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6合目の山小屋を後にすると、とたんに登山道の傾斜が急になった。道らしい部分はほどんどなくなり、登山道を示すロープをたどって、人の列の後についていく感じだ。さらさらの砂と、ごつごつの火山岩に苦労しつつ、ステッキを頼りに必死に道をたどる。<br /><br />上を見ると、暗闇の中、蛇行するヘッドランプの長い光の列、さらにそのかなり上の方に明かりがかたまって存在する場所が2カ所ほど見える。次の山小屋はあれだろうか。かなり遠くに見える気がするのは気のせいだろうか。上の方は視界がとぎれているが、あのあたりが頂上なのだろうか。<br /><br />後から考えると、新7合目と7合目の山小屋の灯りだったのだが、あそこまで行ってもまだ道程の半分以下だとは、とてもそのときは思えないほどそれは遠くに見えた。<br /><br />夜間登山は、ある意味大正解だった。これが昼間で、視界が開けていて、登っても登っても遙か遠くに山小屋が見えるような状況だったら、私は7合目ぐらいで、あっさりギブアップしていただろう。暗いし、見る物はないし、とにかく前の人について、必死に登るしかなかった。<br /><br />最初とは比較にならないぐらい体力を使いながら登って、ようやく新7合目の山小屋についた。人が多く、座る場所を探すのに苦労する。しょうがないので、山小屋を通り過ぎてすぐの岩場で休憩した。水を飲み、ウィダーインゼリーを食べ、飴を食べる。ちょっと一息つくが、もうデジカメを取り出して写真を撮る気分にはなれなかった。<br /><br />この頃までに4人グループは実質2人づつに別れていて、時々休憩しているところを抜いたり抜かれたりしながら、山小屋で落ち合うことが多かった。私に同行してくれたのは、今回の登山を提案した友人で、ジム通いも、アウトドアスポーツもしている。一番ペースの遅い私を心配してくれて、私に合わせてペースを作ってくれていたのだ。<br /><br />この後は、さらなる彼女の体力と根性で、上まで引っ張っていってもらう状態になるのであった。<br /><br />「さ、行こうか。」友人にそう言われて、重い腰を上げて、次のシリーズにとりかかる。<br /><br />えっちらおっちら、後ろから追いついてくる元気なパーティーに道を開けつつ、ゆっくりペースで登る。疲れも出てきて、またやはり空気が薄いせいか息切れも早い。途中の岩場で休憩して、ちょっと水分を取ったり何か口に入れたりして、なるべく疲れないように心がける。登って登って、ずっと前から見えていた灯りにようやくたどり着くと、そこにはこう書いてあった。「七合目」<br /><br />…あれ、さっきも七合目って見た覚えが…。<br /><br />なんだかどっと疲れる。七合目が二回もあるのはサギだ。この後いくつ八合目があるやら、九合目があるやら、それを考えるとちょっと気が遠くなりそうになる。とりあえず腰を下ろし、水を飲んで、ちょっと何か口に入れる。この頃まではまだ食べる気力があった。<br /><br />改めて周囲を見回すと、山小屋の下の方から、ぞくぞくとヘッドランプの列が近づいてくる。列が切れないんだものなあ、すごい人数だ。そして上を見上げると、空が近い。空気が澄んでいるせいだろうけど、星が大きく、すぐ近く見える。遙か下に雲海も見え、雷もなっているらしい。雷が足より下で鳴ってるなんて、めったにできる経験じゃない。あの綺麗な空をデジカメで撮っておけばよかったのだけど、デジカメを取り出す気力無し。友人はデジカメで山小屋の看板を激写してるというのに。この体力は情けない、まだまだ先は長いのに。<br /><br />さらに傾斜が強くなったように思える登山道を、再び登り始める。砂より岩が多くなってごつごつした地面に気をつけながら、あるところは杖にすがり、あるところは手も使って、登ることだけに専念するように心がけた。

富士登山記 その5

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2004/08 - 2004/08

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Domi

Domiさん

6合目の山小屋を後にすると、とたんに登山道の傾斜が急になった。道らしい部分はほどんどなくなり、登山道を示すロープをたどって、人の列の後についていく感じだ。さらさらの砂と、ごつごつの火山岩に苦労しつつ、ステッキを頼りに必死に道をたどる。

上を見ると、暗闇の中、蛇行するヘッドランプの長い光の列、さらにそのかなり上の方に明かりがかたまって存在する場所が2カ所ほど見える。次の山小屋はあれだろうか。かなり遠くに見える気がするのは気のせいだろうか。上の方は視界がとぎれているが、あのあたりが頂上なのだろうか。

後から考えると、新7合目と7合目の山小屋の灯りだったのだが、あそこまで行ってもまだ道程の半分以下だとは、とてもそのときは思えないほどそれは遠くに見えた。

夜間登山は、ある意味大正解だった。これが昼間で、視界が開けていて、登っても登っても遙か遠くに山小屋が見えるような状況だったら、私は7合目ぐらいで、あっさりギブアップしていただろう。暗いし、見る物はないし、とにかく前の人について、必死に登るしかなかった。

最初とは比較にならないぐらい体力を使いながら登って、ようやく新7合目の山小屋についた。人が多く、座る場所を探すのに苦労する。しょうがないので、山小屋を通り過ぎてすぐの岩場で休憩した。水を飲み、ウィダーインゼリーを食べ、飴を食べる。ちょっと一息つくが、もうデジカメを取り出して写真を撮る気分にはなれなかった。

この頃までに4人グループは実質2人づつに別れていて、時々休憩しているところを抜いたり抜かれたりしながら、山小屋で落ち合うことが多かった。私に同行してくれたのは、今回の登山を提案した友人で、ジム通いも、アウトドアスポーツもしている。一番ペースの遅い私を心配してくれて、私に合わせてペースを作ってくれていたのだ。

この後は、さらなる彼女の体力と根性で、上まで引っ張っていってもらう状態になるのであった。

「さ、行こうか。」友人にそう言われて、重い腰を上げて、次のシリーズにとりかかる。

えっちらおっちら、後ろから追いついてくる元気なパーティーに道を開けつつ、ゆっくりペースで登る。疲れも出てきて、またやはり空気が薄いせいか息切れも早い。途中の岩場で休憩して、ちょっと水分を取ったり何か口に入れたりして、なるべく疲れないように心がける。登って登って、ずっと前から見えていた灯りにようやくたどり着くと、そこにはこう書いてあった。「七合目」

…あれ、さっきも七合目って見た覚えが…。

なんだかどっと疲れる。七合目が二回もあるのはサギだ。この後いくつ八合目があるやら、九合目があるやら、それを考えるとちょっと気が遠くなりそうになる。とりあえず腰を下ろし、水を飲んで、ちょっと何か口に入れる。この頃まではまだ食べる気力があった。

改めて周囲を見回すと、山小屋の下の方から、ぞくぞくとヘッドランプの列が近づいてくる。列が切れないんだものなあ、すごい人数だ。そして上を見上げると、空が近い。空気が澄んでいるせいだろうけど、星が大きく、すぐ近く見える。遙か下に雲海も見え、雷もなっているらしい。雷が足より下で鳴ってるなんて、めったにできる経験じゃない。あの綺麗な空をデジカメで撮っておけばよかったのだけど、デジカメを取り出す気力無し。友人はデジカメで山小屋の看板を激写してるというのに。この体力は情けない、まだまだ先は長いのに。

さらに傾斜が強くなったように思える登山道を、再び登り始める。砂より岩が多くなってごつごつした地面に気をつけながら、あるところは杖にすがり、あるところは手も使って、登ることだけに専念するように心がけた。

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