2023/09/25 - 2023/10/03
22位(同エリア80件中)
とむぬーさん
<前回までのあらすじ:https://4travel.jp/travelogue/11879038>
十数年来の夢を叶えるべく、フェリーでマイカーを朝鮮半島に持ち込んだ、私と大学の先輩で友人の台湾人のC。高速の通行券を受け取り損ねたり、帰省ラッシュの大渋滞に巻き込まれたりするも、4日目には東海岸の街、束草に無事たどり着く。しかし、ここからもトラブルは続くのであった……。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- 友人
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
【5日目】
目が覚めると、そこは北朝鮮だった。
というのは趣味の悪い冗談だが、全く根拠のない出鱈目という訳でもない。束草の街は北緯38度12分付近に存在する。すなわち、38度線以北であり、厳密に北緯38度線に沿って境界線が引かれていた朝鮮戦争以前は「北側」だった街なのだ。 -
しかし、朝鮮戦争の結果、休戦時点の戦線に沿って軍事境界線が引き直され、束草は大韓民国が実効支配する街となった。今日はまず、現在の軍事境界線を目指して北上する。
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韓国上陸初日に走った京釜高速と同じく、東海岸沿いの国道7号もアジアハイウェイに指定されている。こちらのAH6号線も、釜山から、北朝鮮、中国、ロシア(複数回)、カザフスタンを経由し、最終的にロシア - ベラルーシ国境まで続くという壮大な路線だ。始点から終点までの走破が事実上不可能であることもAH1号線と同様である。
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50分ほど走ると、"Unification Observatory Check Point"に到着した。
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さらに北進するためには、ここで申込用紙に記入し、一人3000ウォン及び一台当たり5000ウォンを支払う必要がある。
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すると、判子が押された申込用紙が返ってくる。
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この紙を携えてまた少し走ると、料金所のようなものが見えてくる。
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小銃を持った韓国軍兵士もおり、物々しい雰囲気である。
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それもそのはず、ここは韓国軍の検問所、そしてこの検問所の先は民間人出入統制区域なのだ。3日目に訪れたソウル近郊の民統区域は観光バス以外での一般人の進入が禁止されているが、ここ高城では自家用車で民統区域へ入ることが出来る。
先ほどのチェックポイントでは民統区域に入るための手続きを行ったが、ここで最終確認と注意事項の説明があり、問題がなければいよいよ民統区域内に乗り入れとなる。 -
民統区域内は殺風景で店などは一切なく、信号機も機能していない。民統区域内では、指定の駐車場以外での停車が禁止されているからである。手続きを経てマイカーで走れるといっても、ここは本来民間人が立ち入ってはいけない、軍事境界線の緩衝地帯なのだ。
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AH6号線の韓国側イミグレーション。こちらも当然機能していない。「金剛山 27km ↑」の標識が、来ることの無い北への観光客を待ち続けている。
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海岸には鉄条網が敷かれている。
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高城統一展望台の駐車場に到着。韓国国内で一般車両が到達できる最北端である。同時に、釜山に上陸した我がスイフトの行く事ができる、ユーラシア大陸最北端の地点でもある。
高城統一展望台 現代・近代建築
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ここからは歩いて展望台へ向かう。
高城統一展望台 現代・近代建築
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高城統一展望台。DMZの"D"の形だ。
高城統一展望台 現代・近代建築
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この展望台は、セコムが警備を担っているらしい。軍事境界線を守るセコム。
高城統一展望台 現代・近代建築
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展望台の最上階からは、窓越しではあるが北側が良く見える。
高城統一展望台 現代・近代建築
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いくつか柵があるのでどれが実際の軍事境界線かは分からなかったが、少なくともあの山は間違いなく北側だ。
高城統一展望台 現代・近代建築
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展望台内には簡単な展示もある。「東アジア唯一の分断国家」であるところの韓国と北朝鮮が分断された歴史的経緯や、
高城統一展望台 現代・近代建築
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北側の紙幣なども展示されている。
高城統一展望台 現代・近代建築
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ちなみにこれらの展示を読んだ台湾人のCは、「東アジアで唯一の分断国家、ね。」という発言を残している。
高城統一展望台 現代・近代建築
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ここは単に北側を眺める展望台ではなく、高城"統一"展望台である。現実は厳しいが、いつか統一が成ることを願う。
