1993/10/07 - 1993/10/14
88位(同エリア128件中)
北風さん
今まで旅行した国は、先進国と称される国がほとんどだった。
ある程度スマートで、世界共通のモラルが通用する世界。
そして、売り物に定価が存在し、表示されている世界。
ちょっと喉が渇けば、最寄のスーパーなりコンビニなりでコーラが買える国。
「インドネシア」
この国で、発展途上国デビューをする事になる。
全ての事において、人間関係が絡みつき、卵一つ買うにも値段交渉をしなければいけない世界。
しかも、戦う宗教「イスラム教」の国。
この旅行記を書いている現在ならば、俺の旅行キャリアでこの国を個人旅行する事が、どれほど無謀な事だったかがわかる。
「インド」「中国」が個人旅行での難度『 D 』ならば、この国は難度『 C 』だった。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス 船
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旅日記
『インドネシアへ!』
防波堤までせり出してきている摩天楼の窓ガラスを、先程姿を現した熱帯の太陽が、早くもぎらつかせている。
シンガポール本島からバタム島へと向かうフェリー乗り場は高速フェリーともども、近代的な設備を誇るモダンなものだった。
これから、船を乗り継ぎインドネシアのビンタン島への入国ルートをとる俺には、なかなか幸先がいいスタートだ。
2時間ほどで、到着したビンタン島。
それは、俺が知っている常識の外に浮かんでいた。
パスポート・コントロールを済ませて外に出ると、途端に群がるチェンジマネー屋!客引き!物売り!
まるで、脱税がばれた議員になったみたいだ。
「なんだここは!」
インドネシアのスマトラ島行きのフェリーを探していると告げると、1人の若者が親切そうに案内してくれると言う。
5分も歩かないうちに、到着したフェリー乗り場に到着した時、若者は笑顔で案内料500円を要求した。
案内料をしつこく要求する若者との間に、フェリーチケット屋が何人も割ってはいる。
中には全然違う行き先のチケットを売りつける奴や、物売り、チェンジマネー屋、また周囲をぐるっと囲まれた。
勘弁してくれ! -
詐欺師の大群から息も絶え絶えになりながら、目指すフェリー乗り場へと逃げ切った!
もう地べたに座り込みそうになる程疲れている。
そして、フェリーを見た時、とうとう座り込んでしまった。
フェリーは、木100%でできたポンポン船だった。
しかも、大海を越える船だというのに、大型バスと同じ大きさだ。
これに、ここで乗船を待っているとんでもない数の乗客とともに丸1日乗るわけだろうか?
どう見ても、これは難民船だ!
TVで見たボートピープルに、まさか自分がなろうとは!
それでも、便所紙に書きなぐられた席番号を頼りに船に乗り込む時は、まだかすかに「実は船内は今朝のフェリー並にモダンでは?」との期待を持っていた。
船内に入った途端、「パンドラがやった最悪な行為は、最後に希望を解き放った事だ」という名言を思い出す。
なんとこの船は、3階建てだった。
それも1階分の空間を上下に分割している。
つまり、俺に割り当てられた空間は、上下に区切られた押入れの下段と同じスペースだった。 -
25とのナンバーが書かれた押入れの下で、俺は体育座りでちぢこまっていた。
別に好きでやっているわけではない。
右隣の空間にギュウギュウに押し込められた玉ねぎの袋がこちらの空間までこぼれ落ちてきているからだ。
重油の匂いまでが蔓延してき出した。
本気で下船を考えていた。
この船の設計者は究極のスペース効率を追求したのだろうが、この環境で生存していける自信がない。
立ち上がろうとする俺の前に、泥の壁が出現した。
「ブヒッ、ブヒッ」鳴いていると言う事は、どうやら豚らしい。
しかも左隣の空間からも聞こえてくる。
冗談としか思えない状況だった。
現状から察すると、俺は玉ねぎと豚に囲まれて大海を渡るらしい。
脱出しよう!決心をつけた、俺の前に豚の壁が立ちはだかる。
あぁ、出航の汽笛が鳴り響く。 -
熱帯の太陽が、今日の仕事をきっちりこなして、水平線の彼方へ沈む頃、船のサウナ・タイムも終わりに近づいていた。
船倉の薄暗い空間の中では、6時間に及ぶサウナ状態で見事に茹で上がった日本人が、ぐったりと横たわっていた。
つぶれた玉ねぎで涙を浮かべた瞳、うとうとしていたら豚に噛まれた左足、重油の匂いが引き起こす頭痛、もはや半分棺おけに足を突っ込んでいる。
いや、棺おけがあったなら、自分から進んで入りたい!
夜風が船倉に届く頃になって、どうにか身体を動かす気力が湧いてきた。
ゆっくりゆっくりと甲板に出てみる。
初めて見る光景だった。
幻想的というのはこういうものなのだろうか?
巨大な炎の光が、黒々と広がるジャングルに舞い降りている。
それが石油の発掘所の煙突で燃える炎だとわかるには少し時間が必要だった。
船の両岸にジャングルがあるという事は、船は既にスマトラ島のカンバル川に入ったらしい。
少しだけ気分が良くなって、あの自分の空間へ戻ってみると、インドネシア人が俺の空間に集まっていた。
何事だろう?
人ごみをかきわけて中に進むと、なんと何人かが俺のバックパックを開けて中身を取り出している!
