2012/02/04 - 2012/02/26
6位(同エリア142件中)
Katsyさん
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南極…極地に広がる氷の大陸。
地球上で最も過酷な厳寒の大地。
そんな南極の特殊で厳しい環境は、人類を初め多くの生物を寄せ付けなかった。
しかし、だからこそそこには人類が住むことを許されない状況の中で育まれてきた手付かずの大自然があった!
酷寒ながらも南極の環境に適応して生活している現地の生き物たちの姿は生命力の象徴ともいえる。
小生は何とかして、その野生の姿をカメラに収めたかった。
そんなわけで、長年の念願だった南極クルーズにようやく参加してみた。
今回のクルーズでは、南極半島周辺だけでなくフォークランド諸島やサウスジョージア島など、亜南極地域の島々も巡りながら徐々に秘境・南極へと近づいていく冒険心を体感できた。
まさに地球上で最後の秘境と呼ぶに相応しい南極地方を訪れて、陸と海で撮影した野生の仲間たち…
そのときの写真を、当方のホームページ「アニマル・ワールド」で公開中!
アドレス http://animalworld.starfree.jp/ からトップページを開いて、“世界の動物たち”をクリック、世界地図上の⑯または、右ウィンドウの亜南極・南極地方をクリックして亜南極・南極地方のページを開いてお楽しみください。
この旅行記では、サウスジョージア島から南極半島へ向かうクルーズ中の様子と南極半島や周辺のサウスシェットランド諸島の情景などを時系列でリポートします。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 100万円以上
- 航空会社
- デルタ航空
- 旅行の手配内容
- その他
PR
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サウスジョージア島を後にした我が船はスコシア海を航行し、次なる目的地のサウスオークニー諸島を目指した。
しかし、サウスジョージア島を出発してから低気圧の威力は一向におさまらず、悪天候は続いた。
スコシア海も波が高く大荒れの状態だった。 -
ウホ~ッ!厳し~イ!!
荒波をモロに被るアカデミック・アイオフィー号のフォワードデッキ。
こんな状況だから、船内もかなりの大揺れ!!
カメラを持つ手元も決めづらいが、船酔いで体調を崩す人たちも続出! -
低気圧の影響で、外ではときおり吹雪いていた。
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こんな大荒れの海況でも、どこの国籍か黙々と航行していた貨物船…
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そしてようやく目的地のサウスオークニー諸島へと接近した。
本来は上陸する予定だったが、やはり悪天候のため、サウスオークニーの島へは上陸できなかった。
なので、サウスオークニー諸島の写真は船からの遠景のみ。
好天ならば、ペンギンのコロニーを訪問したり、アルゼンチンの気象観測所に立ち寄ったりする予定だったのだが…
残念… -
スコシア海に漂う氷山。
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この近海の氷山は、南極半島の氷河から生じたものが多いようだ。
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すでに南極大陸に近づいているということか…
船からは、海上を飛び回るミズナギドリやクジラドリ、アホウドリ類などが撮影できた。 -
翌日、さらに南下した船はエレファント島へ到着する。
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天気がよければこの島にも上陸する予定だったが、悪天候は回復の兆しなし。
結局、ここも船から沿岸を遊覧するだけの観光となった。 -
実はこの島も探検家、アーネスト・シャクルトンゆかりの島。
彼の探検隊がサウスジョージアに辿り着く前に余儀なく一時避難をした場所。
1961年にウェッデル海の大流氷群で船が沈没してしまった一行が3隻のボートに分乗して命からがら上陸したのがこのエレファント島。
探検家のシャクルトンについては、サウスジョージア編(http://4travel.jp/traveler/katsy/album/10713955/)で記述してるので、参考まで。 -
エレファント島沿岸の近景。
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ブリッジ内から見たエレファント島。
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天候がやや落ち着いてきていたのか、船はサウスオークニーのときよりはかなり沿岸近くまで接近してくれた。
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それでもさすがにゾディアックを出すには無理な状況だったようだ。
せめてなるべく近くから、名残惜しむかのようにエレファント島を撮影しようとする乗客たち。
サウスオークニーといいエレファント島といい、上陸できれば何らかの発見があったはずだが、人命と安全第一なので仕方がない。
残念な思いは、乗客一同皆一緒であった。