高城統一展望台 現代・近代建築
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2階に降りて来れば、ガラス越しでなく写真を撮る事が出来る。
高城統一展望台 現代・近代建築
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展示される朝鮮戦争時代の練習機の足元を散歩するポメ。
高城統一展望台 現代・近代建築
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展望台の次は民統区域内をクルマで少し移動して、DMZ博物館を訪れる。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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ここは朝鮮戦争ではなく非武装地帯に主眼を置いているため、朝鮮戦争停戦から展示が始まるのが特徴だ。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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DMZ境界風の金網が再現されたコーナー。「非武装地区南界」。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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こちらも写真で有名な「YOU ARE NOW CROSSING 38TH PARALLEL」の看板……と思いきや、「YOU ARE NO"M" CROSSING...」である。なんだこのミスは……
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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南北双方が投下した伝単(ビラ)のコーナーも。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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お互いどのようなプロパガンダを打っていたのかが如実に表れて面白い。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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同じ分断国家ということで、東西ドイツの壁に関する展示のコーナーも設けられていた。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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最も印象に残っているのは、このポスターを眺めるCの姿だった。朝鮮戦争時のものかと思ったが、ソ連や英領インドの旗もあることから、第2次大戦時代のものらしい。
右上の青天白日満地紅旗の下には、「Republic of China」でも「Taiwan (ROC)」でもなく、一言ただシンプルに「CHINA」とだけ記されている。アルバニア決議を経て"中華民国"が「CHINA」ではなくなって既に半世紀、このポスターを物言わず見続けていた、現代を生きる"台湾人"のCは何を思う。DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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少し重苦しさもある展示を一通り見終わると、目の前にはガラス越しに青い空と青い海が広がっていた。気分も明るさを取り戻す。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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さて、時刻は既に13時を回っているが、ここからは再び車中の人に戻る。ここは韓国領最北端、取れる進路は南のみだ。
DMZ博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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民統区域を脱し、目的地は、東海岸沿いに遥か350km先の浦項市。
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ここまで昼飯抜きで来たのでそろそろ腹が限界なのだが、高速道路に入ってもなかなか食堂のあるサービスエリアがない。東海岸は比較的「地方」なので、国の大動脈たる京釜高速沿いやソウル近郊区間の高速道路とは様相が異なる。
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こんな韓国の田舎のサービスエリアにつくばナンバーのクルマがしれっと停まっている情景、改めて見ると中々笑えてくる。
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飯を求めてさらに南下。
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次のサービスエリアは規模が大きく、食堂もありそうだ。
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ハヤシライス的な何か、辛くないやつ。
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我々が注文した直後にオーダーストップとなってしまいメニューの写真が撮れなかったので、名前は不明だが、そこそこ美味しかった。
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腹の虫も収まったところで、南進を再開する。
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束草から伸びていた高速65号は東海付近で途切れ、残りの200kmは一般道である国道7号をひた走ることとなる。
