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「笑っている・・?」<br /><br />最初にそう思った。<br /><br />いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。<br /><br />よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。<br /><br />彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。<br /><br />優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。<br /><br />海賊が、また笑ったように思えた。<br /><br />

雲の音、海賊の笑み~フランク・ブラングィン展~

3いいね!

2010/05/15 - 2010/05/15

3280位(同エリア4231件中)

0

29

きっちー

きっちーさん

「笑っている・・?」

最初にそう思った。

いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。

よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。

彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。

優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。

海賊が、また笑ったように思えた。

同行者
一人旅
一人あたり費用
1万円未満
交通手段
JRローカル

PR

  • はな風邪をひいたみたいで、どうも芳しくない。<br /><br />喉がヒリつくし、立て続けにくしゃみが出る。<br />熱っぽいような気はしないが・・・。<br /><br />「ひょっとして、これが知恵熱・・?」<br /><br />GWが終わってしまい、ハチャメチャな忙しさに、やや5月病気味に読書へのめり込んでいたせい、だろうか(涙)。<br /><br />「カッコ悪ぅ〜・・」<br /><br />はなをズルズルやりながら、前回見逃した『フランク・ブラングィン展』をのぞきに、上野に来ております。<br /><br /><br /><br />

    はな風邪をひいたみたいで、どうも芳しくない。

    喉がヒリつくし、立て続けにくしゃみが出る。
    熱っぽいような気はしないが・・・。

    「ひょっとして、これが知恵熱・・?」

    GWが終わってしまい、ハチャメチャな忙しさに、やや5月病気味に読書へのめり込んでいたせい、だろうか(涙)。

    「カッコ悪ぅ〜・・」

    はなをズルズルやりながら、前回見逃した『フランク・ブラングィン展』をのぞきに、上野に来ております。



  • 2ヶ月くらい前に、ギュスターヴ・モローの水彩画目当てで、『所蔵水彩・素描展〜松方コレクションとその後〜』っていう常設展に寄ったんですけど。<br /><br />そのときは、FB企画展まで時間がなくて〜。<br />(つか、まわるのに時間かけすぎて、時間切れでござった・・)<br /><br />反省を踏まえてお時間のほう、少々早めにやって参りました。<br /><br />上野の国立西洋美術館。<br /><br />

    2ヶ月くらい前に、ギュスターヴ・モローの水彩画目当てで、『所蔵水彩・素描展〜松方コレクションとその後〜』っていう常設展に寄ったんですけど。

    そのときは、FB企画展まで時間がなくて〜。
    (つか、まわるのに時間かけすぎて、時間切れでござった・・)

    反省を踏まえてお時間のほう、少々早めにやって参りました。

    上野の国立西洋美術館。

  • 松方コレクションと同時開催の、『フランク・ブラングィン展』でございますv<br /><br />いつも、書き終わるの遅いから。<br />結論から言いましょう。<br /><br /><br /><br />絶〜対っ、行った方がイイすよーっ!!<br /><br /><br /><br />以前、『鰭崎英朋展』で「終わってから言うなよ(怒)」とクレームが出ましたので、傾向と対策で(笑)。<br /><br />行こ。<br />早よ行っとこ。<br />5/30(日)までですゾ。<br /><br /><br /><br />

    松方コレクションと同時開催の、『フランク・ブラングィン展』でございますv

    いつも、書き終わるの遅いから。
    結論から言いましょう。



    絶〜対っ、行った方がイイすよーっ!!



    以前、『鰭崎英朋展』で「終わってから言うなよ(怒)」とクレームが出ましたので、傾向と対策で(笑)。

    行こ。
    早よ行っとこ。
    5/30(日)までですゾ。



  • 例の看板を、横目で見ながら、<br />「世界遺産登録はあきらめんしゃい、西洋美術館」<br />ツイッター(笑)。<br /><br />それより、国がきちんと予算つけたんさい。<br />国立、なんだから。<br /><br />思いやり予算で、米軍の水道光熱費から娯楽施設建設まで出せるんだったら、ぜんぶ削ってコッチにつけて。<br /><br />世界遺産のお金は、1カ国ではどーにもなんなそうな文化遺産にまわすのが、世界の正しい仕分けってもんじゃろう。<br /><br /><br /><br /><br /><br />

