シカゴ旅行記(ブログ) 一覧に戻る
きっかけは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の展覧会でした。<br /><br />2009年5月にニューヨークを旅行した際、同美術館でフランク・ロイド・ライトの設計による美術館完工50周年と彼の没後50周年とを記念して開催されたライト展が開催されており、そこで彼の建築に関する数多くのドローイング、写真、建築模型などに触れ、俄然ライトに対する興味が沸いてきました。7月には独立記念日の連休があり(2009年現在米国赴任中です)、その連休の旅行をどうしようかと考えていたところでしたが、これを見て彼の建築が多く残るシカゴに行くことに決めました。<br /><br />シカゴ近郊には、プレーリースタイルの代表作ロビー邸をはじめ、建築家デビューから約20年の間に彼が設計した建築が数多く残されており、今回はこれらの建築を見て回りました。<br /><br />これらの建築は、従来の建築様式の影響を受けたデビュー当時の作品から、非常に洗練されたプレーリースタイルの住宅、さらにはコンクリートの宗教施設まで様々であり、これらを見て回ることで彼の初期の建築スタイルの発展をたどっていくことが出来ました。建物のあるロケーションは、オークパークとハイドパークというシカゴ近郊の瀟洒な建物が並ぶ地区と学術都市で雰囲気がよく、建築に興味のある人もそうでない人も楽しめるところだと思います。<br /><br />【ライトとシカゴについて】<br />ライトは、1887年にこけら葺きの大きな屋根が特徴のシングル・スタイルの建築で当時有名だったシカゴのジョセフ・L・シルスビーの下で最初の仕事に就きますが、より刺激のある出会いを求めて、1888年にダンクマール・アドラーとルイス・サリヴァンの事務所に移ります。サリヴァンは、それまでアメリカの主流だったヨーロッパの建築様式を模倣した建築ではなくアメリカの風土と調和したアメリカ独自の建築を目指した人で、サリヴァンに師事したライトは彼から大きな影響を受け、これは後述するプレーリースタイルへとつながっていきます。<br />その後1889年に結婚したライトは、サリヴァンから借金をしてシカゴ郊外のオークパークに自宅を建設し新婚生活を開始しましたが、自宅の借金を返しさらには増えていく家族を養うため、サリヴァンとの契約に反する建築設計の副業に手を出します。結局建築設計の副業はサリヴァンの知るところとなり、1893年にアドラー・サリヴァン事務所を辞めることになります。<br />これにより、ライトは独立した建築家としての道を歩みはじめ、1893年からアメリカを一時去る1910年までの17年間に計画案も含め200件近い建築の設計を行いました。この間に、ライトはプレーリースタイルと呼ばれる建築様式を発展させていきます。プレーリースタイルとは、屋根裏と地下室を廃して建物の高さを抑え、屋根のひさしを深くし、また窓を横に並べることで水平線を強調することを特徴とし、シカゴ周辺のプレーリーと呼ばれる草原地帯との調和を目指した住宅様式です。<br /><br />【他のライト建築の見学記】<br />他のライトの建築を見学したときの様子も旅行記として残しています。よろしければご参照ください。<br />落水荘/ケンタック・ノブ<br />http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10452052/<br />ロビー邸/「ルッカリー」のロビー<br />http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10429804/<br />東京・池袋 自由学園明日館<br />http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10508845/

シカゴでフランク・ロイド・ライトを堪能する(1)

27いいね!

2009/07/05 - 2009/07/05

122位(同エリア981件中)

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43

Yattokame!

Yattokame!さん

きっかけは、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の展覧会でした。

2009年5月にニューヨークを旅行した際、同美術館でフランク・ロイド・ライトの設計による美術館完工50周年と彼の没後50周年とを記念して開催されたライト展が開催されており、そこで彼の建築に関する数多くのドローイング、写真、建築模型などに触れ、俄然ライトに対する興味が沸いてきました。7月には独立記念日の連休があり(2009年現在米国赴任中です)、その連休の旅行をどうしようかと考えていたところでしたが、これを見て彼の建築が多く残るシカゴに行くことに決めました。

シカゴ近郊には、プレーリースタイルの代表作ロビー邸をはじめ、建築家デビューから約20年の間に彼が設計した建築が数多く残されており、今回はこれらの建築を見て回りました。