ただそのかわり、そんなスコシア海でもこの日はクジラ類やそれらを狙うシャチなどの大型海獣類を船から撮影することができた。
それは目的の島々に上陸できないまでも、せめてもの慰めとなり、また、それはそれで一応納得のいく収穫でもあった。
クジラやシャチの写真は、「アニマル・ワールド」( http://animalworld.starfree.jp/ )の亜南極・南極地方編で公開中! -
翌朝、キャビンの船窓に積もった雪。
どうやら前夜はかなり吹雪いたようだ。
2月といえば南極では夏のはずだが、これだけ高緯度の地点では夏でも雪が降るようだ。
そんなわけで、我々の船もいよいよ最終目的地・南極半島にさしかかろうとしていた。
サウスオークニー諸島、エレファント島と悪天候のために上陸できなかったが、これより先は何とか天候も回復してほしいかぎりだった。 -
地図上で右上のエレファント島を通過した我がアカデミック・アイオフィー号は、同じく中央上部のサウスシェットランド諸島と中央下部の南極半島を4日間かけて周遊する予定。
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その最初の訪問地・デセプション島が見えてきた。
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デセプション島は、サウスシェットランド諸島を形成する一島。
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海況としては、ゾディアックで出動するにはギリギリ安全な状態と判断され、上陸することとなった。
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デセプション島は馬蹄形をした火山島。
上陸するには島の中央にある大きな湾に進入していかなければならない。 -
そしていよいよ、船はデセプション島の湾内へと入ってゆく。
湾の入り口は狭く、幅は230メートルほど。 -
実に4日ぶりの上陸。
本来なら嬉しいはずなのだが、なにしろ氷点下の寒さ!
海上は比較的穏やかながら、ビーチはやや吹雪いていて雪深かった。
風が比較的緩やかなのがまだしもの救いだ。
とりあえずは、沿岸に建つ一番大きな廃屋へと向かってみた。 -
屋内までも積もった雪がこれまでの強風の激しさを物語っている。
このデセプション島にもかつては捕鯨基地があった。
そもそも、19世紀から南極の嵐や氷山からの避難場所となっていたこの島に1906年にノルウェーとチリの捕鯨会社が基地として整備したのが始まり。
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1914年までには13の鯨油の加工工場ができたそうだ。
その後、ノルウェーの捕鯨会社は撤退し、捕鯨基地はイギリスに引き取られた。 -
そしてここにも、辺境の地で捕鯨産業に携わって果てた作業員たちの墓標があった。
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1969年の活火山噴火によってこの捕鯨基地は閉鎖され、以来廃墟となっている。
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ところで、このデセプション島の海岸には温泉が湧き、クルーズによっては水着着用で温泉浴をするツアーなどもあるようだ。
しかしこの雪と寒さじゃぁネ…
もし、この寒さの中で実際に水着で海辺の温泉に浸かっている人がいたら、たのんで写真を撮らせてもらっていただろう。
そろそろ、暖かく快適な船内が恋しくなる… -
デセプション島で撮影できた野生動物は、ジェンツーペンギンやトウゾクカモメなど。
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南極半島周辺に到着してから2日目の朝。
船の外は相変わらずの雪景色。 -
我が船は南極半島最北端の海峡・アンタークティックサウンドに差しかかっていた。
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アンタークティックサウンドはジョアンヴィル島やダンディ島、ポーレット諸島などと南極半島の間に位置する海峡。
19世紀前半にフランスの探検隊によって発見された。 -
アンタークティックサウンドに浮かぶ氷山。
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南極大陸からやってきた氷山は、サウスジョージア島近海のものとは比較にならないほどスケールが大きい!
接近して氷の断面を観察すると、その氷がかなりの年数をかけて堆積して形成されたものであることがわかる。
人類の歴史より古いものなのか(きっとそうに違いない)、とにかくいろいろと考察してしまう。 -
しばし、アンタークティックサウンドに浮かぶ氷山をご覧ください。
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船の外、氷山が漂うアンタークティックサウンドは、もちろん氷点下の寒さ。
ブリッジのフロントウィンドウのワイパーから滴る水しぶきも瞬く間に氷柱と化していた。 -
そんな酷寒の中でも、外に出てデッキで作業をしている船員がいた。
レーダーの点検作業だろうか…
仕事とはいえ、頭が下がる。
ご苦労様ですっ! -
そしてついに見えてきた、南極半島!