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日も傾いてきた17時。浦項まで残り163km、折り返し地点だ。
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左に海を見ながらどんどん走る。
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SISHAMOの「明日も」を流しながらひたすら走り続ける。
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高規格とはいえ一般道、たまに信号も出現する。
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18時前、燃料警告灯が点灯。この辺から歯車が狂い始める。
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付近は海と山しかなく、ガソリンスタンドが中々現れない。この時助手席にいた私は走行可能距離を推測するが、我が初代スイフトスポーツが中途半端にマイナー車なせいで、ググっても燃料警告灯点灯時点でのガソリン残量が分からない。冷や汗をかきながらCに燃費運転をするよう指示する。
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警告灯が点灯してから40km近く走り、なんとかガソリンスタンドに滑り込む。
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昨日ソウルで高級揮発油を給油してから595km。600km達成まで5km残しているのは悔やまれるが、それを試みる余裕はもうない。燃料も精神も。
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今度は黄色いノズルが刺さる見慣れた光景だが、ここから流れ込むガソリンは「揮発油」、すなわちレギュラーガソリンである(厳密にいえば、日本のレギュラーのオクタン価が89なのに対し韓国の"揮発油"は91程度であり、レギュラーとハイオクの混合油といったところか)。
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ということで、一応気休め程度に日本から持ち込んだオクタンブースターも投入する。
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ここの店員もやたらノリノリで、カメラを向けるとニコニコでサムアップまでしてくれた。やはりガソスタの店員は変なクルマが来ると喜ぶものなのだろうか。
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さて、ガソリン満タン、後は何の憂いもなく浦項まで駆け抜けよう……と考えていたところだが、この後またすぐに道端に停まることになる。ヘッドライトのロービームが点灯しなくなったのだ。
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ガソスタを出て走行中、ライトスイッチはオンになっているにもかかわらず、どんどん視界が暗くなっていく。流石におかしいと思い車間を開けてハイビームにしてみると、パッと視界が開け、ロービームが死んでいることを認識。慌てて前方に見えてきた路側帯にクルマを突っ込む。クルマを降りて確認してみると、ロービームが左右共に点灯していないことが判明した。
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今思えばガソリンスタンドを出る時に気付かなかったのが不思議なのだが、その時はまだ周りが明るかったのと、燃料警告灯の件の気の逸りが収まっていなかったのだろう。
真っ暗になった後、かつボンネットを開けた状態で撮った写真なので分かりにくいが、このハイビーム点灯時の写真よりも一つ上のロービーム時の写真の方が、前方の路面が暗いのがお分かりいただけるだろうか。 -
左右両方のロービームだけが同時に玉切れとは考えにくいことから、車体側の電気系統かと考え、こんなこともあろうかと念のために積んでおいたサービスマニュアルを片手にトラブルシューティングを開始する。
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しかし、ヒューズ、コネクタ類などとりあえず確認しやすい物はすべて確認したものの、溶断したり抜けていたりしているものはない。
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その場で配線を全て確認するのは現実的ではなく、幸いハイビームは生きていることから、結局ロービームの復旧はあきらめ、ヘッドライトレンズの上側を養生して隠した上でハイビームで走ることにした。
即席感が半端ない養生テープでの対処で、いよいよ国際ラリーカーの風格が出てきた……かもしれない? -
なぜか日本でガムテープを積んでくるのを忘れており、何重に貼り重ねても養生テープでは光が透けてしまうが、やらないよりはよっぽどマシだ。今は緊急事態ということで仕方ないだろう。
とりあえず浦項までの残り60kmでハイビームも死んでしまわないことを願いつつ、1時間ぶりにエンジンに火を入れる。 -
ホテルに着く頃には、21時を回ってしまっていた。もうヘトヘトである。
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どこかの店で夕飯を食べる元気は残っていなかったので、部屋の冷蔵庫に貼ってあった広告を頼りに近くのピザ屋に突撃。
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韓国語が話せない我々に閉店間際に付き合ってくれた、英語の話せないピザ屋のおじさんに感謝しつつ、部屋でピザをつまむうちに夜は更けていった。
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【6日目】
実質的に韓国ドライブ最終日であるこの日の浦項は雨空。ヘッドライトのテープは雨で剥がれると面倒なので剥がし、今日の最初の目的地に向けて出発。 -
浦項といえばPOSCO。1973年に朴正煕大統領肝入りで操業開始した製鉄所で、韓国の高度成長「漢江の奇跡」を支えた立役者である。製鉄所のプラントが3km以上に渡って連なる光景は壮観だ。
