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プチ・トラン・ジョーヌ、この鉄道は一般鉄道としてはヨーロッパで一番高いところ(標高1600m近く)を走り、また、ピレネーの山懐を走る風光明媚な路線としてフランスでは良く知られています。この路線は国鉄線ではありますが、第3軌条、狭軌という点でシャモニーと並んでフランスでは風変わりな国鉄線といえるでしょう。また、殆どの列車に無蓋客車が連結されており、雨の少ないピレネー地方を風に吹かれながら乗車するという気持ちの良い体験も出来ます。路線長は63キロ、最高所から最低地点までの標高差は実に1200m近くに達します。開業が1903年、すでに100年の歴史を有しています。 <br /><br /> 殆ど観光路線といった感じのこの路線ですが、列車本数は極端に少なく、通しで走る列車は5本しかありません。パリ方面からはこの路線の始発駅であるラ・トゥール・デ・キャロルまで毎日夜行が出ているので、これに乗るかさもなくばラ・トゥール・デ・キャロルに泊まることになります。<br /><br /> トゥールーズからラ・トゥール・デ・キャロルに至るまでの路線は、深い谷と急勾配の連続で、非常に景色の良い路線です。ピレネーの深山分け入るような路線ですが、アンドラ公国に行くにはフランス側からはこの路線を使うことになります。<br /> プチトランジョーヌには明日乗る予定。今日は始発駅であるラ・トゥール・デ・キャロルに泊まります。この村は、スペインとの国境駅でありながら、ホテルは村内にわずか三軒というとても小さな村です。お陰で、事前の宿探しには苦労しました。いきなり行ってホテルが無かった、では洒落にならないのでページジョーヌ(フランス版イエローページ)のHPと首っ引き。どうやら駅にホテルが隣接しているようなので、とりあえずはそこに電話を入れて宿を確保しました。<br /><br /> 駅に着いてみて分かったのはそのホテルは駅舎そのもの。これは便利です。フロントでつたないフランス語で予約した旨伝えると、駅舎2階の部屋に通されました。星なしホテルですが、部屋はかなりの広さのツインで、ちゃんと室内にトイレとシャワーも付いています。タオルだけなかったのが星なしたる所以か。<br /><br /> 食事付きのホテルでしたが、夕食も朝食も駅のレストランで摂るようになっています。ま、食事内容は駅のレストランそのままでしたが。意外なことに、宿代の精算は夕食の精算の時でした。私がいつも使っているカルトブルー(フランスのデビットカードのこと)を出すと、給仕のおねぇさん、私に向かってあんたフランス人か、って問うのです。つたないフランス語を喋っているんだから、すぐに分かりそうなものですが。こちらも面白がって、そうだ、と答えたら、そのおねぇさんに何の疑問もなく納得されてしまいました。フランスっていう国では、フランス語が喋れれば何でもOKなんですね。 <br /><br /> 食後は何もすることがないので(何せ、部屋にはテレビもないので)、外に散歩に出ました。今は夏ですから、すでに夜10時を廻っているというのにまだ空には明るさが残っています。ピレネーのひなびた山村ですから、こんな時間に村の中を歩き回っているのは私くらいのものですけど。<br /><br /> さて、翌日。