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天候も好転していよいよ南極大陸に上陸する予定だが、やはりこれまでとは違う期待と興奮があった。
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上陸の模様の前に、南極大陸沿岸の様子をどうぞ。
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南極大陸初上陸のポイントは、アンタークティックサウンドに面した海岸、ブラウン・ブラフ。
天気は上陸時点で快晴で海上も穏やかだったのにもかかわらず、ビーチには強風が吹いていた。 -
今回のサービスショット:その①
強風の切れ間に撮影した、海辺のジェンツーペンギン。
ジェンツーペンギンは、フォークランド諸島からサウスジョージア、南極半島とペンギン類中では最も広い範囲に生息している。
実際、今回のクルーズでは最も撮影する機会の多かった被写体だった。
また、このブラウン・ブラフでは、数は少ないが他の地域では見られなかったアデリーペンギンの写真も撮れた。 -
今回のサービスショット:その②
岩陰で強風をしのぐジェンツーペンギン。
大陸の丘から海に吹き降ろす風はカタバ風と呼ばれ、この風が激しくなるとブリザードへと変貌する。
そんな強風の中での撮影はかなり厳しく、小生もジェンツーペンギンのように岩陰で風をしのぎながらなんとか撮影を敢行した。 -
今回のサービスショット:その③
酷寒の雪景色の中に佇むナンキョクオットセイ。
ナンキョクオットセイも今回のクルーズ中、ジェンツーペンギンを除けば撮影機会が多かった動物。
厳しいカタバ風の中でも逞しく生活しているようだ。
まあ、悪天候なればこそ南極の厳しい自然の一部分を写し撮ることができたわけだが、それなりに撮影も大変だった。
晴天で明るく雪こそ降ってはいなかったが、カタバ風が吹き飛ばしてくるビーチに積もった粉雪がカメラのレンズを直撃!
ときには、撮影にならないことも…
とにかく風が吹いている間は目も開けられない状態だった。
着込めばそれなりに寒さもしのげるが、厚手の手袋をしていてはカメラの操作もおぼつかない。
そこで思い切って手袋の指の部分だけでもオープンにすると、瞬時にちぎれるような痛さがはしる!
そんなわけで、撮影のコンディションはある意味でデセプション島よりもキツかった。 -
さて、強風のブラウン・ブラフでの撮影を終えて、我々は船に戻った。
この後、船は進路を南極半島の沿岸沿いに西へととって南下してゆく。 -
ひとまずは、南極大陸から離れることになるが、アンタークティックサウンドの海もこれで見納め。
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アンタークティックサウンドでは、様々な形の氷山を見ることができた。
ここからは、氷山が織り成す南極らしいアンタークティックサウンドの情景をお楽しみください。 -
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そして翌朝、目が覚めるとキャビンの窓からは氷に覆われた南極大陸の風景が…
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南極半島の夜明け。
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幸い天候は良好。
この日は予定通り南極半島沿岸をゾディアックで徹底して遊覧したり近海の島に上陸した。 -
雪と氷の丘から朝日が顔を出す。
この日の晴天を予感させる瞬間。 -
さあ、まずは朝食前にゾディアッククルーズに参加する。
目的地のカーチス・ベイに向けて出発! -
カーチス・ベイは南極半島沿岸にある入り江。
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我々の乗ったゾディアックは、入り江に漂う流氷群の間をアザラシなどの海獣類やペンギンや海鳥などを探索しながらクルーズした。
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流氷だらけのカーティス・ベイの情景…
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朝日が氷の大地を照らす。
これほどの完璧に穏やかな晴天は、実に6日ぶり。 -
流氷のアップ。
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朝飯前に撮れたのは、流氷の間を泳いでいるアザラシ類やペンギンたちと流氷上で休んでいたアジサシなどの海鳥類。
我々のゾディアックがヒョウアザラシを見つけると、瞬く間に他のゾディアックも集まってきた。 -
クルーズの途中には、さらに南極半島の岬にも接近した。
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岩の上に堆積した氷雪が、今にも海へこぼれ落ちそう。
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まるで、巨大なアイスクリーム!?
