2013/09/26 - 2013/09/26
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玄白さん
秋の彼岸の頃になると曼珠沙華(彼岸花)が目につくようになります。日高市の巾着田は、500万本の曼珠沙華が咲く日本最大の曼珠沙華の群生地で、開花期間中は30万人の人出があるそうです。もともと、人ごみの中に入るのは好きではないのですが、それだけの人出があるということは、やはり一見の価値有りと思うので、混雑を避けて平日の朝早く出かけてきました。
さて、タイトルに”魔性の花”という言葉を使いましたが、そのわけを書いておきます。
玄白がまだ幼かった頃、実家がある村の田んぼの隅に直径3〜4m、高さ2mほどの古墳のような塚があり、正式には藪塚、集落の人たちは「やんぶーさん」と呼んで稲刈りが終わると毎年法要のようなことをやっていました。薮塚は一面、曼珠沙華に覆われ、彼岸の頃は稲穂の黄色の中で遠目には紅蓮の炎があがっているようで、とても印象的でした。集落の墓地から離れていて墓石ひとつない薮塚でなぜ法要をやるのか不思議に思い、ある日祖父に尋ねたことがありました。
祖父いわく「大昔、一人の落ち武者がこの部落にやってきた。空腹のため、ある農家で食べ物を盗んで食べているところを家の主に見つかってしまい、許しを請うたが家中の者たちから袋叩きにあって殺されてしまった。すると数日して、その一家全員は奇病で死んでしまい、集落にも大雨や落雷の被害が出た。村人達は、落ち武者の祟りだと恐れ、塚を作って遺体を丁寧に埋葬した。その頃は土葬だったので、根や茎に毒がある曼珠沙華を植えて野犬などに荒らされないようにして、毎年供養している」というような話でした。なにやら、横溝正史の世界のようなオドロオドロしい話で、玄白の子供心に強烈なインパクトを与えたのでした。
曼珠沙華は畦道だけでなく寺や墓地でもよく見かける花であり、マンジュシャゲという奇妙な名前の他に「死人花」、「葬式花」、「火事花」などという縁起の良くない別名があることや「雄しべと雌しべがあるのに実を結ぶことはなく球根だけで増える」だとか、「冬から春には葉が茂るのに花が咲くときには葉を落としてしまう」など、普通の花とは違う奇妙な性質があるということを知るにつけ、藪塚伝説と併せて、どこか異界に結びつく魔性の花というイメージを抱き続け、長い間、無邪気にきれいだ、美しいと愛でることが出来ない花でした。
そんな玄白も、すでに人生の折り返し点を過ぎて、子供の頃抱いていた曼珠沙華への奇妙な恐れの気持ちが懐かしくもあり、見事といわれる巾着田の大群生を見てみたいという気持ちになった次第です。
くだんの紅蓮の炎のように見えた藪塚は、中学校入学の頃には農地改良で消滅し、今では手放しで美しい風景だったと思えるようになっています。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車
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イチオシ
一歩、園内の曼珠沙華が咲いているところに足を踏み入れると、はるか彼方まで曼珠沙華の花で埋め尽くされ、月並みな表現ですが、まさに赤いカーペットを敷き詰めたようです。
圧巻です!!
いきなり、ガツンとやられた感じです。 -
入場料は、今年から100円値上げされて300円となっています。昨年までは100万本の曼珠沙華と言っていたようです。年を追うごとに増えて、実際に単位面積の株数を数えたところ、500万本以上という結果になったことを受けて値上げしたと受付の人が言っていました。
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場所は埼玉県日高市高麗本郷の高麗川が大きく蛇行して、上空から見ると巾着のような形を作っている場所にあります。
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日高市の巾着田公式HPの説明によると、かつては巾着の中はすべて水田だったそうです。
今では、川沿いの巾着の横から底の林の中に曼珠沙華が大群落を作り、真ん中は、観光用にコスモスを植えたり、民有地では蕎麦の栽培や馬牧場になっています。 -
巾着田が曼珠沙華で有名になった経緯は以下のようなことだそうです。
「昭和40年代後半に、巾着田の休耕田の一部を当時の日高町が取得し、平成元年頃に草薮であった河川敷地の草刈りをすると、そこに曼珠沙華の群生があった。今では管理され、早咲き、中間地点、遅咲きと分かれて長く鑑賞できるように咲き誇るが、関係者が塊根を掘り起こし、これをほぐして10球から15球を1株として移植することにより群生地の拡大をはかり、ついに500万本以上のヒガンバナが咲き誇るようになった。もともとは、高麗川上流から流れ着いた曼珠沙華の球根が、この地に根付いて自生していたようだ。」 -
曼珠沙華は、オオイヌノフグリ、オオバコ、ハコベ、ヨモギなどとともに人里植物といわれるカテゴリーに属する植物です。
人里植物というのは、田畑の畦道、路傍、寺の境内など人間の生活圏内に自生する植物のことで、純粋な山野草とは違うものです。
そういえば、人気(ひとけ)がない山に自生しているのを見たことはありません。 -
それだけ身近な花であって、咲けば必ず目に留まる存在感が大きい花なのですが、万葉の時代から江戸時代まで和歌、俳句などの文学に登場することは、ほとんどないのだそうです。やはり、縁起がよくない花という、一種タブー視されていたからなのでしょうか。
