2005/08/03 - 2005/08/04
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merlionさん
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旅先で、そこを訪れるたびにかならず決まった思いに心が染まる、という体験がないだろうか。
ある場所では常に驚愕に襲われ、ある場所ではいつも郷愁に駆られ、ある場所では何度も昂揚に包まれ……。
繰り返し訪れているのだから、いわゆる“デジャ・ヴ(既視感)”とは少し違う。
はじめはその土地への先入観、あるいは紹介記事やテレビの印象から来るものかと思ったのだが、最初に訪れたときに感じたものがその後も繰り返し湧き上がるので、これとは違う。
月日を経て、そこに関する情報や知識を取り入れていったとしても、この感覚は変わることなく、訪れるたびに同じように湧き出てくる、なんとも不思議な感覚……。
ノルマンディー地方、西のはずれにあるモン・サン・ミシェルを訪れるときもその思いに包まれる。
外敵を拒むために要塞化したこの島は、世間を拒むように広大な干潟の上に鎮座する。
今でこそ立派なルートが確保されているが、かつて島へ通じる道は、ヨーロッパでもっとも激しいといわれる干満潮差により、瞬時にかき消され、訪れる人々を悩ませた。
この島は干潟や城壁では足らず“潮”という名のベールもまとっているのだ。
ノルマンディー地方独特のどんよりとした空の下、修道院の尖塔塔頂部に大天使ミカエル(フランス語読みでミシェル、英語読みだとマイケル)が金色に輝き、異形の島にみごとなアクセントをそえている。
曇天と変わりのない色をした砂の大地があたり一面に広がり、比較対照となる建築物を周囲に持たないモン・サン・ミシェルは、見る者の距離感を奪い、孤高であることを誇るとともに、他者を寄せ付けない印象を抱かせる。
ところが花崗岩に据え置かれたこの奇妙な小島の風景を目の当たりにすると、島の中心に吸い寄せられる気分に浸るのだ。
毎度の事なので好奇心という言葉では説明がつかず、オカルト的な奇妙な話でもない。
まさか前世が気高き修道士であるはずもないのだが、なにしろモン・サン・ミシェルを訪れると、島の中に行きたくなり、できることならこの島の中で暮らしてみたい、この地では毎回この感情が湧いてくるのである。
ことによると渡りそこねて潮に流されたおっちょこちょいが前世なのかもしれないが……。
ベネディクト派修道院の建築に始まり、ロマネスク様式の修道院を経て、ゴシック・スタイルの建物を加え、異形の島は完成をみる。
潮に悩まされながら作業を繰り返し、500年あまりの時を経て、人は住めないはずの場所に町をひとつ作ってしまう。
他の観光地とは異なり、土産物屋やレストランが浮き足立った感じがしないのは、その影響なのだろうか。
「名物のオムレツを食べてみたいんだ」
昼の混雑を避け、早めに入ったレストランで卵一個で聖書ほども膨らませるという名物料理について尋ねてみた。
「ホントにうまいものを食べたいならオムレツよりもシーフードがオススメだな」
まだ客の少ないホールにウェイターの声が響く。
「でもチップをはずんでくれれば、本当の名物を教えるけどね」
窓際の席に案内しながら、言葉が弾む。
ランチタイムの喧騒に包まれる前のレストランはウェイターもリラックス・ムード。
イスを引きながら、ウィンクしてみせた。
「ここの風景。こいつにかなう料理はないよ」
指差した窓の外には一面の干潟、その向こうには空と交わった英仏海峡が広がっていた。
「チップもチャージもいらないよ、コイツはタダさ」
そういうと、ウェイターは口笛吹きながら、キッチンに消えていった。
チップをよけいに払っても悪くないな、食べ飽きることのないこの名物料理はそう思わせるほどのゴチソウだった。
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