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カーチス・ベイでのゾディアッククルーズは1時間半ほどで終了。
この後は朝食をとるため、一旦船に帰船した。 -
朝食後は午前中の予定の第2部、南極半島沿岸の島・トリニティー島に上陸。
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トリニティー島の上陸ポイントは、ミケルソン・ハーバー。
ジェンツーペンギンたちのコロニーが見られることで有名な場所。 -
丘の上からは、南極半島も間近に見える。
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ミケルソン・ハーバーの海岸の情景。
海から打ち上げられた流氷のかけらがゴロゴロしている。 -
ミケルソン・ハーバー周辺のビーチを散策していて見つけたクジラの骨の残骸。
この島に打ち上げられたクジラの死骸は、トウゾクカモメやサヤハシチドリなどの海鳥たちの貴重なご馳走。 -
ミケルソン・ハーバーの浅瀬。
それにしても、きれいで透明度の高い海である。
澄み切った水と豊富に茂った海藻。
ここがプランクトンや魚、それらを餌にするペンギンなどの海鳥や海獣類が繁栄するのに最適な環境であることがわかる。 -
ミケルソン・ハーバーの丘の上のビューポイントから南極半島(大陸)をバックに撮ったメモリアルショット。
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カメラの向きを変えて、もう一枚。
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ヤッパリ、晴天は最高だ!
しかし、南極での日中の日差しには注意が必要。
南極は地球上の他の地域に比べ、オゾン層が希薄なため紫外線も強烈だからである。 -
トリニティー島では、ジェンツーペンギンたちの様々な表情が撮れた。
ここで撮影できた野生生物は他に、ウェッデルアザラシやナンキョクオオトウゾクカモメなど。
彼らの写真も「アニマル・ワールド」( http://animalworld.starfree.jp/ )にてご覧いただけます(未掲載のものも一部あり)。 -
上陸撮影終了後、船に戻ってからのランチはこの日の晴天への感謝からか、急遽外のデッキでのバーベキューとなった。
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焼いた肉やハムソーセージに野菜、それらを挟むパンやサラダなどが振舞われた。
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なにしろ、天気がいいので外で食べるランチもひときわ美味しい!
熱々のバーベキューに甘いホットワインを味わいながら、船旅で仲良くなったクルーズメイト(他の乗客)とも動物談議がはずむ。
まさに、至福のひととき。 -
デッキでの船上バーベキューランチも宴たけなわ、どこからかリズミカルな音楽が流れてきて…
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テラスのように見晴らしのいい上階のデッキでは、フラフープアトラクションが始まった!
乗客たちを盛り上げる役は、もちろんフラフープの名手・イトオカさん。
すかさず、我こそはと“お立ち台”に上る乗客も…
まるでお祭のような盛り上がりだった。 -
さて、バーベキューランチの後は午後のゾディアッククルーズに出発!
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クルーズの目的地は、南極半島沿岸の入り江のシールバ・コブ。
早朝訪れたカーチス・ベイとは岬を挟んで西側に位置する。 -
今回も南極半島の陸地を望みながらのコース。
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行く手には、カーチス・ベイのものよりも大きく奇形な流氷が…
大自然が生み出したアートのようにも見える流氷群が織り成す南極ならではの不思議な景観。
しばし、シールバ・コブの彫刻のような流氷の写真をご覧あれ。 -
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アーティスティックな流氷に見とれていると、ついに発見!
