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ケーブル駅傍の蓮華ショウマ自生地にはほんの僅かの花が残っているだけであり、御岳神社横の斜面には全く花の姿形もなく、既にショウマの季節は終わったのかも知れないが、いつも寄る山門下の土産物店の店員に黄蓮華ショウマがまだ咲いているかどうか尋ねてみた。そうしたところ今最盛とのこと。信じられない思いで、混んでいる店内を掻き分け窓際まで行くと、聞いた通り満開に咲いている。<br /><br />不思議だ。黄蓮華ショウマ。宮尾登美子の「天涯の花」に出てくる季節はいつだったのか・・。余り良く覚えていない。6月の大雨のころだったのか・・、まだ雪の残る早春だったのか・・、それとも晩秋か・・・?<br /><br />この小説で覚えているのは「天涯の花」は「黄蓮華ショウマ」に仮託しているかも知れないが、実のところ、この小説に出てくる女性のことで、戦後直ぐの四国徳島剣山麓のお寺の本堂の脇に捨てられた乳飲み子が、施設で育ち、小学生に上がる頃この剣山の中腹にある剣神社の神主夫婦の養女となり、ある日雪の山道で、この山に咲く天然記念物「黄蓮華ショウマ」の写真撮影の為、東京からやってきた写真家の命を助け、後、恋に落ち、夫婦となってこの剣神社を守っていくことになるのだが、この二人、みなし児であった女性と写真家を捨て神主になった男性の二人の生き様、心の美しさを言っているもので、それは将に天界に咲く花のような美しい心根を表現したものだった。<br /><br />後年、この黄蓮華ショウマと剣神社を訪ねて四国まで足を運んだが、生憎黄蓮華ショウマの季節ではなく、教えられた自生地付近では、それらしい花などどこにもなく、ただ修験者の霊場が森と広がっていただけだったが、それでもそれ程広くはない剣神社の境内に佇み、小説の一こま、一こまを思い出し、きりりとした養父宮司の立ち居振る舞い、冬の寒い日の養母の洗濯、毎年咲く黄蓮華ショウマを楽しみにして育った少女の姿、などなど思い出していたが、流石に社務所まで行き、その後の主人公の動静を尋ねる程の勇気は持ち合わせていなかった。<br /><br />その女性、宮司からもらった名前は律と言ったかと思ったが・・今は高齢となり、連れ合いの元写真家の神主も既に亡くなり、神社は息子夫婦に任せ、自身は麓の町へ居を移し単身生活しているようだが、まだ少女の頃、人里離れたこの神社で年老いた養父母と生活し、旧友もいない淋しい山の中の生活の唯一の楽しみは春から秋に掛けて咲く剣山の自然の草花であったが、とりわけ、夏の季節、唯一この山に咲く黄蓮華ショウマを見るのを楽しみにしていた。<br /><br />それがこの御岳山土産物店の裏の崖の上に裂いているを知ったのは数年まえだったが、それからこの夏の季節になると御岳に行き、この花を見るのを楽しみにしていた。何故この花がここに咲いているのか店の人に尋ねても詳しい経緯は知らないようだが、多分剣山から株分けしてもらったのだろう、とのこと。<br /><br />今最盛に咲いている黄蓮華ショウマを見、再び又小説の一こま一こまを思い出し、清らな心の二人を想い、自身の心も洗われる思いもし、再び又杉並木の参道を下山する。帰路は流石に足も疲れ、ゆっくりゆっくり、休み休み下山し、普通の人の倍の時間をかけて麓駅まで来たが、本当に半年振り位の山歩き、よく頑張ったものと思う。これも又小説の中、主人公の少女が雪道に倒れている写真家を背負い、死ぬ思いをして神社まで運び下ろしたシーンを思い出しつつ小説に助けられたものだったかも知れなかった。

御岳山の黄蓮華ショウマ(4)黄蓮華ショウマと秋の花。

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2010/09/19 - 2010/09/19

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ちゃお

ちゃおさん

ケーブル駅傍の蓮華ショウマ自生地にはほんの僅かの花が残っているだけであり、御岳神社横の斜面には全く花の姿形もなく、既にショウマの季節は終わったのかも知れないが、いつも寄る山門下の土産物店の店員に黄蓮華ショウマがまだ咲いているかどうか尋ねてみた。そうしたところ今最盛とのこと。信じられない思いで、混んでいる店内を掻き分け窓際まで行くと、聞いた通り満開に咲いている。

不思議だ。黄蓮華ショウマ。宮尾登美子の「天涯の花」に出てくる季節はいつだったのか・・。余り良く覚えていない。6月の大雨のころだったのか・・、まだ雪の残る早春だったのか・・、それとも晩秋か・・・?