    例の看板を、横目で見ながら、
    「世界遺産登録はあきらめんしゃい、西洋美術館」
    ツイッター(笑)。

    それより、国がきちんと予算つけたんさい。
    国立、なんだから。

    思いやり予算で、米軍の水道光熱費から娯楽施設建設まで出せるんだったら、ぜんぶ削ってコッチにつけて。

    世界遺産のお金は、1カ国ではどーにもなんなそうな文化遺産にまわすのが、世界の正しい仕分けってもんじゃろう。





  • 「あー、ハナ止まんねえ・・。総合感冒薬って、鼻水には効かないのだろうか・・」<br /><br />風邪となったら医者には行かずに、年に一度通販で、大量まとめ買いしている風邪薬を、ガンガンやって抑えてしまうのですが〜。<br /><br />そーいうのはきっと宜しくないので、ちゃんとお医者に行くべき、なんだろうな?<br /><br />ぶちぶち言いつつ、チケットを片手に入り口を探します。<br /><br />

    「あー、ハナ止まんねえ・・。総合感冒薬って、鼻水には効かないのだろうか・・」

    風邪となったら医者には行かずに、年に一度通販で、大量まとめ買いしている風邪薬を、ガンガンやって抑えてしまうのですが〜。

    そーいうのはきっと宜しくないので、ちゃんとお医者に行くべき、なんだろうな?

    ぶちぶち言いつつ、チケットを片手に入り口を探します。

  • あった、あった。<br />入り口。<br /><br /><br />国立西洋美術館は、ほんっとつくりが滅茶苦茶な建物なので、来るといっつも迷います。<br /><br />世界遺産どうこうよりも、もっと階段減らして。<br />分かりやすい順路を目指してくれ〜と、切に願います。<br /><br />方向オンチには、つらい美術館なんすヨ。<br /><br /><br />

    あった、あった。
    入り口。


    国立西洋美術館は、ほんっとつくりが滅茶苦茶な建物なので、来るといっつも迷います。

    世界遺産どうこうよりも、もっと階段減らして。
    分かりやすい順路を目指してくれ〜と、切に願います。

    方向オンチには、つらい美術館なんすヨ。


  • ウロウロしたすえ、ようやく展示室へ。<br /><br />『美の巨人たち』で放映されていたのと、ほぼ同じ解説が映像や前文で紹介されます。<br /><br />松方コレクションを観た時には、<br /><br />「なんだこれー?えらいバラバラな・・!」<br /><br />と、あっけにとられましたが。<br /><br />『手本がなく、油絵を知らない日本の洋画家たち、本当の西洋絵画を見せてやりたい』っていうのが、動機であったのなら、統一感のない蒐集も納得です。<br /><br />そんな造船会社経営のマッツーが、入れ込んだ画家さん。<br />それが、イギリスのフランク・ブラングィン氏でございます。<br /><br />名前はまったく聞いたことないけど、どんな作品なんでしょう。<br /><br />わくわく。<br /><br />

    ウロウロしたすえ、ようやく展示室へ。

    『美の巨人たち』で放映されていたのと、ほぼ同じ解説が映像や前文で紹介されます。

    松方コレクションを観た時には、

    「なんだこれー?えらいバラバラな・・!」

    と、あっけにとられましたが。

    『手本がなく、油絵を知らない日本の洋画家たち、本当の西洋絵画を見せてやりたい』っていうのが、動機であったのなら、統一感のない蒐集も納得です。

    そんな造船会社経営のマッツーが、入れ込んだ画家さん。
    それが、イギリスのフランク・ブラングィン氏でございます。

    名前はまったく聞いたことないけど、どんな作品なんでしょう。

    わくわく。

  • ここからは撮影禁止のため、イメージキャラの・・・って、そればっかだと申し訳ないので〜(笑)。<br />今回は、ポストカードでご紹介。<br /><br />ホントは、カードになってなかった作品で、チョ〜お勧めのがありやシタ(泣)!<br /><br />あとあと、「いいなあ〜vv」って思っても印刷されたやつだと、現物と全然ちがってみえるので、実際にご覧になって頂いて欲しいでゴザイマス〜。<br /><br /><br /><br />

    ここからは撮影禁止のため、イメージキャラの・・・って、そればっかだと申し訳ないので〜(笑)。
    今回は、ポストカードでご紹介。

    ホントは、カードになってなかった作品で、チョ〜お勧めのがありやシタ(泣)!