お目当ての動物に遭遇!! -
今回のサービスショット:その④
流氷の上で休息中のヒョウアザラシ。
カーチス・ベイでは遊泳中の姿や海上に出した顔だけしか撮れなかったが、ようやくここで全身の写真が撮れた。
ヒョウアザラシは、実は今回のクルーズでぜひとも撮影したかった動物のひとつ。
というのもこのアザラシは、ほとんどが魚食性のアザラシ類の中で唯一肉食性の種類だからだ。
ヒョウアザラシの餌は主にペンギン類や他種のアザラシの子供。
つまり温血動物を狙う肉食獣として、南極の陸地の生態系の頂点に君臨する存在。
そんなわけで、この南極の“猛獣”のポートレートを撮ることは、今回のクルーズへの参加を計画したときからの夢だった。
しかし残念ながら、今回はペンギンを襲うハンティングの瞬間までは撮れなかったが…
それでもさらにこのとき、ヒョウアザラシが寝そべる同じ流氷の上に別の種類のアザラシ、カニクイアザラシも見つけた。
ヒョウアザラシもカニクイアザラシも浜辺など大陸や島の陸地より、海に漂う流氷の上で生活しているアザラシなので、海が凍りやすい南極周辺の海域でしかほとんどが撮影できない。
彼らを撮影するには、陸地に上陸するよりも流氷の漂う海をクルーズしながら見て回る方がチャンスも多い。
ただ、獰猛なヒョウアザラシはしばしばおとなしいカニクイアザラシに襲いかかることもある。
だから普通ならカニクイアザラシは、危険なヒョウアザラシを避けて別な場所へと避難するはずなのに…
そんな南極固有の2種類のアザラシを同時に同じ場所で撮影できたことは、かなり贅沢なシチュエーションといえるのではなかろうか! -
シールバ・コブでは、他にも流氷上のアザラシを狙ったシャチや、プランクトンを食べにくるミンククジラやミナミセミクジラなど中型のクジラ類を撮影できることもあるそうだが、今回のクルーズでは遭遇しなかった。
そしてクルーズの後半も、ゾディアックは南極半島の沿岸近くまでアプローチしてくれた。 -
見えてきた建物群はアルゼンチンの観測基地。
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画面中央にはアルゼンチンの国旗。
一体何人ぐらいの隊員が詰めているんだろう。
この後、さらにヒゲペンギンの営巣場所の沿岸をゾディアックで遊覧しながら海側からペンギンたちを観察してクルーズは終了した。
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夜10時過ぎ、南極大陸の夕景…
イヤ~…この日は久しぶりに充実した1日だった。
とにかく、1日が慌しくあっという間に過ぎていった。
これもすべてが天候に恵まれたおかげだったといえる。
この夜、船は南極半島から離れて翌日は再びサウスシェットランド諸島を訪問する予定。
南極の空を染める夕焼けが、明日も好天であることを約束してくれた。 -
一夜明けて、いよいよ南極半島周辺での滞在最終日。
前夜に予想していたとおりの晴天となり、我々は午前中の予定に従ってまずはサウスシェットランド諸島のリビングストン島に上陸した。 -
リビングストン島は、ヒゲペンギンの繁殖地として知られる島だが、もちろんジェンツーペンギンも多数生息していた。
つまり、ヒゲペンギンとジェンツーペンギンの混生地といえるだろう。
しかしここでは、主にヒゲペンギンを重点的に撮影した。 -
営巣場所の地面には、おびただしいまでのペンギンたちの羽毛が散らばっていた。
どうやら雛たちの羽毛が生え変わる時期だったようだ。 -
生あるところには死もまたあり。
島には所々に写真のようなペンギンの死骸も…
おそらく寿命や病気か負傷で弱って死んだものと思われる。
ペンギンの死骸は、トウゾクカモメやサヤハシチドリが始末する。
どんな場所でも野生のフィールドでは、死んだ生き物の死体も無駄にはならない。
必ず他の生き物の糧となって役に立つ仕組みができている。 -
ところでこのリビングストン島にはハナ・ポイントという名所があり、上陸ポイントからそこまでハイキングすることになった。
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ハナ・ポイントまでは、写真のような砂の傾斜に作られたトレイルを歩いていく。
