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キャピタルホテルの210号室には窓がないので、腕時計で時間を確かめて起き出した。<br />部屋で髭を剃って、水シャワーを浴びて、身なりを整え、バックパックをまとめる。<br /><br />バックパックを部屋のテーブルの脚に鍵付きのワイアで確保する。<br />ドアを閉めようとして、考え直し、トラベラーズチェックをもっと持って行くことにした。<br /><br />今日はビザを取るだけではなくて、カンボジアからベトナムへの国境をどう越えるかも決定し、その切符も購入しなければならない。<br />なにしろ今日の午後には、シェムリアップへの飛行機に乗るのだから。<br /><br />とんとんと階段を降りて、ホテルのレストランへ入って、昨夜と同じテーブルに席を取った。<br />現在は1994年8月26日、午前6時半。<br /><br />ベトナム大使館が7時半から開いているので、レストランでハッキリ君と7時に待ち合わせをしてある。<br />きしめんのような平たい黄色の麺を使ったスープヌードルがおいしくて、お代わりをしているとハッキリ君がやって来た。<br /><br />「おはようございます。西本さん、早いですね!」<br />「年寄りだからね、というのは嘘で、実は朝からバンダナ君のせいなんだ」<br /><br />「どうしたんです」<br />「昨日レストランでちょっと話をした東大医学部の部屋が僕の向かいで、バンダナ君がドアをたたいてうるさかったんだ」<br /><br />「へ〜」<br />「朝から東大さんドアを開けて下さい!としつこかった。東大はドアを開けないし、それが30分も続いたんだ。しかも朝の4時だよ」<br /><br />「夜遊びしてて、ちょっと変になったのかもしれない」と、解説を加える。<br />「それは災難でしたね。ところで、西本さんは京都大学の卒業ですか?」<br /><br />「まあ、そうだけど」<br />「京大の人は変わった人が多いですね」<br /><br />おやおや、なぜか僕が京大卒だとわかってしまったようだ。<br />どうしてだろう…?<br /><br />僕がもうずっと前にネパールからインドを旅行して、スリランカへ入り、ヒッカドゥアビーチからコロンボへの鉄道に乗っていた時もそうだった。<br />背の高いアメリカ人が話しかけてきて、「京大の学生か?」と聞いた。<br /><br />その理由を聞くと、その頃は京大の学生がインド近辺をたくさん旅行していて、学生風で英語が話せるのは全部京大だという話だったね。<br />確かに、よど号で北朝鮮に旅行に出て以来まだ帰ってきてない元京大生もいる。<br /><br />海外旅行をしている京大生は多いし、変わった人間も多いので、それで当てられたのかも知れないが、ちょっと不思議だ。<br />今日は自転車を借りることにしていたので、レストランの前に並べてある自転車をチェックするが、いやにサドルが高い。<br /><br />ハッキリ君は「西本さん、昨日のバイクで一緒に行きましょうよ」と言う。<br />「君はそうしたら?僕は自転車が好きなんだよ」が、僕の答。<br /><br />誰かと一緒に同じ行動をとるのは、僕の一番苦手なところなのだ。<br />すると昨日のバイクドライバーが声をかけてきた。<br /><br />彼は今日はいろいろ案内して稼ごうと、張り切ってやってきたのだろう。<br />結局2人で自転車で行くことにしたので、迷惑料として彼に2人で2千リアル払うことにした。<br /><br />僕の払った千リアルはたいしたことではないが、人の期待を裏切ったことに心が痛む。<br />だから僕は最初から約束をしないんだ。<br /><br />自転車で昨日の道を走り、ベトナム大使館前に着いた。<br />昨日の兵士に聞いて、ちょっと離れたベトナム大使館領事部へ向かうと、小さな門はもう開いていた。<br /><br />建物に入ると右側に大きな机があり、誰もいないが、左の部屋から人の声がする。<br />開いたドアからのぞき込んで、「すみませ〜ん、ビザを取りにきたんですが」と(もちろん英語で)声をかける。<br /><br />するとさわやかな青年がにこにこしながら出てきて、「書類はありますか?」と言う。<br />どんな書類がいるか聞くと、彼の話では現在は個人で申請するのは無理で、旅行社を通さなければならないのだそうだ。(なんだ、結局そうなのか!)<br /><br />この青年はなかなか親切で、引き出しから名刺を三枚出して説明してくれた。<br />「これとこれがベトナム系、これがカンボジアの旅行社で、どこでも英語が通じます。好きなところに行ってビザを頼んで下さい」<br /><br />がっかりしたが、これはひとつの情報だ。<br />「1994年8月26日現在では、プノンペンで個人でベトナムのビザを取ることは不可能である」<br /><br />そうなると、急いで旅行社に頼まないといけない。<br />急いで出ようとすると、大使館員は僕に声をかけた。<br /><br />「京都大学の人はここにもよく来ますよ!」<br />あれれ?どうして僕が京大卒だとわかるのだろう??<br /><br />英語が関西風になまっているのだろうか?<br />ハッキリ君と自転車に乗って、町の中心に向かい、最初に目についた旅行代理店に飛び込んだ。<br /><br />スーさんという女性がアドバイスをしてくれる。<br />話を聞くと、がっかりだ。<br /><br />ベトナムの観光ビザを取るには、普通7ワーキングデイズかかる。<br />これはタイと一緒で、土日をはさむので実際は約10日ということだ。<br /><br />これではベトナムへ行くのは無理だ!<br />でも、ベトナム大使館で聞いた旅行社なら何とかなるのかもしれない。<br /><br />オフィスを跳び出して、念の為にこの旅行社の看板を確かめると&quot;TOURISM GRPOUP(CAMBODIA)LTD&quot; とある。<br />おやおや、これはベトナム大使館でもらった名刺と同じ名前だ。<br /><br />するとここで無理ならどこでも無理ということになる。<br />もう一度オフィスに入り、相談する。<br /><br />「特急というやつはないの!」<br />「もちろんあります。特急で取れば4ワーキングデイズ、つまり約一週間ですね」<br /><br />特急でもいいが遅過ぎる。<br />僕は9月2日の深夜にバンコクから飛行機に乗らなければならないのだ。<br /><br />僕はふと思いついた。<br />「超特急はないの!」<br /><br />旅行代理店の女性は、にやっと笑った。<br />「ところで、あなたは京都大学の先生ですか?」<br /><br />なぜだ!<br /><br />なぜみんな僕が京都大学に関係があると知っているのだ??<br />そして、超特急のビザは存在するのか??<br /><br />この2つの重大な謎は、次回に解明されるだろう。<br /><br />http://www.midokutsu.com/1994/two_mysteries.htm<br />