これらの建築は、従来の建築様式の影響を受けたデビュー当時の作品から、非常に洗練されたプレーリースタイルの住宅、さらにはコンクリートの宗教施設まで様々であり、これらを見て回ることで彼の初期の建築スタイルの発展をたどっていくことが出来ました。建物のあるロケーションは、オークパークとハイドパークというシカゴ近郊の瀟洒な建物が並ぶ地区と学術都市で雰囲気がよく、建築に興味のある人もそうでない人も楽しめるところだと思います。

【ライトとシカゴについて】
ライトは、1887年にこけら葺きの大きな屋根が特徴のシングル・スタイルの建築で当時有名だったシカゴのジョセフ・L・シルスビーの下で最初の仕事に就きますが、より刺激のある出会いを求めて、1888年にダンクマール・アドラーとルイス・サリヴァンの事務所に移ります。サリヴァンは、それまでアメリカの主流だったヨーロッパの建築様式を模倣した建築ではなくアメリカの風土と調和したアメリカ独自の建築を目指した人で、サリヴァンに師事したライトは彼から大きな影響を受け、これは後述するプレーリースタイルへとつながっていきます。
その後1889年に結婚したライトは、サリヴァンから借金をしてシカゴ郊外のオークパークに自宅を建設し新婚生活を開始しましたが、自宅の借金を返しさらには増えていく家族を養うため、サリヴァンとの契約に反する建築設計の副業に手を出します。結局建築設計の副業はサリヴァンの知るところとなり、1893年にアドラー・サリヴァン事務所を辞めることになります。
これにより、ライトは独立した建築家としての道を歩みはじめ、1893年からアメリカを一時去る1910年までの17年間に計画案も含め200件近い建築の設計を行いました。この間に、ライトはプレーリースタイルと呼ばれる建築様式を発展させていきます。プレーリースタイルとは、屋根裏と地下室を廃して建物の高さを抑え、屋根のひさしを深くし、また窓を横に並べることで水平線を強調することを特徴とし、シカゴ周辺のプレーリーと呼ばれる草原地帯との調和を目指した住宅様式です。

【他のライト建築の見学記】
他のライトの建築を見学したときの様子も旅行記として残しています。よろしければご参照ください。
落水荘/ケンタック・ノブ
http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10452052/
ロビー邸/「ルッカリー」のロビー
http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10429804/
東京・池袋 自由学園明日館
http://4travel.jp/traveler/yattokame/album/10508845/

一人あたり費用
5万円 - 10万円

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  • シカゴのループ地区から、Lのグリーンラインに乗ってオークパークへ行きます。オークパークの駅は、終点Harlemの一つ手前にあり、ループ地区から30分くらいで到着しました。<br /><br />電車は途中治安のあまり良くない地区を通り、身なりの良くない人も乗ってきますので、乗車の際には乗客の少ない車両に乗るのは避けるなどの注意を払ったほうがよいと思います。

    シカゴのループ地区から、Lのグリーンラインに乗ってオークパークへ行きます。オークパークの駅は、終点Harlemの一つ手前にあり、ループ地区から30分くらいで到着しました。

    電車は途中治安のあまり良くない地区を通り、身なりの良くない人も乗ってきますので、乗車の際には乗客の少ない車両に乗るのは避けるなどの注意を払ったほうがよいと思います。

  • オークパークでのライト建築巡りは、ライトの自宅兼スタジオに併設された「ギンコツリー・ショップ」から始まります。駅からライトの自宅兼スタジオまでは歩いて約15分ほどかかりました。<br /><br />ギンコツリーショップでは、ライトの自宅兼スタジオ見学ツアーとライト邸周辺の住宅を巡るツアーを申し込むことができます。自宅兼スタジオの内部はツアーでのみ見学可能となっています。また、希望する見学の時間帯は早い者勝ちで埋まっていきます。特に季節の良い時期には観光客が多く訪れますので、自宅兼スタジオを見学する場合、早めに行って申し込んだほうがいいのではないかと思います。私が行ったときには、直近のツアーが埋まっており参加できるツアーの時間まで間があったため、オーディオガイドをショップで借りて、オークパーク周辺のライト建築を見て回ることにしました。<br /><br />

    オークパークでのライト建築巡りは、ライトの自宅兼スタジオに併設された「ギンコツリー・ショップ」から始まります。駅からライトの自宅兼スタジオまでは歩いて約15分ほどかかりました。