・・・「嘘だろう?」
俺のブーツに片足を通しかけている男が俺を見て、ブーツと男を交互に指差す。
それを合図に、他の奴らも俺の所持品を手に、同じ仕草をやりはじめた。
・・・「くれ!」と言う事なのか?
こいつら、人類に属する生物なのか?
一晩中寝ないで過ごすショーの幕開けだった。
早朝、船はぺカンバルという港に到着した。
真っ白に燃え尽きた日本人を連れて・・・ -
< BUKITTINGGI(ブキッティンギ)>
シンガポールで出会った、カナダ人の女の子が「ブキッティンギ、最高!」と言った言葉が、気力の寄りかかる最後の砦だった。
素晴らしいフェリーでの体験でボロボロになった身体を引きずって、その足でブキッティンギ行きのバスに乗り込んだ。 -
バスの運ちゃんが怒鳴る。
「ブキッティンギまでなら、US$10だ!」
先程知り合った地元のおっちゃんに尋ねると、「US$2払った」との答え。
・・・ほほぅ、この国じゃツーリストには5倍もふっかけるわけか! -
<ロスメン(安宿)、バンブーゲストハウスにて>
標高が高い所に位置するブキッティンギは、熱帯にしては涼しく、人々もインドネシアにしては普通だ。
その為、意外と観光客も多く、安宿も豊富にある。
俺が選んだ安宿は「バンブーゲストハウス」なるカナダ人女性が勧めてくれたところだった。
この宿、実は地元の若者の溜まり場にもなっており、毎晩酒盛りが繰り広げられる。
当然、滞在初日からお誘いを受けた俺は、毎晩吐くまで飲む事になった。
ある時、1本200円のウィスキーを回し飲みしている彼らに、
「イスラム教じゃ、酒はご法度じゃなかったっけ?」
と尋ねると、
「俺たちの胃袋は、モスリムじゃないからNo Problem!」
と答えが返ってきた。 -
旅日記
『バンブーゲストハウスにて』
この安宿では、シャワー、トイレ、洗い場が、すべて
1つの場所に集約されていた。
洗濯も当然ここで行われる。
もちろん、洗濯機など、毎日停電があるこの宿にあるわけも無い。
イスラム教の国では、何処にでも設置されている、「マンディ(沐浴)」の為の水槽から水を汲み、石けんをなすりつけたTシャツをゴシゴシ洗う。
ちなみに、この水槽の水は、お風呂の水、便所のながし水、歯を磨く時のすすぎ水としても使われる。
もう、俺の辞書に「衛生観念」という言葉は消えうせていた。
ある日、洗濯中の俺の頭に手にした石けんぐらいの大きさの昆虫がぶつかった。
サイズがでかいと、かなり痛い!
虫の方も、地面で目を回している。
よく見ると、巨大なカブトムシだった!日本じゃこんなに見事だと1万円以上はするだろう。
俺の前で、地元の若者がかさかさ動く1万円をヒョイと摘み上げると、「邪魔だ!」と叫び、藪に投げ込んだ!
1万円が藪の中に消えていく。
・・・ここでは、カブもクワもゴキブリ並に扱われるらしい。 -
<ミナン・カバウ・ハウス>
ブキッティンギの郊外には、未だに昔の名残を残す家々が残っていた。
両端をピンと吊り上げる独特の屋根は、牛の角を象徴していると言う。
ちなみに、牛の角は「富の象徴」でもあるらしい。 -
-
100年前の長者の家
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<ウォーター・バッファローの効用>
インドネシアの牛はほとんどが、水牛(ウォーターバッファロー)。
この水牛は、実に、生活に役立つ万能アイテムでもある。
畑を耕す時も、物を運ぶ時も、時には機械の動力として、そしてもちろん、食うもんが無い時も・・・ -
ブラウンシュガー(さとうきび)のジュースを作る機械の動力も牛だった。
日がな一日小屋の中をぐるぐる廻っている。 -
農地の隅っこの休耕地や浅い穴には、雨水が溜まり、小さな池になっている所が多い。
どうも水牛はこういう泥沼が大好きらしく、仕事を終えると夢中で飛び込み泥だらけになっている。
昔映画で、ランボーが全身に泥を塗ってカモフラージュしていたが、遊び終えた水牛も似たような茶色いコーティングが施されていた。
後日、この泥が寄生虫や暑さから身体を守っている事を知る。 -
<闘う水牛>
夕暮れ時、闘牛が行われると言う噂を聞いて、地元の広場に足を運んだ。
この国では、牛は娯楽にも欠かせない存在らしい。
既に、かなりの人ごみだ。
まるで、犬の散歩の様に水牛の鼻に縄をかけて連れてきている人も多い。
人々が大きな輪を作り出したと思ったら、いきなり中央で2頭の牛が角を付き合わせ出した。
何の前触れもなく、どう見てもただの牛のけんかにしか見えないが、ここでの闘牛は、スペインみたいな闘技場で行われるものではないらしい。
しかし、熱気はすごい!
もちろん、フェンスなど無く、手を伸ばせば届く所で、角がぶつかり合う音が響く! -
皆、なけなしの金を賭けているらしく、自分の賭けた牛が逃げ出すと、牛にしがみついてでも引き戻そうとしている。
どちらが野生なのかわからない光景だ。
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