なぜ僕が京大出身だとわかるのか、ベトナムの超特急ビザは存在するのか?2つの謎が示される(8月26日)

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1994/08 - 1994/08

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みどりのくつした

みどりのくつしたさん

キャピタルホテルの210号室には窓がないので、腕時計で時間を確かめて起き出した。
部屋で髭を剃って、水シャワーを浴びて、身なりを整え、バックパックをまとめる。

バックパックを部屋のテーブルの脚に鍵付きのワイアで確保する。
ドアを閉めようとして、考え直し、トラベラーズチェックをもっと持って行くことにした。

今日はビザを取るだけではなくて、カンボジアからベトナムへの国境をどう越えるかも決定し、その切符も購入しなければならない。
なにしろ今日の午後には、シェムリアップへの飛行機に乗るのだから。

とんとんと階段を降りて、ホテルのレストランへ入って、昨夜と同じテーブルに席を取った。
現在は1994年8月26日、午前6時半。

ベトナム大使館が7時半から開いているので、レストランでハッキリ君と7時に待ち合わせをしてある。
きしめんのような平たい黄色の麺を使ったスープヌードルがおいしくて、お代わりをしているとハッキリ君がやって来た。

「おはようございます。西本さん、早いですね!」
「年寄りだからね、というのは嘘で、実は朝からバンダナ君のせいなんだ」

「どうしたんです」
「昨日レストランでちょっと話をした東大医学部の部屋が僕の向かいで、バンダナ君がドアをたたいてうるさかったんだ」

「へ〜」
「朝から東大さんドアを開けて下さい!としつこかった。東大はドアを開けないし、それが30分も続いたんだ。しかも朝の4時だよ」

「夜遊びしてて、ちょっと変になったのかもしれない」と、解説を加える。
「それは災難でしたね。ところで、西本さんは京都大学の卒業ですか?」

「まあ、そうだけど」
「京大の人は変わった人が多いですね」

おやおや、なぜか僕が京大卒だとわかってしまったようだ。
どうしてだろう…?

