2008/10/10 - 2008/10/21
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worldspanさん
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下関から青島へと航路発ち、旅を始めて一年有、私の友人は私がモロッコに訪れようとしていた08年10月頃にはチュニジアへと達していた。私がモロッコへと出発する二ヶ月前から連絡を取り合い、モロッコで落ち合い旅を語ろうとメールに花を咲かせていたものだ。当時彼はまだエジプトを周遊していた頃の話だ。
彼は何とか私の旅程に合わせ、リビアを経て同じマグレブのチュニジアに達していた。チュニジアとモロッコはマグレブであるに違いないが、両者との距離は有に千キロを越え、その狭間には広大なアルジェリアが横たわる。地球的なスケールでみればとても近くに感じるが、チュニジアからモロッコへ動くには現地で査証取得が極めて難しいアルジェリアを迂回しなければならない。両国を結ぶフライトはあるにはあるが、彼の経済力からチケットを買うことが出来ない。
彼は試行錯誤を繰り返しLCC(格安航空会社)を利用し北西のスペインへと進路を向け、アルヘシラスという、ジブラルタル海峡の先端の町から海路アフリカ大陸へと再渡航後モロッコにインすることになった。これが決まったのは、私が既にパリへと到着していた時の事、待ち合わせの四日前の事だ。そして最終的に10月14日の15時、私が宿泊するフェズのリヤドで待ち合わせが決まったのが待ち合わせ前日のこと。スリリングな展開が旅をデコレートし、旅は思いもせね楽しさを我々に与えた。
そして待ち合わせ当日その時間、私はリヤドで友人を待ち侘びていた。フェズは別名「迷宮の都」といわれるほど細い路地が入り組み、メディナでの宿探しは旅人泣かせだ。私の宿泊していたリヤドもその例外ではなく、決してわかりやすい場所に位置しているわけではない。それ故少しでもこちらからも彼を見つけることが出来るように、リヤドの屋上テラスから路地を見張ることにした。リヤドの前には一本の道しかないが、細い道がクネリながら続くので、決して見晴らしが良いわけではなく、人の歩く姿は所々切れ端のようにしか見つけることが出来ない。門扉の前で待っておいたほうが見つけやすいのだろうが、見つけるのもエンジョイ。マストに上った水夫が獲物を見つけようと索敵しているかのように、私も右に目を向け左に目を向け、友人を探した。
こうして30分程私は友人を探していたが、なかなか見つけることが出来ない。彼もきっと見つからず苦戦しているのだろうかと思っていた矢先、リヤドの門扉の前で日本語訛りの英語が聞こえてきた。
「きたな」、下を覗くと友人とリヤドの女性が何やら話をしていた。
「うっしーさん!」と大声で叫ぶと、直ぐに彼はどこから声が上がったのかわかったようで、上を向いて私を見つけ、「おーい」と笑顔で手を振って応えた。私は急いで階段を駆け降り、リヤドの入口で待つ友人を迎えた。これで旅の目的の一つが達成された、と私は待ち合わせの成功に安堵しながら私は彼と握手しロビーへと案内し、部屋で寛いでいた妻も呼び、三人で旅談義を始めた。
彼は中国の青島に渡るとモンゴル、チベットを放浪後、中央アジア、コーカサスを経て現在に至るという。そして何より驚いたのは、彼が旅の流れとはいえ、イスラム教に改宗してしまっていたこと。戒律の厳しいイスラムなので改宗も一筋縄では行かないのかとおもいきや、イスラムのいくつかの決まった呪文を聖職者の前で唱えすらば良いのだとか。そして聖職者に証明書なるものを発行してもらう。証明書にはアラビア文字と英語で記載され、かれの写真が貼られていた。 彼はイスラム教に改宗したおかげで、別教徒が立ち入ることができない寺院にも入ることができれば、宿がない時には寺院に宿泊できるという恩恵に授かったという。雑魚寝とはいえ、雨露が凌げるのだから大変助かる。