    あとあと、「いいなあ〜vv」って思っても印刷されたやつだと、現物と全然ちがってみえるので、実際にご覧になって頂いて欲しいでゴザイマス〜。



  • これも、生で見てほしい作品のひとつ。<br /><br />ただのスケッチなんですけど、すんげーこまい!!<br /><br />立体感があって、ラフに描いてある手の部分とくらべて、顔の描写は目を見張るような繊細さ。<br />息遣いまで感じます。<br /><br />たった一色の線で描いてあるだけなのに、顔の皺まで浮き上がって見えて・・。<br /><br />「あー。すっげー画家さんだな・・」<br /><br />しょっぱなから、釘付けになりました。<br /><br />プロだよ、プロ。

    これも、生で見てほしい作品のひとつ。

    ただのスケッチなんですけど、すんげーこまい!!

    立体感があって、ラフに描いてある手の部分とくらべて、顔の描写は目を見張るような繊細さ。
    息遣いまで感じます。

    たった一色の線で描いてあるだけなのに、顔の皺まで浮き上がって見えて・・。

    「あー。すっげー画家さんだな・・」

    しょっぱなから、釘付けになりました。

    プロだよ、プロ。

  • 館内を進むうちに、フランク・ブラングィン作品の特徴が、少しずつみえてきます。<br /><br />彼の色使いや作風は、力強く華やかで幻想的。<br /><br />ゴージャスを追求すれば、デカダンスで退廃的でリッチが似合いそう。<br />きっと有名ブランドで、引く手あまたになりそうな雰囲気を、確実に持っています。<br /><br />実際、アール・ヌーヴォーの由来ともいえる、ジークフリート・ビング(サミュエル・ビング)が1895年にパリに開いた店「アール・ヌーヴォー」の外壁デザインを担当。<br />『アール・ヌーヴォー展』のポスター・デザインは、アルフォンス・マリア・ミュシャのさきがけ、にも見えます。<br /><br /><br />なのに、です。<br /><br /><br />ブラングィンの視点の先には、華やかな世界はなく。<br />つねに地を這うような労働者たちが、神話のように光り輝きます。<br /><br /><br />

    館内を進むうちに、フランク・ブラングィン作品の特徴が、少しずつみえてきます。

    彼の色使いや作風は、力強く華やかで幻想的。

    ゴージャスを追求すれば、デカダンスで退廃的でリッチが似合いそう。
    きっと有名ブランドで、引く手あまたになりそうな雰囲気を、確実に持っています。

    実際、アール・ヌーヴォーの由来ともいえる、ジークフリート・ビング(サミュエル・ビング)が1895年にパリに開いた店「アール・ヌーヴォー」の外壁デザインを担当。
    『アール・ヌーヴォー展』のポスター・デザインは、アルフォンス・マリア・ミュシャのさきがけ、にも見えます。


    なのに、です。


    ブラングィンの視点の先には、華やかな世界はなく。
    つねに地を這うような労働者たちが、神話のように光り輝きます。


  • 荘厳で美しいのに、宗教画や上流階級の浮世離れした世界を、テーマにしない。<br /><br />ありふれた市場や、港の場面。<br />1日の仕事を終え、川のように流れゆく労働者の群れを、黄金の光が落ちたように、まぶしく捉えます。<br /><br />あくまで地に足がついた人々が、主人公として描かれる。<br />彼が見せる、美しい世界に惹き込まれます。<br /><br />受難のキリストでさえ、ブラングィンの手にかかると、エレベーターの点検技師さんのようです。<br /><br />普通の人々が美しい。<br /><br />その果てしなく筋の通った筆先に、戸惑います。<br /><br /><br /><br />