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工業地帯ということで、大気汚染の現況を知らせるための電光掲示板。川崎の産業道路沿いにも同じようなものがあったと思い出す。
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浦項近郊を走るうちに、雨は止んできた。
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最初の目的地に到着。
虎尾串日の出公園 ビーチ
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虎尾串(串は韓国語で岬の意)の海中から生える手。このシュールな光景を見るために、浦項郊外の韓国最東端の岬までやって来たのだ。ミレニアム記念で1999年に建造されたらしいが、何故「ミレニアムを記念するために海から巨大な手を生やそう!」となったのかはよく分からない。
虎尾串日の出公園 ビーチ
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インスタ映えスポットでもあるらしく、多くの韓国人が写真を撮っていた。せっかくなので、我々も自らの手を生やしてみる。
虎尾串日の出公園 ビーチ
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振り返ると、地面から生えている手もある。こちらもシュールだ。
虎尾串日の出公園 ビーチ
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韓国、というか狭義の朝鮮半島全体で最東端に位置するこの岬は、海洋航行上重要な岬でもあった。日本の韓国併合よりもさらに前の1908年に、早くも灯台が建設されている。
国立灯台博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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それを記念して、「手」のそばには国立灯台博物館がある。LORANやGPSが普及したこともあって普段中々馴染みのない灯台、その光源や様々な設備に、身近に触れることができる。
国立灯台博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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濃霧の際に、音で位置を知らせるために使用される霧笛(むてき)。
国立灯台博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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灯台施設の内部に掛けられていたらしい標語。左の物は大体読めてしまう。韓国が漢字を捨てずにいれば……と思わずにいられない。
国立灯台博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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灯台博物館を後にし、港町の狭い路地を抜けて、次なる目的地である世界遺産の石窟庵に向かう。
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東海以来久しぶりの高速道路を走っていると、段々空の雲も抜け青空が見えてきた。
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海を離れ、山に近付いていく。
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もうすぐ目的地、という山道で駐車場待ち渋滞にハマってしまった。流石世界遺産であるが、登りの急坂で渋滞はマニュアル車には中々辛い。
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到着!
石窟庵 寺院・教会
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随分登ってきたものだ。
石窟庵 寺院・教会
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石窟庵とは、8世紀に建立されたお寺だ。仏像が洞窟の中に安置されている事が特徴である。
石窟庵は栄枯盛衰を経て、20世紀前半には日本によって再発見、修復が行われた。この際に「日本が出鱈目な補修を行った」として、60年代に韓国政府によって再度補修される際に"正しい"配置に変更されたが、その後日本が行った補修が正しかったことが判明している。……というのはWikipediaでの解説であるが、韓国側メディアである朝鮮日報が出典であることから一定の信頼性はあるだろう。しかし、現在でも現地のパンフレットや解説板には「日本の杜撰な修理によって~」というフレーズが頻出している。石窟庵 寺院・教会
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肝心の洞窟の中であるが、仏像は壁沿い、ガラス張りの内側(というか外側というか)にある。あまりに綺麗に整備されすぎていて、洞窟というより博物館の展示ようであり、せっかくの世界遺産だがあまり印象に残っていない。内部は撮影禁止なので、残念ながら写真はない。
石窟庵 寺院・教会
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石窟庵から脱出する下りの山道も相変わらずの渋滞だったが、そのおかげで写真左側のルノーサムスンに乗るおじさんが話しかけてきて、少しだけ会話をすることができた。見慣れないナンバープレートを見て気になったらしい。日本人と日本で勉強中の台湾人だと話すと驚いていて、「Good luck!」と言ってくれた。
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再び高速道路に乗り、釜山を目指す。ETCのおかげで日本では一切使用していない通行券ホルダー、まさか韓国で役に立つとは。
