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【各地へ移動の日】<br />昨夜熱発の女生徒は翌朝の水曜日も 38.5℃ あり、いよいよかろうじて準備してきた簡易インフルエンザ検査キットで検査しました。昨夜検査しなかったのは、熱発して24時間くらいたたないと、早過ぎて検査に引っかからないことがあるからです。今年は、新型インフルエンザ騒ぎで簡易検査キットも品切れ状態で買いそびれました。私は開業医の友達からかろうじて3セットだけもらってきました。この生徒の結果は予想通り陰性でした。でも、まだ熱があるのでホストファミリーへの移動はできず、午後関係者が近くの病院の内科へ連れて行きました。これは、後日ファックス等でデータ、診断書をもらったのですが複雑な心境になりました。<br /><br />内科では、胸のレントゲン写真を撮り異常なしだったそうです。インフルエンザ検査はもちろん陰性。血液検査で白血球が約 1.5 万と上昇し、CRP も 4.5 と上昇。そして、診断名が「cystitis」つまり「膀胱炎」で、クラビットというよく使われる抗菌剤が処方されたそうです。私は苦笑いしました。明らかに、内科医は間違っています。泌尿器科専門医の私はよく経験しています。定義から言っても、「膀胱炎」は発熱しません。発熱するのは、もっと重症な「腎盂腎炎」です。たぶん、検尿で「見かけ上の異常」があったのです。しかも、若い女性なのに排尿痛も頻尿も側腹部痛も訴えていないのです。症状は発熱と鼻水です! あり得ません。検尿の「見かけ上の異常」と言うのは、おちんちんのない女性は検査の排尿時に「おりもの」が混ざることがよくあり、雑菌や白血球が混ざるのです。実際に生徒を連れて行った女性は「膀胱炎でも熱が出るのですか?」と聞いたそうで、そしたら「そうです。」と医者は答えたそうです?! <br /><br />まぁ、それはともかく、私の方は予定通り午前中の新幹線に乗り、博多支部への生徒たちなどと一緒です。普段はお土産など買わない私ですが、娘に頼まれていたので3つも大きめのもみじ饅頭を買いました。家族と会う前に不安がって泣いている女生徒がいます。中肉中背なのにニックネームが「リトル」と言うので、何故と以前に聞いたら「ニュージーランドの私の学校では私はチビだから。」と答えた子です。笑ってしまいました。確かに、ニュージーランド人にしては小さいのでしょう。何故か、彼女は事前に家族の詳細な書類を受け取ってないらしいので、慌てて私が支部長へメールし最低限の情報を伝えたら、少しは安心したようでした。博多駅で支部員と合流した私は、そのまま博多支部のオリエンテーションに参加しました。<br /><br />翌日の木曜日、福岡へ戻った私はのんびりしましたが、残務処理があります。まず、ピンぼけた診断書を受け取ったニュージーランドの生徒は 36.2℃ に熱が下がったということで、夕方にはホームステイ予定の名古屋へ一日遅れで合流させるということです。私の思っていた通り、「風邪症候群」程度なのですぐに熱も引いたのです。<br /><br />ずっと高熱のインドネシアの生徒は昨日もこの日も同じ病院へ行かせて入院させてもらおうとしたのですが、空きベッドがないらしくナースを付けて帰国させたらと言われたそうです。結局、2日後の土曜日に帰国させることになりました。オーストラリアの EJ 組に同行したナースはパスポートの有効期限の残存期間が少ないということで無理で、発熱だけなので私の判断で添乗員の女性(病院へ連れて行ってくれた人)が同行して飛行機に乗ることにしました。<br /> <br />【博多支部にて】<br />これは、本来の全体の JENESYS のプログラムではありませんが、ローカルには各地で色々な形で留学生の歓迎会などを催したりしたはずです。私の所属する博多支部では、木曜日と金曜日に私立の西南高校への体験入学をさせました。そして、13日の日曜日、博多支部の10周年の記念パーティが盛大に行われました。もちろん、10名の JENESYS 生とオーストラリア人の日本語の上手な引率の先生、年間留学生の3人(コスタリカ、ハンガリー、ロシア)も家族とともに出席しています。アメリカ大使館主席公使のジェームズ・ズムワルト氏の講演がメーン・エベントです。彼はAFS生として日本へ来ていますし、もちろん流暢な日本語での講演でした。