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明治以降になると、曼珠沙華は文学、芸術分野でも取り上げられるようになったそうです。
自分の知識・記憶では、山口百恵が「曼珠沙華」という歌を1970年代に歌っていましたね。もっとも歌詞はマンジュシャゲではなく、マンジューシャカと歌っていましたが・・・ -
立派な雄しべ、雌しべがついているのに、受粉して実を結ばないというのは不思議ですね。
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イチオシ
ところどころに、苔むした木の幹に根を下ろした曼珠沙華があります。これはさすがに自生したものではなく、人の手で幹に球根を植えつけたものなのでしょう。
しかし、昔忌まわしいイメージが付きまとっていた花ですから、木の命を吸って生きる魔性の花という想像(妄想)ができなくもない -
これも同様
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ぶどうの房のような形で、これから咲こうとしている、この花は何だろう?
追記
これは、ヨウシュヤマゴボウという植物だそうです。4トラベラーのまみさんに教えていただきました。
ウィキペディアで調べて見ると、この植物も毒があるそうです。 -
数は少ないですが、白い曼珠沙華も咲いています。
ネットで、ちょっと調べてみたら、赤い曼珠沙華と黄色の曼珠沙華(厳密にはショウキズイセン(鍾馗水仙)というものらしい)の自然交配種だそうです。
でも、曼珠沙華は受粉しても実がならないのに別種だと結実するんですかね?
赤と黄色が混血してオレンジ色にならずに白くなるというのも面白い!
植物の世界は、不思議な世界です。 -
赤い曼珠沙華と違って白い曼珠沙華は清楚な感じがして、別種の花という感覚です。
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高麗川にかかる歩行専用のドレミファ橋という橋で対岸に渡り、高麗川の流れと曼珠沙華の群落を撮影。
この橋、先日の台風18号で流されてしまったということでしたが、すでに復旧していました。 -
イチオシ
林の中に群落を作っているので、曼珠沙華とコケに覆われた木の幹の組み合わせが、とてもフォトジェニックです。
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アイアイ橋という、歩行者専用の木製の高架橋も高麗川にかかっています。
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イチオシ
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アイアイ橋から、曼珠沙華の群落を見下ろす
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アイアイ橋上から曼珠沙華の群落と高麗川の河原を眺める
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イチオシ
アイアイ橋にあがる坂道の土手には、紅白の曼珠沙華が入り混じって咲いています。
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アイアイ橋付近は遅咲きゾーンなので、まだ蕾状態の曼珠沙華も少なからず、あります。
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イチオシ
クロアゲハが蜜を吸っています。
蜜を出して昆虫をよびよせるのだから、やっぱり受粉はするんですよね〜 -
赤一色の世界に浸っていると。木肌についたコケの緑が新鮮です。
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コスモス畑の土手にも曼珠沙華が咲いています。
曼珠沙華が土手や畦道に多いのは、茎、根の毒で野鼠などの野生動物が畦を壊すのを防ぐために植えたという説がありますが、本当のところはどうなのでしょうか?
植物学者でも民俗学者でもない玄白ですが、毒による野生動物避けというよりも、根や鱗茎が複雑に絡みながら大きく育つので、畦が崩れるのを防ぐためだったのではないかとも思えます。 -
先日の台風18号で、コスモスは大ダメージを受けていました。
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それでも、コスモスたちは健気に咲いています。
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アマクリナムというピンクのゆりのような花が咲いている一角があります。この花は、本アマリリスとクリナムという花の交配種なのだそうです。
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ちょっと、最盛期は過ぎてしまっている様子でしたが、・・
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なかなか、上品でやさしげな感じの花です。
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10数年前に観光用にわざわざ、作られた水車小屋。
実際に粉を挽くなど役立っていたものが残っているとか、今でも現役で動いているとなると価値は高いが、単なる観光用というのではね〜!
