1994/08 - 1994/08
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みどりのくつしたさん
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注:ここの両替レートやビールの値段などは、1994年時点のものです。でも日本人旅行者の本質は、全く変わってません。
「明日には明日の、また新しい出会いがある」と書いたが、これは間違いだったので訂正しておこう。
まだ今日の夜があるわけなので、「今日の夜には今日の夜のまた新しい出会いがある」が正確だった。
部屋へ戻る途中、階段で降りてくるバンダナ君とすれ違った。
そういえば彼は何をしていたのだろう。
彼のこそこそした、要領よく立ち回ろうとする性格を考えると、きっとここでも何か情報をつかんだに違いない。
だったら、その情報を少しいただかなければ。
話をしてみると、彼はまずプノンペンからバンコクの帰りのフライトの予約を再確認した。
それからキャピタルホテル1階にあるレストラン(これが有名な「キャピタルレストラン」)で、日本人旅行者と話をしていたそうだ。
なるほど!バンコクからこんなに近いのだから、日本人旅行者はうじゃうじゃいるに違いない。
どんなんかな〜(どの程度変なやつがいるのかな)?
どんな話をしているのかな〜(どんなほらを吹いているのかな)?
これは、これは、今晩はおもしろいぞ(変なのがいたら潰してやる)!
というわけだから、部屋についている水洗トイレに入って、膀胱に現存する尿をほぼ完全に排出した。
これは大切なことだから、皆さんも覚えておくように。
つまり、旅先で誰かと話をする前には、トイレをすましておくことが非常に大切なのだ。
なぜか?
知りたい人も知りたくない人もいるだろう。
が、知りたくない人はこの旅行記をここまで読んでいないと思うので、説明してあげよう。
これから下のレストランで、何人かと話をする時に、僕はビールを飲む。
旅行者同士でビールを飲みながらいろんな話をするのが、旅先の大きな楽しみだからね。
ビールを飲みながら、ワイワイやっていると、トイレに行きたくなるものだ。
しかし、話が盛り上がった時にその場を離れると、話は必然的にその場を離れた人の悪口になる。
まあこれが、日本人の人間関係の定番なんだね。
とにかく日本人というのは、その場にいるもの同士でむやみに仲良くしたがる。
互いに仲良くなるためには、共通点を見つけるのがいい。
しかし、日本人はもともと会話が下手だから、手っ取り早く、そこにいない誰かの悪口を言うんだよ。
これが、日本人がこそこそと、裏で談合をやったり、根回しをしたりする理由なんだ。
日本人というものは、正々堂々と正面から議論をせずに、裏でこそこそ悪口を言うだけなんだよなー(涙)。
「おいおい、いまトイレに立ったやつ、あいついろいろ聞いたふうな話をしているけど、本当かなー?」
「結構怪しいことを言ってましたね」
から始まって、トイレから戻ってくるころには、大ウソツキと決め付けられていることも珍しくない。
とにかく日本人は、小さいときから「イジメの構造」のなかで生きている。
だから、1人だけ変わった行動をして仲間はずれにならないようにしたほうがいい。
そのためには、1人だけでトイレに行ってはダメだ。
日本人はみんな同じことを考えているので、誰かと一緒にトイレに行けばいい。
そして、いっしょにトイレに来ない人間の悪口を言えばいいわけだ。
ねー、旅先で日本人旅行者と付き合うにも、日本社会に対しての深い洞察が必要だってことがよくわかるよね。
だから、社会経験が少ない若者が旅に出ると、日本人旅行者にぼろぼろにされてしまう恐れもあるってことなのね。
旅行初心者のライターなんかになると、旅先で旅行ベテラン、旅行通に出会って、安易に感動したりする。
でもそれは、単純に騙されている場合が多い。
旅行について書くにも、社会経験がないと、とんでもない嘘を信じ込んで、大恥をかくことにもなるよ。
「旅で出会う人はみんなやさしくていい人」なんて御伽噺書いてたら、著者は騙されているだけだ。
このように、日本人旅行者は、旅先で悪口を言われないためにも、トイレは近くない方がいい。
もちろん、おしっこは出来るだけ我慢できるのが、日本人に限らず、海外個人旅行者の特徴だ。
海外旅行では、トイレのない長距離バスに乗ったり、切符を買うのに2時間3時間並んだままでいることもよくあのだから。
だから普段から、トイレを我慢するように練習しておいた方がいいかもしれない。
ところでトイレを我慢しているうちに、便秘になることは、これは特に女性にはよくあることらしい。
これは特に発展途上国を旅行している時は、そんなに心配することではない。
道端の屋台で適当なものを食べると、一晩中下痢が止まらないこともよくあるからね。
僕はトイレをすませて、顔を洗って、鏡の自分の顔を見つめて、「行くぞっ!」と気合いを入れた。
どんなやつに出会うかわからないが、必ず勝つ。
これから「旅行者同士の見栄の張り合い勝負」と呼ばれる、セパタクローと並んで、いま最もおもしろいスポーツに参加するのだ。
階段を下りていったん道に出て左に曲がると、そこがレストランだった。
中に入ると、白人旅行者があちこちに見える。
日本人旅行者はと見ると、隅っこに4人ほど固まっている。
目のすみで4人のタイプをさっと判断する。
素人旅行者が4人。
「3流大学生。夏休みを利用してインド旅行に出たが、カルカッタにいただけ。これでは恥ずかしいので、バンコクからの往復切符でプノンペンに来た。埼玉、秋田、岡山、と丹波笹山出身者」
まるでロボコップの見る世界のように、目の前に旅行者の情報がどんどん出てくる。
この4人とは話しても意味がない。
たいして面白くなさそうな旅行者と話をしても、時間の無駄だからだ。
それに4人掛けのテーブルに4人座っているので、仲間に入りにくい。
まずゆっくり観察すればいい。
僕はレストラン全体を見回せる壁際のテーブルに席を取り、メニューを見る。
タイガービールの缶が2500リエル、ビーフ焼き飯が3000リエルとある。
いままでドルしか使ってないのでカンボジアの通貨がリエルであるのを初めてここで知った。
聞くと、レートは1ドルが2500リエル。
このレストランで両替してくれるが、もちろんこのレートでドルキャッシュ払いできるとのこと。
ビーフ焼き飯はピンク色で気持ち悪いが、味はなかなかだ。
食べていると「ピンク色ですか〜」という声が聞こえた。
さてこの声は誰だろう、それは次回のお楽しみね。
http://www.midokutsu.com/1994/capitol_restaurant.htm
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