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それは静かで美しい朝だった。<br /><br />午前8時、コプリフシティツァのホテルを出ると、昨日の大雨をもたらした厚い雲は多くが去っており、<br />空にはところどころに青空が見えた。地面はまだ湿っていて水たまりも残っていた。しかし、それらと<br />赤や黄の紅葉樹たちの上で上昇するのを待っている雨水たちが、朝日に照らされて輝いていた。<br /><br />私は小さなバス停に向かって歩いていた。<br /><br />すると、前を一人の男性が歩いているのに気付いた。彼は足を痛めているようにゆっくり歩いていた。<br /><br />私は一瞬だけ何かを考えたが、そのすぐ後に彼は後ろを振り返って私の姿に目をとめ、足を止めた。<br />そして、輝かしい笑顔で「Hello!」と言ってきた。私も彼の横まで歩いていって、「hello」と応えた。<br /><br />この男性は見たところ50代か60代の初老?の感じで、白髪まじりの頭と顔には笑いのシワがたくさんあった。<br />私たちは一緒にバス停まで歩いていき、少し話をした。<br />(こういうとき、出会った相手と何を話すかは、運命づけられていると思う)<br /><br />話によれば彼は、彼の生まれ故郷はウクライナのキエフだが、1970年代、時は冷戦の真っ只中にあり<br />彼の国籍はソビエト連邦に移された。しかし、どうやら彼はアメリカに亡命したらしく、いま彼は(旅行中だが)<br />ニューヨーク在住とのことだった。<br /><br />今回の彼の旅は一年間の予定で、ブルガリアやマケドニア・ユーゴスラビアなど東欧の国々を一人で<br />歩き回っているらしかった。その前の旅は3年間で、すでに世界一周を果たし、また、これまで彼が旅した?<br />国の数は100ヶ国以上(!)のようだった。<br /><br />というのも、南米・北米とヨーロッパを全部制覇し、アジア・アフリカの入国可能な所は<br />ほとんど、それにもちろんオーストラリアや中米諸国などの要所?もおさえ<br />「あと(行きたいが)行ってないのは北朝鮮と日本ぐらいだ」とのことだった。<br /><br />私はビックリした。本当に、この人は、噂の伝説の本物の「ワールドトラベラー」なのではないか?!と気付いた。<br /><br />そこで私が、「なぜ日本をまだ残しているんですか?」と尋ねると・・・<br /><br />「物価が高いからだよ。それに、ルートが重要だ。実は中国にはもう何度も行ったことがある。韓国も行ったし<br />だけど、俺は、日本を旅するときのルート(道順)だけは、もう何年も前から考えていて、決めているんだ。<br />その意味で日本は、まだ行ったことがないけれど、俺にとっては特別な旅になるだろう」と彼は答えた。<br /><br />ルートかぁ・・・と私は思った。それは、バック・パッカーにとっては、けっこう重要な話だ。<br /><br />しかし、中国や韓国に行ったことがあるのなら、その時ついでに日本に来てみたら楽だったんじゃないか?と<br />私は思った。ところが、これは、私の完全な「素人的」な考えだったと彼の話を聞いて分かった。<br /><br />なぜなら彼が何年も前から考えているというルートは・・・<br /><br />「俺は日本には、北海道の稚内から入りたいんだよ。知ってるか?稚内。北海道の一番上だ。<br />だから俺は自宅のあるNYからカナダに入ってアラスカに行き、そこから船を使って(サハリンなどに寄りつつ)<br />稚内に入る。その後は、稚内から日本を縦断して鹿児島まで行く。」<br /><br />私は、「船」ですか・・・と思わず口に出していた。彼は「もちろんそうだ。」と言った。彼の話しぶりは、<br />“この計画・ルートでなければ、日本を旅することにはならない!”と言わんばかりの感じで、私は・・・<br />参った。参りましたと言いたくなった(笑)。まだ計画の段階の話とはいえ、すごすぎる。<br /><br />こんな計画を立てる人間がこの世にいるんだなぁと思って驚いた。<br /><br />それに実際よく知らないのだが、アラスカから船で稚内に行けるのだろうか?と私は思った。<br />何日かかるのだろう? あるいはそれが可能だとしても、私だったら・・・やらないなぁ。。。<br /><br />だいたい、そもそも、日本人でも、彼の話すルートで日本を縦断しながら旅する人は、<br />ほとんどいないのではないだろうか?と思って、このことを彼に言った。<br /><br />すると彼は「だろうね。」と言って、ニヤリとした。<br /><br />しかし、これこそが、どうやら彼ら(ワールドトラベラー)の最大の喜びのようである。<br /><br />きっと彼は、そのうち、この数年間も温め続けた計画を成し遂げるのだろう。<br /><br /><br />