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サービスエリアで少し遅めの昼飯。朝の雨模様が嘘のような青空だ。
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この旅何度目かのビビンバ。ビビンバは外れがなく、辛さも自分で調整できるのでとても良い。
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とうとう釜山に戻ってきた。
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だが、最後にもう一か所、海東龍宮寺に寄り道していく。
韓国の案内標識は、文化施設には漢字が付いてくる。我々日本人や台湾人の場合、地名は韓国語読みを認識していても、文化施設は漢字そのままで認識しており、その韓国語読み(のローマ字転写)では理解できない事が多いので、これは分かりやすくてありがたい。 -
海東龍宮寺の周辺はナンバー自動認識方式の駐車場ばかりで難儀したが、交通整理のおじさんが誘導してくれたおかげでなんとか入場、駐車することができた。
海東龍宮寺 寺院・教会
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駐車場からこんな感じのトンネルを抜けていくと、
海東龍宮寺 寺院・教会
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海に面したお寺が出現する。これが海東龍宮寺だ。
海東龍宮寺 寺院・教会
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山側から見るとこんな感じ。絶景である。この光景が人気で有名らしい。
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仏像が至る所に建てられている。
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また、お寺なので当然お堂などもあるのだが、結局どれが本堂なのかよく分からなかった。
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「仏教用品店」では、お香や蝋燭、記念品などに混ざって「供養米」なるものが販売されていた。
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DMZ米といい、韓国では米を土産物にするのが定番なのだろうか。
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日も落ちてきたので、駐車場に戻る。駐車場のゲートはつくばナンバーを読み取れず案の定エラーを吐いたが、事前に駐車場管理小屋に声を掛けて料金も払っておいたおかげで、遠隔操作で場外に出ることができた。
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夕焼けと共に、釜山市内へ向けて最後のドライブだ。
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空はみるみるうちに暗くなっていき、ふとあることを思い出す。
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そう、今朝の浦項は雨で、ヘッドライトを隠すテープを剥がしていたのだった。高速道路に入ってしまったため、その辺で停める訳にもいかない。仕方なく、煽り運転と勘違いされないように願いつつ、前方のクルマや標識をハイビームで煌々と照らしながら走り続ける。
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立派な吊り橋は広安大橋。釜山のベイブリッジといったところか。
広安大橋 現代・近代建築
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一般道に降り、上陸初日を思い出しつつ、もう慣れた韓国の道路を流す。
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最後の宿、釜山のモーテル着。予約サイトでは駐車場付きとのことだったが、まさかの路駐である。
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宿にチェックインし、最後の晩餐を食べに地下鉄で1駅の釜山駅に向かう。
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釜山駅。
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韓国第二の都市の玄関口に相応しい大きな駅であるが、残念ながらソウル駅にあったようなふらっと入れそうな飯屋が見当たらない。
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折角なので釜山駅周辺をぶらついてみる。
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20時半にも関わらず、秋夕だからか既に閉まってしまっている店が多い中、運よく24時間営業のレストランを見つけることができた。
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参鶏湯を注文。鍋ごと加熱されており舌を火傷したこと以外はとても美味しく頂けた。
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外に出ると、光り輝く月が目に飛び込んできた。そう、昨夜は曇り空で全く見えなかったが、満月だったのだ。
1日分欠けていても十分に明るい月を眺めながら、中学古典の授業で習った「あまの原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」という句を思い出していた。寧波から奈良へと帰国する直前の阿倍仲麻呂が詠んだ句である。明日には大阪へ帰る船に乗船する私にぴったりだろう。 -
「だとしたら、明日の船は難破してベトナムに流れ着くのでは?」などと縁起の悪いことを話ながら、宿へ帰っていった。
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【7日目】
韓国最終日。路駐で悪戯されていないか少しだけ不安だったが、無事何事もなく一夜を越した。 -
