2008/07 - 2008/07
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JIC旅行センターさん
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○四国遍路に「旅行の原型」を見る○
四国霊場めぐりはいつごろから始まったのか? 四国八十八ヶ所は弘仁六年(815年)弘法大師によって開創されたと伝えられている。大師入定(835年)後ほどなく大師信仰が起こり、平安末期から鎌倉時代にかけて真言宗の修行僧が大師ゆかりの地を巡拝するようになった。室町期に入ると一般庶民も参加するようになり、八十八ヶ所の霊場が固定したのは室町末期から江戸初期の頃と言われている。
江戸時代の初期に、高野山の僧・真念が四国の縁起や八十八ヶ所の道程をまとめた『四国遍礼霊場記』を著し、また簡便な「遍路指南」(ガイドブック)も作られて四国遍路が一般化していった。全道程1440?、歩けば40日から60日もかかる長旅だが、各地の宿坊や民家に宿をかり、時には野宿して巡る遍路の旅が、「お伊勢参り」などとともに、人々の楽しみと癒しの場となっていった。はるばる四国まで足を伸ばせない人のために各地に「ミニ八十八ヶ所」も作られた。霊場巡りは、日常生活を離れて心と体をリフレッシュする、いわば「旅行の原型」なのだ。
今では四国霊場めぐりも「商業化」の波に洗われ、各寺々に立派な宿坊が建ち、周辺には遍路専用の宿が整えられている。1日目に宿泊した十楽寺の宿坊は最近新築されたばかりで冷暖房完備、立派な食堂ではおいしい夕食と各種の「般若湯」(酒、ビールなど)が供され、並の旅館やビジネスホテルよりよほど豪華だった。ネットで検索すれば、効率よく各霊場を巡るバスツアーや観光タクシーの宣伝が目白押し、遍路用品の販売サイトも花盛りだ。
誰が考えたか、各寺ごとに納経帳や白衣、掛軸などに墨書、朱印を押してもらうスタンプラリー方式がすごい。いやでも八十八ヶ所を全部回りきろうという気にさせる工夫がしっかりなされている。
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○歩いていると見えてくるものもある○
忙しい現代の日本人。時間がかかる歩き遍路を選択する人はよほど少ない。しかし、実際に歩いてみると、車で走り抜けるだけでは見えないものが見えてくる。
2日目は午前6時前に出発。暑い夏は早朝から歩いて夕方早目に休むに限る。まずは十楽寺の境内でおにぎりの朝食を手早くとってから歩き始める。今日は7番・十楽寺から11番・藤井寺まで約20kmの道のりだ。途中、北の讃岐山脈の麓から広い田園地帯を横切り、吉野川を越えて四国山地の麓へと分け入る。
初日は物珍しさも手伝って、またお寺とお寺の間隔が短いので、皆元気で饒舌だった。しかし、2日目は霊場の間隔がずっと長い。太陽が高くなるにつれ、皆無口になっていく。気温は今日も35度近くまであがりそうだ。黙々と歩いていると、やりかけの仕事や会社のこと、今年の春に逝った父のこと、就職浪人中の娘のこと、…等々、様々な雑念が頭を駆けめぐる。駆けめぐるが頭の中は何もまとまらない。
とにかく暑い。しんどい。日陰が恋しい。そのうち歩くことだけが自己目的化してくる。何も考えずにひたすら歩くようになる。一体自分は何のために歩いているのか、…。再び「ほんまにアホとちゃうやろか?」という思いが苦笑とともに浮かんでくる。同時に、心を無にしてひたすら歩くことに何らかの精神浄化作用があるのかもしれないと思ったりもする。
それにしても「ロシア人にとって、こんな遍路旅が本当に面白いのかねぇ?」という疑念も浮かぶ。リュドミラさんもアンドレイ氏も遍路の参拝手順を生真面目に守って、霊場に着くたびに手水場で手を清め、納札を納め、灯明と線香、賽銭を上げ、念珠を持って合掌して回る。意味はわからなくても般若心経の読経にじっと耳を傾けている。
ロシア正教もキリスト教なので一神教であるには違いないのだが、一方、ロシア人の宗教観に潜む「大地信仰」のようなものが日本の八百万(やおよろず)の神の汎神論的気分に通じるのかもしれない。それにロシア人は意外と迷信深い。「橋の下でお大師様が休んでいるかもしれないから、橋の上では杖をつかない」という四国遍路の言い伝えを信じて真面目に実行している。
*「橋の上では杖をつかない」。弘法大師がかつて修行中に宿が見つからず厳寒の一夜を橋の下で過ごしたという故事による。 -
こうして3日間の夏の「修行」は過ぎていった。2日目からは何人かの歩き遍路さんとも巡り会う。われわれ以外にも歩いてる人がいるのだと一安心。自転車をこいで巡拝する若者もいる。焼山寺に向かう山道で追い越していった大学生の男性は、この夏休み1ヶ月間をかけて歩く予定という。同じく全道程歩くというオーストラリア人の女学生にも遭遇する。それぞれが、心に何かを持って歩いている。
最初は冷やかし半分だった遍路の旅も、3日間とはいえ歩き通してみると、さわやかな達成感があり、また続きを歩いてみたいなという気になるから不思議だ。「歩くことに意義がある」というリュドミラさんの指摘はやはり真理を突いていたと思う。
当初はお互いに「この四国霊場めぐりは、とてもロシア人観光客向けプログラムにはなるまい」と、商品化抜きにあくまで趣味として楽しんだつもりだったのだが、リュドミラ社長がモスクワに帰って、旅の模様を会社のスタッフたちに話したところ、「それは面白い!ロシア人客にも十分うけるのではないか」という声が上がり、今後、「四国霊場めぐりツアー」がロシアの旅行マーケットに現れる可能性も出てきた。それはそれで面白いし、もし実現すれば素晴らしいとは思うのだが、「では誰がガイドするんでしょう(誰が一緒に歩くのか?)」というのが、目下のところわがJICスタッフを悩ませている問題ではある。
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