肝心の一日五回のお祈りも極力!?行うようにしているそうだが、イスラム寺院でのお祈りというのはくせ者で、スリが少なくないのだとか。寺院では信者達が身体を寄せ合ってギュウギュウ詰めになりながら熱心に拝むのだそうだが、拝んでいる最中にポケットにてを突っ込まれて探られる事もしばしば遭ったのだそうだ。神の前で何という罰当たりな人もいるものである。イスラム教になり最たる特典!?といえば、メッカ巡礼が出来ることだろう。イスラム教徒しか決して訪れることのできないメッカは旅人にとってとても神秘的で、畏敬を感じる場所でもある。彼はその巡礼旅行ができるのだから羨ましいかぎりだ。私は興奮して彼の証書を見ていると、彼は嬉しそうに「こんなにイスラムの証書に食い入るように見てくれて、突込みを入れてくれて嬉しいよ。だって他のパッカー達に見せてもまったく無反応なんだもん。これだけ worldspanが感動してくれるんだからイスラム教になった甲斐があったよ。」と照れながら話した。いえいえ、どんなバックパッカーが感動しないのだか知らないが、日本人でイスラムに改宗した体験など滅多に聞けるものでもないし、証書も見れるものではない。これに関心を向けずして何に関心するのだろうか、バックパッカー諸君。
リヤドのロビーでミントティーをすすりながら、彼からこの一年の間続けていた旅の話を聞かせてもらうと大変羨ましく、そしてまた私も長旅に出たくなる。私は高ぶる気持ちを抑えるのがやっとな程だった。かつて私がイランで知り合ったドイツ人はイスタンブールに短期旅行で訪れ、知り合う旅人達からの話を聞き、自分自身の好奇心や探究心を抑え切れなくなり、彼女や家族に電話で別れを告げ、一台の自転車を購入し旅を始め、月日は早10年が経ったのだという。このドイツ人の気持ちは今の私と同じだったのかもしれない。
旅の話も尽きないが、程よい時間に妻と私、そして友人でフェズのメディナに飛び込みさ迷う事にした。友人と私は今まで二人で一度も旅をしたことがないので、二人で町を巡るのは実に不思議な感じだ。そして夕方、三人でフェズのメディナを高い位置から望むことができるレストランで夜景を見ながら三人で食事を摂った。ちょうど西の空は赤らみ、西日に照らされたメディナの町並は紅く染まり、とても美しい。そして暫くするとモスクからアザーンが風に乗って聞こえてくる。アザーンの抑揚が夕焼けに染まるメディナの情景に見事に重なり合い、何とも言えぬ心地良さを感じさせる。こうした景色を見て感動するために、心の中で感じるこの感触を味わうために旅にきたのだ。嗚呼モロッコまで訪れた甲斐があったなとようやく感じた―今回の旅で、訪れて良かったと思う瞬間だ。我々はしゃべる事なくテラスから町を眺め、美しさに浸る−それは至福の時。これがあるから旅は止められない。
三人で晩餐を楽しんでいると店員も我々の会話に時々入ってくる。そして話の弾みで店員は私の友人がムスリムだとわかると、大変驚いた顔をしながらもますます親しげになった。そしていよいよ会計の時に店員は「我々からのバクシーシだ」といい、定額を下回る支払いで済むことができた。イスラム社会を旅するとき、お互いの話が弾んだりすると稀に逆バクシーシを頂く事があるが、観光地化されたモロッコでまさかこのような施しを受けるとは思いもしなかった。日本人がムスリムときいて親しみを感じないはずもない。店員が進んで逆バクシーシを施したということは、彼等もエンジョイできたからだろう。
楽しく過ごす時間が流れ去って行くのはあっという間、食事の後、我々は広場に溜まり旅の話を続けた三人で話しているとあっという間に二時間くらい時間が過ぎてしまい、21時を過ぎてしまった。友人はフェズ・エルバリのメディナから徒歩10分程歩いた王宮付近の宿を取っているのだという。そろそろお互いに宿に戻らなければならない。旅のスタイルは違うがお互いに後の旅の無事を祈って別れた。次に会う時は、彼がいつしか日本に帰国した時か、はたまた私がまた旅をするときなのかわからない。それは神のみぞ知る(インシャーアッラー)。
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 タクシー
- 航空会社
- ロイヤルエアーモロッコ
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