出発前、最後に1枚パシャリ。
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宿は釜山港の近くに取っていたので、ものの10分程度で釜山港に到着した。
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上陸初日にも撮影した横断幕の前に、正しい方向で駐車。
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釜山港国際旅客ターミナル。
Cは翌日どうしても外せない用事があり、残念ながらここでお別れとなった。彼は釜山駅から地下鉄で金海空港へ向かい、無事当日中に羽田へ帰国している。 -
旅客ターミナル内のパンスターフェリーのカウンター。10時過ぎなのでまだ閉まっているが、車両輸送の予約について話せば手続きをしてくれる。
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入国時とほとんど同じ簡素な車両出国手続きを行い、フェリーの横に駐車した。自分自身はまだ出国していないので、一旦ターミナル内に戻される。
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ターミナルから出て観光するほどの時間はないが、ターミナル内ではやることもなくヒマなので、少し早いが昼飯にすることにした。
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例によってアツアツの、春雨鍋。ターミナル内では寡占営業だが、普通に安くて美味しかった。
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13時半、いよいよ人の出国手続きも開始。
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韓国の出国では通常出国印は押されないが(入国時はステッカーが貼られる)、せっかくの記念なのでイミグレのお姉さんに頼んでみる。すると、巾着袋から取り出した出国スタンプ片手に「これが欲しいの?」と聞かれ、頷くとポンと捺してくれた。しかし、捺された日付は4日前のもの。指摘すると、バツの悪そうな照れ笑いとともにボールペンでVOIDし、正しい日付で再押印された。9月28日から4日間、この列では誰も押印を希望しなかったのだろう。
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ドライバーなので、他の乗客より先に呼ばれ、誰もいないターミナルをタラップまで歩いていく。
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一旦乗船したのちにランプから徒歩で降り、クルマに乗りこむ。
ユーラシア大陸でエンジンを始動するのもこれで最後だ。 -
ランプを登り、無事乗船。すかさず作業員が固定してくれる。
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この日は秋夕だからか、韓国から日本に渡るクルマは、船に備え付けのトラックを除けば我がスイフト1台のみだった。車両甲板がだだっ広い。
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大荷物を抱えて部屋にたどり着くと間もなく15時、出港の時間である。デッキに出て、この7日間南から北まで走り回った韓国の地に別れを告げた。
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さらば、韓国!
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……ひと眠りした後に夕飯を食べ、21時。再びデッキに出て上を仰げば、昨日釜山で見たのと同じ月。そしてその下には、日本の下関の燈がゆっくりと流れていく。冒険を終え、日常に近付きつつあることに、大きな安心感と一抹の寂しさを感じながら、デッキを後にした。
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翌朝。
朝飯もそこそこに呼び出され、荷物をまとめて車両甲板へ向かう。 -
しかし、案内の船員はすぐにいなくなり、一人で放置されることに。せっかくなので、色々な角度で写真を撮ってみる。
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そうして10分程待っただろうか。エレベーターから降りてきた作業員から乗車して待つよう指示があり、そして日本へと戻るためのランプが開いた。
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10時過ぎ、日本再上陸!
様々なトラブルはあったものの、無事に再びスイフトとともに日本の地を踏むことができた。 -
帰国時は、出国時とは異なり、簡単な書類・車内検査とタイヤの消毒のみで、あっけないほどあっさりと解放された。
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最寄りのガソリンスタンドで、本物のハイオクを満タン給油。
出国直前の大阪南港での給油時のODOメーターが120,945km、帰国直後の給油時のODOメーターが122,292km、差は1,347km。ガソスタとフェリー往復の数kmを除くその全ては韓国で刻まれたものだ。 -
異国の地を愛車でドライブする。その夢の実現のために、少なくない時間、お金、手間を掛けた。しかし、それによって得た経験は何もかも新しく、何にも代えがたいものであった。この経験は、きっと一生ものだろう。
何より、「このクルマと行った一番遠い場所は?」と聞かれた時に「ソウル」と答えられるのは、少しカッコいいじゃないか。
そんなことを考えながら、少しだけ勘が鈍った左側通行の道路を、東へ向けて走り出した。
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……帰宅後、ヘッドライト問題を解決するためにハンドル廻りを開けると、コネクタが焦げた痕跡が出現、事によっては出火もあり得た事実が判明して背筋を凍らせることになるのだが、それはまた別のお話……。
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