2010/05/15 - 2010/05/15
3280位(同エリア4231件中)
きっちーさん
「笑っている・・?」
最初にそう思った。
いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。
よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。
彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。
優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。
海賊が、また笑ったように思えた。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル
PR
-
はな風邪をひいたみたいで、どうも芳しくない。
喉がヒリつくし、立て続けにくしゃみが出る。
熱っぽいような気はしないが・・・。
「ひょっとして、これが知恵熱・・?」
GWが終わってしまい、ハチャメチャな忙しさに、やや5月病気味に読書へのめり込んでいたせい、だろうか(涙)。
「カッコ悪ぅ〜・・」
はなをズルズルやりながら、前回見逃した『フランク・ブラングィン展』をのぞきに、上野に来ております。 -
2ヶ月くらい前に、ギュスターヴ・モローの水彩画目当てで、『所蔵水彩・素描展〜松方コレクションとその後〜』っていう常設展に寄ったんですけど。
そのときは、FB企画展まで時間がなくて〜。
(つか、まわるのに時間かけすぎて、時間切れでござった・・)
反省を踏まえてお時間のほう、少々早めにやって参りました。
上野の国立西洋美術館。 -
松方コレクションと同時開催の、『フランク・ブラングィン展』でございますv
いつも、書き終わるの遅いから。
結論から言いましょう。
絶〜対っ、行った方がイイすよーっ!!
以前、『鰭崎英朋展』で「終わってから言うなよ(怒)」とクレームが出ましたので、傾向と対策で(笑)。
行こ。
早よ行っとこ。
5/30(日)までですゾ。 -
例の看板を、横目で見ながら、
「世界遺産登録はあきらめんしゃい、西洋美術館」
ツイッター(笑)。
それより、国がきちんと予算つけたんさい。
国立、なんだから。
思いやり予算で、米軍の水道光熱費から娯楽施設建設まで出せるんだったら、ぜんぶ削ってコッチにつけて。
世界遺産のお金は、1カ国ではどーにもなんなそうな文化遺産にまわすのが、世界の正しい仕分けってもんじゃろう。 -
「あー、ハナ止まんねえ・・。総合感冒薬って、鼻水には効かないのだろうか・・」
風邪となったら医者には行かずに、年に一度通販で、大量まとめ買いしている風邪薬を、ガンガンやって抑えてしまうのですが〜。
そーいうのはきっと宜しくないので、ちゃんとお医者に行くべき、なんだろうな?
ぶちぶち言いつつ、チケットを片手に入り口を探します。 -
あった、あった。
入り口。
国立西洋美術館は、ほんっとつくりが滅茶苦茶な建物なので、来るといっつも迷います。
世界遺産どうこうよりも、もっと階段減らして。
分かりやすい順路を目指してくれ〜と、切に願います。
方向オンチには、つらい美術館なんすヨ。 -
ウロウロしたすえ、ようやく展示室へ。
『美の巨人たち』で放映されていたのと、ほぼ同じ解説が映像や前文で紹介されます。
松方コレクションを観た時には、
「なんだこれー?えらいバラバラな・・!」
と、あっけにとられましたが。
『手本がなく、油絵を知らない日本の洋画家たち、本当の西洋絵画を見せてやりたい』っていうのが、動機であったのなら、統一感のない蒐集も納得です。
そんな造船会社経営のマッツーが、入れ込んだ画家さん。
それが、イギリスのフランク・ブラングィン氏でございます。
名前はまったく聞いたことないけど、どんな作品なんでしょう。
わくわく。 -
ここからは撮影禁止のため、イメージキャラの・・・って、そればっかだと申し訳ないので〜(笑)。
今回は、ポストカードでご紹介。
ホントは、カードになってなかった作品で、チョ〜お勧めのがありやシタ(泣)!
あとあと、「いいなあ〜vv」って思っても印刷されたやつだと、現物と全然ちがってみえるので、実際にご覧になって頂いて欲しいでゴザイマス〜。 -
これも、生で見てほしい作品のひとつ。
ただのスケッチなんですけど、すんげーこまい!!
