583系の最後の活躍の場となった奥羽本線を通して、「zero tolerance 」 化する日本を考えてみる
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- 旅行時期:2017/04(約9年前)
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by OE-343さん(非公開)
福島市 クチコミ:8件
Zero tolerance とは、レーガン政権時代の頃から麻薬対策を目指し始まり90年代に定着した、「法律を厳しく適用する」、と言う運動から始まった言葉です。それは、現在教育界を中心にアメリカのあらゆるところで、非常に些細な問題をことさら強調し、社会的に排除したい対象を攻撃することを指すようになり、一見正しいことをしているようで、実際には不寛容な面が増す社会について語る言葉となりました。
では、なぜ、これが奥羽本線と関係するのでしょうか? それは奥羽本線の現在の輸送体系が、人々の多様な移動の価値を認めず、1部の人々が考える「正しい移動」のみを対象とする、現在の日本の交通政策の典型的な表れであるからです。そして、よく多様化する日本などと言うものの、実際には選択肢は確かにいくつか増えるものの、それぞれの選択肢の中での「誤差の許容範囲」が非常に落ちている、アメリカのような"Zero tolerance"な社会になっていく日本社会全体の縮図でもあります。
ご存知のように、奥羽本線はかつては非常に多面的な面を持った路線でした。青森を拠点に私が考えるのでそちらから説明しますが、秋田まで向かい、その後山形に抜ける方面と羽越本線経由で新潟大阪に行くものが分かれます。そして、それぞれにあけぼの、つばさ、いなほ 津軽 などといった、「名列車」と呼ばれるものが走っていました。これらの列車は、上野行であるのは確かですが、別に青森発上野行きの列車ではなく、沿線のある程度の規模の都市に停車しながら、弘前から秋田までの人も、大館から上野までの人も、さまざまに利用する列車だったのです。青森県津軽地域は秋田とのつながりも深く区間利用者も多かったのです。 1つの列車でも、人によって様々な利用の仕方がありました。そして、それが当然だったのです。
では、現在はどうでしょうか。新幹線ができたので、とりあえず近場の新幹線の駅まで向かって、そこからは新幹線と言う流れになるのは当然です。しかし、最近のJRのダイヤは、そういった流れにのみ対応するものになりました。つまり、新幹線で、東京あるいは仙台から、その他の小さな都市に、放射状に移動をすると言う前提しかないのです。それ以外は、短距離の「高校生や通勤客のための列車」として運転され、「ターゲットとなる客層」が厳密に定められ、それにそぐわない人の利用には対応しないと言う感覚になります。
3月に行われたダイヤ改正では、秋田青森間の特急が削減されました。確かに、乗車率20から40%では利用は低いです。しかしながら、特急が検品されると、例えば青森の人は、今まで秋田にいろいろ行っていたとしても、「3時間もロングシートに乗るのは面倒だ」「だからといって、3時間半車を運転するのも大変だ」そして「だったら、いっそのこと秋田に行くのをやめようか」という思考するようになります。代わりに、仙台に行くように都合を作ろうかなどと考えるようになるわけです。それでは、長年続いた、隣同士の県の間の人のつながりが減っていくわけです。自分の住んでいる地域の隣の地域を知らなければ、物事をしっかり考えることができません。「どういった農業の特徴が我々にはあり、隣の間にはあるのだろうか」、とか、「広域的な観光ルートを考えるにはどのように隣と連携するべきか」といった、非常に重要なことも、考える機会が薄れていくわけです。もちろん、青森 秋田には秋田新庄間と違って特急がまだ残っていますから、それに合わせれば良いのですが、はっきり言って少なすぎます。かつてのこまくさのように、青森秋田の特急もそのうちなくなってしまうのではと心配になります。新幹線を円の中心とし、その半径を二辺とする三角形を考えた場合の円周上に位置する点である青森と秋田のつながりが妨害されるわけです。これは、無能な行政とその犬であるJRが決める「正しい人々の移動」以外の価値観を認めないと言う、人の移動に関する一切の不寛容の表れであると言うこともできます。これは、将来の青森県秋田県にとって、非常に大きな懸念であります。「新幹線と言う便利なものができた、こんな良いものは他に無い、それを使うべきだ」「金にならないものはやめても良いのではないか」と言う、間違ってはいないことによって生じる、移動の不寛容が増している、まさにZero tolerance な世界です。
人が乗らない特急を維持する金はない、とJRは言うのでしょうが、私はしっかりと現実的な解決策を提案します。秋田地区の長距離の普通列車に、グリーン車を連結するのです。新庄秋田間や青森秋田、弘前秋田といった、特急が無いあるいは削減された区間の普通、快速にグリーン車、あるいは同様の設備で指定席を設定するのです。4両の特急の定員は240人弱、その二割は48人。運転台設置で80人位の定員となる二階建てグリーン車には悪くない話でしょう。
特急列車を減らした、「不寛容な」ダイヤ改正の1ヵ月後、確かにワンパターン、中途半端かもしれないけれど、あらゆる用途に使えた、まさに1つの種類での多様性の象徴である583系は引退しました。
- 施設の満足度
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1.0
クチコミ投稿日:2017/04/10
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