    ギンコツリーショップでは、ライトの自宅兼スタジオ見学ツアーとライト邸周辺の住宅を巡るツアーを申し込むことができます。自宅兼スタジオの内部はツアーでのみ見学可能となっています。また、希望する見学の時間帯は早い者勝ちで埋まっていきます。特に季節の良い時期には観光客が多く訪れますので、自宅兼スタジオを見学する場合、早めに行って申し込んだほうがいいのではないかと思います。私が行ったときには、直近のツアーが埋まっており参加できるツアーの時間まで間があったため、オーディオガイドをショップで借りて、オークパーク周辺のライト建築を見て回ることにしました。

  • オーディオガイドを使って、ライト建築を見て回ります。ギンコツリー・ショップからChicago Avenueに出ました。通りに面して、ライトのスタジオと受付、図書室があります。

    オーディオガイドを使って、ライト建築を見て回ります。ギンコツリー・ショップからChicago Avenueに出ました。通りに面して、ライトのスタジオと受付、図書室があります。

  • スタジオの入り口です。柱に彫刻が飾られています。

    スタジオの入り口です。柱に彫刻が飾られています。

  • 柱の彫刻のモチーフは、上から、生命の木、知恵の本、コウノトリ、設計図となっています。コウノトリは、知恵と豊饒の象徴だそうです。

    柱の彫刻のモチーフは、上から、生命の木、知恵の本、コウノトリ、設計図となっています。コウノトリは、知恵と豊饒の象徴だそうです。

  • スタジオ入り口の屋根には、男の彫刻も飾られています。これは煩悩からの超克を目指してもがく人間を象徴しています。

    スタジオ入り口の屋根には、男の彫刻も飾られています。これは煩悩からの超克を目指してもがく人間を象徴しています。

  • 設計室は2階が八角形になっています。建物内部は吹き抜けになって2階にバルコニーがあり、このバルコニーが天井から吊るされた鎖によって支えられるという変わった造りになっています。

    設計室は2階が八角形になっています。建物内部は吹き抜けになって2階にバルコニーがあり、このバルコニーが天井から吊るされた鎖によって支えられるという変わった造りになっています。

  • Chicago Avenueを曲がりForestAvenueから見たライトの自宅の西側ファサードです。緑陰の中に美しい佇まいを見せます。<br /><br />ライトは、新しい家族の誕生や独立を機に自宅と事務所を増築しており、その度に外観や内装に異なるデザインが取り入れられているため、建物全体の統一感はありません。増築は、自身のデザイン研究のための実験的な意味もあったのかもしれません。

    イチオシ

    Chicago Avenueを曲がりForestAvenueから見たライトの自宅の西側ファサードです。緑陰の中に美しい佇まいを見せます。

    ライトは、新しい家族の誕生や独立を機に自宅と事務所を増築しており、その度に外観や内装に異なるデザインが取り入れられているため、建物全体の統一感はありません。増築は、自身のデザイン研究のための実験的な意味もあったのかもしれません。

  • Chicago Avenueに戻ってきました。これは、1892年に建てられたロバート・P・パーカー邸で、サリヴァンの事務所で働きながら副業で設計したライト最初期の住宅です。

    Chicago Avenueに戻ってきました。これは、1892年に建てられたロバート・P・パーカー邸で、サリヴァンの事務所で働きながら副業で設計したライト最初期の住宅です。

  • ロバート・P・パーカー邸と同時期に建てられたトーマス・H・ゲイル邸です。ロバート・P・パーカー邸とともに、屋根はシルスビーのシングル・スタイルの影響を受けたこけら葺きの大きなものとなっています。

    ロバート・P・パーカー邸と同時期に建てられたトーマス・H・ゲイル邸です。ロバート・P・パーカー邸とともに、屋根はシルスビーのシングル・スタイルの影響を受けたこけら葺きの大きなものとなっています。

  • パーカー邸、ゲイル邸と同じ並びに建つウォルター・H・ゲイル邸です。1893年、サリヴァンからの独立後に最初に手がけた家です。シングル・スタイルの要素を残しながらも、円筒形の棟などパーカー邸、ゲイル邸にない新しい特徴を加えています。<br /><br />朝日に輝く様が美しいですねえ。

    パーカー邸、ゲイル邸と同じ並びに建つウォルター・H・ゲイル邸です。1893年、サリヴァンからの独立後に最初に手がけた家です。シングル・スタイルの要素を残しながらも、円筒形の棟などパーカー邸、ゲイル邸にない新しい特徴を加えています。

