2025/05/23 - 2025/05/23
331位(同エリア3444件中)
ベームさん
本栖湖畔に安くてよい宿泊施設があるから、と娘から声が掛かりました。
例によって自分たちでは行動気力・手段のない私たち老夫婦はその誘いに乗りました。
なん十年も前に訪れたことのある忍野八海、白糸の滝は開けていて、かっての幽邃な面影は無くなっていました。忍野八海では惧れていた外国人観光客の波に呑み込まれました。御坂峠の天下茶屋では太宰治の痕跡に触れました。
二日目には天気予報で諦めていた富士山の姿を拝むことが出来、ラッキーでした。
車での移動なので、点から点への記録です。
表紙の写真は本栖湖湖畔からの霊峰富士山。
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10時過ぎ、横浜を娘婿の運転する車で出発。圏央道から中央高速に入りました。
釈迦堂サービスエリアで休憩。
天気予報は今日も明日も曇り、富士山の見えない富士方面の旅になりそう。 -
御坂隧道河口湖側。
中央高速甲斐一宮インターを降りて、河口湖方面へ向かう途中で御坂道の旧道に入りました。くねくねした山道を走り、御坂隧道を抜けます。
昭和42年に「新御坂トンネル」が出来てから忘れられたような旧道です。 -
その隧道を出た所にあるのが天下茶屋という峠の茶屋です。昭和9年創業。
徳富蘇峰が「ここからの富士の眺めは天下第一」と言ったことから命名したそうです。 -
昭和13年9月、数回の自殺未遂と麻薬中毒で心身ともに疲労困憊した太宰治が再生を期して、この茶屋に先に逗留していた井伏鱒二を頼って来ました。ここに太宰は11月まで滞在し、その間に甲府市の石原美知子と婚約し(昭和14年1月結婚)、一応心身は回復したのでした。
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有名な「富士には月見草がよく似合う」の文章が書かれている「富嶽百景」はここでの生活を基に描いたもので、翌昭和14年に三鷹の下連雀の住まいで書かれました。
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建物は当時のものではなく、焼失し再建されたものと何かで読んだ記憶があります。
「富嶽百景より:「御坂峠、海抜千三百米、この峠の頂上に、天下茶屋という、小さい茶店があって、井伏鱒二氏が初夏のころから、ここの二階に、こもって仕事をして居られる。」 -
御坂峠からの眺望。
「私はそれを知ってここへ来た。井伏氏のお仕事の邪魔にならないようなら、隣室でも借りて、私も、しばらくそこで仙遊しようと思っていた。」 -
その天下第一の富士の景観も今日は曇りで拝めません。
富嶽百景より:「この峠は、甲府から東海道に出る鎌倉往還の衝に当っていて、北面富士の代表観望台であると言われ、ここから見た富士は、むかしから富士三景の一つにかぞえられているのだそうであるが、私は、あまり好かなかった。好かないばかりか、軽蔑さえした。あまりに、おあつらいむきの富士である。」 -
河口湖と湖岸の町が霞んで見えます。
「私は、ひとめ見て、狼狽し、顔を赤らめた。これは、まるで、風呂屋のペンキ画だ。芝居の書割だ。どうにも註文通りの景色で、私は、恥かしくてならなかった。」 -
晴れているとこういう景観です。太宰をして、あまりに整いすぎて、恥かしくなった、と言わしめた富士山です。
ウイキより借用。 -
内部の写真を撮ってよろしいか、と尋ねたらどうぞとのことでした。
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食堂と土産物の販売をしています。昔は宿も兼ねていました。
今日は私たちの他は数名程度の客ですが、混む時もあるようですね。 -
特産品や写真類が所狭しと並んでいます。
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名物ほうとう。
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食事処。土間席もあります。
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太宰治「富嶽百景」より
<老婆も何かしら・・・、ぼんやりひとこと、「おや、月見草」そう言って、細い指でもって、路傍の一箇所をゆびさした。さっと、バスは過ぎてゆき、私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えず残った。> -
<三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった。富士には月見草がよく似合う。>
河口湖から峠の茶屋にバスで帰る途中、老婆と乗り合わせた太宰治の乗ったバスは写真のようなものだったのでしょう。「御坂峠 天下富士 標高1300米 富士山麓鉄道」の標識があります。バックに富士山と河口湖。
富士山はたしか3776mのはず。2mほど縮んだのかしらね。 -
二階は太宰治文学記念室になっています。
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注文の品の出来るのを待つ間に見学しました。
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太宰治が逗留していた部屋を復元したそうです。
調度品は太宰が使っていたものだそうです。 -
将棋盤があります。太宰治は将棋が好きでした。
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掛け軸。
「峠の茶屋 私がその茶屋に来て二三日経って井伏氏の仕事も一段落ついてある晴れた午後私たちは三つ峠へのぼった 太宰治」
太宰治の直筆です。 -
床柱は当時のものだそうです。
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太宰治文学記念室。
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太宰治愛用の徳利と杯。
「夜一人、机に頬杖ついて、いろんな事を考えて、苦しく不安になって、酒でも飲んでその気持ちを、ごまかしてしまいたくなることが、時々あって、その時は外へ出て、三鷹駅近くの、すしやに行き、大急ぎで酒を飲むのであるが・・・」(随筆「酒ぎらい」)。
太宰は酒好きで、かなりの大酒家だったようです。 -
昭和28年、文学碑除幕式当日の未亡人津島美知子と長女園子。
美知子は1997年、85歳で、園子は2020年、78歳で亡くなっています。
園子の妹に作家の津島佑子(2016年没、68歳)、異母妹に作家の太田治子がいます。
太宰治(本名津島修治):1909年(明治42年)~1948年(昭和23年)。愛人山崎富栄と玉川上水に入水自殺。
破滅的な人生を送りながら、珠玉の作品を残した作家でした。 -
挨拶する井伏鱒二。
太宰より11歳年上の井伏鱒二は太宰治の師として、親代わりとなって彼の面倒を見ました。自分の子供の死には泣かなかった井伏が、太宰の葬儀の際号泣したと言われます。
そのような恩人を太宰は遺書の中で「井伏さんは悪人です」と書いている。その真意は測りようがない。 -
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初版本等。
櫻桃、斜陽、グッド・バイ、人間失格。 -
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ここで名物のほうとう鍋で昼にしました。麺は思ったより硬かった(しっかりしていた)ですが美味しかった。汁も残らず飲み干しました。
食べかけの写真です。麺と野菜のごった煮ですから、見栄えはしませんが味は良し。 -