立体感があって、ラフに描いてある手の部分とくらべて、顔の描写は目を見張るような繊細さ。
息遣いまで感じます。
たった一色の線で描いてあるだけなのに、顔の皺まで浮き上がって見えて・・。
「あー。すっげー画家さんだな・・」
しょっぱなから、釘付けになりました。
プロだよ、プロ。 -
館内を進むうちに、フランク・ブラングィン作品の特徴が、少しずつみえてきます。
彼の色使いや作風は、力強く華やかで幻想的。
ゴージャスを追求すれば、デカダンスで退廃的でリッチが似合いそう。
きっと有名ブランドで、引く手あまたになりそうな雰囲気を、確実に持っています。
実際、アール・ヌーヴォーの由来ともいえる、ジークフリート・ビング(サミュエル・ビング)が1895年にパリに開いた店「アール・ヌーヴォー」の外壁デザインを担当。
『アール・ヌーヴォー展』のポスター・デザインは、アルフォンス・マリア・ミュシャのさきがけ、にも見えます。
なのに、です。
ブラングィンの視点の先には、華やかな世界はなく。
つねに地を這うような労働者たちが、神話のように光り輝きます。 -
荘厳で美しいのに、宗教画や上流階級の浮世離れした世界を、テーマにしない。
ありふれた市場や、港の場面。
1日の仕事を終え、川のように流れゆく労働者の群れを、黄金の光が落ちたように、まぶしく捉えます。
あくまで地に足がついた人々が、主人公として描かれる。
彼が見せる、美しい世界に惹き込まれます。
受難のキリストでさえ、ブラングィンの手にかかると、エレベーターの点検技師さんのようです。
普通の人々が美しい。
その果てしなく筋の通った筆先に、戸惑います。 -
日常と、強烈な美を肯定する視点。
この不思議な調和を、ブラングィン作品の随所に感じます。 -
このさきに、油彩作品をアップしてますが、エッチング、木版画、リトグラフなんかも、すんごいイイんですよ〜。
ポスカになってなくて、残念(涙)!
でも、展覧会カタログだと、どしても実物の迫力に欠けちゃってて・・。
あ〜あ。
メディア技術って、絶対追いつけないものなんですかね。
それとも多少、確信犯的な部分があんのかな? -
それはともかく。
どことなく、古典的な匂いのする作風のブラングィンですが、「やっぱ、近代芸術家さんなんだなあー」と思えるのが、戦争画や難民を描かれているトコ。
あと、女性の登場場面や、ライフスタイルのタイプが乏しいのも、ある意味、近代的な男性画家さんの視点かなー。
母親、看護婦、不安げな難民など。
あくまで男性の付加物であって、女性の本質を見極めが弱い部分は、時代の限界を感じました。
きな臭い時代の制約をおったうえで、それでもなお、ひたすら「美しいもの」をなぞらえる古典には、無い世界。 -
このエレベーター点検技師さんキリストの背後にも、軍服を着た兵士がおり、奥を行く群衆は戦場に狂喜しながら進んでいく、世相を描いているかのようです。
あ、すいません。
タイトルは、エレベーター点検技師さんのキリスト、じゃないです〜(笑)。
なんだっけ?
「ここまでやるか」っていう印象が強くて、タイトルど忘れしました。
ぜひ、ご自分の目で確かめてきてください(逃)。 -
やがて、奥の部屋に入ると、巨大な絵画が壁をぎっしり埋めています。
やばい。
惚れる。 -
ブラングィンは、色彩に定評があるそうですが、まさに面目躍如☆
いま描きあげたような、生々しいタッチのものから、ノスタルジックな印象のものまで、様々です。 -
《慈愛》という作品には、ヴィーナスとも聖マリアともつかない女性が、花降る庭園にキラキラ描かれます。
雰囲気じゃなくて、文字通りカンヴァスに塗られた絵の具が、キラキラしてるんです!