いつも留学生をお願いしている九州女子高の津軽三味線の演奏もありました。この学校は福岡にあるのに、昨年の青森での全国大会で優勝しているレベルの高い演奏でした。ちなみに、女子ソフトボールのオリンピック金メダリスト上野投手の出身校としても有名な学校です。<br /><br />【後半の関東再集合】<br />14日の月曜日、各地でのホームステイを終えて留学生が再集合する日です。私は博多支部の生徒らとともに、福岡空港を13時の便で羽田まで行きます。いつものことですが、たった1週間の滞在でも、生徒もホストファミリーも涙のお別れです。同じ飛行機に乗る予定の福岡支部の生徒が一人、家族に新型インフルエンザが出て、いわゆる濃厚接触者ということで要注意です。しかも、37.1℃ですが微熱があり不気味です。私は各地でインフルエンザをもらってくる可能性を心配しています。全国で20くらいの家族に新型インフルエンザ患者が出て、ホストファミリーを辞退し、慌てて代わりの家庭を探したとも聞いています。羽田空港からは、新横浜プリンスホテルへバスで直行です。このホテルは圧巻です。唯一、660名全員が同じホテルです。そのせいか、どんどん患者がやって来ます。<br /><br />ホームステイ先で歯の治療を受けたけど、左の頬が腫れているという女生徒が来ましたが問題なさそうで、経過観察のみです。前日、支部でホストマザーの車で追突事故に合ったという女生徒が来て、少しむち打ち症状があります。関係者が支部に問い合わせますが、すぐには連絡がつきません。これは保険のこともあるので、一度病院へ行かせた方がいいでしょう。2日後に発表のあるオーストラリアの男子生徒が 38℃ の熱と喉の痛みと鼻水で来ました。半年前にメルボルンで新型インフルエンザ様の症状があったそうです。でも、インフルエンザの検査はしてくれなかったようです。治療もタミフル等は使わなかったようです。それに、今回オーストラリアの生徒は全員無料でワクチンを打って来ています。ですから、この子はまずインフルエンザの心配はありません。こういう生の情報はなかなか日本には入りません。医者としての私のスタンスは、オーストラリアの医者、医療対策に近いです。たぶん、今年の新型インフルエンザ「から騒ぎ」で、日本は簡易検査薬と抗ウイルス薬タミフルを世界の中で異常に多く使っているはずです。細菌に対する抗生物質の使用量も日本は突出しています。でも、医療用のモルヒネだけは、先進国の中で断トツに少ないようですが。<br /><br />結局、この日は寝る前までずっと忙しかったのですが、数えて見るとやはり最高で一日で27人も診察しています。やはり660名全員がそろっているせいもあるのでしょう。<br /><br />【いよいよ成田のホテルへ移動】<br />翌日は横浜観光です。但し、EJ 組は江ノ島、鎌倉観光のようで今夜のホテルも入国時同様、日航成田ホテルです。私が同行している CM 組は来日時と同じ成田マロードホテルです。<br /><br />この日は、CM4 のバスで同行しました。まずは、三菱みなとみらい技術館です。ここは、観光地と言うより文字通り学習ツアーでした。次に、氷川丸見学の予定でしたが、CM 14 のニュージーランド女子生徒が右膝打撲で歩けないと泣いている、と電話連絡あり、そのまま技術館で待つことになりました。実は、氷川丸は AFS の初期の先輩が飛行機でなく、船で2週間かけて米国西海岸へ行っていたというのを知っているので、非常に興味があったのですが、仕事ですから仕方がありません。<br /><br />CM 14 のバスが着くのを待って、バスに診察に行きました。バスの運転手が気にしていましたが、急ブレーキを踏んだりはしていないようでした。とにかく、乗車中に右膝を打撲したようです。触らせてくれないし、2ヶ月前に痛めたとかどうとか言いますが、詳細は聞き取れません。骨折はなさそうだし、あまり心配はしませんでしたがどうしようもありません。関係者と相談して、夜のホテルに近い成田の病院にタクシーで連れて行ってもらうことになりました。夜ホテルで確認したのですが、やはり打撲のみで大したことはなさそうでした。英文診断書をもらったのですが、傑作でした。失礼ながら、その整形外科の開業医の先生は英語が苦手らしく、診断名に「hit right knee」と和製英語そのもので書いていました。たぶん、「右膝打撲」という意味でしょうが。 <br /><br />それ以降は CM 14 のバスに同行し、昼食は横浜中華街の四川料理の重慶飯店でした。ちょうど私の好きな辛い四川料理です。私の円卓に学生ボランティアが二人ほど遅れて来ました。メニューによっては、もうかなり皿が空っぽです。優しい私は機転を利かせ、他の円卓を回り食べ残しがたくさんある大皿を運んで来てあげました。午後は有名な東京アクアラインの海ほたるに立ち寄り、そのまま成田へ向かいました。ここでは、みんなお土産を買ったり、アイスクリームを食べたり、写真を撮ったりしてゆっくりくつろげました。インドの先生なんかここが最高の景色だと感激していました。<br /><br />昨夜発熱したメルボルンの生徒は病院へ行かせましたが、やはりインフルエンザの検査は陰性で、熱も夕方には下がっていました。虫歯で左頬が腫れていた生徒は、念のため耳鼻科へ連れて行ったようでしたが、やはり問題ないと言われたようです。濃厚接触者ということで心配していた福岡支部の男子生徒は熱もなく今日は元気そうで一安心です。<br /><br />【波乱の最終日】<br />翌日、水曜日は全員が代々木オリンピックセンターへ集まり、大ホールでの CM 組の JENESYS 感想会と小ホールでの EJ 組の JENESYS 感想会です。出発前の朝食会場は珍しく暇でした。つまり、生徒が患者としてほとんど来ないのです。こんな日は珍しいのです。関係者の一人が「嵐の前の静けさ」と不気味がっていましたが、当たってしまいました。今日から国別のバスで、ニュージーランドのバスを降りて会場に着いてみると、大ホールとは私が毎年日本旅行医学会の総会で来る会場のことでした。昼の弁当は各自ホールの建物周辺の空き地で食べます。同じ会場なので、EJ 組の病人の診察に何度か呼ばれました。<br /><br />感想会は午後1時から始まりました。私の補佐に AFS 職員が一人付いてくれて、2ヶ所の会場を効率よく回りました。まず、小川理事長の挨拶を大ホールで聞いて、次に小ホールでの EJ グループの生徒たちの感想(英語で EJ achievement presentation)を聞きました。こちらは全員オーストラリア人です。中には、流暢な日本語で発表する生徒もいました。ステージ場での7人くらいの発表と別に、フロアからの気さくな発表もたくさんありました。印象的だったのは、以前に日本に来たことがある生徒で、今回も同じような旅行のつもりだったら全然違っていたと感心していました。ただの観光旅行ではなく、多くの日本的な体験をし、各地のホームステイ先で日本の普通の生活を体験できたようです。<br /><br />途中で、大ホールに戻りました。こちらは CM 組で各国順番に代表の男女二人組で感想を発表していました。あいうえお順で、インド、インドネシア、オーストラリア、タイ、ニュージーランド、フィリピン、マレーシアです。外務省の関係者も来られています。各国の生徒たちは夫々、この素晴らしい体験に丁寧に感謝の気持ちを表し、日本政府や AFS のスタッフや全国のホストファミリーやホストスクールへ感謝し、具体的な体験談を披露しました。そして、休憩をはさんでいよいよ EJ 組が大ホールに合流し、今回始めての全員合流での JENESYS 大交流会です。広島では、せっかく市長さんの平和への熱いメッセージもあったのに、EJ 組は別のプログラムでした。<br /><br />休憩中に座る場所を移動すると、AFS福井支部長の女性が見学に来ていました。名前が有名な芸能人と同じですぐに覚えました。北陸の福井なので、私が金沢大学で6年間過ごしましたなどと話題をのんきに提供していました。ところが、しばらくすると彼女が私に ESS の先輩だと言うのです。彼女は教育学部で金沢大学の後輩で、同じ ESS のクラブにいたというのです。奇遇です。それで30年以上も前の懐かしい共通の友人などの話をしました。<br /><br />それから、全員集合の大交流会で、外務省の来賓の挨拶などの後、徐々に盛り上がってきました。何せ、660名の一体感です。最後に昨年同様、AFS事務局長よりこのプログラム中の健康管理に貢献したということで、医者の私が紹介されステージに上がって軽く挨拶しました。今年は、前半同行してくれたナースも同様にステージに上がり挨拶しました。そして、会が終わった後も理事長や事務局長と一緒に多くの生徒と写真に納まり楽しんでいました。