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故郷の高校へ入学して50周年になるということで、同期会が開催された。暫く墓参もしていなかったので同期会に出席する「ついで」に墓参をした。古老にいわせれば「ついで」に墓参とは怪しからぬ、先祖をないがしろにしているとバチがあたるぞと叱られそうである。しかし、文明の進歩と秒進分歩の技術革新の世の中にあっては、交通手段、通信手段が豊富になってくるとともに職住近接という理想とは反対に職場と住居が離れてしまうことが多い。更に子供達が学齢期であると父の転勤に子供たちがついて移住するということもなくなった。単身赴任という生活形態が発生する。その間父親は企業戦士として各地を飛び回ってきた。そして齢65才を迎えて自由の身になった。そんな仲間の集まりだから時間に追われる慌ただしい会合と違い、ゆったりとした時間を持つことができた。50年もタイムスリップして共有した3年間の思いをそれぞれに語り合った。今までは墓参にしても直ちにとんほ゛帰りしていたのだが今回は50年前に遊んだあの山、あの川、あの原、あの学舎、あの城跡、あの神社、あの仏閣も訪れてみた。さすがに名所旧跡の神社仏閣は昔の面影を止めていたが町中に大きな道路が新しく開通し、原には高層マンションが立ち並びその変容には目を見張るばかりであった。まさに今様浦島太郎の三日間であった。<br /><br /><br /><br /> 高校入学50周年を記念して同期会が郷里岡山市の会場で開催された。450人9組もある大きな高校であった。集まったのは100名。過半の者が65才に達し、一線から引退し比較的自由に時間を過ごせるようになった。幹事団は色々企画を立てて母校訪問、池田藩の閑谷校訪問、ゴルフ会、備前焼の窯元での土ひねり等盛り沢山のプログラムを用意してくれた。その中に直島のベネッセ文化村に宿泊して島の現代アートを見学するという企画があった。<br /><br />産業廃棄物の大量投棄で有名になった豊島と隣り合わせのこの瀬戸内海の小島には三菱鉱業の製錬所があり昔からはげ山の島として知られていた。岡山県の玉野市宇野港からは3キロメートル香川県高松市からは13キロメートルに位置するこの島は何故か香川県に所属する。<br /><br />閑谷校の見学を終えてバスで宇野港へたどり着いた参加者一行は20名。海上タクシーで島に渡り最初に訪れたのが民家プロジェクトと称する角屋である。ここには宮島達男のSea of Time`98という現代アートの作品がある。大きな民家の大広間に池を作り小石を敷きつめられた池底には125個のデジタルカウンターが設置されている。これらのデジタルカウンターは青、赤、黄色に点滅しながらそれぞれに異なるスピードで0〜9までの数字をきざんでいる。忙しない動きのものもあればのんびりしたものもある。カウンターの点滅を人間の生の輝きと見なせば、それそれに生きざまを主張しているようでもあり、個性を主張しているようにも見える。京都は竜安寺の石庭の石を眺めて何かを感じ取るのと同じ趣向であるともいえる。<br /><br />ついで南寺へ行った。ここには安藤忠雄氏が設計した木造の建物の中にジェームズ・タレル氏作のバックサイド・オブ・ザ・ムーンという作品がある。入り口を入ると真っ暗な空間が待っている。漆黒の空間で何もみえない。隣の人はおろか顔へ近づけても自分の手さえ見えない暗闇である。手さぐりで壁を伝わらないと怖くて動けない。やがて10分ほど経ったであろうか暗闇に目が馴れだした頃正面の壁面に短冊型の光の影が見えるようになった。ただそれだけのものであるが、現代の生活にあってはこのような光の全然ない生活は日常体験することがないだけに虚をつかれた感じがするとともに視覚障害者の世界とはこのようなものなのかと思ってみたりしたし、人間の存在とは何かと妙に哲学的な思いに沈んだ一時でもあった。<br />ベネッセという言葉の意味を調べてみるとラテン語のbene良い、正しい と esse生きる、暮らす という単語との合成語であることを知った。ベネッセ国際村という蒙古のパオを真似たテントがいく張りも設置されていてテレビもラジオもない自然回帰の生活を体験できるようになっていた。<br /><br /><br />

