1987/02 - 1987/02
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Akira_Tokyoさん
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1987年、という遠い昔の旅の思い出です。
二度目のバックパッカー旅行でした。
皆さんのお持ちのノスタルジーと共感できれば幸いです。
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ベルリン、街の灯
まだ、ベルリンが二つの地域に壁によって分けられていたころ、わたしはチェコから鉄道で東ドイツとの国境を越えました。当時は東欧といえば、ソ連の同盟国であり、その中でも、ホーネッカーの東ドイツは強力な共産主義国家であり、入出国の際にはとても厳しい検査を受けることで有名でした。わたしは越境に際し、東ドイツのビザを所持していませんでした。当時はフランスですら、ビザがなければ、即座に列車からおろされ、入国できませんでした。外は零下。雪が積もっています。東ドイツの、若い入国管理官がわたしのいるコンパートメントへやってきました。「ビザは?」
「持っていません。」わたしは答えました。「西ベルリンに行くのです。」
「通過ビザは16ドルです。」入国管理官はわたしのパスポートにスタンプを押し、書類をはさみました。わたしは20ドル札をだしました。もうキャッシュはのこり5ドルほどしかありませんでした。
入国管理官は彼のかばんから、お釣りを出そうとして、言いました。「ドルはありません。『すべでぃっしゅ・こいん』で払います。」彼は、4枚の銀貨を取り出しました。
『すべでぃっしゅ』?わたしは周囲の乗客へ視線を走らせました。「『すべでぃしゅ』とはなんですか?」
ひとりの乗客が、にやにやしてわたしに言いました。「スウェーデンの(スウェディッシュ)かねだよ。」
ようやく理解できましたが、もちろんスウェーデン通貨など、わたしには必要ありません。コインですから、第三国で両替もできません。「ほんとうにドルはないのですか?」わたしは問いかけました。キャッシュはのこり5ドル。
若い、入国管理官は顔を赤くして、そして悲しげに言いました。「ありません。」
しかたなく、銀貨を受け取りました。
夜になり、東ベルリンにつきましたが、わたしは通過ビザのため、そのまま西ベルリンへ直行する地下鉄の改札口へ向かわせられました。改札口には切符売場がありましたが、わたしは西ドイツ・マルク(当時西ドイツ・マルクを『ドイツ・マルク』、東ドイツ・マルクを単に『マルク』と呼んでいました)を持っていません。切符を買えず、ぼう然としていると、後ろにいた西ドイツの女性がわたしに地下鉄の回数券を一枚、くれました。
そんなわけで、わたしは無事、ふたたび資本主義の地域へと足を踏み入れることができたのですが、ツールガルテン(動物園)駅につくと、真っ赤なマクセル・カセットテープのネオンがわたしの目に飛び込んできました。あたりまえですが、駅前はネオンだらけ。駅構内には酔っ払いやヤク中毒の若者(当時西ドイツの若者は西ベルリンに居住すると兵役が回避できました)。車の渋滞。ごみ。
わたしは翌朝ふたたびザックを担いで、1日ビザをとり、25マルクを強制的に両替させられて、東ベルリンへ向かいました。東ベルリン内でビサを取り直し、ドレスデンへ向かうつもりでした。
ベルリン・タワーのそばに、東ドイツのライゼ・ビューロ(旅行公社)はありました。そこで、ユースホステル(東ドイツの西側観光客向けホテルは、15,000円以上します)を申し込もうとしました。応対にでてきたおねえさんは、流暢な日本語でわたしに言いました。「お金はありますか。」わたしが東ドイツマルクをだすと、彼女は不思議そうな顔をして、「これは何ですか。」東ドイツ紙幣は西ドイツのそれを半分程度の大きさにした、ちょうど子ども銀行券のようなものでした。東ドイツ人ですらそうおもっているようです。西側観光客は西側紙幣で支払わなくてはなりません。わたしは西ドイツマルクを提示しました。
しかし、電話からもどってきた彼女が、「いまは学校の旅行シーズンで、ユースホステルは満員です。」と言うので、私は、東ドイツ旅行をあきらめ、西ベルリンにもどることにしました。
壁の向こう側に戻る道すがら歩いた、東ベルリンのウンターデンリンデン通りはその美しい名(菩提樹の木の下)にふさわしく、道の両端に等間隔でならんだ街燈が、静かに地面を照らす、道です。わたしは森鴎外の時代そのままでないかしらと思いました。
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