今日もいい天気です。宿の窓からはスペイン側の牧場から牛の鳴き声とカウベルの音が聞こえてきます。「Le Petit Train Jaune」はその名前の如く、黄色に塗られた全長12メートル程度の小さな電車です。が、やはりというか、最近のヨーロッパの悪い傾向なのですが、この列車のホーム側の車体側面は無惨な落書きがされています。窓ガラスまで塗り込められているので、こちら側の眺望は無理のようです。<br /><br /> パリからの夜行が駅に着いたところで、大量のお客さんがはき出されてきます。が、殆どのお客さんは国境のゲートを通って、スペイン側のホームの方に移動していきます。プチトランジョーヌの始発列車にはそれほど乗り込まなかったようです。私としては、始発は列車接続がいいので混むはずだから、2番目の列車に乗ろうとしていたので、これにはちょっと拍子抜け。 <br /><br /> スペインはフランスとは線路の幅が違うので、一般には相互乗り入れが出来ません。そんなわけで、ここ、ラ・トゥール・デ・キャロルでは、列車を乗り換えなければならないのです。ここでは勿論両国の線路は途切れています(余談ながら、バルセロナオリンピックの時には、この線路が繋げられて、トゥールーズ-バルセロナ間にタルゴが走っています)。<br /><br /> 村内をぶらついて時間を潰した後、駅に戻ってきて、プチトランジョーヌに乗り込みます。私は有蓋客車に乗ったのですが、結局は殆ど席にも着かず、ずっとデッキに立ち、風にあおられていました。始発駅から乗った客はわずかに数人、それも皆スペイン人のようです。実に6両編成という長編成なのですが。雲一つない快晴なので、お客は皆バスタブと呼ばれる無蓋客車の方に乗ったようです。 <br /> 列車は灌木と牧草地ばかりの大地をくねくねと走っていきます。そして、徐々に高度を上げていきます。途中のFont-Romeu-Odeillo-Via駅で大量のお客さんが乗り込んできました。これで列車はほぼ満員。どうやらこの路線の最大のお客はバスツアーの観光客のようです。この駅の先がこの鉄道の最高地点であり、中間地点でもあるペルシェ峠です。この鉄道、いや、フランス国鉄の最高所のある駅はこの峠の手前にあるBolquere駅で、標高1593メートルになります。ここを過ぎると、勢いよく山を下ることになります。<br /><br /> この峠まではのどかなピレネーの高原地帯を走ってきましたが、ここから先は、トンネルと橋の連続する谷間にだんだん入り込んでいきます。この先に、二つの有名な橋があります。一つはGisclard橋、もう一つはSejourne石橋です。Sejourne石橋はゴシック様式の全長230mの2重アーチ石橋、Gisclard橋は鉄道橋では極めて珍しい全長156mの斜張橋です(橋の名は、設計者アルベール・ジスカールに因む)。特に、Gisclard橋を渡るときには乗客は総立ちになっていました。<br /><br /> 終着駅のVillefrance Vernet-Fuilla駅は、まるで日本の信越線横川駅のような雰囲気でした。両側を山に挟まれて、しかもその山は奇岩から出来ていますからね。この駅からはPerpignan方面への列車が都合良く接続しているのですが、乗り換え客は誰一人おらず(私だけ)、殆どがお迎えのツアーバスに乗り込んだようでした。