<br /><br />ところが、お祭り気分はそこまでで、ニュージーランドの女性徒が悲鳴を上げ、泣き叫んでいます。このサモア系の生徒は何度も診察しています。元々、左膝を痛めていて足を少し引きずっていました。この最後の盛り上がりの最中に男子生徒にぶつかり、はずみで強く左膝を打撲したのだそうです。鎮痛剤を渡そうとしましたが、それどころではない雰囲気です。じっと痛みとそれによるヒステリーを自分で抑えている様子でした。医者の私も何もできず手を握って見守るのみでした。結局、夕方ですし専門の整形外科医に診てもらうために、救急車を呼ぶことになりました。後で報告を受けると、やはり骨折等はありませんでした。専門医に診てもらって安心したのか、夜ホテルに戻った頃には笑顔が戻っていました。<br /><br />まだ続きます。それで遅くなった私を待っていたニュージーランドバスは予定より大分遅れて、成田のホテルへ戻るため代々木を出発しました。しばらくすると、昨日の右膝打撲の女性徒が再び突然膝が痛いと泣き出しました。昨日、整形外科医に診てもらっているので、余り心配しませんでした。急に痛みが再発する原因も思い当たりませんし、先程のもう一人のヒステリーが伝染したのだろうと。とにかく、鎮痛剤を飲ませました。ところが、ホテルへ帰ってしばらくしても痛みが治まらないと言うのです。仕方がないので、再度救急車で近くの病院へ行かせました。半月板を痛めているかもしれないということでしたが、シーネ固定等していないので大したことはないはずです。こうして、最後の夜まで大変でした。彼女に同伴して病院へ行ってくれたニュージーランドの男性教師とコーヒーを飲みながらのんびり話しをしました。慣れない私には訛りがひどいのですが、ゆっくり話してくれるので何とか理解できました。<br /><br />翌日の木曜日はいよいよ各国へ生徒が帰って行きます。昨夜のように、最後の最後まで何かあるかもしれないと構えて朝食会場に待機していましたが、不思議なくらい一人の発熱者もなく暇でした。私も成田から福岡への直行便で帰り、長い2週間の仕事が無事終了しました。幸い、昨年に続き今年も一人もインフルエンザは発生しませんでした。もちろん、運がいいのですが、早目に医者の私が対症療法で生徒の体調を管理しているので、体力の低下に付け込むインフルエンザなどの予防に少しは貢献したと自負しています。<br /><br />昨年は数が多いオーストラリア人との交流が多く印象に残ったのですが、今年は患者に関してもニュージーランドの印象が強かったです。ついでに、フィジー、サモア、トンガなどの太平洋の島々からの移民が多いことにも気づきました。それでも70%は白人らしいですが。その他、多くの生徒の印象に残ったことの一つが、日本のトイレのウォシュレットのようでした。それと時間に規則正しいことにビックリしたようでした。<br /><br />この仕事は私には天職のように思えてきました。今から伸び盛りの国々のエリート高校生たちです。彼らは数十倍の競争率の試験を受けて憧れの日本へやって来たのです。きっと、彼らは今回の体験で日本のファンになってくれます。今年は民主党の事業仕分けが話題になりましたが、私はこういう国際交流は非常に大事だと信じています。韓国の大企業、サムソンでは「地域専門家制度」といって将来を嘱望される若手が世界各地で1年間自由に過ごし、言葉を学び文化や習慣を理解するそうです。もちろん、世界各地での将来のビジネスのために。まさに、AFSなどの高校留学と同じ目的です。異文化体験です。米国の IBM も CSC(corporate service corp) という海外支援チームを設立し、新興国や発展途上国への社会貢献と人材育成を兼ねているそうです。メンバーに選ばれるには異文化への適応力も大事な要素で、もちろん彼らは次世代の幹部候補だそうです。これも、まさに AFS のコンセプトと同じです。私の個人的な意見では、今の日本の不況はこういう人材が少ないことと密接に関係していると思うのです。<br /><br />(終わり)<br /><br />私は、日本で唯一の「旅行添乗専門医」です。「空飛ぶドク<br />ター」として商標登録しています。<br />興味のある人は私のウェブサイトを参照して下さい。<br /><br />   http://www.kanoya-travelmedica.com<br /><br /><br />