    朝日に輝く様が美しいですねえ。

  • Forest Avenue沿いに建つネイザン・G・ムーア邸です。こちらは、1895年に友人の依頼で設計した住宅で、施主の希望に沿ってイギリスのチューダー様式で建てられています。そのため、他のライトの建築とは異なる趣きがあります。

    Forest Avenue沿いに建つネイザン・G・ムーア邸です。こちらは、1895年に友人の依頼で設計した住宅で、施主の希望に沿ってイギリスのチューダー様式で建てられています。そのため、他のライトの建築とは異なる趣きがあります。

  • こちらは、先ほどとは反対側から撮ったムーア邸です。1922年に火事で2、3階部分が焼失した後再度ライトの設計で建て直した際、マヤ文明のデザインなどを取り入れておりますが、こちら側にはその特徴が良く表れています。

    こちらは、先ほどとは反対側から撮ったムーア邸です。1922年に火事で2、3階部分が焼失した後再度ライトの設計で建て直した際、マヤ文明のデザインなどを取り入れておりますが、こちら側にはその特徴が良く表れています。

  • ムーア邸の火事の後取り付けられた装飾です。ライトらしいデザインになっています。

    ムーア邸の火事の後取り付けられた装飾です。ライトらしいデザインになっています。

  • マヤのデザインが取り入れられたムーア邸の1階バルコニー部分。後に建てられた帝国ホテルに通じるデザインですね。

    マヤのデザインが取り入れられたムーア邸の1階バルコニー部分。後に建てられた帝国ホテルに通じるデザインですね。

  • ムーア邸の隣に建つヒルズ・デケイロ邸です。もともとここにあったグレイ邸を、1906年に新築同然に大改装してできた家で、水平線が強調されたプレーリースタイルの特徴が良く出ています。また、窓も他のライト建築同様、アートグラスによる美しい装飾が施されています。<br />屋根のスロープが2段になっていますが、これは日本の影響を受けたものだそうです。

    ムーア邸の隣に建つヒルズ・デケイロ邸です。もともとここにあったグレイ邸を、1906年に新築同然に大改装してできた家で、水平線が強調されたプレーリースタイルの特徴が良く出ています。また、窓も他のライト建築同様、アートグラスによる美しい装飾が施されています。
    屋根のスロープが2段になっていますが、これは日本の影響を受けたものだそうです。

  • 1902年に建てられたアーサー・B・ヒュートレイ邸です。高さを抑えた建物、キャンティレバーによる幅の広い庇、横に連続する窓などによって水平線が強調され、これぞプレーリースタイルという建築になっています。また、表面にレンガを用いることで、周囲の緑ともよく調和した落ち着いた佇まいを見せています。<br /><br />こんな家に住める人がうらやましいですね。

    イチオシ

    1902年に建てられたアーサー・B・ヒュートレイ邸です。高さを抑えた建物、キャンティレバーによる幅の広い庇、横に連続する窓などによって水平線が強調され、これぞプレーリースタイルという建築になっています。また、表面にレンガを用いることで、周囲の緑ともよく調和した落ち着いた佇まいを見せています。

    こんな家に住める人がうらやましいですね。

  • ヒュートレイ邸のエントランスは、手前に置かれた塀によって遮られ、中が見えないようになっています。このように建物の入り口を見えないようにするのは、ライトのプレーリースタイル建築に良く見られる特徴です。<br /><br />また、異なる色のレンガを交互に用いることで水平線が強調されていますが、これはロビー邸でも見ることができます。

    ヒュートレイ邸のエントランスは、手前に置かれた塀によって遮られ、中が見えないようになっています。このように建物の入り口を見えないようにするのは、ライトのプレーリースタイル建築に良く見られる特徴です。

    また、異なる色のレンガを交互に用いることで水平線が強調されていますが、これはロビー邸でも見ることができます。

  • 塀で遮られた1階エントランスとは対照的に、2階は窓が連続し開放的な印象を受けます。このように大きく窓を取ることで、外部との一体感が得られ、空間を広く見せることができます。<br /><br />また、窓にはアートグラスによる装飾がほどこされていますが、これは単なる装飾にとどまらず、外部からの光をやわらかく室内に取り込むことができるほか、外部から中を見えにくくする効果もありました。<br /><br />住む人の生活に配慮した設計になっているんですね。