途中にはペンギン以外にも、オオフルマカモメなどの海鳥も観察できた。 -
トレイルの傾斜が緩やかになると眼前が開けてハナ・ポイントが一望できる。
ハナ・ポイントは、長い海岸線が続く砂浜で、ビーチには生き物たちも多数見られる。 -
ビーチに下りてまず目立つのは、ミナミゾウアザラシたちだった。
このハナ・ポイントは、ゾウアザラシのハーレムがあることで知られるポイント。 -
ゾウアザラシたちは、ちょうど季節の変わりめで体の古い表皮が剥け落ちる時期だったようだ。
彼らは基本的にはほとんど浜辺でゴロゴロと寝ているだけなので、生き生きとした写真を撮るにはときおり目を覚ます瞬間を狙うといい。
とにかく、辛抱強く粘って待ちながら撮影するしかない。 -
リビングストン島で撮影できた生き物は、ヒゲペンギンにジェンツーペンギン、オオフルマカモメにオオトウゾクカモメ、サヤハシチドリ、そしてミナミゾウアザラシなど。
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遠ざかるリビングストン島…
やがて上陸時間も終了し、我々はひとまず船へと帰還した。 -
そして、ランチを済ませてから午後の上陸予定地へと向かった。
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目前に迫ってくるグリニッジ島。
グリニッジ島はサウスシェットランド諸島を構成する島の一つで、リビングストン島の東隣に位置する。 -
グリニッジ島の上陸ポイントはヤンキー・ハーバーと呼ばれ、ジェンツーペンギンなどペンギンたちの営巣地となっている。
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そしてここにもジェンツーペンギンの死骸が…
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ただ、この島ではかなり歩行進入が制限され、ビーチの一定エリアしか散策できなかったので、景観的な面白さはトリニティー島やリビングストン島に比べると平凡で劣る。
今回の南極クルーズ最後の上陸地としては、少々物足りなさが残ったかな…
ここで撮影できた野生生物はジェンツーペンギンの他にヒゲペンギン、オオフルマカモメ、オオトウゾクカモメ、ウェッデルアザラシ、ナンキョクオットセイなど。 -
それでも晴天に恵まれた上陸最終日は、小生にとって気持ちのいい一日だった。
そんな気分だったので、船に戻ってからデッキにて最後に上陸したグリニッジ島をバックにメモリアルショットを撮った。 -
デッキでは、最後の上陸の無事成功を祝してシャンパンパーティーが催された。
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シャンパングラス(紙コップだが)を片手に親しくなった人たちと記念撮影。
まずは、今回のクルーズのエクスペディションスタッフでバードウォッチングインストラクターのディック・フィルビー氏と。
ディックはロンドン郊外の出身で、幼少のころからバードウォッチングに親しみ、今ではそれを仕事にしている。
さすがプロのバーダーだけに視力が抜群で、鳥だけでなく船の上でも遠方のクジラなどまでもいち早く発見してくれた。
そしてただ見つけるだけでなく、その種類まで見極める観察眼は素晴らしい!
今回のクルーズ旅行には欠かせない人だった。 -
続いて、クルーズ中に親しくなったクルーズメイトのマービン・グリフィン氏と。
彼はスコットランドのエジンバラから奥さんと2人で参加。
仕事はすでに定年で退職し、今は悠々自適に世界各地を旅している。
もちろん年齢は小生よりはるかに上なのだが、全然偉ぶることはなかった。
いつも陽気でいつでも一番乗りを心がけていたマービン。
ランチやディナーではよく彼と席を並べたが、おかげで食事も楽しくいただけた。
ところで今回のクルーズでは、グリフィン夫妻のような定年後の年配者が多く見られたのも印象に残った。
乗客の7割ほどが、60代以上だったように見受けた。 -
最後に、今回のクルーズにおいて船でたった3人だけの日本人!