僕がもうずっと前にネパールからインドを旅行して、スリランカへ入り、ヒッカドゥアビーチからコロンボへの鉄道に乗っていた時もそうだった。
背の高いアメリカ人が話しかけてきて、「京大の学生か?」と聞いた。

その理由を聞くと、その頃は京大の学生がインド近辺をたくさん旅行していて、学生風で英語が話せるのは全部京大だという話だったね。
確かに、よど号で北朝鮮に旅行に出て以来まだ帰ってきてない元京大生もいる。

海外旅行をしている京大生は多いし、変わった人間も多いので、それで当てられたのかも知れないが、ちょっと不思議だ。
今日は自転車を借りることにしていたので、レストランの前に並べてある自転車をチェックするが、いやにサドルが高い。

ハッキリ君は「西本さん、昨日のバイクで一緒に行きましょうよ」と言う。
「君はそうしたら?僕は自転車が好きなんだよ」が、僕の答。

誰かと一緒に同じ行動をとるのは、僕の一番苦手なところなのだ。
すると昨日のバイクドライバーが声をかけてきた。

彼は今日はいろいろ案内して稼ごうと、張り切ってやってきたのだろう。
結局2人で自転車で行くことにしたので、迷惑料として彼に2人で2千リアル払うことにした。

僕の払った千リアルはたいしたことではないが、人の期待を裏切ったことに心が痛む。
だから僕は最初から約束をしないんだ。

自転車で昨日の道を走り、ベトナム大使館前に着いた。
昨日の兵士に聞いて、ちょっと離れたベトナム大使館領事部へ向かうと、小さな門はもう開いていた。

建物に入ると右側に大きな机があり、誰もいないが、左の部屋から人の声がする。
開いたドアからのぞき込んで、「すみませ〜ん、ビザを取りにきたんですが」と(もちろん英語で)声をかける。

するとさわやかな青年がにこにこしながら出てきて、「書類はありますか?」と言う。
どんな書類がいるか聞くと、彼の話では現在は個人で申請するのは無理で、旅行社を通さなければならないのだそうだ。(なんだ、結局そうなのか!)

この青年はなかなか親切で、引き出しから名刺を三枚出して説明してくれた。
「これとこれがベトナム系、これがカンボジアの旅行社で、どこでも英語が通じます。好きなところに行ってビザを頼んで下さい」

がっかりしたが、これはひとつの情報だ。
「1994年8月26日現在では、プノンペンで個人でベトナムのビザを取ることは不可能である」

そうなると、急いで旅行社に頼まないといけない。
急いで出ようとすると、大使館員は僕に声をかけた。

「京都大学の人はここにもよく来ますよ!」
あれれ?どうして僕が京大卒だとわかるのだろう??

英語が関西風になまっているのだろうか?
ハッキリ君と自転車に乗って、町の中心に向かい、最初に目についた旅行代理店に飛び込んだ。

スーさんという女性がアドバイスをしてくれる。
話を聞くと、がっかりだ。

ベトナムの観光ビザを取るには、普通7ワーキングデイズかかる。
これはタイと一緒で、土日をはさむので実際は約10日ということだ。

これではベトナムへ行くのは無理だ!
でも、ベトナム大使館で聞いた旅行社なら何とかなるのかもしれない。

オフィスを跳び出して、念の為にこの旅行社の看板を確かめると"TOURISM GRPOUP(CAMBODIA)LTD" とある。
おやおや、これはベトナム大使館でもらった名刺と同じ名前だ。

するとここで無理ならどこでも無理ということになる。
もう一度オフィスに入り、相談する。

「特急というやつはないの!」
「もちろんあります。特急で取れば4ワーキングデイズ、つまり約一週間ですね」

特急でもいいが遅過ぎる。
僕は9月2日の深夜にバンコクから飛行機に乗らなければならないのだ。

僕はふと思いついた。
「超特急はないの!」

旅行代理店の女性は、にやっと笑った。
「ところで、あなたは京都大学の先生ですか?」

なぜだ!

なぜみんな僕が京都大学に関係があると知っているのだ??
そして、超特急のビザは存在するのか??

この2つの重大な謎は、次回に解明されるだろう。

http://www.midokutsu.com/1994/two_mysteries.htm

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