール氏の主宰するウィーンのコンツェントゥス・ムジクスの首席チェロ奏者も兼務しており、明日はウィーンに移動、サンクトとウィーンを半々で往復する日々だという。話し好きの陽気な方で、メールアドレスを交換したところ、当日の内にもうメールが来た。アーノンクールのカラヤンに対する対抗意識に話が及び、「カラヤンについてどう思うか」という質問に「He is a good pilot!(指揮者ではない)」と話したという。

また「シンフォニーとオペラとどちらがお好きですか?」と尋ねてみたところ、顔を見合わせながらいずれも「シンフォニー」とお答えになった。オペラは長い、重い、歌が中心、緻密な練習が少ない、などの理由が出てきたが、話はサンクトフィルとマリインスキーオペラの、更にはテミルカーノフとゲルギエフの比較に発展した。二人の共通意見として、シンフォニーの方が十分な練習をつんで質の高い音楽を提供する、オペラは練習回数が少なく、緻密な演奏ができない、特にゲルギエフはほとんど練習をしないで本番に臨んでいる、という批判的な意見がでた。テミルカーノフの入念な音楽作りでサンクトフィルは質の高い演奏を提供している、など音楽ファンにとって大変興味深い会話となった。

演奏会本番は夜7時から、アレクセーエフ氏の解釈は正統的、今夜はオケの威力を発揮するプログラムではなかったが、弦のアンサンブルは超一流、木管も正確で音色が美しく、金管もパワー十分で出るべきところは出る、満足できる演奏会であった。演奏会終了後、楽屋にチルコフ氏とニコライ氏にお礼のご挨拶に伺ったところ、なんとテミルカーノフ氏が楽しげに団員と談笑していた。チルコフ氏は彼に私を紹介してくれ、記念写真まで撮ってくれた。恥ずかしながらここに掲載しておく。彼は73歳、現役最高の指揮者の一人で、カリスマ性を持った残り少ない巨匠である。

ついでにこの日に訪れたシェレメチェフ宮殿の楽器博物館、マリインスキー新劇場の建設工事の写真を掲載しておく。壁の工事が進んできていた。モスクワのボリショイ劇場の改修工事には5年を要したそうであるが、このゲルギエフ肝いりのプロジェクトが何年で完成するか、しばらく注視しておく。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.0
ショッピング
4.0
交通
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
50万円 - 100万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ルフトハンザドイツ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • フィルハーモニーホールの外観

    フィルハーモニーホールの外観

  • フィルハーモニーホールの入り口のムラヴィンスキーのレリーフ

    フィルハーモニーホールの入り口のムラヴィンスキーのレリーフ

  • フィルハーモニーホールの入り口のムラヴィンスキーのレリーフ

    フィルハーモニーホールの入り口のムラヴィンスキーのレリーフ

  • ロビーのショスタコーヴィッチの銅像

    ロビーのショスタコーヴィッチの銅像

  • ロビーに飾られた歴代常任指揮者

    ロビーに飾られた歴代常任指揮者

  • ロビーのムラヴィンスキーの写真

    ロビーのムラヴィンスキーの写真

  • アレクセーエフ氏のリハーサル

    アレクセーエフ氏のリハーサル

  • コントラバス首席のチルコフ氏(一番右)とチェロトップサイドのニコライ氏(一番下)

    コントラバス首席のチルコフ氏(一番右)とチェロトップサイドのニコライ氏(一番下)

  • iPadを見ながらリハーサル

    iPadを見ながらリハーサル

  • アレクセーエフ氏のリハーサル

    アレクセーエフ氏のリハーサル

  • アレクセーエフ氏のリハーサル

    アレクセーエフ氏のリハーサル

  • 開場したフィルハーモニー

    開場したフィルハーモニー

  • 喝采を浴びるアレクセーエフ氏

    喝采を浴びるアレクセーエフ氏

  • 巨匠テミルカーノフ氏と筆者

    巨匠テミルカーノフ氏と筆者

  • チャイコフスキーも宿泊したホテルヨーロッパ

    チャイコフスキーも宿泊したホテルヨーロッパ

  • ホテルヨーロッパのテラス

    ホテルヨーロッパのテラス

  • 楽器博物館のあるシェレメチェフ宮殿

    楽器博物館のあるシェレメチェフ宮殿

  • シェレメチェフ宮殿の居間

    シェレメチェフ宮殿の居間

  • シェレメチェフ宮殿の居間

    シェレメチェフ宮殿の居間

  • 楽器博物館の様々な小型ヴァイオリン

    楽器博物館の様々な小型ヴァイオリン

  • 楽器博物館の珍しいヴァイオリン

    楽器博物館の珍しいヴァイオリン

  • 楽器博物館の珍しいコントラバス

    楽器博物館の珍しいコントラバス

  • 楽器博物館のチェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、コントラバス

    楽器博物館のチェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、コントラバス

  • マリインスキー劇場のファサード

    マリインスキー劇場のファサード

  • 建設の進む新マリインスキー劇場

    建設の進む新マリインスキー劇場

  • 現劇場と運河をはさんで建設中の新劇場

    現劇場と運河をはさんで建設中の新劇場

  • マリインスキー劇場のロビー

    マリインスキー劇場のロビー

  • マリインスキー劇場内部の模型

    マリインスキー劇場内部の模型

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この旅行記へのコメント (2)

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  • tadさん 2017/07/02 18:14:09
    テミルカーノフさんとの写真発見
    久しぶりに古い旅行記を捜していましたら、このテミルカーノフさんとの写真を発見しました。6年前に紹介されたんですね。その頃からのサンクトペテルブルク滞在、さぞ充実した日々だったでしょう。ハンクさんの黄金時代のひとつだったことでしょう。

    ハンク

    ハンクさん からの返信 2017/07/09 10:12:27
    RE: テミルカーノフさんとの写真発見
    ご返事遅くなり申し訳ありません。貴重な思い出の写真を見つけていただきましてありがとうございます。Tadさんと同様に自分や家族の写真は原則載せていませんが、自分の記録として忘れられない写真として目立たないように載せてしまいました。
    このころのサンクトペテルブルクの生活は本当に充実していました。プロジェクトも成功裏に収めることができ、週末はほとんどフィルハーモニアとマリインスキーで過ごしていました。コントラバス首席のチルコフ氏のおかげでサンクトフィルのステージに立った著名な音楽家たちと親しくお話しすることができました。マリインスキーの楽屋も驚くほど自由に立ちることができ、ゲルギエフ氏も私の名前を覚えてくれました。今となっては夢のようです。

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