    荘厳で美しいのに、宗教画や上流階級の浮世離れした世界を、テーマにしない。

    ありふれた市場や、港の場面。
    1日の仕事を終え、川のように流れゆく労働者の群れを、黄金の光が落ちたように、まぶしく捉えます。

    あくまで地に足がついた人々が、主人公として描かれる。
    彼が見せる、美しい世界に惹き込まれます。

    受難のキリストでさえ、ブラングィンの手にかかると、エレベーターの点検技師さんのようです。

    普通の人々が美しい。

    その果てしなく筋の通った筆先に、戸惑います。



  • 日常と、強烈な美を肯定する視点。<br /><br />この不思議な調和を、ブラングィン作品の随所に感じます。<br /><br />

    日常と、強烈な美を肯定する視点。

    この不思議な調和を、ブラングィン作品の随所に感じます。

  • このさきに、油彩作品をアップしてますが、エッチング、木版画、リトグラフなんかも、すんごいイイんですよ〜。<br /><br />ポスカになってなくて、残念(涙)!<br /><br />でも、展覧会カタログだと、どしても実物の迫力に欠けちゃってて・・。<br /><br />あ〜あ。<br />メディア技術って、絶対追いつけないものなんですかね。<br /><br />それとも多少、確信犯的な部分があんのかな?<br /><br />

    このさきに、油彩作品をアップしてますが、エッチング、木版画、リトグラフなんかも、すんごいイイんですよ〜。

    ポスカになってなくて、残念(涙)!

    でも、展覧会カタログだと、どしても実物の迫力に欠けちゃってて・・。

    あ〜あ。
    メディア技術って、絶対追いつけないものなんですかね。

    それとも多少、確信犯的な部分があんのかな?

  • それはともかく。<br /><br />どことなく、古典的な匂いのする作風のブラングィンですが、「やっぱ、近代芸術家さんなんだなあー」と思えるのが、戦争画や難民を描かれているトコ。<br /><br />あと、女性の登場場面や、ライフスタイルのタイプが乏しいのも、ある意味、近代的な男性画家さんの視点かなー。<br /><br />母親、看護婦、不安げな難民など。<br /><br />あくまで男性の付加物であって、女性の本質を見極めが弱い部分は、時代の限界を感じました。<br /><br />きな臭い時代の制約をおったうえで、それでもなお、ひたすら「美しいもの」をなぞらえる古典には、無い世界。<br /><br />

    それはともかく。

    どことなく、古典的な匂いのする作風のブラングィンですが、「やっぱ、近代芸術家さんなんだなあー」と思えるのが、戦争画や難民を描かれているトコ。

    あと、女性の登場場面や、ライフスタイルのタイプが乏しいのも、ある意味、近代的な男性画家さんの視点かなー。

    母親、看護婦、不安げな難民など。

    あくまで男性の付加物であって、女性の本質を見極めが弱い部分は、時代の限界を感じました。

    きな臭い時代の制約をおったうえで、それでもなお、ひたすら「美しいもの」をなぞらえる古典には、無い世界。

  • このエレベーター点検技師さんキリストの背後にも、軍服を着た兵士がおり、奥を行く群衆は戦場に狂喜しながら進んでいく、世相を描いているかのようです。<br /><br />あ、すいません。<br /><br />タイトルは、エレベーター点検技師さんのキリスト、じゃないです〜(笑)。<br /><br />なんだっけ?<br />「ここまでやるか」っていう印象が強くて、タイトルど忘れしました。<br /><br />ぜひ、ご自分の目で確かめてきてください(逃)。<br />

    このエレベーター点検技師さんキリストの背後にも、軍服を着た兵士がおり、奥を行く群衆は戦場に狂喜しながら進んでいく、世相を描いているかのようです。

    あ、すいません。

    タイトルは、エレベーター点検技師さんのキリスト、じゃないです〜(笑)。

    なんだっけ?
    「ここまでやるか」っていう印象が強くて、タイトルど忘れしました。

    ぜひ、ご自分の目で確かめてきてください(逃)。

  • やがて、奥の部屋に入ると、巨大な絵画が壁をぎっしり埋めています。<br /><br />やばい。<br />惚れる。<br /><br />

    やがて、奥の部屋に入ると、巨大な絵画が壁をぎっしり埋めています。

    やばい。
    惚れる。

  • ブラングィンは、色彩に定評があるそうですが、まさに面目躍如☆<br /><br />いま描きあげたような、生々しいタッチのものから、ノスタルジックな印象のものまで、様々です。<br /><br />

