1996/10 - 1996/10
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みどりのくつしたさん
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ブルガリアの首都ソフィア駅のリラオフィスで当日夜のイスタンブール行き夜行寝台列車の切符を買う。
ニ等寝台で、料金は5903レバ。
この時期、ブルガリアの通貨1レバは約0.5円と考えるので、約3000円。
乗車券も寝台券も含んでいる。
国際列車なのだし、これは決して高くはないよね。
ホテル代も節約できるのだし。
客車番号481番、ベッド番号が5番と、切符にかいてある。
ソフィア駅出発が20時50分、イスタンブール到着が翌朝8時30分の予定だ。
ところが窓口で6000レバを手渡したら、97レバのお釣りは返してくれなかった。
世界旅行者は特にそのお釣りをもらおうとは思わなかった。
お釣りは旅行を無事に済ませるためのお祈り料だと考えているんだ。
ちょっと払っておけば、なにかいいことがあるかもしれないしね。
ここで、変にこだわって、どうしてもお釣りをもらおうとする人もいるだろう。
しかし世界旅行者は100レバ弱のお釣り、つまり50円程度のお金にこだわることはない。
当日の夜行寝台列車の切符がすんなりと買えたことを神に感謝して、ニコット笑って、切符を手にする。
だってそんな50円ぽっちの金のことなんか、全く問題にならないほどの恐怖が世界旅行者を待っていたからだ。
世界旅行者はソフィアからイスタンブールへ夜行寝台列車に乗ろうとしている。
しかし、この路線は泥棒が多いと言うので有名な泥棒列車だったんだよ。
第一回目の世界一周旅行の時は、イスタンブールからバスに乗ってブルガリア国境を通過した記憶がある。
そのときになぜ鉄道を使わなかったかというと、それが「イスタンブールからの列車は泥棒だらけ」という情報が流れていたからなんだ。
イスタンブールから東欧への列車、イスタンブールからアテネへの列車、これはすべて泥棒さんたちに狙われている。
コンパートメントに寝ていると、ドアの隙間から催眠ガスを流し込んで、身ぐるみはがされてしまうという話が流れていた。
だから普通の人間は、イスタンブールに入る時も出るときも、バスを使うわけだ。
バスには人がぎっしりと乗っているし、常に動いているので、怪しい人間が入り込むこともこっそりと物を盗むこともできないからね。
世界旅行者は実は、当日夜の寝台車の切符がイヤにすんなりと手にはいった時に、「そうだった、この列車は有名な泥棒列車だった…」と気がついたんだ。
それでは切符を払い戻ししてバスで異動すればいいと思うだろうが、それはしなかった。
前夜からほとんど寝ていないので、頭がボーッとして、「夜行列車で泥棒にあうのも世界旅行者のネタとしては必要かな」と、思っちゃったんだよ。
そこで、世界旅行者は泥棒を避ける手段を考え、対応策を次々と打った。
まず、昼間に、ソフィアの町をうろつき、「Holy Sunday Church」でローソクを灯して祈った。
次は、「アレキサンダーネフスキー教会」で、またローソクに火を灯して祈った。
さらに、友達十数人に絵葉書を書いて送った。
そこには「これから泥棒列車に乗るので、もし命がなくなったら僕のことを思い出してね」と遺書めいたことを書いておく。
神に祈って、遺書を書いて送ったので、心はスッキリした。
そして、缶ビールとミネラルウォーターを購入した。
列車に乗る前に、貴重品を分散してしまう。
まず、左の靴の中敷の下に住所録(クレジットカードの連絡先が書いてある)をコピーした紙と500ドルのトラベラーズチェック1枚を入れた。
右の靴にはドルの現金を50ドル入れる。
デイバッグの中の貴重品入れは鍵をかけて、枕の中に入れよう。
また、バックパックの中にも金を分散し鍵をかけ、荷物置きの上においてワイアロックで固定するつもり。
ジーンズのすその折り返しの中に100ドルの現金を隠す。
あとは、列車に乗り込んだあとで考えることにする。
この列車はワルシャワ始発で、ブカレスト、ソフィアと来るので、到着が遅れる。
50分遅れで8番線に到着するという掲示が出て、ホームで待つ。
すぐにやってきた列車に駆け寄ると、それは貨物列車だった(涙)。
その次に来たのが僕の乗る列車だったが、車両の横に車両番号がついていない。
あわてて、駅員に切符を見せて、僕の車両を教えてもらう。
乗り込むと、コンパートメントの三番目に僕のベッド番号5番を見つける。
コンパートメントに入ると、3段ベッドだ。
僕のベッドは一番下のになる。
しかし、ベッドは片側だけで、もう一方の壁は荷物置き場や衣類をかけるスペース、テーブルや洗面台が作り付けになっている。
つまり、このコンパートメントは3人部屋だね。
ニ等寝台にしては豪華じゃないかな。
他の人が来る前に、さっと枕の中に、貴重品入れを隠す。
バックパックを荷物棚に上げて、ワイアーで固定する。
さて他にどういう人間が乗ってくるか、それが問題だよ。
ベッドに座って、緊張して待っている。
と、列車はそのまま21時42分に動き出した。
つまり、このコンパートメントは世界旅行者の独占なのか?
コンパートメントを独占して個室として使えるとしたら、それはチョーラッキー♪
しかし待てよ、一人の部屋で寝るとすると、泥棒だって入りやすいってワケだよね。
うーん、ひょっとしてブルガリア国鉄の泥棒軍団が、「今日の目標は日本人旅行者1人」と僕を選んで、わざわざ泥棒被害者専用室の1人部屋に入れてしまったのかもしれないぞ。
うーん。
そうなると、世界旅行者の運命は、決まった。
もう逃げられない。
ドアがノックされて、落ち着いた感じの車掌が入ってくる。
世界旅行者は切符を渡して、「ここは僕1人なの?」と尋ねる。
車掌はキレイな英語で「ここはあなた1人です。トルコへの国境到着が5時ごろです。明日お会いしましょう」と答える。
続いて低いブルガリア語で「もしあなたに明日があるならばね」と付け加えた(ように聞こえた)。
そして、立ち去る時に、僕を振り返って、ニヤーッと不思議な笑みを浮かべた。
さて世界旅行者の運命はいかに。
魔の泥棒列車は本当に存在したのか。
そして、世界旅行者は本当に泥棒の餌食になるのか?
この続きの話は、世界旅行者の第5弾「世界冷や汗ひとり旅」にきっちり書いてありますから、買って読んでね(笑)♪
【旅行哲学】泥棒列車に乗るのって、スリルがあるよね。
http://www.midokutsu.com/europe/night_train.htm
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