天下茶屋の前の道路を横切り、少し山の中に入ると、
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太宰治文学碑が木立の中に建っています。井伏鱒二や天下茶屋主人などの尽力で昭和28年建立。
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河口湖からのバス停があります。
でも10時18分到着してすぐの折り返しの一日一便のみ。したがってマイカー以外での滞在は不可能です。 -
バスは1日一本のみ。
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一路山道を河口湖の方に下りました。
忍野八海に向かいます。 -
河口湖大橋からの眺め。
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忍野八海の駐車場。
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なん十年か前にマイカーで来たことがあります。当時はこんなに大きな駐車場は無く、車を停めるのに苦労した記憶があります。今日は大型観光バスが一杯です。
普通車1台300円は安い。 -
忍野八海は富士山の伏流水が湧き出ている所。
国の天然記念物、ユネスコ世界遺産に登録されています。 -
周りの建物は田舎風の豪邸が多いです。
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池巡り。
湧池(わくいけ)は八海のほぼ中央で、人や店が一番集中しています。 -
湧池(わくいけ)。
私は観光客、特にインバウンドの多い所は忌避しているのですが、ここで初めてインバウンドのるつぼに投げ込まれました。 -
ごった返す観光客の10人に9,5人は外国人で、そのほとんどはアジア系の人です。
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老人がうろうろしていると、大きなお尻で池の中に突き落とされかねません。
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周りには売店が多く、一番の賑わいです。
外国人観光客は購買欲、食欲が旺盛です。付近の家の豪勢なのもむべなるかな、です。 -
しかも金曜日でこの様子です。土日とかゴールデンウイークにはどんなことになるのですかね。
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湧池。
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濁池(にごりいけ)。
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水は濁ってはいませんでした。
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濁池。
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綺麗な水の流れ。
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銚子池だったかな?
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銚子池?
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お釜池。
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八海の中で一番小さい。
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お釜池。
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鏡池。
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鏡池。
条件が整えば水面に富士山が映りこむそうです。 -
菖蒲池。
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菖蒲池。
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昔はもっと素朴な所でした。ほうほうの体で本栖湖に向かいました。
途中西湖、精進湖、青木ヶ原の樹海などをすっ飛ばします。 -
本栖湖湖畔のヴィラ本栖。
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東京都中央区の保養施設ですが、一般の人も利用できます。
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庭園。
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施設全体図。
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豪華な(私にはこれで十分豪華に思えます)ロビー。
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14畳ほどの和室。
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夕食。いつも粗食の私には御馳走です。
普段アルコールを飲みませんが、今日は奮発してビール中ジョッキ1杯。
箱根の富士屋ホテルが運営しているそうです。 -
食前酒。真中に富士山の透かし彫りがあります。
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翌朝、朝食前に本栖湖畔まで散歩しました。歩いて15分ほど。
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湖畔にはテント村がありました。
テントやバンガロー、キャンピングカーなど。 -
本栖湖です。
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富士五湖中最深(121m)で、透明度も一番です。湖面の標高は901m。
面積は山中湖、河口湖につぎ3番目。
山は竜が岳。 -
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曇天のもと、静まり返っています。
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湖岸には溶岩がごろごろ。
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宿を出て、本栖湖を一周する道を走りました。
なんと富士山が見えるではありませんか。 -
ヴィラ本栖のほぼ対岸あたりです。
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昨日から一度も姿を見せなかった諦めていた富士山が、その秀麗な姿を見せてくれました。
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まさに霊峰富士です。
私は太宰治ではありませんが、富士山はそのあまりにも整った姿、完成された形、雛壇のお雛様のような落着きに関興を覚えないのですが、まじかに見るとさすが美しい、日本一の山です。やや霞んでいるのがいい。負け惜しみ半分です。 -
野口英世の旧千円札の裏面に描かれている富士山と本栖湖の姿です。
違うのはお札の方は晴天で、富士山が雪を被り花が咲いているので、早春で、湖面に逆さ富士が映っています。 -
