2009/05 - 2009/05
1336位(同エリア1660件中)
西部旅情さん
唐の都・長安は、現在の西安の6倍もあった
西安城壁は、現存する中国の古い城壁の中では、ほぼ完全な形で残っている貴重なものだ。明の時代の街の雰囲気を十分に堪能できる。
その城壁に囲まれた街の中心にあるのが鐘楼だ。1384年、明の時代につくられた、高さ36mの正方形の木造建築である。
かつての鐘楼には大きな鐘がつるされていて、毎朝、70回つかれ、朝の時を告げていた。一方、1380年につくられた西大街の北側にある鼓楼は、楼上に大きな太鼓をかけ、夕方になると時を知らせた。鐘楼、鼓楼により、城門は開け閉めされたのである。鐘楼の外見は3階建てだが、軒が3層になっているだけで、実際は2階建てである。釘は1本も使われていない。
当初は広済街にあったが、1582年に現在の場所に移された。鐘楼を起点とし、東西南北、4本の大通りが伸びていて、それぞれ城門に至るようになっている。
名の時代に再建された西安は、唐の時代の街よりも、はるかに小さな規模のものだった。その大きさは唐の時代の6分の1である。
したがって、それまでは城内に存在した大雁塔、小雁塔などの名所は、街の外に出ることになった。現在の明徳門は朱雀大街につながる朱雀門の右隣にあるのだが、往時は、朱雀大街の南の外れにあったのだ。
そうした歴史に思いをはせながら現在の西安を歩くと、唐のはじめにつくられた長安が、いかに巨大な都市であったかが分かるだろう。
唐の時代の外郭城は、南北8650m、東西9720mの長方形で、メイン・ストリートである150m幅の朱雀大街を中軸として、街は左右に分けられ、東西14条、南北11条の路が、基盤の目のようにめぐらされていた。ほぼ左右対称になっているのが特色だ。
皇帝の住居であった宮城(太極宮)は、朱雀大街の最深部にあった。さまざまな官庁のあった皇城は、その南に置かれた。ともに城壁にかこまれていた。
住民の住居部分は、路によって区切られた東西55ずつの坊である。左右に分けられた2つの街の中心には、それぞれ東市と西市が開かれた。ちなみに、明の時代以後の西安は、この皇城と宮城の南半分、そして皇城の東側の地域の一部によって成り立っている。
ただ、皇帝の住む場所がずっと太極宮であったわけではない。太宗は、634年、太極宮の外の北東に、退位した高祖の避暑のため大明宮を造営した。後には、病弱だった高宗も、湿潤だった太極宮を忌避し、改築した大明宮を蓬萊宮と呼び、ここに住んで政務を行うことにしたのだ。以後の皇帝は、ここで政務をとる。蓬萊宮は、再び含元殿と名前を変えたりしたが、中宗の時、もう一度、大明宮となった。
玄宗の時代になると、また政務をとる場所は変わる。玄宗は、皇太子時代から東の春明門近くの降慶房に住んでいたが、即位した後も、この地に壮大な宮殿、興慶宮をつくった。玄宗皇帝に気に入られ、唐の官僚となった遣唐使の阿倍仲麻呂も、ここを訪れていたのである。
宮城が興慶宮になると、官僚や貴族は、街の東側に住むようになる。興慶宮の隣の永嘉坊には、多くの人が住みたがり、大明宮そばの翊善坊・来庭坊・永昌坊には、宦官が多くいた。平康坊には、遊里があったという。
もっとも、住民の大部分は、皇帝の一族や官僚だった。交易の場も東市と西市のみだった。夜になると城門ばかりでなく、坊の門までも閉ざされ、よほどのことがないかぎり開けられなかったという。
当時の東門と考えられる春明門は、遠く洛陽につながっている。840年に長安を訪れた円仁は、春明門をくぐって入ったと記録している。そして、東の春明門に対する西の金光門の先には、シルクロードがある(現在の西安の西門は、唐の時代の皇城の順義門に当たる。)
春明門と金光門との間の路は、西市近辺では(西市の北側)、120mあった。西市の南側の路も同じ幅であり、東側の路は117m、西側の路は94mである。何とゆったりとした路のとり方だろう。
西市の大きさも、南北1031m、東西927mと巨大である。
長安は、唐の勢力が増し、諸外国との交易が発展するにつれて、人の往来も華やかになり、市にも西方からの文物が多く見られるようになった。しかも、ここでは、物を売る店だけでなく、芝居小屋や西域の幻人による雑技小屋もあった。当然のごとく、西市には若者が集まっていた。
東市よりも西市の方が賑やかであったようだ。市場は、また、人が多く集るところから、処刑場ともなった。
長安は、8世紀前半の最盛期には、100万人もの人口を誇っていたと推定されている。当時の世界において、これほどの人口を抱えた都市はなかった。それでも、城内の3分の1は、人があまりいなかったという。いかに長安が巨大な国際都市であったかがわかる。
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