2004/05/18 - 2004/05/30
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さすらいおじさんさん
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マドリッドは私にとって1971年8月以来2度目の訪問である。今回は見ることができなかったがこの街に来ると闘牛の感動を思い出す。
1971年8月29日、マドリッドの闘牛場は夕方5時には熱狂的なスペイン人でむせ返っていた。5時半丁度に高らかなファンファーレが響き、同時に1頭の雄牛が勢い良く飛び出す。数人の闘牛士がパーセ(赤布で突進する牛をかわす演技)を披露したあと、馬に乗ったピカドールが長槍で攻め立て、バンデリリェロが投げ槍を打ち込む。そしてすでに黒い体を赤い血で染め、いきり立つ黒牛を前に、正闘牛士マタドールが華やかに登場しドラマはクライマックスを迎える。
マタドールはカーパ(赤布)で牛を挑発しながら連続してパーセを展開する。マタドールの演技が危険度を加えるほど、観客は狂喜する。角がマタドールの腹をかすめる間一髪のきわどいパーセに、観客は一体となって「オーレ!」の声援を送り、闘牛場は興奮のるつぼと化す。時にマタドールが牛の鋭い角にかかって跳ね飛ばされると、場内は緊迫に包まれ、観客席は騒然となる。しかし、マタドールが少しでも卑怯な所作を見せると、容赦なく口笛を吹き鳴らし罵声を浴びせかけるのである。
パーセを繰り返しながら、牛に衰弱の色が見え始めると、マタドールは牛が頭を下げた一瞬のチャンスを伺う。そしてチャンスと見るや狙いを定めるように剣をかざし、一気に牛の肩口から心臓を貫く。闘牛の言葉では、このときを「真実の瞬間」と言うそうだ。牛は立ちすくみ、やがて口から血を吐きながら大岩が崩れ落ちるようにどっと倒れる。最後にプンティリェロがとどめを刺し、ドラマは幕を閉じるのである。
次の瞬間、緊張から解き放たれた観衆が、大歓声で勝利者であるマタドールを祝福する。花束を投げ入れる女性、帽子を投げ込む男性、握手を求める観衆、やはり闘牛士はスペイン国民の英雄である。恐らくこの一瞬が闘牛士の至福の時だろう。
闘牛の歴史はローマのコロセウムで行われた人間と野獣との格闘を原型とするという説や騎馬で野生の牛を槍で突く貴族の狩猟の風習が闘牛の前身であり、レコンキスタ期にキリスト教信者貴族が始めたという説などあり定かでは無い。しかし、千年以上闘牛が継続しているということは、牛の愚鈍性と凶暴性を利用して、牛の死を望み、秘かに闘牛士の不幸を期待する無責任な人間達の残忍な欲望を満たすべく存在しているのではないだろうか。元来温順な動物である牛を赤布で挑発し、なぶり殺しにする闘牛は、残酷無比な見世物であり、犠牲になる牛は哀れである。
しかし、人間の心に潜む残忍さを目の当たりにして恐ろしく思った一方、孤独でたくましい黒牛に愛着を覚えた。つまり、自分達の知恵を誇示するように剣を振りかざし、支配者面している残酷な人間たちに、ただ一頭で果敢に挑戦するたくましい黒牛の姿。それは四面楚歌の逆境にありながら、ただ一人で死闘する雄雄しい男の姿を見る思いがして、不思議な感銘を受けたのである。
やはり虚偽でなく真に生命を賭けて死闘する闘牛は、人間としてのありかたを考える意味でも一見の価値はある。
30数年ぶりのマドリッド。人口も300万を超える大都市になって雑踏は一層 都会らしくなったように思うが、スペインの国技、闘牛は健在だった。今回は闘牛場に足を運ぶ時間が無く、残念だったが、マドリッドで闘牛の感動を思い起こせたのは大きな喜びであった。(写真はマドリッドの闘牛場)=スペインの旅完=
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闘牛士達が華やかに入場する。
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マタドールはカーパ(赤布)で牛を挑発しながら連続してパーセを展開する。
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マタドールはカーパ(赤布)で牛を挑発しながら連続してパーセを展開する。
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7頭目のマタドールは観客が少し飽きてきて刺激を求めている雰囲気を感じたのか、カーパをかざさず牛の前に立つという危険な演技をし、観客からは拍手喝采だったが、牛の角にかかり、跳ね上げられてしまった。写真は倒れたマタドールに駆け寄った闘牛士達。しかしこのマタドールはこのあと立ち上がり、よろけながら戦う。彼はまた鋭い角にかけられる。だが、他の闘牛士が止めるのを聞かず、また戦い最後に剣で牛の心臓を貫いた。牛が倒れるのを見るやマタドールも倒れ、タンカで運ばれた。彼は観衆から大喝采を受け、名誉の印である牛の耳をもらった。
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マタドールは牛が頭を下げた一瞬のチャンスを伺う。そしてチャンスと見るや狙いを定めるように剣をかざし、一気に牛の肩口から心臓を貫く。闘牛の言葉では、このときを「真実の瞬間」と言うそうだ。牛は立ちすくみ、やがて口から血を吐きながら大岩が崩れ落ちるようにどっと倒れる。最後にプンティリェロがとどめを刺した場面。
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勇敢に戦った牛は場内1周して観客の拍手を受けながら場外に運び出されて、1回の競技が終了する。この日は8回の競技があった。
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マドリッドの光景。
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マドリッドの光景。
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マドリッドの光景。
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プラド美術館の入口。ビデオ持込禁止で残念ながら写真が撮れなかった。
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プラド美術館。
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マドリッドの光景。
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この旅行記へのコメント (6)
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- a_srcwさん 2005/07/08 01:37:55
- 一度はマドリードで見てみたい
- やっぱりマドリードの闘牛場は大きいですね。
スペインでは毎週、各地で行われる闘牛はテレビで中継されるのですが
さすがに首都マドリードの闘牛は質が高いらしく、放送回数も一番多い
んですよ。国王が観戦していたり、レアルマドリードのラウルも常連で
自分でもノビジェロ相手に闘牛士として出場したりしているそうです。
出来ればマドリードのサン・イシドロ祭の時期の闘牛を見てみたい!
