2006/06 - 2006/06
23834位(同エリア24230件中)
Ritzさん
今回のスウェーデン行きはタイ航空・バンコク経由。
夕方にバンコクに着き、翌午前1時発のストックホルム行きに乗り換える。
たっぷり時間があるのでバンコク市内に出ることにした。
冷房のきいた空港から一歩外に出ると、むっとした空気に包まれた。
...蒸し暑い...
空港から市内へ向かうバスに乗る。
大きなバックパックを無造作に放り出してバスを待っている欧米人たち。
インドでよく見た光景、思い出して懐かしくなる。
熱気 湿度 騒音 動物 猥雑 混乱
ただバンコクはインドほど人が混み合っていないし、音も少ない。
特に目的もなく、とりあえずカオサンロードへ。
スカイトレインができたことで交通渋滞が緩和されたと聞いていた。
...バスはなかなか進まない。以前はもっとひどかったの?
空港に着いたのはすでに夕方、お寺が閉まる時間までもう間もない。
(もし急げば間に合うかも)なんて密かに希望を持っていたが
完全に止まったバスの中で潔く諦めた。
バスの窓から外を眺めていると、黄色い上着を着ている人が多いことに気付いた。
黄色いTシャツを売る屋台まで出ていた。
「愛は地球を救う」並にみんな黄色い。
大通りの街路樹はイルミネーションで飾られ、交差点にはド派手な黄金のアーチが建っていた。
これは何かのお祭りに違いない。
バスがようやく終点のカオサンに到着した。
バックパッカーの巣窟、カオサンロード。
ニューデリーのメインバザールを想像していたけれど、実際には随分違った。
洋風のお洒落なバーやレストランがずらりと並び、広く整然としている。
カオサンを歩く外国人の数は、メインバザールのそれよりはるかに多い。
売っているものはどれもインドのものより質が良く、値段もそれなりにする。
外国人観光客 お土産売りのおばちゃん バックパッカー 呼び込みのホステス
夜になるとまっすぐ歩けないほど混雑する。
-
Illuminated Street
チャオプラヤ川まで行ってみることにした。
ガイドも地図もない。
空港から来た道とカオサン通りの位置から方角を推測。
これまでこの勘だけで、いろんな場所を歩いてきた。
途中、大きな道路を何度も横断しなくてはならない。
渡りたいところからはるか遠くに横断歩道が見える。
タイ人が次々と道路を横切る姿を見ていると、そこまで歩いて行くのがさらに億劫に感じる。
しかしこれには"洗練されたテクニック"が必要だった...
何レーンもある大きい道路。しかもただの直進だけではない。
交差点にある信号はそれぞれあちこちを向いていて
どの信号がいつ変わるのか全く予想がつかない。
飛び出すチャンスが来ては逃し、結局突っ立っているだけのあたし。
そのうち自分一人で渡るのは自殺行為だと悟った。
ー作戦変更ー
この際、走ってくる車は完全に無視する。道路を横断するタイ人だけに視線を集中。
しかしこの命を賭けた戦いを、かなりの数こなしている勇敢なタイ人、
素人のあたしが思わず目を覆うほどの、きわどいタイミングで飛び出す。
...これは上級だ...
こんなことをしている時間で横断歩道を渡って川まで行けた。
下手したら今ごろボートにも乗っている。
一難去ってまた一難。恐るべしバンコク。今度は道に迷う。
西に向かって歩いているつもりだったが、どうやら南に突き進んでいた。
そもそもあの道路を渡る必要もなかったことになる。
自分の勘が機能していなかったという敗北感。
チャオプラヤ川が町の西に位置しているのかさえ曖昧になってきた。
気がつくと下町に来ていた。
路上で涼んでいたおばちゃんに道を尋ねる。
「リバーリバー チャオプラヤ」
「...?」
ぜんぜん通じていない。
こうなったらボディーランゲージしかない。
体で水の流れを表現してみるが、おばちゃんはただ笑うだけ。
ウケ狙いでやってるんちゃうねん。川やねん、川。
おばちゃんが指を差した先には、道路で遊んでいる少年3人が居た。
(ははーん、彼らには英語が通じるのか)
はりきって英語で話しかけてみるがやっぱり通じていない。
仕方なく同じ動きを繰り返していると、少年の一人が
「...分かった!」
といわんばかりに目を輝かせた。
ああ良かった。ボディーランゲージは疲れる。
こっちこっち、と先導してくれる彼。
わざわざ連れて行ってくれなくてもいいのに、と思うも伝えようがないのでおとなしくついて行く。
少年は急に立ち止まり、あたしの顔を見つめ様子を伺う。
...どうやら着いたらしい。
店のおじさんも出てきた。
「えーと、川、じゃないよね?」
店中にはキーボードが並んでいる。
そこは楽器屋さんだった。
水の流れを表現したはずのあたしのジェスチャーは、キーボードを弾いているように見えたらしい。
思わず吹き出してしまった。
(せっかくここまで案内してくれたのに悪いな...)
この場をどう説明したらいいのか困っていた。
ふと、バスの切符にチャオプラヤ川の絵が書いてあったことを思い出す。
確か捨ててない、とズボンのポケットを探る。
...あった!