    ブラングィンは、色彩に定評があるそうですが、まさに面目躍如☆

    いま描きあげたような、生々しいタッチのものから、ノスタルジックな印象のものまで、様々です。

  • 《慈愛》という作品には、ヴィーナスとも聖マリアともつかない女性が、花降る庭園にキラキラ描かれます。<br /><br />雰囲気じゃなくて、文字通りカンヴァスに塗られた絵の具が、キラキラしてるんです!<br /><br />他の作品の絵の具とくべましたが、部分的に光るのはあっても全体的にピカピカしてるのは、《慈愛》だけ。<br /><br />なんか混ぜているのかな??<br /><br />

    《慈愛》という作品には、ヴィーナスとも聖マリアともつかない女性が、花降る庭園にキラキラ描かれます。

    雰囲気じゃなくて、文字通りカンヴァスに塗られた絵の具が、キラキラしてるんです!

    他の作品の絵の具とくべましたが、部分的に光るのはあっても全体的にピカピカしてるのは、《慈愛》だけ。

    なんか混ぜているのかな??

  • 展示室の左手から、どれも立ち止まらずにはいられない作品たちと向き合いながら、ぐるりと右手にまわってくると、中央に掲げられた1枚の作品。<br /><br />肺に震えがきて、息が詰まります。<br /><br /><br /><br />体温があがるような、赤――!<br /><br />

    展示室の左手から、どれも立ち止まらずにはいられない作品たちと向き合いながら、ぐるりと右手にまわってくると、中央に掲げられた1枚の作品。

    肺に震えがきて、息が詰まります。



    体温があがるような、赤――!

  • 「笑っている・・?」<br /><br />最初にそう思った。<br /><br />いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。<br /><br />よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。<br /><br />彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。<br /><br />優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。<br /><br />海賊が、また笑ったように思えた。<br />

    「笑っている・・?」

    最初にそう思った。

    いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。

    よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。

    彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。

    優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。

    海賊が、また笑ったように思えた。

  • 「本当に、不思議なバランス・・」<br /><br />ブラングィンのキャンバスに向かう、どこか頑なな生きざまを感じます。<br /><br /><br /><br />海賊たちは、獲物を積み引き揚げるところでしょうか。<br /><br />背後では、煙をまいて霞む船が揺れ、いまにも沈みそうですが、海賊たちも無傷ではありません。<br />ボートには血痕が転々と付着し、包帯をした頭を押さえてうつむく者や、ぐったりと縁に身をあずける者。<br /><br />奪った装身具らしき、真珠の首飾りをさげている者。<br /><br />ボートに戦利品は少なく、わずかに箱のような物がみえるだけ・・。<br /><br /><br /><br /><br />踏み外せば、たやすく暗い世界に移ろってしまいそうなのに。<br /><br />どこまでも鮮烈な色彩。<br /><br />この調和こそが真骨頂なのだと、言わんばかりです。<br /><br /><br /><br />

    「本当に、不思議なバランス・・」

    ブラングィンのキャンバスに向かう、どこか頑なな生きざまを感じます。



    海賊たちは、獲物を積み引き揚げるところでしょうか。

    背後では、煙をまいて霞む船が揺れ、いまにも沈みそうですが、海賊たちも無傷ではありません。
    ボートには血痕が転々と付着し、包帯をした頭を押さえてうつむく者や、ぐったりと縁に身をあずける者。

    奪った装身具らしき、真珠の首飾りをさげている者。

    ボートに戦利品は少なく、わずかに箱のような物がみえるだけ・・。




    踏み外せば、たやすく暗い世界に移ろってしまいそうなのに。

    どこまでも鮮烈な色彩。

    この調和こそが真骨頂なのだと、言わんばかりです。



  • 「あれ?」<br /><br />思わず吹き出しそうになった、オールを握る男の腕に、刻まれた刺青★<br /><br />絞首台にぶら下った死体。<br /><br />「最後にゃ、この場所さ」、そんなふてぶてしい乾いた嗤い声が、聞こえてきそうです。<br /><br />ホント、芸がこまけーな(笑)。<br /><br /><br /><br />