- さすらいおじさんさん からの返信 2005/07/08 09:07:50
- RE: 一度はマドリードで見てみたい
- a_srcwさん マドリードをご覧いただきありがとうございます。
>やっぱりマドリードの闘牛場は大きいですね。
スペインでは毎週、各地で行われる闘牛はテレビで中継されるのですが
さすがに首都マドリードの闘牛は質が高いらしく、放送回数も一番多い
んですよ。国王が観戦していたり、レアルマドリードのラウルも常連で
自分でもノビジェロ相手に闘牛士として出場したりしているそうです。
出来ればマドリードのサン・イシドロ祭の時期の闘牛を見てみたい!
a_srcwさんはスペインにお住まいなのでしょうか、闘牛はやはりスペインの国技ですね。1971年の闘牛場では、一瞬に剣で倒したときは拍手喝采しますが、剣が中途半端に半分位しか差し込めず、一瞬で倒せなかったときなど、すごい批判を闘牛士に浴びせるのですね。スペインの観客の厳しさも印象に残っています。
- a_srcwさん からの返信 2005/07/10 00:20:42
- スペイン住みたいですよー
- > a_srcwさんはスペインにお住まいなのでしょうか、
2年程前に1年間滞在していただけなんです…
そのため私の知識は殆どすべて友達から聞いたこと。1年位では
スペイン語と同様、大した知識も身につきません(泣)。
闘牛の先生は、スペイン人の友人の一人で、毎年、闘牛シーズンに
闘牛場のバルでアルバイトをしている人なんです。
しばらくの間は居候させてもらったので、その間にTVで闘牛を見
ながら解説してもらっておりました
ムルシアの闘牛はスペインでも珍しく、観客が食べ物持参のアット
ホームな雰囲気なんです。通の闘牛好きは眉をひそめる人もいるそ
うですが、合間にはボガディージョや生ハムを隣近所の席の人達と
交換して和気藹々と観戦しています。スペイン全国的にひまわりの
種と皮袋に入れたワインは定番なようですが、ムルシアではなんと
生ハム1本持ち込む人まで見かけましたよ。
闘牛場が小さくて見やすいし、のほほんとしているし、もし機会が
あればお試しください。
- さすらいおじさんさん からの返信 2005/07/10 01:05:12
- RE: スペイン住みたいですよー
- a_srcwさん スペインに1年おられたのですか。私もスペインは住んでみたい国です。
>ムルシアの闘牛はスペインでも珍しく、観客が食べ物持参のアット
ホームな雰囲気なんです。通の闘牛好きは眉をひそめる人もいるそ
うですが、合間にはボガディージョや生ハムを隣近所の席の人達と
交換して和気藹々と観戦しています。スペイン全国的にひまわりの
種と皮袋に入れたワインは定番なようですが、ムルシアではなんと
生ハム1本持ち込む人まで見かけましたよ。
闘牛場が小さくて見やすいし、のほほんとしているし、もし機会が
あればお試しください。
ムルシアはいい所ですね。マドリッドではお金が無くて一番上の席で闘牛も小さくしか見えませんでしたが、機会があれば訪問したいと思います。貴重な情報をありがとうございます。
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- Erykahさん 2005/07/03 19:07:37
- 見たことがない闘牛
- アタシは去年の旅行中、リサーチ不足でチャンスを逃してしまい、見れずじまいで帰ってきてしまったのが、この闘牛でした。今でも、すごーく心残りです。でも上記のレポを見て、アタシも一緒に観戦した気分になれました(^^)闘牛についても、フラメンコ同様、アンダルシア発祥ですが、近年はマドリードやバルセロナでは、さすらいおじさんも懸念されていたように「残酷だ」ということで、動物愛護関係の反対運動が多発し、アンダルシアほど熱烈に支持されているものではなくなってきているらしいですね。それでもやはり、アタシは伝統文化として継承していってほしいと思います。次回は是非、見てきたいと思います。
- さすらいおじさんさん からの返信 2005/07/03 21:05:38
- RE: 見たことがない闘牛
- Erykahさん
>「残酷だ」ということで、動物愛護関係の反対運動が多発し、アンダルシアほど熱烈に支持されているものではなくなってきているらしいですね。それでもやはり、アタシは伝統文化として継承していってほしいと思います。次回は是非、見てきたいと思います。
闘牛は残酷な競技ですが、人間も死に直面した真剣勝負で、私もスペインの伝統文化だと思います。闘牛士の生き様からもジプシーのフラメンコダンサーと同様、強い感銘を受けました。ぜひ一度ご覧ください。
Erykahさん スペイン旅行記を全部見ていただき、具体的なコメントをたくさんいただき、ありがとうございます。とても励みになりました。
この素晴らしいスペイン、私も知らないところがたくさんありますが、Erykahさんもアンダルシアなど、ご自分の目と心で感じられる
ことをお勧めします。本当にありがとうございます。
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