船の中では、日本人というより東アジア系人は我々だけだった。
右から、クルーズのエクスペディションスタッフで日本人乗客担当のイトオカさん、小生、そしてニューヨーク在住のナオコさん。
ワイン愛好家のナオコさんは、小生と同じく東京出身だが若いころから勉学のため渡米して、今ではアメリカ市民である。
今回のクルーズには、スコットランド出身の彼氏と参加した。
この後、我々は南極エリアに別れを告げ、帰港地・ウシュアイアを目指して北上することとなった。 -
翌日から船は、大荒れのドレーク海峡を通過してウシュアイアへと向かう。
ドレーク海峡はサウスシェットランド諸島と南米大陸パタゴニアを隔てる海域で、かなり潮流が激しく、かつては航海上の難所と恐れられた。
約2日間は船内の揺れにも耐えなければならないが、その間には少しでも乗客たちに楽しくリラックスして過ごしてもらおうと、船内ではスタッフによる最後の催しがいろいろと行われた。
写真はそんな企画の一つ、日本人スタッフのイトオカさんによる折り紙ミニ教室。 -
イトオカさんの指導で、鶴を折ってみようというアトラクション。
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欧米からのお客さんたちに日本の折り紙の楽しさを知ってもらおうというイトオカさんのアイデア。
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イトオカさん「皆さん、ここまでうまく折れてます〜?」
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「そうそう、もうチョットで、できあがり。」
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「ハイ、鶴が折れましたネ!では、お次は…」
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出来上がった折り紙を手に皆で、ハイ、チ〜ズ♪
参加者はアメリカやオーストラリア、スイス、イスラエルから来たレディーの皆さん。
顔ぶれも国際色豊かでした。 -
そして、アカデミック・アイオフィー号でウシュアイアを出発してから18日目。
明日はついにクルーズの最終日。
写真は、荒波の立つドレーク海峡! -
ドレーク海峡の名は、イギリス人探検家のフランシス・ドレーク卿にちなんでつけられた。
南米大陸南部の地図作成のため、マゼラン海峡を航行していたドレーク船長が1578年に偶然にも太平洋と大西洋の中間にあるこの海峡の存在を発見したことによる。 -
そんなドレーク海峡の航海もいよいよ終盤。
船の行く手には、南米最南端の島であるティエラ・デル・フエゴ島のさらに最南端・ホーン岬が見えてきた。 -
標高424メートルの断崖がそびえる。
しばし、ホーン岬の情景をご覧ください。 -
-
-
岬の少し下った丘の上に何やら建造物が確認できた。
バードウォッチング用の双眼鏡でさらに観察してみると、どうやらモニュメントのようだった。 -
無事にホーン岬を通過した船は、ビーグル水道へと入る。
ビーグル水道に差しかかったとき、目の前には大きな虹が現れた。 -
まるで、南米大陸へのゲートをくぐるかのよう…
亜南極や南極地域を周遊しながら見聞きして感じた18日間の出来事に思いを馳せる。 -
さて、翌日の朝にはいよいよウシュアイアに到着する予定なので、アカデミック・アイオフィー号ともこの日でお別れ。
そんなわけで、最後にスタッフが乗客全員を船内ツアーに案内してくれた。 -
船内ツアーでは、船内でも普段なら我々一般乗客が立ち入ることができない場所へも連れて行ってくれる。
まずはエンジンルームへの階段を下りてゆく。 -
エンジンルームの雑観。
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アカデミック・アイオフィー号は、5000キロワットのツインディーゼルエンジンを搭載。
最大巡航速度は14.5ノット。 -
エンジンルーム内はさすがにものすごい騒音で、中では大声で叫んでなんとか聞き取れるぐらい。
しかし、上のキャビンやデッキの大部分では、エンジン音はほとんど聞こえない。
アカデミック・アイオフィー号には、そのための特別なシステムが導入されているそうだ。 -
エンジンを制御するマスターコントロールルーム。
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アナログな計器類が、やけにレトロな印象。
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次にプロペラルームを覗いてみた。
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アカデミック・アイオフィー号は、2基のメインエンジンと繋がっている強力なツインプロペラを備えている。
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そして、我々が上陸の度に利用したマッドルーム。
船外に出るときに必着だった防寒着がたくさんかけられていた。
船から借りて大変お世話になった防寒着だったが、上陸日程が終了した時点ですでに返却済み。 -
同じく、ゾディアックに乗船するときに着用が義務付けられたライフベスト。
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そんな防寒着やライフベストがかさばる間から天井へと伸びる1本のメインマスト。
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天井から上は、ブリッジに通じている。
これは、マスターコントロールルームでエンジンが制御できなくなるような非常事態に、ブリッジからエンジンを操作するための補助動力マストである。 -
ということで、船内ツアーの終点は我々もよく訪れたブリッジ。
よく見ると天井に面白そうなものが… -
どこか懐かしさを感じる伝声管である。
やはり、船内の通信機器が故障などしたときに使用するのだろうが、今まで使うことなどあったのだろうか… -
ブリッジには、船同士の通信に使われる国際信号旗も格納されている。
国際信号旗は世界共通の旗で、客船なら普通はどんな船にも備えられているようだ。 -
たくさんある旗の中には日の丸(日本の国旗)もあったので、ブリッジのクルーに頼んで特別に出してもらった。
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普段我々が見慣れている日本国旗と比べると、真ん中の日の丸部分の面積の割合が大きすぎるか…
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クルーズ最後の夜は、ダイニングルームでお別れディナー。
セレモニーでは、まずアカデミック・アイオフィー号のキャプテンから御礼のご挨拶。 -
そして、エクスペディションスタッフが勢揃い!