    「あれ?」

    思わず吹き出しそうになった、オールを握る男の腕に、刻まれた刺青★

    絞首台にぶら下った死体。

    「最後にゃ、この場所さ」、そんなふてぶてしい乾いた嗤い声が、聞こえてきそうです。

    ホント、芸がこまけーな(笑)。



  • この1枚を観れただけでも、来たかいあったなーと思います。<br /><br /><br />フランク・ブラングィン展は、『企画展』にしちゃ非常に展示数も多いし、大作もバッチで、幅広く紹介されていて、とにかく全体的に充実しています。<br /><br />なにより〜、お客さんが少なくて、超じっくり観られる!<br /><br />いや、ホント人少ないわ♪<br />どの作品も、30秒ほど待てば1対1で向き合えマス。<br /><br />これ、大事なんすよ〜(泣)。<br /><br />こうでなくちゃ、美術館じゃないっ。<br /><br /><br />

    この1枚を観れただけでも、来たかいあったなーと思います。


    フランク・ブラングィン展は、『企画展』にしちゃ非常に展示数も多いし、大作もバッチで、幅広く紹介されていて、とにかく全体的に充実しています。

    なにより〜、お客さんが少なくて、超じっくり観られる!

    いや、ホント人少ないわ♪
    どの作品も、30秒ほど待てば1対1で向き合えマス。

    これ、大事なんすよ〜(泣)。

    こうでなくちゃ、美術館じゃないっ。


  • くうぅ〜っ!<br />マジで良かったんすよ・・!<br /><br /><br />画像だけでもお見せできなくて、無念すぎ。<br /><br />油彩作品、《浜の商い》《真鍮雑貨店》《市場の露店》《煙草をくわえた男》《造船》など、機会があったら見逃さないで欲しいす。<br /><br />松方さんとブラングィン氏が意気投合したのは、マッツーが川崎造船所社チョーさんで、若いころ船乗り経験もあるブラングィン作《造船》に惚れ込んで、とのコトですが。<br /><br />《造船》シリーズは、たしかにイカス。<br /><br />最近、ミケランジェロ作品ばかり観ていたせいか(笑)、《最後の審判》のような、天国or地獄といった二元論的価値観にどっぷり浸っておりましたので、「天も地も光り輝く」といった劇的な、ブラングィン流の光を眩しく感じます。<br /><br />巨大な船と対照的な、小さな人々を照らす斜光。<br />空には、轟々と風を鳴らし、そそり立つ真っ白な雲。<br /><br />どちらも言葉にできないくらい、美しい。<br /><br /><br /><br /><br />

    くうぅ〜っ!
    マジで良かったんすよ・・!


    画像だけでもお見せできなくて、無念すぎ。

    油彩作品、《浜の商い》《真鍮雑貨店》《市場の露店》《煙草をくわえた男》《造船》など、機会があったら見逃さないで欲しいす。

    松方さんとブラングィン氏が意気投合したのは、マッツーが川崎造船所社チョーさんで、若いころ船乗り経験もあるブラングィン作《造船》に惚れ込んで、とのコトですが。

    《造船》シリーズは、たしかにイカス。

    最近、ミケランジェロ作品ばかり観ていたせいか(笑)、《最後の審判》のような、天国or地獄といった二元論的価値観にどっぷり浸っておりましたので、「天も地も光り輝く」といった劇的な、ブラングィン流の光を眩しく感じます。