    塀で遮られた1階エントランスとは対照的に、2階は窓が連続し開放的な印象を受けます。このように大きく窓を取ることで、外部との一体感が得られ、空間を広く見せることができます。

    また、窓にはアートグラスによる装飾がほどこされていますが、これは単なる装飾にとどまらず、外部からの光をやわらかく室内に取り込むことができるほか、外部から中を見えにくくする効果もありました。

    住む人の生活に配慮した設計になっているんですね。

  • 1906年に建てられたローラ・ゲイル邸です。ライトの建築が並ぶForest Avenueから横道を入り、少し奥まったところにあります。キャンティレバーによって強調された庇とバルコニーを持つ建物は、後の傑作「落水荘」を思わせます。<br /><br />木立によって建物の全体像が見えないのが、残念です。

    1906年に建てられたローラ・ゲイル邸です。ライトの建築が並ぶForest Avenueから横道を入り、少し奥まったところにあります。キャンティレバーによって強調された庇とバルコニーを持つ建物は、後の傑作「落水荘」を思わせます。

    木立によって建物の全体像が見えないのが、残念です。

  • 再びForest Avenueに戻ってきました。これは、1906年に建てられたピーター・A・ビーチィ邸です。これもプレーリースタイルの建築ですが、2階の屋根の三角形の破風が他のプレーリースタイル建築には見られないアクセントになっています。

    再びForest Avenueに戻ってきました。これは、1906年に建てられたピーター・A・ビーチィ邸です。これもプレーリースタイルの建築ですが、2階の屋根の三角形の破風が他のプレーリースタイル建築には見られないアクセントになっています。

  • フランク・W・トーマス邸です。1901年に建てられたライトのプレーリースタイル建築の第1号です。

    フランク・W・トーマス邸です。1901年に建てられたライトのプレーリースタイル建築の第1号です。

  • ここでも、美しい窓の装飾を見ることができます。

    ここでも、美しい窓の装飾を見ることができます。

  • トーマス邸も、玄関の位置を入り口からのアプローチからずらすことで、玄関が見えないようになっていますが、このようなプライバシーに配慮した処理は他のプレーリースタイルと同様のものです。<br /><br />プレーリースタイル第1号にして、非常に完成度が高い建築となっています。

    トーマス邸も、玄関の位置を入り口からのアプローチからずらすことで、玄関が見えないようになっていますが、このようなプライバシーに配慮した処理は他のプレーリースタイルと同様のものです。

    プレーリースタイル第1号にして、非常に完成度が高い建築となっています。

  • こちらは、Forest Avenueから一本東にあるKenilworth Avenueに建つ、クイーン・アン・スタイルの家です。これは、ライトの設計ではありませんが、現在B&Bになっており泊まれます。<br />http://www.undertheginkgotreebb.com/<br /><br />こういうところに泊まって、美しい街並みの中をのんびり散策するのもいいかもしれませんね。<br /><br /><br />

    こちらは、Forest Avenueから一本東にあるKenilworth Avenueに建つ、クイーン・アン・スタイルの家です。これは、ライトの設計ではありませんが、現在B&Bになっており泊まれます。
    http://www.undertheginkgotreebb.com/

    こういうところに泊まって、美しい街並みの中をのんびり散策するのもいいかもしれませんね。


  • こちらもKenilworth Avenueに建つ、ハリソン・P・ヤング邸です。1895年にライトが改装した家で、Forest Avenueのムーア邸と同じくイギリスの様式が残っていますが、1階の丸い屋根にキャンティレバーが用いられており、ライトらしい特色が表れています。

    こちらもKenilworth Avenueに建つ、ハリソン・P・ヤング邸です。1895年にライトが改装した家で、Forest Avenueのムーア邸と同じくイギリスの様式が残っていますが、1階の丸い屋根にキャンティレバーが用いられており、ライトらしい特色が表れています。

  • 1896年にE・E・ロバーツによって建てられたシンプトン・ダンロップ邸です。ロバーツは、ライトと同時期に活躍した建築家です。三角、四角という幾何学図形が明快に建物の中に取り込まれ、気持ちの良い印象を受けます。この幾何学図形の意匠は、ライトも先ほど見たハリソン・P・ヤング邸などで取り入れています。

    1896年にE・E・ロバーツによって建てられたシンプトン・ダンロップ邸です。ロバーツは、ライトと同時期に活躍した建築家です。三角、四角という幾何学図形が明快に建物の中に取り込まれ、気持ちの良い印象を受けます。この幾何学図形の意匠は、ライトも先ほど見たハリソン・P・ヤング邸などで取り入れています。