さらに進んで、朝霧高原からの富士山です。
横浜方面から見るのと反対側の富士山でしょう。 -
長い裾を引いています。
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乳牛の放牧も見られました。
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白糸の滝へ向かいます。
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道の駅朝霧高原で休憩。
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高原の牛乳を一杯飲みました。
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白糸の滝にやってきました。
白糸の滝、音止の滝と二つの滝が近接しています。いずれも富士山の湧水です。順路に従って歩きました。 -
駐車場から見える富士山。駐車料金500円。
ここも忍野八海と同じように、何十年前に見た幽邃の赴きは全く無くなっていました。しかし観光客は忍野八海よりよっぽど少ない。 -
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音止(おとどめ)の滝。
高さ25m。 -
名前の由来は、曽我兄弟の仇討です。
曽我兄弟が父の仇の工藤祐経を討つ相談をしていた時、滝の音で声がさえぎられたため、神に念じた所一瞬滝の音が止んだ、という言い伝えです。 -
豪壮な滝です。
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先に進むと白糸の滝が見えてきました。
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高さ20m、幅150mの湾曲した岩壁から絹糸を垂らしたように流れ落ちる優雅な様からその名がつきました。
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国の天然記念物、昭和25年「観光百選滝の部」で1位。富士山の世界遺産構成資産の一部でもあります。
新派劇や映画の「滝の白糸」とは関係ありません。 -
岩肌を流れ落ちる湧水。
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石段を下りて滝壺の近くまで行くと、水煙が掛かります。
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「この上に いかなる姫やおわすらん おだまき流す 白糸の滝」 源頼朝
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戦国時代から江戸時代にかけて、富士講の人々の巡礼・修行の場でもありました。
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落下した水は清冽な流れとなって流れていきます。
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展望台からの眺め。
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滝の奥にあるお鬢水(おびんみず)、別名鬢撫でみず。
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富士山の湧水が溜まった小さな池です。
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源頼朝が「富士の巻狩り」の際、この池の水面に映る鬢のほつれを撫でつけたという謂れがあります。
富士の巻狩りとは、1193年5月から6月にかけて、この地一帯で源頼朝が行った一種の軍事演習です。その間に曾我十郎、五郎兄弟の仇討が起こりました。 -
駐車場の前に熊野神社。
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観光案内所に張られていたポスター。
日本三大仇討の一つ「曾我兄弟の仇討」の登場人物の人間関係です。
工藤祐経に父を暗殺された曽我十郎、五郎の兄弟は、源頼朝が催した富士の巻狩りの際に、ついに本懐を成し遂げます。しかし二人も殺されあるいは捕らわれて処刑されます。この近辺に兄弟が密談をしたという隠れ岩があったそうです。 -
さらに南下し、富士宮市にある「富士山本宮浅間大社」を訪れました。最後の訪問地です。
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正面大鳥居。
この神社は全国1300余ある浅間大社の総本宮です。ご神体は富士山。ちなみに富士山8合目から上はこの富士山本宮浅間大社の境内地です。すなはち、富士山の頂上近辺はこの神社の所有地なのです。 -
楼門の手前に流鏑馬像。
源頼朝が1193年、富士の巻狩りの際に流鏑馬を奉納した故事があります。
現在も毎年5月5日、流鏑馬祭りが行われています。 -
楼門。入母屋造り。
徳川家康奉納。
境内の建物は殆ど家康が奉納したものです。今当時のまま残っているのは本殿、拝殿と楼門だけです。 -
楼門。
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左右には随身が安置されています。
扁額は「冨士山本宮」。 -
手水舎。
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拝殿。
祭神は木花之佐久夜姫(このはなさくやひめ)。家庭円満、安産、子安の神様です。
806年に征夷大将軍坂上田村麻呂が遷宮したと伝えられています。 -
徳川家康奉納。
古来武家の崇敬が篤かった。とくに源頼朝、北条義時、武田信玄、徳川家康。 -
また富士山の噴火を鎮める神として、庶民の信仰を集めました。
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地元の酒ですね。
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本殿。
慶長9年(1604年)、徳川家康奉納。
屋根は浅間造りという独特のものです。 -
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本殿。別の角度から。
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綺麗なおみくじです。咲良(さくら)みくじ、と言うそうです。
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東脇門を出ると湧玉池があります。
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富士山の雪解け水が湧出したもので、国の特別天然記念物に指定されています。
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水屋神社。
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末社稲荷神社。
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帰途につきました。
途中富士市内のここで遅めの昼食。 -
忍野八海以外は惧れていた観光客の雑踏もなく、まずは癒しの一泊二日の旅でした。
例によって写真の多い旅行記です。
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