    巨大な船と対照的な、小さな人々を照らす斜光。
    空には、轟々と風を鳴らし、そそり立つ真っ白な雲。

    どちらも言葉にできないくらい、美しい。




  • あの、ひっちゃかめっちゃかの『松コレ』とは違い、本気で大事にした作家さんじゃな〜いと、感じました♪<br /><br /><br />最後に、《海の葬送》。<br /><br />灰色の寒空の下、小雨に濡れた甲板の葬列に、ともに立ち会っているような錯覚に陥ります。<br /><br />死者の頭上で、ポケットに手を突っ込んだまま、小さく聖書をつぶやく声が風の合間に聞こえてくるよう。<br /><br />《海の葬送》と、海賊のボートが往く《海賊バカニーア》とは、色彩や作風でよく比較されるそうですが、根底を貫く視点はやはりブラングィンらしい、と思います。

    あの、ひっちゃかめっちゃかの『松コレ』とは違い、本気で大事にした作家さんじゃな〜いと、感じました♪


    最後に、《海の葬送》。

    灰色の寒空の下、小雨に濡れた甲板の葬列に、ともに立ち会っているような錯覚に陥ります。

    死者の頭上で、ポケットに手を突っ込んだまま、小さく聖書をつぶやく声が風の合間に聞こえてくるよう。

    《海の葬送》と、海賊のボートが往く《海賊バカニーア》とは、色彩や作風でよく比較されるそうですが、根底を貫く視点はやはりブラングィンらしい、と思います。

  • 「あ〜、終わっちまった。ふーっ」<br /><br />ハナかみながら、ノロノロとエスカレーターで地上階へ出たときには、すでに2:30!<br /><br />ノーッ!!<br />どんだけ、居座ってしまったんじゃ。<br />また、1日つかっちまったぜよ(泣)。<br /><br />「おなかすいた〜!」<br /><br />あ、でも、まだ常設展が残っとったじゃの〜。<br /><br />企画展チケットの半券を提示すると、常設展も観られるそうで。<br /><br />こっちは1回観ているので、サラッと。<br /><br /><br />

    「あ〜、終わっちまった。ふーっ」

    ハナかみながら、ノロノロとエスカレーターで地上階へ出たときには、すでに2:30!

    ノーッ!!
    どんだけ、居座ってしまったんじゃ。
    また、1日つかっちまったぜよ(泣)。

    「おなかすいた〜!」

    あ、でも、まだ常設展が残っとったじゃの〜。

    企画展チケットの半券を提示すると、常設展も観られるそうで。

    こっちは1回観ているので、サラッと。


  • つか、常設展会場の最後のほうの部屋、すんげー薬品臭がするんですよ〜(汗)。<br />あんま、留まってらんない。<br /><br />鼻にクルし。<br />きもい。<br /><br />壁紙でも張り替えたのかなあ??

    つか、常設展会場の最後のほうの部屋、すんげー薬品臭がするんですよ〜(汗)。
    あんま、留まってらんない。

    鼻にクルし。
    きもい。

    壁紙でも張り替えたのかなあ??

  • お疲れっシタ!<br /><br />マッツーが購入したブラングィンの代表作は、展示作品の他にも何点かあったそうですが、保管先の火災で焼失してしまったそうで。<br /><br />もったないーっ!!<br /><br />今回のでもスゴイのに、代表作ってどんなだったのか想像するだけで・・・悔しい・・。<br /><br />火の用心だよ、まったく。<br />もったいない・・。<br /><br />

    お疲れっシタ!

    マッツーが購入したブラングィンの代表作は、展示作品の他にも何点かあったそうですが、保管先の火災で焼失してしまったそうで。

    もったないーっ!!

    今回のでもスゴイのに、代表作ってどんなだったのか想像するだけで・・・悔しい・・。

    火の用心だよ、まったく。
    もったいない・・。

  • くり返します。<br />行ってソンは無し!<br /><br />久しぶりに、ハマる企画展でした♪<br /><br />はな風邪は、落ちついたようですが、明日っからまたお仕事じゃ。<br />がんばっぞ。<br />(ほどほどに)<br /><br />ではでは、みなさま。<br />風邪にはお気をつけ下さいネ。<br /><br />アディオース★

    くり返します。
    行ってソンは無し!

    久しぶりに、ハマる企画展でした♪

    はな風邪は、落ちついたようですが、明日っからまたお仕事じゃ。
    がんばっぞ。
    (ほどほどに)

    ではでは、みなさま。
    風邪にはお気をつけ下さいネ。

    アディオース★

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