2010/08/04 - 2010/08/05
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costinさん
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西ウクライナ伝説に陶酔した俺は、駅のホテルに・・
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斜陽も山の端に掛かる頃、山岳鉄道はCKOЛEに入線する。
この沿線のいくつかの町には、列車の窓からでも観光地の様相を呈したホテルの家並が窺えた。
だが俺は、何とはなしにこの『CKOЛE』の地図上の文字に惹かれていた。
スコーレ? とでも呼ぶのだろうか。
『何かある!』
と、期待に膨らむのを禁じえない俺だった。 -
CKOЛEに降り立ってみると・・・駅舎の周りには、これといって何も無い。
『CЮKAったかな・・・』(CЮKAはロシア語のスラングで「くそ!」みたいな感じ。辞書には「メス犬」とあったw)
窓口で聞いてみる。
「この近所にホテルない?」
「隣にあるけど・・」
「隣?」
「あのドアよ!」
と窓口の女性は丁寧に指差して教えてくれた。
だが、指の指された方向はどう見ても待合室の向こう側のドアにしか見えない。
「あそこ? 駅の中のホテル?」
「そうよ!」
これは面白そうだ! 値段を聞くと、35UAだと言う。
安い! スキー場のドミ10人部屋45UAより更に安い。
「ひとり部屋なの?」
「基本はふたり部屋だけど、今日はお客が居ないのでひとりでも平気よ。」
すぐさま支払いを済ませ、部屋の鍵を受け取る。
「鍵はちゃんと、ここに返して下さいね!」
鍵を返さないまま、出奔する奴がいるのも不思議な気がしたが、まあ俺には関係なさそうだ。
部屋の扉は、シリンダー式3連錠とかなり厳重な鍵がかかるようになっている。
入り口に台所、奥がトイレとシャワー、右手の部屋がおそろしく天井の高い寝室だ。
こんな部屋見たこと無いw
天井までの高さが5m以上あるホテルの部屋はお初だw
逆に落ち着かないかも知れないw -
荷物を置き、散歩と晩飯に出る。
周りに何も無いので、バスの止まる街道まで歩く。
「この近所にレストランってある?」
「ついてきな。」
ややロシアン・マフィア風の大柄な二人組みに道案内され300mほど歩くと、
「ほれ、あの脇道の門がレストランの入り口だ。」
ふたりはそのまま・・話しながらスタスタと歩き去っていった。
レストランは・・・地下にもぐる造りになっている。
中は・・普通のレストランだ。
客も・・俺以外に2組いる。
値段は・・バールやカフェと違い、若干高いが、まあ普通のレストランだ。
会計の時のウェイトレスとの会話。
「旅行者?・・・どちらから?」
「日本。」
「どこに泊まっているの?」
「駅のホテル。」
「え?・・」
「どうかした?」
「・・駅員、何も言わなかったの?」
「別に何も・・何かあるの?」
「・・・・・・」
「何だよ! 怖いな、知ってたら教えてくれないか。」
「・・・あまり・・・良い噂は聞かないのよ。・・特に真夜中ね!」
その時、背筋を凍りついた猫の尻尾がすり抜けるような感覚があった。 -
おかしいと想っていたんだ!
第一あの部屋であの値段は安過ぎる。
駅舎だって新築に近いかも知れない。
台所にはポットまで用意されている。
『くそ! 騙された。キャンセルだ。冗談じゃない。俺は幽霊とかは怖くは無いが、得体の知れないものは苦手だ!』
駅への帰り道、妙にリアルなスプレーの落書きを見つける。
そこには、何故か英語でdeathの文字が・・
『何故だ! ロシア語じゃなく、何で俺に解かりやすいような英語なんだ? これって何かの暗示か?』
そもそも日本の幽霊などと違い、肉食ヨーロッパが本気で物の怪を繰り出してくれば怖いに決まっている。
考えてもみろよ。
生身の女でさへ、あんな青白い彫りの深い顔してるのに、その生霊ともなれば言語を絶する怖さだろう?
美しかった筈の青い瞳が、別府温泉の地獄みたいに乳白色に濁っていたら・・・もうチビリますって。 -
陽もとっぷり暮れ、駅の周りには人影もない。
俺は駅の窓口で抗議した。
が、先刻の女性はおらず、おっさんが面倒臭そうに出てくる。
しかも、全く英語が通じない。
『ほう、そう来るか! それなら俺にも考えがある!』
そう、とっととこんな宿退散すれば良いだけだ!
鍵を開く、ガチャリという金属音がドーム状の待合室に響く。
流石に新築なので、映画のようなドアの『ギギギ〜』と軋む音はしない。
『冗談じゃない! こんなとこに居られるか!』
俺は引っ張り出した洗面具や着替えを詰め込み、身支度を整える。
そのときだ!