他の作品の絵の具とくべましたが、部分的に光るのはあっても全体的にピカピカしてるのは、《慈愛》だけ。
なんか混ぜているのかな?? -
展示室の左手から、どれも立ち止まらずにはいられない作品たちと向き合いながら、ぐるりと右手にまわってくると、中央に掲げられた1枚の作品。
肺に震えがきて、息が詰まります。
体温があがるような、赤――! -
「笑っている・・?」
最初にそう思った。
いい加減な髭をたくわえ、力強い肩を少し傾けて、こちらを見つめる男。
よくみると、唇は真横に無表情にむすばれ、笑っているように見えたのは、頬の肉が少しあがっていたから。
彼の背後でうるさげに旗がバタつき、黒いほどに澄んだ海水や、目の痛くなるような空が、こげた熱風さえ伝える。
優雅な港を目前にした巨船が、もうもうと白煙をあげている。
海賊が、また笑ったように思えた。 -
「本当に、不思議なバランス・・」
ブラングィンのキャンバスに向かう、どこか頑なな生きざまを感じます。
海賊たちは、獲物を積み引き揚げるところでしょうか。
背後では、煙をまいて霞む船が揺れ、いまにも沈みそうですが、海賊たちも無傷ではありません。
ボートには血痕が転々と付着し、包帯をした頭を押さえてうつむく者や、ぐったりと縁に身をあずける者。
奪った装身具らしき、真珠の首飾りをさげている者。
ボートに戦利品は少なく、わずかに箱のような物がみえるだけ・・。
踏み外せば、たやすく暗い世界に移ろってしまいそうなのに。
どこまでも鮮烈な色彩。
この調和こそが真骨頂なのだと、言わんばかりです。 -
「あれ?」
思わず吹き出しそうになった、オールを握る男の腕に、刻まれた刺青★
絞首台にぶら下った死体。
「最後にゃ、この場所さ」、そんなふてぶてしい乾いた嗤い声が、聞こえてきそうです。
ホント、芸がこまけーな(笑)。 -
この1枚を観れただけでも、来たかいあったなーと思います。
フランク・ブラングィン展は、『企画展』にしちゃ非常に展示数も多いし、大作もバッチで、幅広く紹介されていて、とにかく全体的に充実しています。
なにより〜、お客さんが少なくて、超じっくり観られる!
いや、ホント人少ないわ♪
どの作品も、30秒ほど待てば1対1で向き合えマス。
これ、大事なんすよ〜(泣)。
こうでなくちゃ、美術館じゃないっ。 -
くうぅ〜っ!
マジで良かったんすよ・・!
画像だけでもお見せできなくて、無念すぎ。
油彩作品、《浜の商い》《真鍮雑貨店》《市場の露店》《煙草をくわえた男》《造船》など、機会があったら見逃さないで欲しいす。
松方さんとブラングィン氏が意気投合したのは、マッツーが川崎造船所社チョーさんで、若いころ船乗り経験もあるブラングィン作《造船》に惚れ込んで、とのコトですが。
《造船》シリーズは、たしかにイカス。
最近、ミケランジェロ作品ばかり観ていたせいか(笑)、《最後の審判》のような、天国or地獄といった二元論的価値観にどっぷり浸っておりましたので、「天も地も光り輝く」といった劇的な、ブラングィン流の光を眩しく感じます。
巨大な船と対照的な、小さな人々を照らす斜光。
空には、轟々と風を鳴らし、そそり立つ真っ白な雲。
どちらも言葉にできないくらい、美しい。 -
あの、ひっちゃかめっちゃかの『松コレ』とは違い、本気で大事にした作家さんじゃな〜いと、感じました♪
最後に、《海の葬送》。
灰色の寒空の下、小雨に濡れた甲板の葬列に、ともに立ち会っているような錯覚に陥ります。
死者の頭上で、ポケットに手を突っ込んだまま、小さく聖書をつぶやく声が風の合間に聞こえてくるよう。
《海の葬送》と、海賊のボートが往く《海賊バカニーア》とは、色彩や作風でよく比較されるそうですが、根底を貫く視点はやはりブラングィンらしい、と思います。 -
「あ〜、終わっちまった。ふーっ」
ハナかみながら、ノロノロとエスカレーターで地上階へ出たときには、すでに2:30!
ノーッ!!
どんだけ、居座ってしまったんじゃ。
また、1日つかっちまったぜよ(泣)。
「おなかすいた〜!」
あ、でも、まだ常設展が残っとったじゃの〜。
企画展チケットの半券を提示すると、常設展も観られるそうで。
こっちは1回観ているので、サラッと。 -
つか、常設展会場の最後のほうの部屋、すんげー薬品臭がするんですよ〜(汗)。
あんま、留まってらんない。
鼻にクルし。
きもい。
壁紙でも張り替えたのかなあ?? -
お疲れっシタ!
マッツーが購入したブラングィンの代表作は、展示作品の他にも何点かあったそうですが、保管先の火災で焼失してしまったそうで。
もったないーっ!!
今回のでもスゴイのに、代表作ってどんなだったのか想像するだけで・・・悔しい・・。
火の用心だよ、まったく。
もったいない・・。 -
くり返します。
行ってソンは無し!
久しぶりに、ハマる企画展でした♪
はな風邪は、落ちついたようですが、明日っからまたお仕事じゃ。
がんばっぞ。
(ほどほどに)
ではでは、みなさま。
風邪にはお気をつけ下さいネ。
アディオース★
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
29