プチトランジョーヌ(Le Petit Train Jaune)に乗る

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2001/06/23 - 2001/06/24

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覇王樹

覇王樹さん

プチ・トラン・ジョーヌ、この鉄道は一般鉄道としてはヨーロッパで一番高いところ(標高1600m近く)を走り、また、ピレネーの山懐を走る風光明媚な路線としてフランスでは良く知られています。この路線は国鉄線ではありますが、第3軌条、狭軌という点でシャモニーと並んでフランスでは風変わりな国鉄線といえるでしょう。また、殆どの列車に無蓋客車が連結されており、雨の少ないピレネー地方を風に吹かれながら乗車するという気持ちの良い体験も出来ます。路線長は63キロ、最高所から最低地点までの標高差は実に1200m近くに達します。開業が1903年、すでに100年の歴史を有しています。

 殆ど観光路線といった感じのこの路線ですが、列車本数は極端に少なく、通しで走る列車は5本しかありません。パリ方面からはこの路線の始発駅であるラ・トゥール・デ・キャロルまで毎日夜行が出ているので、これに乗るかさもなくばラ・トゥール・デ・キャロルに泊まることになります。

 トゥールーズからラ・トゥール・デ・キャロルに至るまでの路線は、深い谷と急勾配の連続で、非常に景色の良い路線です。ピレネーの深山分け入るような路線ですが、アンドラ公国に行くにはフランス側からはこの路線を使うことになります。
 プチトランジョーヌには明日乗る予定。今日は始発駅であるラ・トゥール・デ・キャロルに泊まります。この村は、スペインとの国境駅でありながら、ホテルは村内にわずか三軒というとても小さな村です。お陰で、事前の宿探しには苦労しました。いきなり行ってホテルが無かった、では洒落にならないのでページジョーヌ(フランス版イエローページ)のHPと首っ引き。どうやら駅にホテルが隣接しているようなので、とりあえずはそこに電話を入れて宿を確保しました。

 駅に着いてみて分かったのはそのホテルは駅舎そのもの。これは便利です。フロントでつたないフランス語で予約した旨伝えると、駅舎2階の部屋に通されました。星なしホテルですが、部屋はかなりの広さのツインで、ちゃんと室内にトイレとシャワーも付いています。タオルだけなかったのが星なしたる所以か。

 食事付きのホテルでしたが、夕食も朝食も駅のレストランで摂るようになっています。ま、食事内容は駅のレストランそのままでしたが。意外なことに、宿代の精算は夕食の精算の時でした。私がいつも使っているカルトブルー(フランスのデビットカードのこと)を出すと、給仕のおねぇさん、私に向かってあんたフランス人か、って問うのです。つたないフランス語を喋っているんだから、すぐに分かりそうなものですが。こちらも面白がって、そうだ、と答えたら、そのおねぇさんに何の疑問もなく納得されてしまいました。フランスっていう国では、フランス語が喋れれば何でもOKなんですね。

 食後は何もすることがないので(何せ、部屋にはテレビもないので)、外に散歩に出ました。今は夏ですから、すでに夜10時を廻っているというのにまだ空には明るさが残っています。ピレネーのひなびた山村ですから、こんな時間に村の中を歩き回っているのは私くらいのものですけど。

 さて、翌日。今日もいい天気です。宿の窓からはスペイン側の牧場から牛の鳴き声とカウベルの音が聞こえてきます。「Le Petit Train Jaune」はその名前の如く、黄色に塗られた全長12メートル程度の小さな電車です。が、やはりというか、最近のヨーロッパの悪い傾向なのですが、この列車のホーム側の車体側面は無惨な落書きがされています。窓ガラスまで塗り込められているので、こちら側の眺望は無理のようです。

 パリからの夜行が駅に着いたところで、大量のお客さんがはき出されてきます。が、殆どのお客さんは国境のゲートを通って、スペイン側のホームの方に移動していきます。プチトランジョーヌの始発列車にはそれほど乗り込まなかったようです。私としては、始発は列車接続がいいので混むはずだから、2番目の列車に乗ろうとしていたので、これにはちょっと拍子抜け。 

 スペインはフランスとは線路の幅が違うので、一般には相互乗り入れが出来ません。そんなわけで、ここ、ラ・トゥール・デ・キャロルでは、列車を乗り換えなければならないのです。ここでは勿論両国の線路は途切れています(余談ながら、バルセロナオリンピックの時には、この線路が繋げられて、トゥールーズ-バルセロナ間にタルゴが走っています)。

 村内をぶらついて時間を潰した後、駅に戻ってきて、プチトランジョーヌに乗り込みます。私は有蓋客車に乗ったのですが、結局は殆ど席にも着かず、ずっとデッキに立ち、風にあおられていました。始発駅から乗った客はわずかに数人、それも皆スペイン人のようです。実に6両編成という長編成なのですが。雲一つない快晴なので、お客は皆バスタブと呼ばれる無蓋客車の方に乗ったようです。
 列車は灌木と牧草地ばかりの大地をくねくねと走っていきます。そして、徐々に高度を上げていきます。途中のFont-Romeu-Odeillo-Via駅で大量のお客さんが乗り込んできました。これで列車はほぼ満員。どうやらこの路線の最大のお客はバスツアーの観光客のようです。この駅の先がこの鉄道の最高地点であり、中間地点でもあるペルシェ峠です。この鉄道、いや、フランス国鉄の最高所のある駅はこの峠の手前にあるBolquere駅で、標高1593メートルになります。ここを過ぎると、勢いよく山を下ることになります。