アメリカに亡命したウクライナ人

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2007/10 - 2007/10

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gibtal

gibtalさん

それは静かで美しい朝だった。

午前8時、コプリフシティツァのホテルを出ると、昨日の大雨をもたらした厚い雲は多くが去っており、
空にはところどころに青空が見えた。地面はまだ湿っていて水たまりも残っていた。しかし、それらと
赤や黄の紅葉樹たちの上で上昇するのを待っている雨水たちが、朝日に照らされて輝いていた。

私は小さなバス停に向かって歩いていた。

すると、前を一人の男性が歩いているのに気付いた。彼は足を痛めているようにゆっくり歩いていた。

私は一瞬だけ何かを考えたが、そのすぐ後に彼は後ろを振り返って私の姿に目をとめ、足を止めた。
そして、輝かしい笑顔で「Hello!」と言ってきた。私も彼の横まで歩いていって、「hello」と応えた。

この男性は見たところ50代か60代の初老?の感じで、白髪まじりの頭と顔には笑いのシワがたくさんあった。
私たちは一緒にバス停まで歩いていき、少し話をした。
(こういうとき、出会った相手と何を話すかは、運命づけられていると思う)

話によれば彼は、彼の生まれ故郷はウクライナのキエフだが、1970年代、時は冷戦の真っ只中にあり
彼の国籍はソビエト連邦に移された。しかし、どうやら彼はアメリカに亡命したらしく、いま彼は(旅行中だが)
ニューヨーク在住とのことだった。

今回の彼の旅は一年間の予定で、ブルガリアやマケドニア・ユーゴスラビアなど東欧の国々を一人で
歩き回っているらしかった。その前の旅は3年間で、すでに世界一周を果たし、また、これまで彼が旅した?
国の数は100ヶ国以上(!)のようだった。

というのも、南米・北米とヨーロッパを全部制覇し、アジア・アフリカの入国可能な所は
ほとんど、それにもちろんオーストラリアや中米諸国などの要所?もおさえ
「あと(行きたいが)行ってないのは北朝鮮と日本ぐらいだ」とのことだった。

私はビックリした。本当に、この人は、噂の伝説の本物の「ワールドトラベラー」なのではないか?!と気付いた。

そこで私が、「なぜ日本をまだ残しているんですか?」と尋ねると・・・

「物価が高いからだよ。それに、ルートが重要だ。実は中国にはもう何度も行ったことがある。韓国も行ったし
だけど、俺は、日本を旅するときのルート(道順)だけは、もう何年も前から考えていて、決めているんだ。
その意味で日本は、まだ行ったことがないけれど、俺にとっては特別な旅になるだろう」と彼は答えた。

ルートかぁ・・・と私は思った。それは、バック・パッカーにとっては、けっこう重要な話だ。

しかし、中国や韓国に行ったことがあるのなら、その時ついでに日本に来てみたら楽だったんじゃないか?と
私は思った。ところが、これは、私の完全な「素人的」な考えだったと彼の話を聞いて分かった。

なぜなら彼が何年も前から考えているというルートは・・・

「俺は日本には、北海道の稚内から入りたいんだよ。知ってるか?稚内。北海道の一番上だ。
だから俺は自宅のあるNYからカナダに入ってアラスカに行き、そこから船を使って(サハリンなどに寄りつつ)
稚内に入る。その後は、稚内から日本を縦断して鹿児島まで行く。」

私は、「船」ですか・・・と思わず口に出していた。彼は「もちろんそうだ。」と言った。彼の話しぶりは、
“この計画・ルートでなければ、日本を旅することにはならない!”と言わんばかりの感じで、私は・・・
参った。参りましたと言いたくなった(笑)。まだ計画の段階の話とはいえ、すごすぎる。

こんな計画を立てる人間がこの世にいるんだなぁと思って驚いた。

それに実際よく知らないのだが、アラスカから船で稚内に行けるのだろうか?と私は思った。
何日かかるのだろう? あるいはそれが可能だとしても、私だったら・・・やらないなぁ。。。

だいたい、そもそも、日本人でも、彼の話すルートで日本を縦断しながら旅する人は、
ほとんどいないのではないだろうか?と思って、このことを彼に言った。

すると彼は「だろうね。」と言って、ニヤリとした。

しかし、これこそが、どうやら彼ら(ワールドトラベラー)の最大の喜びのようである。

きっと彼は、そのうち、この数年間も温め続けた計画を成し遂げるのだろう。


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