  • これも、さきほどの三角屋根の家と同じくE・E・ロバーツの1904年の作品です。ライトの影響を受けたプレーリースタイルによる建築となっています。

    これも、さきほどの三角屋根の家と同じくE・E・ロバーツの1904年の作品です。ライトの影響を受けたプレーリースタイルによる建築となっています。

  • ライトが母親のために購入したビクトリア調の住宅です。ライトの自宅に隣接しています。ライトの最初の妻は、隣に住む義母とはあまりしっくりいかなかったようです。嫁姑の問題は、古今東西を問いません。

    ライトが母親のために購入したビクトリア調の住宅です。ライトの自宅に隣接しています。ライトの最初の妻は、隣に住む義母とはあまりしっくりいかなかったようです。嫁姑の問題は、古今東西を問いません。

  • 再びライトの自宅兼スタジオに戻ってきて、内部見学ツアーに参加しました。内部の撮影は禁止されているため、残念ながら内部の写真はありません。<br /><br />内部では、ライトのデザインしたテーブルと椅子の並ぶダイニングルーム、丸天井に明かり取りのステンドグラスが配された子供のプレイルーム(部屋の隅にあるグランドピアノが壁をぶち抜いて階段に飛び出ている!)、天井から吊るされた鎖で支えられたバルコニーを持つ設計室などが印象的でした。<br /><br />写真は、ギンコツリー・ショップの前に置かれた彫刻です。直線的な彫刻は、ライトの設計した家具や窓のステンドグラスのデザインに通じるものがあります

    再びライトの自宅兼スタジオに戻ってきて、内部見学ツアーに参加しました。内部の撮影は禁止されているため、残念ながら内部の写真はありません。

    内部では、ライトのデザインしたテーブルと椅子の並ぶダイニングルーム、丸天井に明かり取りのステンドグラスが配された子供のプレイルーム(部屋の隅にあるグランドピアノが壁をぶち抜いて階段に飛び出ている!)、天井から吊るされた鎖で支えられたバルコニーを持つ設計室などが印象的でした。

    写真は、ギンコツリー・ショップの前に置かれた彫刻です。直線的な彫刻は、ライトの設計した家具や窓のステンドグラスのデザインに通じるものがあります

  • ライト邸見学の後は、駅の方角に向かって歩き、ユニティテンプルを目指しました。1905年から1908年の間に建設されたユニティテンプルは、ライトの初期の代表作であり、彼の作品の中で現在も使用されている唯一の公共建築物です。<br /><br />建物には、建築予算の制約から、当時あらゆる素材の中で最も安く仕上げることのできたコンクリートを使用しています。ユニティテンプルは、アメリカでコンクリートを木枠に流し込んで造った最初期の建築物であり、この点でも歴史的な意義があります。<br /><br />なお、ユニティテンプルという名称についてですが、古代の寺院がもつ簡素な力強さを表現した礼拝の場を創りたいという彼の意思に従い、「Church」ではなく「Temple」と呼んでいます。<br /><br />ユニティテンプルは中を見学することも、写真を撮影することも可能です。

    ライト邸見学の後は、駅の方角に向かって歩き、ユニティテンプルを目指しました。1905年から1908年の間に建設されたユニティテンプルは、ライトの初期の代表作であり、彼の作品の中で現在も使用されている唯一の公共建築物です。

    建物には、建築予算の制約から、当時あらゆる素材の中で最も安く仕上げることのできたコンクリートを使用しています。ユニティテンプルは、アメリカでコンクリートを木枠に流し込んで造った最初期の建築物であり、この点でも歴史的な意義があります。

    なお、ユニティテンプルという名称についてですが、古代の寺院がもつ簡素な力強さを表現した礼拝の場を創りたいという彼の意思に従い、「Church」ではなく「Temple」と呼んでいます。

    ユニティテンプルは中を見学することも、写真を撮影することも可能です。

  • ユニティテンプルは、大小2つの箱型の建物からなり、2つの建物の間に両者を結ぶ玄関ホールが設けられています。<br /><br />高いほうの建物は礼拝堂であり、低い建物は集会所として利用されています。礼拝堂はLake通りに面し、通りには当時路面電車が走っていたため、騒音を遮るため、通りに面して分厚い壁が立ちふさがります。その壁の上部には明かり取りの窓が設けられ、その間に飾り柱が立ちます。高い壁に取り囲まれた箱型の建物は、宗教施設としての威厳を保ちながら、この飾り柱によって建築の単調さを回避しています。

