2005/12/22 - 2005/12/29
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アルピニスとしさん
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平家の先導で無事ルオストBCに到着した。ここ北極圏では夕刻4時にもなると辺りは真っ暗で、携帯についているLEDライトが早速役立った。さすがのNOKIAである。車用バッテリーヒーターなるものをバンパー下に装着しなければならないことを平家から教わった。日本では600万くらいで売られているベンツのEクラスといえどもバッテリーが冷えていては、たとえモービルのオイルを入れていたとしてもただの鉄の固まりなのだな。
さて、一行はそれぞれが装備を展開した。ブリュッセルと大差のないヘルシンキからの移動で全員が防寒着を取り出していたが、BC近辺の気温は−6℃前後と大したことはなかったので、なんちゃって冒険ジャケットのHHジャスパーダウンだけのを続投とした。
さて、今回は3世代旅行(義理の両親、僕、配偶者、子)だったのだが、BCのログハウスがメゾネット方式ということで、子の安全の観点から僕たちは地上階となった。
寝室から周りを見渡せば膝上以上の雪だ。『歩くの大変そう。』と思いきや、んっ、足跡。動物の足跡。
どうも、ログハウスの周りをうろついているぞ。
そいつは何者。そして、何故このログハウスの周りを回るのだ?まさか、臆病者の草食系のウサギ君とかではありますまい。
だとすれば、リンクス?英国海軍のヘリの名前にもなってる山猫よりもさらにおっきいあのりんくす?と
頭の中は『○曜スペシャル、Kわぐち浩探検隊』にまでリンクスる。
もう、これはスノーシューでも履いて追跡しなければ冒険者とか探検者とか名乗る資格はないだろっ。
うわーっ、と今にも飛び出しそうな勢いまで胸の鼓動は高鳴っていたが、よく考えれば今回は家族旅行だった。
とかのような諸事情により追跡調査は3日後に引き伸ばされた。
さて、今回が始めてのスノーシュー本格投入。
僕の結論としては、北極圏のようなパウダースノーの雪原上ではスノーシューはこの上なく有効なツールである。特にラップランドのようなところだと、そこらじゅうが森となっているので、舗装されていないところを歩行するにはこれがないと不便だと思う。何を言う、はやみゆう(ふるっ)XCスキーがあるじゃんという御仁もおられるとおもうが、スキーでは苦労しそうなフィールドが結構ある。
実際、皆がスキーをして、自分が子供番を兼ねてソリと子供を抱えて坂をあがるときも、謎の生物のトレース追跡調査にもやはり便利だ。ただし『圧雪されていないところをスノーシューを履きながら子供のソリを引っ張って進む大作戦』というのは大失敗だった。スノーシューの付ける深い足跡はそりを沈没させるのだ。おかげで子供はソリとともに転倒、助け出そうと焦った自分も転倒。子供を抱えつつこけた体勢からの復活には相当厳しいものがあった。やっぱり思いつきで難しい事に挑戦すべきではない。
BC入りしてから、3日目。遂に来たー。追跡調査の時間だー。僕を除く皆が疲れからか早めに寝るという事になった。僕はオーロラ出現に備える監視役と言う役回りも兼ね、フィールドへと躍り出たのだ。毎日気になって仕方がなかった。なぜなら、謎の足跡は雪が降り続いてその跡が消えた後からまた新たなものが付けられているというような調子だったからだ。LEKIのストック、LEDのヘッドランプを装着して寝室のある寝室の裏手側に回り込む。雪は深く、既に腰の高さまではあるようだ。間近まで近づいて見ると、足跡の形状はどうもウサギさんっぽい。リンクスっとも笑えないぜ、とやや落胆しつつも、謎が解けるまでは追跡調査の手はゆるめられない。諦めずに足跡を追い続ける。スノーシューのおかげで雪上の移動は容易かったが、足跡の主はどうやらなかなかのお利巧さんだ。ただ、まっすぐに進むだけではなくて、樹林の周りをぐるぐると回ってみたり、自分の足跡を後ずさりしながら踏んで痕跡を消そうとしていた。まるでシートン動物記ではないか!僕は一人で感動しまくらちよこ、すぐにその事実を就寝中の皆に知らせたいくらいだった。それでも、自称熟練トレーサーの僕はそんなことには騙されないのだった。やはり、踏み跡の深さにばらつきがあり、おそらくより鮮明に踏み跡が残っているものこそ現在地に近いはずなのだ(ッてそんなこと誰でもわかるわいっ)。おおよそ1時間は足跡を追ってきただろうか。少し、疲れを覚えたその瞬間、LEDの照らした前方で2つの小さい点が反射した!
確信はないが小動物が走り去っていく。おそらくはウサギさん?
追うか?
いや、追わなかった。スノーシューは歩行には適しているが、走行を獲得出来るほどの余裕は与えてくれない。それに追う相手はフィンランドに生息している興味ある動物『リンクス』でもなかった。
それでも、それなりの充実感を後にしてBC・ログハウスへ戻る事にした。途中、休憩ベンチらしきものを発見した。
ベンチの上には買うと高価なトナカイの毛皮が惜しげもなく、然も無造作に敷かれ、その前には薪スペースがあった。後になって知るが、ラップランド地方にはこういった休憩ベンチが結構あるようだ。アウトドアが生活に直結しているサーメの人々らしい休憩スタイルだと思う。また、高価なトナカイの毛皮が無人のベンチの上に置き去りにされても何の問題もないというところがフィンランドの国民性をあらわしているように思う。ちなみ僕が現在住んでいるベルギーなどではそういうものをベンチにおいて置いたら、ものの5分くらいでなくなってしまう。
深夜の追跡調査終了!と思って、時計を見やるとまだ午後9時半だった。日暮れが3時ごろのせいか、どうも時間の感覚が狂ってしまう北極圏の夜の出来事だった。
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