JENESYS(AFS)09国内旅行同行記(2)

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2009/12/09 - 2009/12/17

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20

空飛ぶドクター

空飛ぶドクターさん

【各地へ移動の日】
昨夜熱発の女生徒は翌朝の水曜日も 38.5℃ あり、いよいよかろうじて準備してきた簡易インフルエンザ検査キットで検査しました。昨夜検査しなかったのは、熱発して24時間くらいたたないと、早過ぎて検査に引っかからないことがあるからです。今年は、新型インフルエンザ騒ぎで簡易検査キットも品切れ状態で買いそびれました。私は開業医の友達からかろうじて3セットだけもらってきました。この生徒の結果は予想通り陰性でした。でも、まだ熱があるのでホストファミリーへの移動はできず、午後関係者が近くの病院の内科へ連れて行きました。これは、後日ファックス等でデータ、診断書をもらったのですが複雑な心境になりました。

内科では、胸のレントゲン写真を撮り異常なしだったそうです。インフルエンザ検査はもちろん陰性。血液検査で白血球が約 1.5 万と上昇し、CRP も 4.5 と上昇。そして、診断名が「cystitis」つまり「膀胱炎」で、クラビットというよく使われる抗菌剤が処方されたそうです。私は苦笑いしました。明らかに、内科医は間違っています。泌尿器科専門医の私はよく経験しています。定義から言っても、「膀胱炎」は発熱しません。発熱するのは、もっと重症な「腎盂腎炎」です。たぶん、検尿で「見かけ上の異常」があったのです。しかも、若い女性なのに排尿痛も頻尿も側腹部痛も訴えていないのです。症状は発熱と鼻水です! あり得ません。検尿の「見かけ上の異常」と言うのは、おちんちんのない女性は検査の排尿時に「おりもの」が混ざることがよくあり、雑菌や白血球が混ざるのです。実際に生徒を連れて行った女性は「膀胱炎でも熱が出るのですか?」と聞いたそうで、そしたら「そうです。」と医者は答えたそうです?! 

まぁ、それはともかく、私の方は予定通り午前中の新幹線に乗り、博多支部への生徒たちなどと一緒です。普段はお土産など買わない私ですが、娘に頼まれていたので3つも大きめのもみじ饅頭を買いました。家族と会う前に不安がって泣いている女生徒がいます。中肉中背なのにニックネームが「リトル」と言うので、何故と以前に聞いたら「ニュージーランドの私の学校では私はチビだから。」と答えた子です。笑ってしまいました。確かに、ニュージーランド人にしては小さいのでしょう。何故か、彼女は事前に家族の詳細な書類を受け取ってないらしいので、慌てて私が支部長へメールし最低限の情報を伝えたら、少しは安心したようでした。博多駅で支部員と合流した私は、そのまま博多支部のオリエンテーションに参加しました。

翌日の木曜日、福岡へ戻った私はのんびりしましたが、残務処理があります。まず、ピンぼけた診断書を受け取ったニュージーランドの生徒は 36.2℃ に熱が下がったということで、夕方にはホームステイ予定の名古屋へ一日遅れで合流させるということです。私の思っていた通り、「風邪症候群」程度なのですぐに熱も引いたのです。

ずっと高熱のインドネシアの生徒は昨日もこの日も同じ病院へ行かせて入院させてもらおうとしたのですが、空きベッドがないらしくナースを付けて帰国させたらと言われたそうです。結局、2日後の土曜日に帰国させることになりました。オーストラリアの EJ 組に同行したナースはパスポートの有効期限の残存期間が少ないということで無理で、発熱だけなので私の判断で添乗員の女性(病院へ連れて行ってくれた人)が同行して飛行機に乗ることにしました。
 
