八瀬・大原・貴船・鞍馬旅行記(ブログ) 一覧に戻る
ゴムが焦げているような、変な臭いがするよ。」と家族が口々に言う。鞍馬から花背峠へ向かう登り坂でのことだ。古い車である。水温も正常だし、他のインジケーターも点灯していないので、トルコンのオイルが劣化しているのかも知れない。<br />もし出火でもしたら、と周りの丹精した杉林を見遣りながら高度をかせぐ。家を出てから小一時間経った7時半、ようやく峠に着いた。<br /><br />連休の合間の2日、昼休みの園庭にいると、見知った顔が「これ、さくらんぼのあかちゃんやねん」と次々に見せに来る。うす緑の花柄の先に米粒大の赤い子房がついている。ちいさい指先に摘まれているのは、しゃれたマッチ棒のようだ。そういえば作家の村上春樹は、自分の生まれ育った所を「マッチをすり終わるころには、車はもう街を通りすぎる」ほどの小さい街、と「風の歌を聴け」のなかで表現している。<br /><br />おなじ村上春樹の「ノルウェイの森」には、花背らしき描写もでてくる。その先の広河原へは、北山歩きの起点として、ぼくも足繁く通ったので、花背の集落には馴染みがある。ことしの初め、大河ドラマを観ている上のこどもが、鞍馬寺へ行きたいと言い出してから随分と日が過ぎた。というわけで、「さくらんぼのあかちゃん」からの連想とも言おうか、鞍馬寺を訪ねるまえに、見晴らしのいい場所でパンとゆで卵の朝食を、初夏の感傷のなかで食べることになったのだ。<br /><br />まだ陽が低いせいか、浅葱色の空を背景にした、針葉樹の黒と広葉樹の薄萌黄が形つくる山のなかに鞍馬寺はある。「遮那王が上り下りしたという階段はありますか?」。ミーハーなことを入山受付のひとに聞くと、「撮影したのは山門だけ。あの階段は岩手県にあるそうです。」と教えてくれた。肩を落とすこどもの歩みを促しながら本殿へ向かう。たしかフジの古木があったはずだ。<br /><br />最後の石段を上がると、園ではもうほとんど散ってしまった八重桜が、いまを盛りと咲いている。そのとなりに、もやが漂っているような薄色のフジが花をつけていた。近づいてみると、房の半分はまだ可憐なつぼみだ。花はみる者を選ばない。<br /><br />せっかく街へ出て来たのだからと、早めの昼食はこどもたちの希望でラーメンにすることにして、下山した。目当ての店にはことごとく振られ、行きついた店は平安神宮に程近い「一番星」。80年代に、ときどき立ち寄った店だ。メニュウは「中華そば」のみ。<br />こどもどもたちは「チャ−シュウ麺」、大人は「並み」を頼んだ。60年代にはやった喫茶店の雰囲気を残している店で、市内で暮らしていた頃が想いおこされて、懐かしい。“そば”は、見た目はこってりしているが、食後感はさっぱりとしていて、お代わりをしたくなるほどである。他の店ではレンゲに2、3杯しか飲ませないスープを、お腹いっぱい飲んだこどもたちの「あぁ、おいしかった」の声を残し、岡崎を後にした。<br /><br />

遠出

2いいね!

2005/05/03 - 2005/05/03

1993位(同エリア2208件中)

0

8

crambon1948

crambon1948さん

ゴムが焦げているような、変な臭いがするよ。」と家族が口々に言う。鞍馬から花背峠へ向かう登り坂でのことだ。古い車である。水温も正常だし、他のインジケーターも点灯していないので、トルコンのオイルが劣化しているのかも知れない。
もし出火でもしたら、と周りの丹精した杉林を見遣りながら高度をかせぐ。家を出てから小一時間経った7時半、ようやく峠に着いた。

連休の合間の2日、昼休みの園庭にいると、見知った顔が「これ、さくらんぼのあかちゃんやねん」と次々に見せに来る。うす緑の花柄の先に米粒大の赤い子房がついている。ちいさい指先に摘まれているのは、しゃれたマッチ棒のようだ。そういえば作家の村上春樹は、自分の生まれ育った所を「マッチをすり終わるころには、車はもう街を通りすぎる」ほどの小さい街、と「風の歌を聴け」のなかで表現している。

おなじ村上春樹の「ノルウェイの森」には、花背らしき描写もでてくる。その先の広河原へは、北山歩きの起点として、ぼくも足繁く通ったので、花背の集落には馴染みがある。ことしの初め、大河ドラマを観ている上のこどもが、鞍馬寺へ行きたいと言い出してから随分と日が過ぎた。というわけで、「さくらんぼのあかちゃん」からの連想とも言おうか、鞍馬寺を訪ねるまえに、見晴らしのいい場所でパンとゆで卵の朝食を、初夏の感傷のなかで食べることになったのだ。

まだ陽が低いせいか、浅葱色の空を背景にした、針葉樹の黒と広葉樹の薄萌黄が形つくる山のなかに鞍馬寺はある。「遮那王が上り下りしたという階段はありますか?」。ミーハーなことを入山受付のひとに聞くと、「撮影したのは山門だけ。あの階段は岩手県にあるそうです。」と教えてくれた。肩を落とすこどもの歩みを促しながら本殿へ向かう。たしかフジの古木があったはずだ。

最後の石段を上がると、園ではもうほとんど散ってしまった八重桜が、いまを盛りと咲いている。そのとなりに、もやが漂っているような薄色のフジが花をつけていた。近づいてみると、房の半分はまだ可憐なつぼみだ。花はみる者を選ばない。

せっかく街へ出て来たのだからと、早めの昼食はこどもたちの希望でラーメンにすることにして、下山した。目当ての店にはことごとく振られ、行きついた店は平安神宮に程近い「一番星」。80年代に、ときどき立ち寄った店だ。メニュウは「中華そば」のみ。
こどもどもたちは「チャ−シュウ麺」、大人は「並み」を頼んだ。60年代にはやった喫茶店の雰囲気を残している店で、市内で暮らしていた頃が想いおこされて、懐かしい。“そば”は、見た目はこってりしているが、食後感はさっぱりとしていて、お代わりをしたくなるほどである。他の店ではレンゲに2、3杯しか飲ませないスープを、お腹いっぱい飲んだこどもたちの「あぁ、おいしかった」の声を残し、岡崎を後にした。

交通手段
自家用車
  • 13年目の車。

    13年目の車。

  • …ウインナーはこうして食べるもの

    …ウインナーはこうして食べるもの

  • 眠い…

    眠い…

  • 咲き始め

    咲き始め

  • …

  • …なに想う

    …なに想う

  • 「火祭り」の由岐神社

    「火祭り」の由岐神社

  • 「一番星」のラーメン。

    「一番星」のラーメン。

この旅行記のタグ

2いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

八瀬・大原・貴船・鞍馬の人気ホテルランキング

PAGE TOP