取り出してその絵を少年に見せた。
すぐに理解してくれた彼は恥ずかしそうに、川へ出る道を指さしてくれた。
「あたしのジェスチャーのせいだから、ごめんね、ありがとう」
ちゃんと通じたかどうかは分からないけど...
お互いに胸の前で両手を合わせ、お辞儀をして別れた。 -
Celebrations!
チャオプラヤ川に出た時はもうすっかり夜。
道に迷っているうち、バンコクのいろんな顔が見えてきた。
バスの切符に描かれた川の絵を見せながら道を尋ねるたびに
一生懸命考えて丁寧に教えてくれた地元の人達がとても温かかった。
川には大きな橋が架かっていた。
仕事帰りのサラリーマンやジョギングする人が橋を渡っていく。
対岸に、川を渡る舟の乗り場が見えた。
橋の上から見る景色は、ロンドンのテムズ川から見える夜景に少し似ていた。
ライトアップされた建物や橋を見ていると懐かしい気持ちになった。
昼間に見るとぜんぜん違うんだろうけど。
「この舟はどこまで行くの」と聞くと、舟乗り場のおばちゃんは対岸を指差した。
「ハウマッチ?」「スリーバーツ」
ここでは英語が通じる。ホッとした。
「次の舟は何時に出る?」と聞くと「エイト」と言う。
おばちゃんの背後にある時計を見るとまだ7時。
「えっ、エイトオクロック?」
おばちゃんは時計を見直して言った。
「イエス、エイト!」
...あと1時間もある。
待合場を見ると、若者たちが静かに座って待っている。
タイの人はゆったりしてるなあ...
あたしにだって急ぐ理由はない。彼らを見習って待つことにした。
おばちゃんに3バーツを払い、鉄のゲートを通って待合場の椅子に腰掛けた。
足が棒のようになっている。思えばここまで歩きっぱなしだった。
観光案内所でもらった地図を広げた。
ここまで自分が歩いて来た道を追いながらバンコクの広さを感じていると、待っていた若者たちが次々と立ち上がった。
彼らの視線の先には、客をたくさん乗せた舟が着こうとしていた。
時計を見るとまだ10分も経っていない。
「エイト」って何のことやったん、おばちゃん...
蒸し暑いバンコクの夜。
真っ暗な水面にしぶきをあげながら走る舟。
涼しくて気分爽快だった。 -
Traffic Jam
たくさん歩いてお腹が空いた。
空港バスの乗り場にあるレストランで食事をすることに。
「タイ料理はスパイシー」
百も承知だったけれど、本場の辛さを見くびっていた。
メニューには親切に唐辛子マークで辛さを表示してある。
それを完全に見逃して"タイらしい料理"を選んでしまった。
「せっかくバンコクに来たんだし」
ウェイターは坊主頭の男の子。
笑顔がとても可愛い高校球児みたいだった。
「このグリーンカリーってほうれん草?」
「イエス」
数分後、テーブルにやってきたのは激辛・グリーンチリカレー。
ほうれん草なんてみじんも入ってないし。
スープだけを白飯にかけて食べる。
エビ以外の具はどれを食べてもとてつもない辛さ。
空腹の胃が燃えた。
レストランのテレビには、何かの式典が映しだされている。
ウェイターの彼もかじりつくように見ている。
今日一日あらゆる場所でタイ国王の写真を見かけた。
黄色いこのお祭りは何か国王に関係あるのでは?
ウェイターの彼に聞いてみた。
「どうしてみんな黄色い服を着ているの?」
「僕は毎日着ているよ」
「国王の誕生日とか?」
「そうだよ」
「なるほどね」
後に「国王即位60周年」の祭典だったことが判明。
テレビを見て気を紛らわせながら時間をかけて食べる。
汗が吹き出す。からい からい からいよー
ウェイターの彼がテーブルにやってきて、何かを置いた。
小さく折りたたんだ紙。「何?」
誰かに渡すように頼まれた、と言う。
「誰?バンコクに知り合いなんかいないのに」
「僕は分からない」
紙を広げてみると、不器用なひらがなが書かれていた。
"りょこうがいしゃをしている○○です。おともだちになりたいです"
カワイイーーーーーーーーーーー!
やっぱり仏教の国タイの人、礼儀正しいというか奥手というか。
日本人が来るたびにこの手紙を配ってどこかで様子を見ているのか。
ここがインドなら、まず間違いなく有無を言わせずとなりに座り
こっちが食事を終えて店を出るまで一方的に説得し続けるだろう。
なんとか激辛カレーを制覇し、空港バスが来るまでテレビの画面を眺めてジュースを飲んでいた。
ウェイターの彼が来てわざとらしく聞く。
「手紙読んだ?何て書いてあったの?」
「友達になろう、だって。でも一体どこの誰だか分からないし」
「I know」
...やっぱりグルですやん、おたくら。
せっかくだけど、もうバンコクを去るあたしには時間がない。
今度また機会があれば、と伝えておいてと言うと
ウェイターの彼はあの可愛い笑顔で素直にうなづいた。
「バスが来たよ」
テーブル脇に置いていたリュックを背負い、バスに乗りこんだ。
胃の中は相変わらず燃えていた。
店の前まで出てきてくれていた彼。
バスが走り出すと、軽くお辞儀をして手を振ってくれた。
たくさんいい人に会ったな、バンコク!
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
バンコク(タイ) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
3