【博多支部にて】
これは、本来の全体の JENESYS のプログラムではありませんが、ローカルには各地で色々な形で留学生の歓迎会などを催したりしたはずです。私の所属する博多支部では、木曜日と金曜日に私立の西南高校への体験入学をさせました。そして、13日の日曜日、博多支部の10周年の記念パーティが盛大に行われました。もちろん、10名の JENESYS 生とオーストラリア人の日本語の上手な引率の先生、年間留学生の3人(コスタリカ、ハンガリー、ロシア)も家族とともに出席しています。アメリカ大使館主席公使のジェームズ・ズムワルト氏の講演がメーン・エベントです。彼はAFS生として日本へ来ていますし、もちろん流暢な日本語での講演でした。いつも留学生をお願いしている九州女子高の津軽三味線の演奏もありました。この学校は福岡にあるのに、昨年の青森での全国大会で優勝しているレベルの高い演奏でした。ちなみに、女子ソフトボールのオリンピック金メダリスト上野投手の出身校としても有名な学校です。

【後半の関東再集合】
14日の月曜日、各地でのホームステイを終えて留学生が再集合する日です。私は博多支部の生徒らとともに、福岡空港を13時の便で羽田まで行きます。いつものことですが、たった1週間の滞在でも、生徒もホストファミリーも涙のお別れです。同じ飛行機に乗る予定の福岡支部の生徒が一人、家族に新型インフルエンザが出て、いわゆる濃厚接触者ということで要注意です。しかも、37.1℃ですが微熱があり不気味です。私は各地でインフルエンザをもらってくる可能性を心配しています。全国で20くらいの家族に新型インフルエンザ患者が出て、ホストファミリーを辞退し、慌てて代わりの家庭を探したとも聞いています。羽田空港からは、新横浜プリンスホテルへバスで直行です。このホテルは圧巻です。唯一、660名全員が同じホテルです。そのせいか、どんどん患者がやって来ます。

ホームステイ先で歯の治療を受けたけど、左の頬が腫れているという女生徒が来ましたが問題なさそうで、経過観察のみです。前日、支部でホストマザーの車で追突事故に合ったという女生徒が来て、少しむち打ち症状があります。関係者が支部に問い合わせますが、すぐには連絡がつきません。これは保険のこともあるので、一度病院へ行かせた方がいいでしょう。2日後に発表のあるオーストラリアの男子生徒が 38℃ の熱と喉の痛みと鼻水で来ました。半年前にメルボルンで新型インフルエンザ様の症状があったそうです。でも、インフルエンザの検査はしてくれなかったようです。治療もタミフル等は使わなかったようです。それに、今回オーストラリアの生徒は全員無料でワクチンを打って来ています。ですから、この子はまずインフルエンザの心配はありません。こういう生の情報はなかなか日本には入りません。医者としての私のスタンスは、オーストラリアの医者、医療対策に近いです。たぶん、今年の新型インフルエンザ「から騒ぎ」で、日本は簡易検査薬と抗ウイルス薬タミフルを世界の中で異常に多く使っているはずです。細菌に対する抗生物質の使用量も日本は突出しています。でも、医療用のモルヒネだけは、先進国の中で断トツに少ないようですが。

結局、この日は寝る前までずっと忙しかったのですが、数えて見るとやはり最高で一日で27人も診察しています。やはり660名全員がそろっているせいもあるのでしょう。

【いよいよ成田のホテルへ移動】
翌日は横浜観光です。但し、EJ 組は江ノ島、鎌倉観光のようで今夜のホテルも入国時同様、日航成田ホテルです。私が同行している CM 組は来日時と同じ成田マロードホテルです。

この日は、CM4 のバスで同行しました。まずは、三菱みなとみらい技術館です。ここは、観光地と言うより文字通り学習ツアーでした。次に、氷川丸見学の予定でしたが、CM 14 のニュージーランド女子生徒が右膝打撲で歩けないと泣いている、と電話連絡あり、そのまま技術館で待つことになりました。実は、氷川丸は AFS の初期の先輩が飛行機でなく、船で2週間かけて米国西海岸へ行っていたというのを知っているので、非常に興味があったのですが、仕事ですから仕方がありません。

CM 14 のバスが着くのを待って、バスに診察に行きました。バスの運転手が気にしていましたが、急ブレーキを踏んだりはしていないようでした。とにかく、乗車中に右膝を打撲したようです。触らせてくれないし、2ヶ月前に痛めたとかどうとか言いますが、詳細は聞き取れません。骨折はなさそうだし、あまり心配はしませんでしたがどうしようもありません。関係者と相談して、夜のホテルに近い成田の病院にタクシーで連れて行ってもらうことになりました。夜ホテルで確認したのですが、やはり打撲のみで大したことはなさそうでした。英文診断書をもらったのですが、傑作でした。失礼ながら、その整形外科の開業医の先生は英語が苦手らしく、診断名に「hit right knee」と和製英語そのもので書いていました。たぶん、「右膝打撲」という意味でしょうが。