急激な刺し込むような腹痛を覚える。
『ほうら、オイデなすった。俺を出さない気だ。』
まだ時間はある。
腹をおさへトイレの便器に座り考える。
こうなってくると、何から何まで仕組まれていた気がしてくる。
あのマフィア風のふたり組も、レストランも、そして最初にこの部屋の鍵を渡した若い女駅員さへグルに思えてくる。
その全てのシーンが、モノクロでフラッシュ・バックする。
どこかに・・何かのヒントが・・糸口がある筈だ。
最初から、どう足掻いても『詰み』なんて有り得ない。
何か脱出の手掛かりがあるはずだ。
キリキリ痛む腹を摩り、便器にまたがり眉間に皺寄せ考え込む姿こそ、傍から見れば異様に見えたことだろう。
だがこの時の俺はそれどころではない。
頭をフル回転させ、糸口を模索する。
『このトイレの便座・・和式でなくて助かったな。これ和式で旧式のポットンなら間違いなく、ここから顔か手が出てくる。』
自分の言った言葉にしまった!と思いながら、・・そっと股間の下の吸い込み口を覗く。
黒い指のようなものが見える。
『ヒィ・・・大丈夫だ、あれは俺の便だ。あれが手に化けるようなら俺の負けだ。もう好きにしてくれ!』
トイレの右手には、独立式のシャワー設備が見える。
『まさか・・最近ここで誰か首を吊ったとか・・』
トイレに長居は危険と判断。
とりあえず寝室に逃げ込み、腹をおさえて横になった。
辺りはシーンと静まり返っている。俺の鼻息が聞こえるくらいだ。 -
何を間違ったか? 俺はそのまま寝込んでしまっていたようだ。
俺は昔からそうだ。苦しくなると、寝てしまう癖がある。
何時間経ったのかは見当が付かない。
『これも罠か? はっきりしろ、俺! どっちだ?逃げるか?耐えるか?』
逃げるに当たって、先ほどまでの下腹部の痛みは和らいでいた。
『これなら、尻にテッシュを挟んでいけば大丈夫かも知れない。』
ゆっくりと体を起こす。
痛みもそんなに強くはない。
そのとき、「バタン」と遠くで音がする。
ここではない。ドアの外だ。
多分、待合室のドアが1度開いて、閉じられた音だ。
『しまった! もうドアからは逃げられない!』
寝室には窓がある。ブラインドをちょっと開くと、
『だめだ。鉄格子が付いてる。』
盗難防止であろう鉄格子が行く手を遮っている。
絶体絶命。
カリツ カリッ
待合室で何かを引っ掻く様な音がする。この部屋のドアを掻いている様でもない。
ぁぅ〜
これは明らかに女の声だ。苦しそうだ。声を押し殺して、地獄の底から呻いている。・・鬼女?
それと共に・・・
パパンッパンパン
・・・どっかで・・聞き覚えのある・・・
アッアッアッアッ
『フム。どうやら何か打ち付ける音と声はシンクロしているようだ。』
俺の中に巣食っていた恐怖心が、嘘のようにすぅ〜と消えた。
俺はしのび足でドアに近づくと、ドアに寄り添い聞き耳を立てる。
上手く耳がドアに密着しない。
俺は忍び込んだ『コソ泥』の様に・・
台所のコップを片手に、真面目くさった顔で・・ひとつため息をつく。
そのコップをそっと音を立てぬようドアに当てる。
糸電話よろしく待合室の異変に全神経と想像力を総動員する俺だった。
そう、・・時折瞑目しては静かに頷きながら。 -
翌朝、俺は早くから駅の待合のシートに腰掛け、難問を解決したホームズさながらに満足気にリボフ行きの列車を待っていた。
時折、口元に笑みさへ浮かべながらつぶやいた事は・・・。
『色事への探究心は、恐怖心をあっさり凌駕する。』 -
リボフに到着。
だがいつもの駅とは違う。
よく見ると、いつものホームはちょっと離れた場所にあるだけで、近郊線はこちらのオープン・ホームに到着する事が判明。
駅前のバス乗り場から市内センター、オペラ座方面行きを探す。 -
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ホテルは去年泊まった「リボフ・ホテル」。
若干値上がりしており、バス・トイレ付きで170UA。 -
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去年は無かったタイ・マッサージ店を発見。
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映画館。
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右の標識を最初に見たとき、
「ほほう、通学路では3回オハーって言うのか?」
と思った。
キリル文字でZONEの意味なのねw -
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どこにでも良くいるタイプのおじさん。
下半身露出狂って言うんですか?
噴水で局部を冷やしていた。w -
それを面白がる娘たち。
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良く通ったバール。
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駅付近にあるマーケット。
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リポフ駅。
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