閑谷校とベネッセ文化村

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2004/03/26 - 2004/03/27

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早島 潮

早島 潮さん

故郷の高校へ入学して50周年になるということで、同期会が開催された。暫く墓参もしていなかったので同期会に出席する「ついで」に墓参をした。古老にいわせれば「ついで」に墓参とは怪しからぬ、先祖をないがしろにしているとバチがあたるぞと叱られそうである。しかし、文明の進歩と秒進分歩の技術革新の世の中にあっては、交通手段、通信手段が豊富になってくるとともに職住近接という理想とは反対に職場と住居が離れてしまうことが多い。更に子供達が学齢期であると父の転勤に子供たちがついて移住するということもなくなった。単身赴任という生活形態が発生する。その間父親は企業戦士として各地を飛び回ってきた。そして齢65才を迎えて自由の身になった。そんな仲間の集まりだから時間に追われる慌ただしい会合と違い、ゆったりとした時間を持つことができた。50年もタイムスリップして共有した3年間の思いをそれぞれに語り合った。今までは墓参にしても直ちにとんほ゛帰りしていたのだが今回は50年前に遊んだあの山、あの川、あの原、あの学舎、あの城跡、あの神社、あの仏閣も訪れてみた。さすがに名所旧跡の神社仏閣は昔の面影を止めていたが町中に大きな道路が新しく開通し、原には高層マンションが立ち並びその変容には目を見張るばかりであった。まさに今様浦島太郎の三日間であった。



 高校入学50周年を記念して同期会が郷里岡山市の会場で開催された。450人9組もある大きな高校であった。集まったのは100名。過半の者が65才に達し、一線から引退し比較的自由に時間を過ごせるようになった。幹事団は色々企画を立てて母校訪問、池田藩の閑谷校訪問、ゴルフ会、備前焼の窯元での土ひねり等盛り沢山のプログラムを用意してくれた。その中に直島のベネッセ文化村に宿泊して島の現代アートを見学するという企画があった。

産業廃棄物の大量投棄で有名になった豊島と隣り合わせのこの瀬戸内海の小島には三菱鉱業の製錬所があり昔からはげ山の島として知られていた。岡山県の玉野市宇野港からは3キロメートル香川県高松市からは13キロメートルに位置するこの島は何故か香川県に所属する。

閑谷校の見学を終えてバスで宇野港へたどり着いた参加者一行は20名。海上タクシーで島に渡り最初に訪れたのが民家プロジェクトと称する角屋である。ここには宮島達男のSea of Time`98という現代アートの作品がある。大きな民家の大広間に池を作り小石を敷きつめられた池底には125個のデジタルカウンターが設置されている。これらのデジタルカウンターは青、赤、黄色に点滅しながらそれぞれに異なるスピードで0〜9までの数字をきざんでいる。忙しない動きのものもあればのんびりしたものもある。カウンターの点滅を人間の生の輝きと見なせば、それそれに生きざまを主張しているようでもあり、個性を主張しているようにも見える。京都は竜安寺の石庭の石を眺めて何かを感じ取るのと同じ趣向であるともいえる。

ついで南寺へ行った。ここには安藤忠雄氏が設計した木造の建物の中にジェームズ・タレル氏作のバックサイド・オブ・ザ・ムーンという作品がある。入り口を入ると真っ暗な空間が待っている。漆黒の空間で何もみえない。隣の人はおろか顔へ近づけても自分の手さえ見えない暗闇である。手さぐりで壁を伝わらないと怖くて動けない。やがて10分ほど経ったであろうか暗闇に目が馴れだした頃正面の壁面に短冊型の光の影が見えるようになった。ただそれだけのものであるが、現代の生活にあってはこのような光の全然ない生活は日常体験することがないだけに虚をつかれた感じがするとともに視覚障害者の世界とはこのようなものなのかと思ってみたりしたし、人間の存在とは何かと妙に哲学的な思いに沈んだ一時でもあった。
ベネッセという言葉の意味を調べてみるとラテン語のbene良い、正しい と esse生きる、暮らす という単語との合成語であることを知った。ベネッセ国際村という蒙古のパオを真似たテントがいく張りも設置されていてテレビもラジオもない自然回帰の生活を体験できるようになっていた。


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  • 池田藩閑谷校

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  • 池田藩閑谷校

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  • 直島のベネッセ文化村

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  • 直島のベネッセ文化村より瀬戸内海を望む

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  • 直島のベネッセ文化村の造形

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  • 与島

    与島

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    与島

  • 与島で咸臨丸を見る

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  • 直島のベネッセ文化村での舞踊とコンサート

    直島のベネッセ文化村での舞踊とコンサート

  • コンサート終了後あまりの寒さに焚き火を囲む

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