    ユニティテンプルは、大小2つの箱型の建物からなり、2つの建物の間に両者を結ぶ玄関ホールが設けられています。

    高いほうの建物は礼拝堂であり、低い建物は集会所として利用されています。礼拝堂はLake通りに面し、通りには当時路面電車が走っていたため、騒音を遮るため、通りに面して分厚い壁が立ちふさがります。その壁の上部には明かり取りの窓が設けられ、その間に飾り柱が立ちます。高い壁に取り囲まれた箱型の建物は、宗教施設としての威厳を保ちながら、この飾り柱によって建築の単調さを回避しています。

  • Lake通りから建物の横面に沿って歩き、玄関ホールに入ってきました。ホールの両側には、大きなアートグラスのドアが並んで、外界との連続感を持たせています。

    Lake通りから建物の横面に沿って歩き、玄関ホールに入ってきました。ホールの両側には、大きなアートグラスのドアが並んで、外界との連続感を持たせています。

  • 集会所の天井です。天井はアートグラスによる天窓となっており、柔らかい光が室内を照らします。

    集会所の天井です。天井はアートグラスによる天窓となっており、柔らかい光が室内を照らします。

  • 集会所と反対側の礼拝堂へは、一段低くなった回廊を通って入ります。

    集会所と反対側の礼拝堂へは、一段低くなった回廊を通って入ります。

  • 礼拝堂内部です。ここも三方にめぐらされた窓と天窓によって、開放感のある造りになっています。

    礼拝堂内部です。ここも三方にめぐらされた窓と天窓によって、開放感のある造りになっています。

  • 天井から吊るされた照明は、日本の伝統的な行灯のデザインからヒントを得ています。

    天井から吊るされた照明は、日本の伝統的な行灯のデザインからヒントを得ています。

  • ユニティテンプルの壁には、白、灰、緑、黄の色が用いられ、室内に暖かい雰囲気を与えています。また、オーク材の線が壁を走り、幾何学模様を形成しています。このデザイン、たまりませんねえ。

    ユニティテンプルの壁には、白、灰、緑、黄の色が用いられ、室内に暖かい雰囲気を与えています。また、オーク材の線が壁を走り、幾何学模様を形成しています。このデザイン、たまりませんねえ。

  • 2階、3階の座席へは側面の回廊に設けられた階段を使って上がります。回廊には、このようなアートグラスを使った細長い窓が設けられており、外光がここを通って回廊の静かな暗闇に射し込んできます。

    2階、3階の座席へは側面の回廊に設けられた階段を使って上がります。回廊には、このようなアートグラスを使った細長い窓が設けられており、外光がここを通って回廊の静かな暗闇に射し込んできます。

  • 窓のアートグラスの模様が回廊の床に映りこみます。

    窓のアートグラスの模様が回廊の床に映りこみます。

  • 2階バルコニー正面から見た演壇です。その後方の格子は、パイプオルガンを隠しています。伝統的な教会にある宗教画や十字架などは一切なく、幾何学模様と壁の色、さらに外から差し込む光によって宗教施設らしい落ち着いた空間を生み出しています。

    2階バルコニー正面から見た演壇です。その後方の格子は、パイプオルガンを隠しています。伝統的な教会にある宗教画や十字架などは一切なく、幾何学模様と壁の色、さらに外から差し込む光によって宗教施設らしい落ち着いた空間を生み出しています。

  • 建物上部の窓です。ここでも連続する窓が外部との一体感を生み出しています。

    建物上部の窓です。ここでも連続する窓が外部との一体感を生み出しています。

  • こちらは、礼拝堂の天井です。ここにもアートガラスが用いられていますが、ガラスの模様はそれぞれ違った方向を向いています。ライトが、細部にいたるまで工夫を施していることが分かります。<br /><br />オークパークの見学の最後に、本当に素晴らしいものを見ました。簡素な外観と、それと対照的な内部の繊細な装飾。ユニティテンプルのデザインはどれもライトらしい洗練されたもので、ライト自身が「宝石箱」と呼んだことが納得できる、珠玉の作品でした。<br /><br />オークパークへは10時前に来ましたが、ユニティテンプルの見学を終えた時点ですでに4時を過ぎてしまいました。オークパークの見学は、一日がかりです。<br /><br />この次は、シカゴ中心部にあるビル「ルッカリー」内部のライトが設計したロビーとハイドパークのロビー邸を見学したときの模様を別冊でお伝えしたいと思います。<br />

