1975/02 - 1975/02
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片瀬貴文さん
キンシャサに到着して五日目から、毎日ホテルを朝出て、新たに構えた書斎兼私設事務所へ通うことにする。
汗まみれになり、ザイール人の臭いに取り囲まれながら、満員のガタガタエレベーターで7階まで昇ってゆくと、はるばる異国に来た実感に襲われる。
ザイール人は、いつもピリピリの香りがする。
ピリピリは唐辛子の一種だが、独特の香りが強く、ザイール人の大好物なのだ。
後日だが、彼らはピリピリを油漬けにしたり、酢で漬けたりしたものを日本にまで持参し、一流料亭のご馳走にかけて食べていた。
ちょうど日本人が、しょうゆを持ち歩く感覚である。
ザイール河の河口地域、バ・コンゴの名物料理に、「コサコサ・ア・ピリピリ」がある。
ここで取れる小エビを、ピリピリで味付けしたもので、ビールのつまみにぴったりだ。
事務所には冷房がなく、風通しを良くしようと開け放たれた室内の窓やドアには、全て鉄格子が嵌められている。
椅子に座っていると、いつの間にか監獄に閉じ込められたような、不思議な気持ちになっている。
鉄格子のかなたから、港のざわめきが聞こえてきて、何かしら胸のときめきを覚える。
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