玄白のセンスでは、こういうものは不要だと思うのですがね。
(だったら、写真なんか撮るなと怒られそうですが・・・) -
水車小屋の前は、花の広場と名付けられていて、小規模ながらきれいな花が植えられていました。
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ここのキバナコスモスは台風18号のダメージは少なかったようです。
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民有地では、蕎麦が植えられています。ちょうど白い花をつけていました。
ここは、観光客は勝手に入ってはいけないのですが、仕事をしていた農家のご夫婦に許可をもらって、撮影させてもらいました。 -
蕎麦の花の白と曼珠沙華の赤のコントラストが鮮やか
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蕎麦の花のアップ。
まとまると地味な感じですが、アップすると、清楚でかわいらしい花です。 -
蕎麦畑の一角では、花ナスを栽培しています。農家のご夫婦が、畑で花ナスを直売していました。
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蕎麦畑の隣は、馬牧場です。
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ポニーでしょうか。ずんぐりしていますが、おとなしそうでかわいらしい。
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曼珠沙華の有料エリア出入り口の近くでは、曼珠沙華祭りということで、露店が出ています。
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イベントでは、加納ひろしという演歌歌手が「巾着田の詩」という演歌を歌っていました。聞いたことのない歌手です。
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地元の造り酒屋も出店していました。試飲して、うまい地酒を選んで土産に買いたかったのですが、車ではそういうわけにもいかず・・・
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甘酒アイスなるものを買って一服です。(アルコールフリーです)
たしかに甘酒の味がするのですが、おいしいかと言われれば ウ〜ン・・・
味は別として、新しいアイデアで、自分の店や町を活性化しようという、その心意気や良し! です。 -
しばし、休憩していると、日が照ってきました。日に当たった曼珠沙華を見ようと、もう一度群落の方に向かいます。
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青空を背景に下から見上げるアングルで撮影
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茎の黄緑色も鮮やかに映えます。
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高麗川の清流と曼珠沙華
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しかし青空を背景に使うのでなければ、花の写真はやっぱり曇りの柔らかな光の方がいいですね。
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3時間半ほど、巾着田の中をうろうろして写真を撮りまくってきました。
とにかく、曼珠沙華の圧倒的なボリウムがものすごいです。魔性の花も、これだけまとまると、魔性が影を潜め、力強さだけが前面に出てくるような印象でした。
この後、近くの高麗神社、聖天院、吉見百穴など、古墳時代の古代史ロマンが感じられるところを見てまわりましたが、それは別途の旅行記にて。
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この旅行記へのコメント (4)
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- こあひるさん 2013/10/01 12:46:25
- え〜〜500万本??
- 玄白さん、こんにちは〜!
あ〜〜〜やっぱり巾着田すごい〜〜!すごい!!
確かに曼珠沙華・・・子供の頃には、何かを聞いたわけでもないのに(お寺とかに咲いているのを見たのかな・・・)、縁起の悪そうな雰囲気のお花ってイメージを抱いていたような気がします。
白い曼珠沙華もきれいですが、やっぱり禍々しいほどの深紅でないと・・・って気がします。
魔性の花・・・のあとのコスモスや、白い蕎麦の小花がとっても清楚に見えますね。
こあひる
- 玄白さん からの返信 2013/10/01 15:23:56
- RE: え〜〜500万本??
- こあひるさん、こんにちは
羽黒山の曼珠沙華もきれいですよ。まあ、数の多さでは、巾着田が圧勝ですけどね(^ ^)
巾着田は初めてでしたが、その規模の大きさには、たまげました。
ひたち海浜公園には、まだ行ったことがないのですが、こあひるさんの太鼓判が押されているようなので、こちらも行ってみないといけませんね。
玄白
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- まみさん 2013/10/01 12:27:29
- 興味深かったです
- 表紙の薮塚の伝説や、受付の人による300円に値上げした理由、人里植物というカテゴリー、万葉時代から江戸時代までまったく歌に詠まれていないことなど、興味深かったです。
こけむした木の幹に生えていた彼岸花は、私が出かけたときは、もうすっかりちりちりでした@
ぶどうの房のようなものは、ヨウシュヤマゴボウみたいですね。
あいあい橋の撮り方がステキです。
- 玄白さん からの返信 2013/10/01 15:11:53
- RE: 興味深かったです
- まみさん、はじめまして
玄白の巾着田旅行記訪問、投票ありがとうございました。
ぶどうの房みたいな花は、ヨウシュヤマゴボウっていうんですね。教えていただいて、ありがとうございました。旅行記に追記しておきました。
まみさんの旅行記リストを拝見すると、巾着田には8回も行かれているんですね。(゚Д゚) これだけの大群落ですから、何回行っても見飽きることはありませんね。
玄白
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