この小説で覚えているのは「天涯の花」は「黄蓮華ショウマ」に仮託しているかも知れないが、実のところ、この小説に出てくる女性のことで、戦後直ぐの四国徳島剣山麓のお寺の本堂の脇に捨てられた乳飲み子が、施設で育ち、小学生に上がる頃この剣山の中腹にある剣神社の神主夫婦の養女となり、ある日雪の山道で、この山に咲く天然記念物「黄蓮華ショウマ」の写真撮影の為、東京からやってきた写真家の命を助け、後、恋に落ち、夫婦となってこの剣神社を守っていくことになるのだが、この二人、みなし児であった女性と写真家を捨て神主になった男性の二人の生き様、心の美しさを言っているもので、それは将に天界に咲く花のような美しい心根を表現したものだった。

後年、この黄蓮華ショウマと剣神社を訪ねて四国まで足を運んだが、生憎黄蓮華ショウマの季節ではなく、教えられた自生地付近では、それらしい花などどこにもなく、ただ修験者の霊場が森と広がっていただけだったが、それでもそれ程広くはない剣神社の境内に佇み、小説の一こま、一こまを思い出し、きりりとした養父宮司の立ち居振る舞い、冬の寒い日の養母の洗濯、毎年咲く黄蓮華ショウマを楽しみにして育った少女の姿、などなど思い出していたが、流石に社務所まで行き、その後の主人公の動静を尋ねる程の勇気は持ち合わせていなかった。

その女性、宮司からもらった名前は律と言ったかと思ったが・・今は高齢となり、連れ合いの元写真家の神主も既に亡くなり、神社は息子夫婦に任せ、自身は麓の町へ居を移し単身生活しているようだが、まだ少女の頃、人里離れたこの神社で年老いた養父母と生活し、旧友もいない淋しい山の中の生活の唯一の楽しみは春から秋に掛けて咲く剣山の自然の草花であったが、とりわけ、夏の季節、唯一この山に咲く黄蓮華ショウマを見るのを楽しみにしていた。

それがこの御岳山土産物店の裏の崖の上に裂いているを知ったのは数年まえだったが、それからこの夏の季節になると御岳に行き、この花を見るのを楽しみにしていた。何故この花がここに咲いているのか店の人に尋ねても詳しい経緯は知らないようだが、多分剣山から株分けしてもらったのだろう、とのこと。

今最盛に咲いている黄蓮華ショウマを見、再び又小説の一こま一こまを思い出し、清らな心の二人を想い、自身の心も洗われる思いもし、再び又杉並木の参道を下山する。帰路は流石に足も疲れ、ゆっくりゆっくり、休み休み下山し、普通の人の倍の時間をかけて麓駅まで来たが、本当に半年振り位の山歩き、よく頑張ったものと思う。これも又小説の中、主人公の少女が雪道に倒れている写真家を背負い、死ぬ思いをして神社まで運び下ろしたシーンを思い出しつつ小説に助けられたものだったかも知れなかった。

  • 御岳神社の石段は今工事中。来年も又来れたら、新しい石段を歩けるかも知れない。

    御岳神社の石段は今工事中。来年も又来れたら、新しい石段を歩けるかも知れない。

  • 最初に御岳神社に来てからもう40数年になるが、その時からもずっと変わらない山門下の土産物店通り。

    最初に御岳神社に来てからもう40数年になるが、その時からもずっと変わらない山門下の土産物店通り。

  • 土産物店の裏の崖の上に咲く黄蓮華ショウマ。

    土産物店の裏の崖の上に咲く黄蓮華ショウマ。

  • この時期にまだ咲いているとは想像もしていなかった・・

    この時期にまだ咲いているとは想像もしていなかった・・

  • 土鳩も訪ねてやってくる。

    土鳩も訪ねてやってくる。

  • 崖下から又黄蓮華ショウマを眺め、今年の別れとする。

    崖下から又黄蓮華ショウマを眺め、今年の別れとする。

  • 崖には又別の秋の草も満開に咲いている。

    崖には又別の秋の草も満開に咲いている。

  • トリカブトも真っ青の色で咲いていた。

    トリカブトも真っ青の色で咲いていた。

  • 山の中では愁海棠も色鮮やかだ。

    山の中では愁海棠も色鮮やかだ。

  • 樹木ナンバー777番。漸く残り10本、30m。麓のケーブル清滝駅もここからは既に見えてきた。約2時間、足が棒の様に吊って歩き切った今日の一日。

    樹木ナンバー777番。漸く残り10本、30m。麓のケーブル清滝駅もここからは既に見えてきた。約2時間、足が棒の様に吊って歩き切った今日の一日。

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