 この峠まではのどかなピレネーの高原地帯を走ってきましたが、ここから先は、トンネルと橋の連続する谷間にだんだん入り込んでいきます。この先に、二つの有名な橋があります。一つはGisclard橋、もう一つはSejourne石橋です。Sejourne石橋はゴシック様式の全長230mの2重アーチ石橋、Gisclard橋は鉄道橋では極めて珍しい全長156mの斜張橋です(橋の名は、設計者アルベール・ジスカールに因む)。特に、Gisclard橋を渡るときには乗客は総立ちになっていました。

 終着駅のVillefrance Vernet-Fuilla駅は、まるで日本の信越線横川駅のような雰囲気でした。両側を山に挟まれて、しかもその山は奇岩から出来ていますからね。この駅からはPerpignan方面への列車が都合良く接続しているのですが、乗り換え客は誰一人おらず(私だけ)、殆どがお迎えのツアーバスに乗り込んだようでした。

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  • とっても小さいプチトランジョーヌ。全長12mしかありません。

    とっても小さいプチトランジョーヌ。全長12mしかありません。

  • ピレネーを駆け上がる。

    ピレネーを駆け上がる。

  • 夜のラ・トゥール・デ・キャロル駅にて。空は明るいが、すでに10時過ぎ。

    夜のラ・トゥール・デ・キャロル駅にて。空は明るいが、すでに10時過ぎ。

  • セルダーニュ線のハイライト、ジスカール橋。

    セルダーニュ線のハイライト、ジスカール橋。

  • ここら辺はすでにこの路線の最高標高近く。

    ここら辺はすでにこの路線の最高標高近く。

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この旅行記へのコメント (5)

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  • フルリーナさん 2005/08/18 06:04:20
    おひさしぶりです。
    ピレネーのもうひとつのプチトラン、プチ・トラン・アルトゥーストに乗ってきました。断崖の道を片道50分走るスリリングなプチトランでした。
    フランスピレネーもスペインのアラゴンピレネーもとても素晴らしい自然でした。

    覇王樹

    覇王樹さん からの返信 2005/08/18 10:21:15
    RE: おひさしぶりです。
    滅茶苦茶カワイイではありませんか。さすがに私もこのような鉄道があることは知りませんでした。来月ピレネーはスペイン側から見ることになるので、今回体験乗車出来ないのが残念です。また面白いレポートがあったら宜しくお願いします。
  • フルリーナさん 2005/03/04 22:13:33
    プチトラン
    またまたこんばんは。
    この夏ピレネーに行くのですが、カニグー方面やことらのプチトランは日程の関係上あきらめたのですが、オロロンの東側のドッソー谷にあるプチトランに載るつもりです。

    黄色い電車、かわいいですね。
    シチリアの丘の上の町も素敵ですね。
    青い空と村の写真がとってもきれい!!
    私も丘の上の村が、好きでこの夏のピレネーも丘の上の村を泊まり歩きます。

    覇王樹

    覇王樹さん からの返信 2005/03/07 18:00:18
    RE: プチトラン
    ラ・トゥール・デ・キャロルで泊まるというのもいいですよ。ホテルも駅ホテル以外にも何軒かあるようです。ここは観光地でも何でもないので、ピレネーの素朴な雰囲気が楽しめます。

    私は意外と天気に恵まれているんですね。ま、晴れ男といううことで。
  • 覇王樹さん 2005/01/26 15:55:21
    RE: プチトランジョーヌ!!!
    記事を読んで頂き、誠に有り難うございました。廃止も噂されたセルダーニュ線ですが、昨年は数十年ぶりに新車も入って、今まで以上に観光路線を推し進めるみたいですね。また機会があったら訪れてみたいものです。それでは。

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