2006/12/09 - 2006/12/09
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フーテンの若さんさん
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「ぜひ一度、日本にお越しくださいね。」
お世話になったCASA(民家兼安宿)の奥さんに別れ間際にそう言ってしまい、「しまった!」とすぐに反省した。
一般のキューバ人は自由に海外を旅することはできない。キューバは社会主義国だからだ。現在はフィデル・カストロが病気で倒れ、弟による集団体制に移行しているものの、アメリカの厳しい経済制裁が続く中で、今後どう変わっていくか予断を許さない状況だ。
「ブッシュって知っているか?世界で一番頭が可笑しい奴なんだよ。」
――――――革命博物館前で知り合ったオジイサンとオバアサン。
「カストロ万歳!!彼は今大変だけど、彼がいるから今のキューバがあるのさ。」
――――――ゲバラ紙幣に闇両替してくれたオッサン。
まだまだ国民のカストロ支持は熱い。しかし一方でこんな声もある。
「おい、この靴を見てくれ。ボロボロだぜ。配給なんかでろくに生活できないよ。オレたちは海外に行きたいけど行けない。ずっとこの貧乏な国で暮らすのさ。何かしようとしてもポリスに監視されているし。オマエは自由でいいなぁ。だから恵まれないオレにお金を少し分けてくれよ。」
――――――カバーニャ要塞近くでタカってきた若者。
聞くところによると国の配給だけでは半月ぐらいしか生活は持たないらしい。だから観光客のチップや闇商売で生計を立てているキューバ人たちが普通だ。
「これ何処の国のコインだ?見せてくれ。なんて珍しいんだ。オマエは今まで何カ国旅をした?なんて羨ましいだぁ。」
――――――空港で僕の鞄をチェックした若い荷物検査官。
海外に出たくてしょうがない若者はたくさんいる。だから今でもアメリカへの亡命者やメキシコに渡る者は後を絶たない。若者にとっては過去に自由を勝ち取った歴史より、現在の裕福度合いに関心があるに違いない。
CASA(民家兼安宿)の机のうえには何故か小さな地球儀が置いてあった。いまキューバに住む彼らは、地球儀を見て遥かなる国々を想像することしかできない。
「たぶん、おそらくだけど、もう少しであなたたちも自由に旅できる日が来ると思う。」
何の根拠もないけれど僕はそう感じた。1週間ばかりの旅行だったが、「変化の胎動」みたいなものがなんとなく体で感じられたのだ。
でも言葉にだすのは止めた。とても不謹慎な面もあるからだ。
「また、会いましょう」
これを最後の言葉にCASAの奥さんと別れた。もしかしたら別の国で再会できるのかもしれない。この先、彼らが自由に世界を旅できる日は来るのだろうか。
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