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スタッフの全員が各々、乗客との別れを惜しむコメントを披露。
我々乗客のほうこそ、とってもお世話になった。
スタッフの皆、クルーズ中は楽しませてくれてどうもありがとう! -
この日、我々乗客たち全員にはクルーズスタッフから南極大陸上陸の証明書が手渡された。
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ついにクルーズ最終日の朝、ダイニング前のロビーに掲示されていた今回のクルーズの全行程のチャートを眺めながら、改めて思い出の数々に耽った。
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ウシュアイアを出港してから19日目の朝、クルーズは無事に終了し、ようやく帰港して再び南米の地を踏んだ。
下船後、アカデミック・アイオフィー号をバックに日本人スタッフの糸岡さんと記念撮影。
彼女はクルーズ中も、本当によく小生をサポートしてくれた。
確かに短い期間ではあったが、実際、小生にとってはまるで妹と一緒に旅しているみたいで楽しかった!
そんな糸岡志保さんは、大阪生まれの大阪育ち。
アメリカ・カンザスの大学に留学してコミュニケーション学を学んだ後、ピースボートのクルーズで88日間かけて世界一周の旅に出た。
その最中に、今でこそ得意としているフラフープと出会って一念発起。
旅行後にはフラフープの本場といわれるシドニーへ単身赴き、フラフープダンスとその指導法を学んだ。
今では、フラフープは糸岡さんの人生にとって欠かせないものとなっている。
彼女が目指すのは、フラフープを通じた多くの人々との交流。
ちなみにその後、彼女は夢の第一歩として自分のホームページをオープンさせた。
(http://www.shihosparklehooper.com/)
ぜひ、これからも目標に向かって精進していってほしいものである。 -
さて、実に名残は惜しいが、海外の旅には帰国がつきもの。
南米最南端の町・ウシュアイアを離陸する飛行機から一望した。
さらば、ウシュアイア! -
アカデミック・アイオフィー号に乗船して行き来したビーグル水道の空撮写真。
アカデミック・アイオフィー号は、きっとまた小生たちの後に乗船した次なる乗客の一団を乗せて、このビーグル水道を抜けて南極へと向かったことだろうなあ…
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今回のクルーズで印象的だったことは、まず亜南極から南極に至るまでどこの訪問地でも、出会った生き物たちが我々人間を決して恐れることなくのびのびと暮らしていたこと。
つまり今回は、ほとんど人の立ち入ることのない野生の楽園を訪れたのだという実感が強く心に残った。
そして、不安定な天候にはずいぶん泣かされたが、悪天候もそれはそれで大自然の厳しさが人類による進出や開発からこの楽園を守っているという南極の環境を体感できたと思う。
この厳寒の秘境の自然が、昨今問題となっている地球温暖化によってバランスを崩されてしまわないよう願わずにはいられない。
なぜなら南極には酷寒の地にしか適応して生きていけない生き物がたくさんいるし、本来は厳しい寒さで守られた秘境なのだから…
また、そんな厳しい自然のベールに阻まれた亜南極や南極の謎に、これまで挑んできた多くの探険家の命がけの偉業にも深く敬意と哀悼の念が沸いた。
一方で、亜南極や南極という地域が人類の歴史上、幾度もの様々な探検や発見が成された中でその土地や海の所有を巡り何度も国同士の争いの的になったという事実も見過ごすことはできなかったが…
この地球上で最後の秘境を脅かすような戦争や紛争は今後あってはならないと思うし、改めて国家間の領有権問題についても考えさせられた。
そんなことを考えているうちに、上空から見えるビーグル水道も徐々に遠ざかっていった…
この後、ブエノスアイレスからアトランタを経由して成田へ…
南極半島やサウスシェットランド諸島などで撮影した野生動物や海鳥の写真も、小生のホームページ「アニマル・ワールド」( http://animalworld.starfree.jp/ )の亜南極・南極地方編で公開中!
ぜひ、見にきて下さい!!
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