それ以降は CM 14 のバスに同行し、昼食は横浜中華街の四川料理の重慶飯店でした。ちょうど私の好きな辛い四川料理です。私の円卓に学生ボランティアが二人ほど遅れて来ました。メニューによっては、もうかなり皿が空っぽです。優しい私は機転を利かせ、他の円卓を回り食べ残しがたくさんある大皿を運んで来てあげました。午後は有名な東京アクアラインの海ほたるに立ち寄り、そのまま成田へ向かいました。ここでは、みんなお土産を買ったり、アイスクリームを食べたり、写真を撮ったりしてゆっくりくつろげました。インドの先生なんかここが最高の景色だと感激していました。

昨夜発熱したメルボルンの生徒は病院へ行かせましたが、やはりインフルエンザの検査は陰性で、熱も夕方には下がっていました。虫歯で左頬が腫れていた生徒は、念のため耳鼻科へ連れて行ったようでしたが、やはり問題ないと言われたようです。濃厚接触者ということで心配していた福岡支部の男子生徒は熱もなく今日は元気そうで一安心です。

【波乱の最終日】
翌日、水曜日は全員が代々木オリンピックセンターへ集まり、大ホールでの CM 組の JENESYS 感想会と小ホールでの EJ 組の JENESYS 感想会です。出発前の朝食会場は珍しく暇でした。つまり、生徒が患者としてほとんど来ないのです。こんな日は珍しいのです。関係者の一人が「嵐の前の静けさ」と不気味がっていましたが、当たってしまいました。今日から国別のバスで、ニュージーランドのバスを降りて会場に着いてみると、大ホールとは私が毎年日本旅行医学会の総会で来る会場のことでした。昼の弁当は各自ホールの建物周辺の空き地で食べます。同じ会場なので、EJ 組の病人の診察に何度か呼ばれました。

感想会は午後1時から始まりました。私の補佐に AFS 職員が一人付いてくれて、2ヶ所の会場を効率よく回りました。まず、小川理事長の挨拶を大ホールで聞いて、次に小ホールでの EJ グループの生徒たちの感想(英語で EJ achievement presentation)を聞きました。こちらは全員オーストラリア人です。中には、流暢な日本語で発表する生徒もいました。ステージ場での7人くらいの発表と別に、フロアからの気さくな発表もたくさんありました。印象的だったのは、以前に日本に来たことがある生徒で、今回も同じような旅行のつもりだったら全然違っていたと感心していました。ただの観光旅行ではなく、多くの日本的な体験をし、各地のホームステイ先で日本の普通の生活を体験できたようです。

途中で、大ホールに戻りました。こちらは CM 組で各国順番に代表の男女二人組で感想を発表していました。あいうえお順で、インド、インドネシア、オーストラリア、タイ、ニュージーランド、フィリピン、マレーシアです。外務省の関係者も来られています。各国の生徒たちは夫々、この素晴らしい体験に丁寧に感謝の気持ちを表し、日本政府や AFS のスタッフや全国のホストファミリーやホストスクールへ感謝し、具体的な体験談を披露しました。そして、休憩をはさんでいよいよ EJ 組が大ホールに合流し、今回始めての全員合流での JENESYS 大交流会です。広島では、せっかく市長さんの平和への熱いメッセージもあったのに、EJ 組は別のプログラムでした。

休憩中に座る場所を移動すると、AFS福井支部長の女性が見学に来ていました。名前が有名な芸能人と同じですぐに覚えました。北陸の福井なので、私が金沢大学で6年間過ごしましたなどと話題をのんきに提供していました。ところが、しばらくすると彼女が私に ESS の先輩だと言うのです。彼女は教育学部で金沢大学の後輩で、同じ ESS のクラブにいたというのです。奇遇です。それで30年以上も前の懐かしい共通の友人などの話をしました。

それから、全員集合の大交流会で、外務省の来賓の挨拶などの後、徐々に盛り上がってきました。何せ、660名の一体感です。最後に昨年同様、AFS事務局長よりこのプログラム中の健康管理に貢献したということで、医者の私が紹介されステージに上がって軽く挨拶しました。今年は、前半同行してくれたナースも同様にステージに上がり挨拶しました。そして、会が終わった後も理事長や事務局長と一緒に多くの生徒と写真に納まり楽しんでいました。