    こちらは、礼拝堂の天井です。ここにもアートガラスが用いられていますが、ガラスの模様はそれぞれ違った方向を向いています。ライトが、細部にいたるまで工夫を施していることが分かります。

    オークパークの見学の最後に、本当に素晴らしいものを見ました。簡素な外観と、それと対照的な内部の繊細な装飾。ユニティテンプルのデザインはどれもライトらしい洗練されたもので、ライト自身が「宝石箱」と呼んだことが納得できる、珠玉の作品でした。

    オークパークへは10時前に来ましたが、ユニティテンプルの見学を終えた時点ですでに4時を過ぎてしまいました。オークパークの見学は、一日がかりです。

    この次は、シカゴ中心部にあるビル「ルッカリー」内部のライトが設計したロビーとハイドパークのロビー邸を見学したときの模様を別冊でお伝えしたいと思います。

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  • merionさん 2011/05/05 21:12:23
    ため息がでます!
    Yattokame!さん、こんばんは。

    本当に素晴らしい写真ばかりで感動です!
    いつか、フランクロイド・ライトとルイス・バラガンの建築を見て廻りたいと思っていたのですが、灯台元暗し!
    こんなに素晴らしいガイドブックが!!

    Yattokame!さんの旅行記は、いままで見たどの写真集より、ライトの建築を美しく、正確に写していてただ惚れぼれするばかりです。
    視点が違うんだと思います。
    アングル的に美しいものだけを狙っているのではなく、Fロイド・ライトが表現しようとしたものが、とてもよくわかります。
    最後から6枚目の写真、こういうデザイン、納まりを見せられると、たまりません!としか言えなくなりますね。
    私はライトの照明が特に好きです。
    照明器具って、天井や壁の中で、どうしてもとって付けたように見えてしまうのに、ライトは、そこをしっかり設計していて、全てが一つの空間に溶け込んでいるように思います。

    写真解説もとてもわかりやすい♪
    後ろをついて行きたいです(本気)

    (長文失礼致しました)
    merion

    Yattokame!

    Yattokame!さん からの返信 2011/05/06 03:09:32
    RE: ため息がでます!
    merionさん

    こんばんは。

    旅行記大変気に入っていただけたようで、作った甲斐がありました。

    フランク・ロイド・ライトとルイス・バラガン、どちらもアメリカとメキシコという土地の色がよく出た作家でありながら、日本人の感性にあうところがあって面白いですね。ライトの建築とバラガンの建築両方を見たことがありますが、バラガンの作品はメキシコの土地、空気そして己の信仰を体現したシンプルな感じのする建築であるのに対し、ライトの建築は「神は細部に宿る」という表現がこれほど似合うものはないというほどデザインが研ぎ澄まされ徹底した知性を感じさせます。また、この知性を感じさせるというところはあのルイス・カーンの建築にも通じますが、親しみを感じさせるという点ではライトのほうが勝っているように思います。

    > アングル的に美しいものだけを狙っているのではなく、Fロイド・ライトが表現しようとしたものが、とてもよくわかります。
    > 最後から6枚目の写真、こういうデザイン、納まりを見せられると、たまりません!としか言えなくなりますね。
    > 私はライトの照明が特に好きです。
    > 照明器具って、天井や壁の中で、どうしてもとって付けたように見えてしまうのに、ライトは、そこをしっかり設計していて、全てが一つの空間に溶け込んでいるように思います。

    ライトは、建築だけでなく、内装、家具も一貫してデザインし、それぞれが見る者にどういう効果を与えるか緻密に計算してデザインするので、見る人は見事にライトのマジックに導かれてライトが期待するような目の動きをし、感動しますね。ライトの作品を見るたびに、その見事さに驚き、そしてライトの意図を感じることで、ライトがすぐそこにいるかのように感じます。

    久しぶりに旅行記を見返しましたが、オークパークのライトの作品は100年以上経過しているにも関わらず、その近代性は色褪せていないなと改めて驚きました。日本国内にもライトの建築はいくつか残っているので、これらも今後追っていきたいと思います。

    Yattokame!

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