ところが、お祭り気分はそこまでで、ニュージーランドの女性徒が悲鳴を上げ、泣き叫んでいます。このサモア系の生徒は何度も診察しています。元々、左膝を痛めていて足を少し引きずっていました。この最後の盛り上がりの最中に男子生徒にぶつかり、はずみで強く左膝を打撲したのだそうです。鎮痛剤を渡そうとしましたが、それどころではない雰囲気です。じっと痛みとそれによるヒステリーを自分で抑えている様子でした。医者の私も何もできず手を握って見守るのみでした。結局、夕方ですし専門の整形外科医に診てもらうために、救急車を呼ぶことになりました。後で報告を受けると、やはり骨折等はありませんでした。専門医に診てもらって安心したのか、夜ホテルに戻った頃には笑顔が戻っていました。

まだ続きます。それで遅くなった私を待っていたニュージーランドバスは予定より大分遅れて、成田のホテルへ戻るため代々木を出発しました。しばらくすると、昨日の右膝打撲の女性徒が再び突然膝が痛いと泣き出しました。昨日、整形外科医に診てもらっているので、余り心配しませんでした。急に痛みが再発する原因も思い当たりませんし、先程のもう一人のヒステリーが伝染したのだろうと。とにかく、鎮痛剤を飲ませました。ところが、ホテルへ帰ってしばらくしても痛みが治まらないと言うのです。仕方がないので、再度救急車で近くの病院へ行かせました。半月板を痛めているかもしれないということでしたが、シーネ固定等していないので大したことはないはずです。こうして、最後の夜まで大変でした。彼女に同伴して病院へ行ってくれたニュージーランドの男性教師とコーヒーを飲みながらのんびり話しをしました。慣れない私には訛りがひどいのですが、ゆっくり話してくれるので何とか理解できました。

翌日の木曜日はいよいよ各国へ生徒が帰って行きます。昨夜のように、最後の最後まで何かあるかもしれないと構えて朝食会場に待機していましたが、不思議なくらい一人の発熱者もなく暇でした。私も成田から福岡への直行便で帰り、長い2週間の仕事が無事終了しました。幸い、昨年に続き今年も一人もインフルエンザは発生しませんでした。もちろん、運がいいのですが、早目に医者の私が対症療法で生徒の体調を管理しているので、体力の低下に付け込むインフルエンザなどの予防に少しは貢献したと自負しています。

昨年は数が多いオーストラリア人との交流が多く印象に残ったのですが、今年は患者に関してもニュージーランドの印象が強かったです。ついでに、フィジー、サモア、トンガなどの太平洋の島々からの移民が多いことにも気づきました。それでも70%は白人らしいですが。その他、多くの生徒の印象に残ったことの一つが、日本のトイレのウォシュレットのようでした。それと時間に規則正しいことにビックリしたようでした。

この仕事は私には天職のように思えてきました。今から伸び盛りの国々のエリート高校生たちです。彼らは数十倍の競争率の試験を受けて憧れの日本へやって来たのです。きっと、彼らは今回の体験で日本のファンになってくれます。今年は民主党の事業仕分けが話題になりましたが、私はこういう国際交流は非常に大事だと信じています。韓国の大企業、サムソンでは「地域専門家制度」といって将来を嘱望される若手が世界各地で1年間自由に過ごし、言葉を学び文化や習慣を理解するそうです。もちろん、世界各地での将来のビジネスのために。まさに、AFSなどの高校留学と同じ目的です。異文化体験です。米国の IBM も CSC(corporate service corp) という海外支援チームを設立し、新興国や発展途上国への社会貢献と人材育成を兼ねているそうです。メンバーに選ばれるには異文化への適応力も大事な要素で、もちろん彼らは次世代の幹部候補だそうです。これも、まさに AFS のコンセプトと同じです。私の個人的な意見では、今の日本の不況はこういう人材が少ないことと密接に関係していると思うのです。

(終わり)

私は、日本で唯一の「旅行添乗専門医」です。「空飛ぶドク
ター」として商標登録しています。
興味のある人は私のウェブサイトを参照して下さい。

   http://www.kanoya-travelmedica.com


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